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歯科技工士に関するあれこれと医業類似行為

 

anond.hatelabo.jp

 

歯科技工士は歯科医師の指示に基づいて義歯などを制作する国家資格者である。

 

歯科技工士法より

 

第二条  この法律において、「歯科技工」とは、特定人に対する歯科医療の用に供する補てつ物、充てん物又は矯正装置を作成し、修理し、又は加工することをいう。ただし、歯科医師(歯科医業を行うことができる医師を含む。以下同じ。)がその診療中の患者のために自ら行う行為を除く。

2  この法律において、「歯科技工士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、歯科技工を業とする者をいう。

3  この法律において、「歯科技工所」とは、歯科医師又は歯科技工士が業として歯科技工を行う場所をいう。ただし、病院又は診療所内の場所であつて、当該病院又は診療所において診療中の患者以外の者のための歯科技工が行われないものを除く。

 

第十八条  歯科医師又は歯科技工士は、厚生労働省令で定める事項を記載した歯科医師の指示書によらなければ、業として歯科技工を行つてはならない。ただし、病院又は診療所内の場所において、かつ、患者の治療を担当する歯科医師の直接の指示に基いて行う場合は、この限りでない。

 

さて、上記の匿名ダイアリーにて

 

歯科技工士が低賃金なのは、歯科医師(歯科医院)を経由しないと注文を取れないから。
歯科医師に高額のマージンを取られるから歯科技工士の取り分が減るのだ。

 

週刊誌で読んだ話だが、ある歯科技工士が歯科医師に「報酬の取り分を歯科医師5:歯科技工士5にして下さい」(これは『厚生大臣公告』の内容。公告なので強制力はゼロ)と頼んだら、周囲の歯科医師全員から取引を断られた。

 

と書かれている。

 

歯科技工士は直接患者や保険組合に義歯制作代を請求できず、歯科医師が請求し、そこから歯科技工士に支払うようである。

 

そのため記事中のように、マージンを取られてしまうわけである。

 

その点、鍼灸マッサージ師の場合、自費であれば患者から直接料金をもらえる。健康保険の適応には医師の同意書が必要だが、保険組合には直接請求できる。

 

そして保険組合によっては同意した医師や患者に対し、鍼灸マッサージ師が金品を与えた場合は施術料(療養費と言う)を支払わない、と規定するところもあり、同意した医師からマージンを取られることもない。

 

歯科技工は歯科医師の指示が必要なのに、独立開業権があるため労働者としての保護がされない、という面がある。

 

その点、訪問看護ステーションは医師の指示が必要だが、保険請求は自ら行える。なので医師から搾取される心配はない(はず)。また医師の指示が必要なために偽装請負の心配がない。

 

鍼灸マッサージ師は独立開業権を持ち、健康保険も指示書ではなく、同意書で行えるために偽装請負が横行するのである。

 

指示書と同意書の違いだが、同意書は患者に対して交付するものであり、どの鍼灸マッサージ師の施術を受けるかは患者が選べたりする。

本来、鍼灸マッサージの療養費は償還払い(料金を全額払った後、保険組合から7〜9割、払い戻しを受ける。)が原則だからである。

 

訪問看護の指示書は具体的な訪問看護ステーション宛に書かれているのではなかろうか?違っていたらごめんなさい。

 

そんなわけで歯科技工所が直接料金を請求できる、または保険組合から直接入金を受け取る仕組みが無いと状況が改善しないと思われる。

その上で、歯科技工所から歯科医師への金品提供を禁止すればいいような気がするのだが。

 

で、上記ダイアリーには

外国には「デンチュリスト」という歯科技工士の資格を設けている国が多い。
「デンチュリスト」の資格を持った歯科技工士は患者を診察して直接患者から注文を取れる。
だから歯科医師にマージンを払わずに労働に見合った報酬を受け取ることができるらしい。

 

と書かれている。

歯科医師が歯科技工士による作成料も請求するのは患者が歯科技工士と会う必要が無い、というのもある。

実際、義歯などの物だけを作るならそうだろう。

 

その点、デンチュリストは診察行為も行えるようで、これなら患者と接触するので料金請求も自分で行える。

 

で、歯科技工士法には

 

第二十条  歯科技工士は、その業務を行うに当つては、印象採得、咬合採得、試適、装着その他歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。

 

ちなみにこの条文の違反行為に対しては直接の罰則規定は存在せず、歯科医師法第17条(無免許歯科医業)、第29条(罰則)によって処罰されます。*1

 

よってデンチュリストは現行法規下では無理です。

 

歯科技工士法第20条、歯科医師法第17条違反の判例は結構あります。

そのたびに憲法22条(職業選択の自由)違反だ、と被告である歯科技工士は主張するのです。

 

大法廷判決はすでにあるのです。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51636

 

 思うに、印象採得、咬合採得、試適、嵌入が歯科医業に属することは、歯科医師法17条、歯科技工法20条の規定に照し明らかであるが、右施術は総義歯の作り換えに伴う場合であつても、同じく歯科医業の範囲に属するものと解するを相当とする。

けだし、施術者は右の場合であつても、患者の口腔を診察した上、施術の適否を判断し、患部に即応する適正な処置を施すことを必要とするものであり、その施術の如何によつては、右法条にいわゆる患者の保健衛生上危害を生ずるのおそれがないわけではないからである。

されば、歯科医師でない歯科技工士は歯科医師法17条、歯科技工法20条により右のような行為をしてはならないものであり、そしてこの制限は、事柄が右のような保健衛生上危害を生ずるのおそれなきを保し難いという理由に基いているのであるから、国民の保健衛生を保護するという公共の福祉のための当然の制限であり、これを以て職業の自由を保障する憲法22条に違反するものと解するを得ないのは勿論、同法13条の規定を誤つて解釈したものとも云い難い。

所論は、右に反する独自の見解に立脚するものであつて、採るを得ない。


 同第二点について。

 所論は単なる法令違反の主張を出でないものであつて、刑訴405条の上告理由に当らない。
 よつて、同408条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和34年7月8日

 

で、この判決の翌年、医業類似行為の禁止処罰には「人の健康に害を及ぼすおそれ」の立証が必要とする最高裁大法廷判決(業界では昭和35年判決という。)が出されます。

そして整体やカイロなどの無免許施術が放置され、ずんずん運動や祈祷師事件を招きます。

 

medicallaw.exblog.jp

togetter.com

 

この歯科医師法違反判決と昭和35年判決、両方の判決に関わった裁判官が11人です。

 

f:id:binbocchama:20170409205453j:plain

 

左側のHS式無熱高周波療法事件が昭和35年判決で、多数意見の裁判官が、医業類似行為の禁止処罰は「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」に限定すべき、という考えです。

 

その点、歯科医師法の判決は全員一致です。

 

 この違いは何か。

 

歯科医師法違反事件では印象採得など、歯科技工士法第20条に書かれた行為のみを判断すればよかった。

で、20条に書かれている行為は「患者の保健衛生上危害を生ずるのおそれがないわけではない」と判断できた。

 

その点、あはき法第12条に書かれている医業類似行為は具体的な療法や技法を定義していない

 

こうなると有益無害な施術行為まで罰するべきではない、と裁判官たちは考えていたと思われる。

 

そうなると無免許業者に許される行為は「保健衛生上危害を生ずるおそれ無き行為」と言えよう。

 

そしてそのように安全な行為であれば問診などは不要である。

 

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面

この歯科技工士による歯科医師法違反事件の最高裁判決の原判決である札幌高裁昭和55(う)195より

 

 三 控訴趣意中、原判決が、被告人が原判示のAほか25名に対して行つた義歯製作上必要な情報収集のための問いかけが歯科医行為である問診に当たるとして、右の問いかけに対して法17条を適用したのは、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の解釈適用の誤りがあるとの主張について

 

 所論にかんがみ、まず、一件記録及び証拠物を精査検討すると、原審において取り調べられた関係各証拠によれば、被告人は、歯科医師でないのに、業として、昭和53年7月24日ころから同年12月2日ころまでの間、被告人の肩書住居地に設けたF歯科技工所において、被告人に義歯を修理し、若しくは製作して入れてもらおうとし、又は金冠若しくは金パラジウム冠を製作して入れてもらおうとして同所を訪れた原判示のAほか25名の者に対し、その希望に応えるべく、まず、従前の義歯の装着状態等について応答を求めて質問を発し、それにひき続いて印象採得等をし、もつて、右の者らに対し、その希望に基づいて、修理し、又は製作した義歯を入れてやり、又は製作した金冠若しくは金パラジウム冠を入れてやつたことが認められ、右認定に反する証拠はないところ、右の事実関係によれば、被告人がした右の質問は、印象採得等を適切に行う目的のもとに印象採得等に先立つて行われたものであつて、それが印象採得等を適切に行うために必要な事項につき十分に行われないときは被質問者の保健衛生に危害を生ずるおそれを含む行為であるというべきである

従つて、右の質問が歯科医行為の一たる問診に当たることは明らかであるから、これと同旨の判断に基づき、被告人が原判示のAほか二五名の者に対し、歯科医行為である問診をしたと肯認し、これに対し、法17条、29条一項一号を適用した原判決の法令適用は正当であり、原判決には所論のような違法はない。

論旨は理由がない。

 

よって、施術の安全確保のために問診が必要な行為は(歯科)医行為である。

 

なお、この事件では

所論にかんがみ、一件記録及び証拠物を精査し、当審における事実取調べの結果をも合わせて検討すると、原審において取り調べられた関係各証拠によれば、被告人は、昭和32年3月に歯科技工士の免許を受けた者であるが、被告人は、技工法18条により歯科技工士が歯科医師の指示書によらなければ歯科技工を行うことができないと規定されており、また、技工法20条により歯科技工士が印象採得等を行つてはならないと規定されており、しかも、法17条により歯科医師でない者が歯科医業をしてはならないと規定されているため、歯科技工士が免許に基づく資格であり、本来、独立した専門家であるべき筈であるのに歯科医師の指示を得なければ全く仕事ができない立場に置かれていることに不満を覚え、法や技工法の歯科技工士に対する制約が不当であるとの自己の主張を広く訴えるため、法の違反となることを承知のうえで直接行動を取る決意、すなわち、歯科医師の診断及び指示を俟つことなく、義歯等の補てつ物の製作と装着を求める患者に自ら直接応待し、その希望を聞き、問診、視診、触診等の診察行為や印象採得等を行う決意を固め、これに基づき、被告人の肩書住居地に設けたF歯科技工所に、昭和53年4月ころ、印象採得等をするための医療器械であるいわゆるユニツト(治療台)を購入設置したほか、同年7月ころ、数回にわたり、新聞折込みの広告チラシ約1万7000枚を付近住民に配付し、「右の技工所において被告人が、義歯に悩みを持つ者に対し、その相談に乗つて義歯を製作し、これを入れる仕事をしている」旨を宣伝したうえ、原判示のとおり、業として、同月24日ころから同年12月2日ころまでの間、同所を訪れたAほか25名に対し、前後約89回にわたり、問診及び印象採得等をし、もつて、歯科医師でないのに歯科医業をしたことが認められ、右認定を左右すべき証拠はないところ、右の認定事実によれば、被告人の法17条、29条1項1号に違反する行為がそれに対して刑罰をもつて臨むべき実質的違法性を具備していることは明らかというべきであり、当審における事実取調べの結果によつても右判断は左右されない。

 (これで一文ですよ。長い。)

と書かれているので、まさに確信犯と言えよう。

 

この高裁判決にはもう一つ、重要な点がある。

 

 所論(筆者注:被告人の主張)は、第一に、印象採得等は、歯科技工士の本来的業務であるから、歯科技工士の免許を受けた被告人が印象採得等をすることは、憲法22条1項、13条で規定されている職業選択の自由、営業の自由の観点から許容されており、しかも印象採得等は、歯科技工士がこれを行つても保健衛生上有害な危険行為でないばかりか完壁な義歯を提供するうえでは、かえつて歯科技工士に印象採得等を委ねることが必要であり、かつ望ましいと言うべきであるから、憲法の右各条項にいう「公共の福祉」による制度も歯科技工士による印象採得等には及ばないところ、原判決は、法17条が印象採得等が歯科医師にのみ排他的に許される行為であると規定していると解釈し、かかる解釈により歯科技工士の営業の自由の範囲に属する印象採得等を歯科技工士の手から奪つたものであるから、原判決の右の法令適用は、憲法22条1項、13条に違反すると主張する

(略)

所論につき、更に付言すれば、歯科技工士は、歯科医師でないとしても、歯科衛生に関するある程度の教育と試験を受けてその免許を受ける者であるから、もちろん現行法令及びこれに基づく現在の歯科技工士養成制度のままでは許されないけれども、これらの法令及び制度の改正を通じて、印象採得等の一定範囲の歯科医行為につき、その全部とまではいかないとしても、その一部を、相当な条件の下に、歯科技工士に単独で行わせることとすることも立法論としては可能であると考えられる

しかし、そのことは、いずれにしても、国民の保健衛生の保持、向上を目的とする立法裁量に委ねられた事項と解すべきであり、かかる解釈に立ちつつ、ひるがえつて現行法を検討しても、現在の法17条、29条1項1号及び技工法20条の定立にあらわれている立法裁量の内容が憲法のいずれかの条項に違反していると疑うべき事由は見当たらないのである。

所論のうち、第一の主張に対し、原判決がいみじくも指摘するとおり、それが立法論の域を出ない独自の見解である、との判断を当裁判所も抱かざるを得ない所以である。

 

というわけで、歯科技工士がそれなりに歯科医療の知識を国から認められているとはいえ、印象採得などの歯科医行為は現行法規下ではできない、ということです。

 

最近は理学療法士などが整体師として独立開業するのも見かけます。

で、理学療法士などが特権を持つのは医師の指示の下や、病院、診療所の中だけです。

 

その条件から外れて行える行為は一般人と同じです。

つまり、医行為である問診や検査法などは行えないわけです。 

 技術や知識があると主張しても、理学療法士などに独立開業権は認められておりません。

立法裁量権に属する話となります。

 

 これは柔道整復師も同様で、柔道整復師に認められるのは捻挫、打撲などの急性外傷のみに対する施術行為ですから、慢性疾患に関して問診や検査法を行うのは許されないわけです。

ましてや疲労回復目的のマッサージをや。

*1:同様のことはあはき法第4条と医師法にも言える

内容証明と遺留分減殺請求の思ひ出

素人による内容証明に関していろいろTLに流れてきているので。

miurayoshitaka.hatenablog.com

 ちなみに私は内容証明を受けたのは1回、出したのは3回の法律の素人である。

 

普通の人は内容証明郵便を受け取るとまずビビるわけです。

この心理的効果をうたっている行政書士のサイトも多い*1

 

しかし内容証明って強制力のある命令や判決文ではないんですよ。

この文面の手紙をこの日に相手に届けましたよ、と郵便局が証明してくれるサービスにすぎない。

 

ただ、請求などの意思表示をいつしたのかを第三者によって証明されるので、意思表示の有無や時期を争われることが無くなる。

 

私が初めて内容証明郵便に触れたのはタイトルの遺留分減殺請求です。

 

まず遺留分減殺請求についての説明を。

あくまでも素人の解説だから鵜呑みにして行動した際の責任は取りませぬ。

 

亡くなった人(被相続人)が遺言書を残している場合、相続はその遺言どおりになるわけです。

しかし被相続人の配偶者、および子には遺留分といって、遺言書の内容に関わらず、法定相続分の半分を相続する権利があるんです*2

 

で、この権利は相続開始を知ってから1年以内に請求しなければ消滅します。

被相続人の死後、1年以内に遺留分減殺請求をした。」という事実を証明するために内容証明郵便を送る必要があるわけです。

 

この遺留分減殺請求の内容証明郵便を送ってきたのは腹違いの兄姉の代理人の弁護士だったのですが、送付時に私の母(当たり前だが、被相続人である父の妻)も亡くなっていたせいか、遺留分に関し、母を無視した取り分を請求してきた。

 

父は遺言書で母に全財産を相続、その母もすぐ亡くなったので母の一人息子である私が父の全財産を相続した状況である(だから私に対して遺留分減殺請求がされた)。

 

自分の知識と違う遺留分割合を弁護士が言ってくるから非常に困惑するのである。

内容証明が届いた日、たまたま司法書士に用事があったので相談すると彼らも困惑していた。

なので正しい遺留分割合を知らせる返事を内容証明で送る*3

今考えると放置でも良かったのだが、当時は裁判手続きに関する知識が無いための不安、および母の存在を無視されたことによる怒りもあった。

 

 

そして調停の呼び出しまでは放置でいいよ、と司法書士に言われる。

 

で、話を一旦内容証明に戻そう。

 

行政書士のサイトに書かれていた内容証明のテクニックとして、書類などの証拠がない状態で貸した金の返金を求める際、実際に貸した金額よりも高い金額を貸したことにして内容証明を出す、というのがあった。

 

こうすると借りた相手は実際に借りた金額は○○円だ!、と内容証明で返事してくることが多く、それを証拠にするらしい。

 

 

というわけで過剰な請求に対し、一人で内容証明で反論するのは止めておきましょう(借りた金は返すべきだが)。

 

こういうテクニックを知ると、遺留分を過剰に請求してきたのは何らかのテクニックか?と思い、警戒してしまう。

 

仮に内容証明の内容が正しく、司法書士に行く用事もなかったら相手の弁護士にホイホイ連絡して、いいように丸め込まれたと思うので結果的には私にとって良かったのだろう。

 

で、調停の呼び出しが来る。 

まず、送られてきた内容証明の間違いに関し、どういうつもりだ?、と調停委員に伝えたら、相手の弁護士は平謝りだったそうである。

時効が近かったのでちゃんと確認せずに出したとのこと。

 

で、相手の主張の書面ですが、私の大学の授業料や仕送りを特別受益として主張してくる。

それで遺産総額を増やして、遺留分を増やすという作戦です。

 

 1回目はこちらからは特に主張もせず、その書面を持って司法書士に相談する。

さすがに対応できない、ということで弁護士を紹介してもらう。

 

で、当方の弁護士いわく、「仕送りは特別受益じゃない」とのこと。

「親族間の扶養としての援助の範囲」ということらしい。

 

www.souzokulaw.jp

今は知識があるのでググれるが、当時は知識がなく、不安を解消するために検索してもこのような情報にはたどり着けなかった。

 

仕送りを特別受益から排除できただけでも弁護士費用の価値はあった。

で、学費だと特別受益の対象にはなるが、母が払っていた、ということで。

 

共稼ぎなので夫婦で半額ずつ負担しても良いのですが、学費と仕送りをそれぞれ全額払ってもおかしくないわけです。

 

というわけでこちらが弁護士をつけた後の調停では学費や仕送りは問題にならず。

 

しかし相手の弁護士のこのような対応は、こちらの無知につけこんで過剰な請求をしてくる悪徳弁護士だ、というイメージを作らせる。

 

弁護士というのは依頼者の利益のために働く者である、という点では正しいかもしれないが、相手に弁護士がついただけで引っ込めるような主張をするのは弁護士業界のマッチポンプという見方もあろう。

 

もっともそのような主張をしないと依頼者が納得しない、ということもあるかもしれないが。ましてや相手に弁護士がついてないときには。

 

 

で、調停成立。

結局法定相続と変わらない割合を相手に支払うことに。

 

しかも親父の残した遺産の殆どは住んでいる家だったから、こちらから現金持ち出しである。

 

生計の維持や介護などをしてくれてたならともかく、そんなことをしていない姉(親父が死んだときに初めて存在を知った)が、介護をしていた後妻や同居の息子(私だが)から金を奪っていけるこの遺留分減殺制度ってどうなのよ?

 

当時は法律はそんなもの、って考えだったのだが今にして思うと、遺言書を残した被相続人の財産権を侵害して違憲ではないか?と思うのである。

 

もっとも

弁「向こうはこれぐらいの額じゃないと納得出来ないらしい」

私「そんなに払ったら弁護士費用払えませんよ」

弁「いくらぐらい掛かると思っていた?」

私「これぐらい」

弁「そんなにかからないよ。弁護士費用まけるからこの額で合意できない?」

私「わかりました」

 

という状況だったので、当時、違憲の疑いを抱いたとしても最高裁まで争うこともできなかったが。

 

ちなみに遺留分制度の違憲性を問題にした判例は無いらしい。

遺留分制度の主旨は遺族の生活保障を目的としているそうだが、むしろこの制度のために、生計を一にしていた遺族が困窮に陥りそうになったんですが。

 

 と、こんな経験をしているので自分の子供が、親権を持たない子を持つ者と結婚したいと言ったら猛反対必至である。

 

うちの娘と結婚したいなら、君の子供に遺留分放棄をさせてからにしなさい、と。

裁判所|遺留分放棄の許可

もっとも未成年じゃ遺留分放棄はできないだろう。

 

私に子供はいないけどな。

 

法制審議会では配偶者に対する住宅の遺贈に関して、相続財産から外す案が出されているようです。

 

法制審、配偶者の居住用不動産の相続に優遇案を検討 - ゼイタックス

 

 

というわけで親権を持たない子を配偶者とされた皆様、お子さまの仕送りなどの生活費は配偶者に負担していただき、ご自身は学費を出しましょう。

 

どのような対策が必要か、あらかじめ弁護士に相談しておくといいかもしれません。

 

だいぶ内容証明から逸れました。

 

件のPTAに関しては

  • 加入する意思がない
  • 今後、勧誘するな

という内容だけで良いのではないか、と思います。

法解釈なんてわざわざ書かなくても良い。

 

事実関係は両刃の刃。

内容証明で書いた事実は、送り主が認めた事実という証拠になりますから。

 

というわけで素人が一人で内容証明を書く場合、意思表示だけに留めた方が良いと思います。

 

私が出した内容証明としては

「勝手に私の印鑑を使うな*4

というのがあります。

勝手に印鑑を使ったら有印私文書偽造で訴えるぞ、なんては書きません。

 

 

もう一通はそんなので内容証明を出したのか?

策に溺れた法律マニアめ!

と言われかねない黒歴史である。

目的は果たせたが。

 

今にして思えば普通の手紙(せいぜい書留)で十分だったのである。

 

というわけで時効や意思表示の有無が問題になる場合のみ内容証明を使うべきじゃないんだろうか?

それ以外なら弁護士に相談したほうがいい方法を提案してもらえるかもしれない。

 

そういや無免許業者などに対しては内容証明を送ったことはないなぁ。

せいぜい書留ぐらいである。

binbocchama.hatenablog.com

 

この場合は第三者に対してか。

*1:そんな心理的圧迫が必要な案件に関わること自体、非弁行為な気もするが

*2:尊属は3分の1らしい

*3:認定司法書士とは言え、家事案件で内容証明を書くのは非弁行為な気もする。書類作成だけだから大丈夫?

*4:実際はもっと柔らかい表現ですよ

裁判官に理系の知識は必要か(弁論主義との兼ね合い)

 

 

こんなところまで説明しなければいけないのか。

まあ、bitやByteの話は(少なくともおっさん世代の)義務教育の範囲内では無いし、高校でも習っていないが、2進数は高校で、対数あたりで習ったと思うんだが*1

 

司法試験予備試験には一般教養科目があり、その中に自然科学が含まれる。

どのくらいのレベルか、試験問題を見てないが国1だって一般教養試験は高卒レベルなので、その程度と思って良いと思う(いい加減でごめんなさい)。

 

もっとも裁判官に理系の知識を求められている方々は大学レベル以上の知識や常識を求められていると思う(上記の情報通信技術や研究の際の実験ノートの重要性など)。

 

その理解を裁判官に求めるのは弁論主義の観点からどうなのか?

とは思ったりする。

弁論主義というのは裁判において、当事者である原告、被告が主張してないことを裁判官が勝手に判断してはいけない、ということである。

 

 

弁論主義についてはググっていただくなり、wikipediaの記事でも読んでいただくとして、 弁論主義に反するとして批判されたのが枕営業判決である。

 

www.sankei.com

 

昨年4月14日に判決が言い渡されたが、判決理由に再び青島弁護士は目を見張った。「原告、被告双方ともに主張していない『枕営業』の論点を持ち出して判決が下された。完全な不意打ちだ」と怒る。

 

弁論主義による限界に挑戦したと、私が思っている判例名古屋地裁昭和58年3月31日判決、昭和54(ワ)2242(判例時報1081号104頁)である。

 

消費者庁の資料(PDF:245頁)の一番最後に紹介されている判例である。

 

公序良俗違反の契約無効による返還請求)

三 前記一、3で認定した被告の療術行為が医師法一七条で禁止されている医業の内容である医療行為に当たるとは認められず、またあん摩師・は り師・きゆう師及び柔道整復師法一二条で禁止されている医業類似行為に当たるものとも認められない。

 そして前認定のごとき被告の加持祈とうはそれ自体が公序良俗に反するということができないのはもちろんである。

しかしそれが人の困窮などに乗じて著しく不相当な財産的利益の供与と 結合し、この結果当該具体的事情の下において、右利益を収受させることが社会通念上正当視され得る範囲を超えていると認められる場合には、その超えた部分については公序良俗に反し無効となるものと解すべきである。

本件においては前記一で認定したように、原告をはじめその家族は、医師からも見放された春子の難聴を治すため、いわば藁をも掴みたい心境にあり、これに対し被告は過去に難病を治癒させた例のあることを引き合いに出し、春子の難聴も治癒できる旨言明して、原告を契約締結に誘引し、 そして昭和五一年一一月二六日から昭和五四年三月三日まで、この間春子の難聴はいっこうに回復の兆しがなかったのに、再三治ると繰り返し、合計七三七回にわたり春子を殆ど毎日のように通わせて加持祈とうを継続し、一回金八、〇〇〇円による 合計金五八九万六、〇〇〇円という高額な料金を取得したものであって、以上のような事情の下では、被告に対し右料金全額の利得をそのまま認めるのは著しく不相当であり、社会一般の秩序に照らし是認できる範囲を超えているものといわざるを得ない。しかして前記一認定のように、被告が属している善導会では一回の料金が金二、 〇〇〇円と決められていること、また被告は最初春子の難聴を一年のうちに治す旨言明し、しかも前記のように高額な料金を取得し続けてきたのであって、かかる点からすると、療術開始後相当期間経過してもなお症状に回復の兆しがなければ、原告に対しその事情を通知し、療術を続けることの再考を促し、損失の不当な拡大を防止すべきであったと認められること、 その他本件にあらわれた諸般の事情を考慮すると、被告が原告から支払を受けた料金のうち、昭和五一年一一月二六日から昭和五二年一二月までの間合計三五四回について一回当り金二、〇〇〇円による合計金七〇万八、 〇〇〇円については被告の取得を是認できないわけではないが、その余の金五一八万八、〇〇〇円について被告の取得を認めるのは公序良俗に反し、 契約はその限度で無効である。

 (太字は筆者による)

 

ちなみに被告の療術行為というのは

(一)バイブレーターによるマッサージ。
患者の着衣の上にタオルを置き、その上から約一五分間、市販のバイブレーターを用いて身体をマッサージする。
 
(二)○○○温灸。
患者の身体の上にタオルと八つ折りにした市販の紙を重ねて置き、その上から○○○○○会本部特製の円筒形のもぐさの固まり(直径約一・五センチ、長さ約一五センチ)に点火した部分で軽く圧して皮ふを温める。全身数十箇所のつぼに約一〇分間施す。
 
(三)○○○オリーブ油を脱脂綿にしみこませて耳に入れる。
 
(四)吸引。
直径約一・八センチ、長さ約四・五センチのガラス製の円筒形の器具を用いて、患者の首の皮ふを押圧して引っ張る。一〇回位施す。
 
(五)抜き取り封じ。
市販のプラスチック製の色付きコップにざらめ砂糖を入れ、その上に人形を印刷してある形を細かく折って入れ、コップに蓋をする。その蓋の上に善導会本部会長から買受けた紙(悪霊を押さえる意味の梵字が印刷されている。)を約一〇分間呪文を唱えながら糊ではりつける。
 
(六)延命封じ。
鬼を追い払う意味の文字や六体地蔵の図案が書いてある紙を患者の身体に当て、これを二重に封筒に入れて川に流す。

 

と判決文には書いてあります。

(5),(6)は加持祈祷の類としても1〜4はマッサージや灸、医業類似行為じゃないか、って気もします。
 
実際、(2)と同様の温灸に関しては医業類似行為(あはき法12条違反)として有罪となった判例があります(名古屋高裁昭和30(う)768)。
 
内容としては新聞紙片を八つ折りにしたものを患部に当て、その上から「ほう」の木の丸棒の一端に火をつけて抑える、という行為でしたので、この有罪判例に従えば(2)も医業類似行為に該当するはずです。
 
でも医業類似行為では無いと判示した。
なぜか?
 
原告が無免許医行為や医業類似行為である、という主張をしなかったから。
当然、被告もその該当性については何ら主張していなかった。
 
原告は
1,治癒、治療の債務不履行
2,治療費返還契約に基づく返金
3,公序良俗違反(暴利行為)
 
を主張し、私が言っているような、
「無免許医行為や医業類似行為は違法行為であり、その施術契約は公序良俗に反するから返金を求める」
という主張を原告はしていないのである。
 
 
そのため裁判官が勝手に医業類似行為と判断はできない。
裁判官が勝手に医業類似行為と判断し、全額返金を命じたら弁論主義に反すると控訴されて、再び地裁で審理のやり直しになると思われる。
 
要は三鷹ストーカー殺人事件のようになりかねないのである*2
 
ちなみにこの判決日は昭和58年3月31日である。
それまでに薬事法による無認可医薬品や医療機器の製造販売に対する禁止処罰に関して、「人の健康に害を及ぼすおそれ」の判断は不要である旨の最高裁判決はすでにあった*3

 

裁判官は一方に有利なアドバイスをすることは許されないわけで、判決文にこうやって医行為や医業類似行為ではない、と書くことだけが裁判官にできた、原告に対する手助けなのだろう。

 

さすがに主張もしていない医業類似行為について判決文に書かれたら原告代理人の弁護士は調べるだろう。

 

この事件、控訴はされたのだが、どちらが、あるいは両方控訴したのか不明であり、控訴審がどのような結果になっているかも不明である。*4

 

まあ、和解になったと思われる。

あはき法12条違反と薬事法判例を出されたら、施術行為そのものが違法と判断される可能性は高いと思うだろう。

 

被告としては争って違法施術と判断され、他の患者からも返金訴訟を起こされるよりは、この患者に全額返金して、口外不可の和解に持ち込んだほうが得策である。

 

 と、だいぶ話がそれましたが、わかりやすい主張もせずに、裁判官に理系の知識を求めるのは弁論主義の観点からも問題なわけです。

ちゃんとわかりやすく主張してくれる弁護士を選びましょう、ということです。

 

また裁判というのは相手がいることを忘れてはいけません。

科学的な常識について争点になれば、主張を見て判断せざるを得ない。

それについて審理をせず、一方の言い分のみを認めては公平性に疑問を呈されても仕方ないわけで。

 

 その点、特許無効審判なんてのは特許保有者とその特許が無効と主張する人、そして審判官は特許庁で審査官をやっていた人、つまりは国1技官なわけで、全員が理系の常識を共有できているわけです。

 

これは通常の司法ルートとは異なり、審判に不服があれば知財高裁で争い、司法裁判所による判断は最高裁を含め、2回だけです。

 

このように、実質の一審を通常の司法ルート以外に作ることも可能です。

 

しかし刑事裁判でも、証拠調べで自然科学上の問題が出てくることもあるわけで、裁判官に理系の知識がほしい案件を、特別な裁判所や審判にまとめるのは現実的ではないと思います。

*1:ちなみに私は16進数ではまだ20代である。

*2:これはリベンジポルノについて起訴していないのに量刑でそれを考慮したのが訴訟手続き上、違法であった。

*3:最一小昭和53(あ)1113,最三小昭和56(あ)58

*4:判例データベースおよび消費者取引判例百選の解説記事(ジュリスト別冊135号124頁)でも不明。

日本カイロプラクティックドクター専門学院札幌校に関する北大医学部・歯学部への投書の効果

日本カイロプラクティックドクター専門学院札幌校に関する記事はこちら

binbocchama.hatenablog.com


こちらのページ(削除済み)に北大歯学部の歯科医師が講師として紹介されていたんですよね。

http://www.jcdc-sapporo.jp/school/shisetsu.php

(削除済み)

f:id:binbocchama:20170203171400j:plain

 

まあ、こちらの方にはまだ北大医学部・歯学部の名前とともに講師名が書かれていますが。

カイロの資格を取るなら 日本カイロプラクティックドクター専門学院 | 整体 転職 | 講師紹介


というわけで北大の医学部、歯学部に

  • 無免許医行為や医業類似行為を教えている学校で、貴学に所属すると思われる医師、歯科医師が講師をしてる。
  • 無免許医行為に関する判例
  • 講義内容によっては医師法違反の幇助、あるいは医師法歯科医師法第7条第2項*1の「(歯科)医師としての品位を損するような行為」である。
  • 厚生労働大臣認可と書いてあるが、協同組合の認可であって、施術の安全性、効果を認めたものではない。

というのを匿名の簡易書留*2で伝える。

 

で、久々に学院のサイトを見たら写真のページは削除されていたわけです。

 

他に「厚生労働大臣認可」と書かれていたのが

f:id:binbocchama:20161116232107j:plain

「厚生収健政第572号」と書かれていたり

f:id:binbocchama:20170203172201j:plain

施術の流れで「問診、視診、触診」などと書かれていたのが

f:id:binbocchama:20161117013738j:plain

「カウンセリング」や「見て、触って」などとされたり。

f:id:binbocchama:20170203173349j:plain

 

北大の名前だけだと卒業した程度の意味なので医師・歯科医師個人の責任かもしれません。

ただし、北大歯学部の具体的な研究室の名前を出すことはダメ、という判断をしたようです。

 

無免許業者が善意*3の第三者の協力を得ている場合、第三者に働きかけるのが有効です。

*1:第四条  次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
一  心身の障害により歯科医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二  麻薬、大麻又はあへんの中毒者
三  罰金以上の刑に処せられた者
四  前号に該当する者を除くほか、医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者
第七条  歯科医師が、第三条に該当するときは、厚生労働大臣は、その免許を取り消す。
2  歯科医師が第四条各号のいずれかに該当し、又は歯科医師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
一  戒告
二  三年以内の歯科医業の停止
三  免許の取消し

*2:郵便局では実名で書留票は書く。

*3:法律用語ではなく、普通の意味で。違法行為であることを知らない、という点では法律用語の「善意」でもいいかもしれないが。

あはき法19条の存廃をめぐる立場と利益

晴眼者向けのあん摩マッサージ指圧師養成校の不認可を巡って大阪、東京、仙台の各地裁で国を訴えた裁判が進行中なのは以前の記事のも書いた通りです。

binbocchama.hatenablog.com

 

では19条を違憲、あるいは廃止すべきという立場の方々、および合憲であり存続すべきであるという立場の方々と、19条の存廃がそれぞれの団体の利害などに与える影響を考えてみましょう。

 

違憲、合憲は純粋に法律論でありますし、国会があはき法第19条を廃止しても立法裁量権の範囲内のことですので、廃止か存続だけに別けて考えましょう。

 

それぞれの立場の人々の意見に反論もありますが、今回は紹介するだけにしておきます。

 

19条廃止派

学校法人

まず原告のような晴眼者向けのあん摩師養成校を希望する学校法人などです。
福岡における柔道整復師養成校の裁判で国が負けたために、あん摩マッサージ指圧師以外の医療系国家資格の養成校は基準を満たせば認可されることになりました。

 

で、柔整や鍼灸のみの学科の学校が増えたのですが、定員割れを起こしている学校が多いそうです。

 

自分の判断で健康保険の適応を決められる柔道整復師はともかく、鍼灸(のみ)師は保健の適応は医師の同意が必要であり、利用者から見れば鍼治療に痛い、怖いというイメージがあり、また鍼灸師の貧困も明らかになっております。

 

【PDF】東洋療法学校協会「あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師免許取得者の進路状況アンケート調査」(平成23年10月調査)

15頁目、鍼灸のみ施術所では10万円未満の月間所得が49.6%である。平均は14.7万円
あはき施術所では平均22.3万円、あん摩師のみ施術所では平均21.1万円

鍼灸師養成校の定員充足率に関するデータは把握しておりませんが、このデータを見て、わざわざ3年間の時間と学費を費やして鍼灸師になろうと考える人がどれだけいるか。

そんなわけで学校の経営的にはあん摩師養成過程を作りたいところです。

 

「弱者利権」「逆差別」と批判している方々

主に無免許業者や、あん摩マッサージ指圧師の免許を持たない柔道整復師の意見として見かけます。

単に弱者利権としてのラベリングとして19条を利用しているに過ぎません。


あん摩師養成校の認可に関しては以前にモード学園が申請する動きがあり、その際に国を訴えるかどうか話題になったのですが、そのときに、国政選挙に立候補した経験のある上田たかゆき氏(柔道整復師)が書いたブログ記事です。

gogoueda.exblog.jp

 

国が敗訴する可能性が高いと私は見ている。そうなった場合、あん摩マッサージ科についても約90校が手を上げ、雨後の筍の如く養成施設が増えることとなる。
そうなった場合、将来もっとも大打撃を被るのは視覚障害者のマッサージ師というよりはむしろ「柔道整復師」であると私は思うが、皆さんはどのように考えますか?

 

そんなわけで柔道整復師や無免許業者などの、非あん摩師は本音では19条廃止は望んでいない。

 

指圧の領域を拡大としたい人たち

芦野純夫氏がその先鋒ですね。
19条により晴眼あん摩師養成校を増やせないから多様な手技を教えられず、そのために無免許指圧が放置される状況になっている、というご意見です。*1

 

あん摩マッサージ指圧師の政治力を強化したい人々

「数は力なり」ということであん摩師の数を増やし、政治力を強化して無免許対策や療養費に関して有利にしていきたい、ということです。

 

規制緩和や自由競争が正義だと思っている人々

説明する必要はないでしょう。

 

あん摩師を使っている・雇っている施術所

あん摩師養成校が増えれば採用が楽になります。
また盲人あん摩師を雇っていれば助成金が増える可能性もあります。

逆に競争が激しくなり、利益が減る可能性もありますが、自信家である経営者にとっては些細な問題でしょう。

 

他の廃止論者の影響から、よくわからずに廃止すべきだと思っている人

わかりやすいフレーズ・説明でわかっていないのにその雰囲気に流されるのは小泉郵政解散Brexitでも見受けられた光景です。

 


19条存続派

盲人あん摩師、日本盲人会連合

説明は不要でしょう。

 

既存のあん摩師養成校

これも養成校が自由化されると競争に晒されますから。

 

既存の晴眼あん摩師

私も含みますが、過当競争は望みません。

 

厚生労働省財務省および健康保険組合

訪問マッサージに対する療養費が伸びています。
これで晴眼あん摩師養成校が自由化された場合、さらに請求が増えることが予想できます。

また盲人あん摩師が稼げなくなれば生活保護に頼らざるを得なくなり、財政上も望ましくありません。


一番最後以外、弱者や既得権益者の主張にしか見えない(笑)

なるほど、19条廃止派の方に自由主義的な正義があるように見えても仕方ありませんね。

 

それぞれの立場や意見の方に対する反論が次回以降に。

*1:公益社団法人 東京都はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧師会「あはき法解釈の昏迷を解きほぐす 鍼灸は医業か医業類似行為か」47頁

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律附則第19条の審議過程

あん摩マッサージ指圧師の養成校の設立認可が認められなかったために、学校法人が国を訴えている裁判が進行中です。

 

mainichi.jp

 

大阪、東京、仙台のそれぞれの地裁で裁判が行われております。

前回の記事で紹介した判決が出たため、はり師・きゅう師や柔道整復師の養成校は基準を満たせば設立が認可されるようになっておりますが、あん摩マッサージ指圧師の養成校に関しては視覚障害者のあん摩マッサージ指圧師の生計に配慮し、認可を拒否できる旨、法律に書いてあったりします。

 

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律附則第19条

第十九条  当分の間、文部科学大臣又は厚生労働大臣は、あん摩マツサージ指圧師の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合、あん摩マツサージ指圧師に係る学校又は養成施設において教育し、又は養成している生徒の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合その他の事情を勘案して、視覚障害者であるあん摩マツサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認めるときは、あん摩マツサージ指圧師に係る学校又は養成施設で視覚障害者以外の者を教育し、又は養成するものについての第二条第一項の認定又はその生徒の定員の増加についての同条第三項の承認をしないことができる。

○2  文部科学大臣又は厚生労働大臣は、前項の規定により認定又は承認をしない処分をしようとするときは、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない。 

 

で、原告の学校側は「当分の間」は過ぎ去り、この規定はあはき法が施行されたときに届け出をした医業類似行為業者が生涯にわたって業ができるようになったこととのバーターだった、と主張しているわけです。

 

これだけの説明だとわかりませんね。

私が散々言っているように整体などの無免許施術、つまり医業類似行為はあはき法第12条によって禁止されています。

ただこの禁止規定は戦後にできたものであり、それまで療術として医業類似行為を行っていた人々も大勢いたのです。

 

なのでそれまで医業類似行為を生業にしていた人は保健所に届け出ることで昭和30年末までの営業は認めましょうとなっていた。

 

その後、何度か延長しているのですが昭和39年の改正で一代限りで死ぬまで届け出をしていた医業類似行為の営業が認められることになります。

第十二条  何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。ただし、柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法 (昭和四十五年法律第十九号)の定めるところによる。

 

第十二条の二  この法律の公布の際引き続き三箇月以上第一条に掲げるもの以外の医業類似行為を業としていた者であつて、あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法 等の一部を改正する法律(昭和三十九年法律第百二十号。以下一部改正法律という。)による改正前の第十九条第一項 の規定による届出をしていたものは、前条の規定にかかわらず、当該医業類似行為を業とすることができる。ただし、その者が第一条に規定する免許(柔道整復師の免許を含む。)を有する場合は、この限りでない。

では届け出医業類似行為業者の期間制限が無くなり、晴眼向けのあん摩師養成校の規制条件が設けられた昭和39年の法改正の議事録を見てみましょう。

 

会議録一覧 | 日本法令索引

 

結論から言うと期間制限禁止と19条のバーターは確認できません。

なので被告である国も答弁書で「不知」と答えています。

 

そんなわけであはき法に関する議事録をコピペ。

この記事本文はこれで終わりですので、業界関係者の方は以下の議事録は時間があるときに読んでみて下さい。

強調などは筆者による。

衆議院会議録情報 第046回国会 社会労働委員会 第53号

 

○田口委員長

 次に、あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法等の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。
 小沢辰男君より発言を求められておりますので、これを許します。小沢辰男君。

 

○小沢(辰)委員

 本件につきましては、自由民主党日本社会党及び民主社会党三党委員の協議に基づく試案がございます。三党を代表いたしまして、私から御説明申し上げます。試案は各委員のお手元に配付いたしてあるとおりでございますけれども、簡単にその趣旨を申し上げたいと思います。

 あんま、マッサージ、指圧、はり、きゅう及び柔道整復以外のいわゆる医業類似の行為につきましては、この法律によりまして何人もこれを業としてはならないことになっておりますが、昭和二十二年十二月二十日同法公布の際、引き続き三カ月以上あんま、マッサージ、はり、きゅう及び柔道整復以外の医業類似行為を業としていた者で、同法施行の日から三カ月以内に一定の事項を届け出た者につきましては、なお昭和三十九年十二月三十一日まで、すなわち本年の暮れまでこれを業とすることができるようになっているわけでございます。しかるに、これらの届け出た業者に対する経過措置が本年末をもって終了いたしますので、これらの業者の生活問題等を十分考慮するとともに、最近の情勢にかんがみまして所要の改正を行なわんとするものであります。

 要綱にございますように、まず第一点は、その業務を行なうことができる期間の制限を撤廃することを原則といたしますとともに、指圧を業とする者につきましては、この間になお一定期間を限り特例試験を実施することにより、あとで述べるあん摩、マッサージ指圧師への転換の道を講ずることとしたことであります。

 第二点は、あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法公布の際、引き続き三カ月以上あんま、マッサージ、はり、きゅう、柔道整復以外の医業類似行為を業としていた者のうちには、同法施行当時、真にやむを得ない事由によりまして、業務継続のための届け出をすることができなかったと認められる者があるのでありますが、これらの者もこの際救済をしてやりませんとやはり公平を失しますので、これらの者のうち、この法律の施行の日から六カ月以内に届け出た者に限りまして、昭和二十三年当時届け出た者と同様に、当該業務を行なうことができることとしているわけでございます。ただ、この点は、いろいろな方々が届け出漏れだ、漏れだと言って広がるというような懸念も一部にございますので、特に厳密、厳格に運営する方針でございまして、一定の基準を行政庁でつくってもらいまして、その基準に従って都道府県知事が受理をする。しかもその受理にあたりましては、地方審議会に必ず諮問をするという措置をとっていただきまして、特に乱用されないように配慮をしながら実施をいたしたい、かように考えておるわけでございます。この点は、特に御了承をお願いしておきたい点でございます。また、この間に一定の期間を限り特例試験を実施いたす規定がございますが、そういうことによりまして、あん摩マッサージ指圧師への転換の道をも講ずるようにしてございます。

 第三点は、昭和三十年に指圧をあんま業務に含めるとともに、従来届け出により、指圧を業としていた者については特例試験を実施することといたしまして、容易にあん摩師へ転換する道を講ずる措置がとられたのでありますが、それにもかかわらず、これらの者のうちには、あん摩師の名称を用いて指圧業務を行なうことを好まない傾向が強く、あん摩師免許を取得した者が少ない実情であります。この点にかんがみまして、あん摩師の名称を、あん摩マッサージ指圧師に改めるということにいたしております。

 第四点は、あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅう、柔道整復等中央審議会の権限といたしまして、あんま、マッサージ、指圧、はり、きゅう及び柔道整復以外の医業類似行為について調査審議することを加えまして、厚生大臣は、この調査審議の結果を参酌して必要な措置を講じなければならない、こういうふうにいたしたわけでございます。

 それから第五点は、あん摩、マッサージ指圧師につきましては、その業務内容等について検討する必要があります。厚生大臣は、あんま、マッサージ、指圧についての業務内容及び業務を行なうことができる者の免許資格等の事項に関しまして、すみやかにあん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅう、柔道整復等中央審議会に諮問をして、その審議の結果を参酌して、必要な措置を講じなければならないということにいたしたわけでございます。御承知のとおり、本院におきましても何回も、この法律の審議にあたりまして、いわゆるあんま、マッサージ等の盲人の方々からいろいろの要望があり、附帯決議をつけまして、いろいろな改善事項について政府の善処を要望してきたわけでございますが、今度のこの法律の改正を機にしまして、身分及び業務等につきまして、さらに新しい考え方で法律改正を望む声が実は起こったわけでございます。しかしながら、この点につきましては、身分、業務を分ける必要があるという陳情があったり、あるいはまた、その意見の開陳があったりいたしましたけれども、他に影響するいろいろなめんどうな面もたくさん出てまいります。なお検討を要することがたくさんございますので、特にこういう要望についてできるだけ積極的に、前向きに検討することといたしまして、とりあえずは、今回の改正につきまして、そのままあんま、マッサージ、指圧の業務内容及び免許資格等の事項に関しまして、ただいま申し上げましたように中央審議会に諮問をする。そうしてその結果を参酌して、厚生大臣は必要な立法措置をすみやかに講ずるようにしてもらおう、こういう趣旨で実はこの規定を入れたわけでございますので、特にこの点は申し添えておきたいと思います。

 第六の改正点は、あんま業は、盲人にとって古来最も適当なる職業とされてきたところでございます。近時交通難等により、晴眼者のため、その職域を圧迫される傾向が著しい状況にかんがみ、あんま業における盲人優先の措置を講ずるために、当分の間、文部大臣または厚生大臣は、あんま師、マッサージ師、指圧師のうちに晴眼者の占める割合、あん摩マッサージ指圧師の学校または養成施設の生徒のうちに晴眼者の占める割合、その他の事情を勘案しまして、盲人のあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにする必要があると認めるときは、晴眼のあん摩マッサージ指圧師の学校または養成施設の設置の認定または生徒の定員の増加の承認というようなことについて、盲人の方々の、ただいま申し上げましたような生計の維持が著しく困難を来たさないよう、あるいは盲人優先の趣旨が通るような、ひとつそういう観点から、場合によって、養成施設の設置や生徒の定員の増加ということについて、これを承認しないことができるというような規定を新たに入れたわけでございます。

 以上六点、おもなる点を申し上げましたが、これが法律案の趣旨の概要でございます。

 以上で試案の説明を終わりたいと思います。

 この際、三党を代表しまして動議を提出します。
 お手元に配付してあります試案を成案とし、これを本委員会提出の法律案と決定されんことを望みたいと思います。
 委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○田口委員長
 ただいまの小沢辰男君、小林進君及び吉川兼光君提出の動議に対し発言があればこれを許します。
    ―――――――――――――
○田口委員長
 別に御発言もないようでありますので、直ちに採決いたします。
 小沢辰男君、小林進君及び吉川兼光君提出の動議のごとく、お手もとに配付した試案を成案とし、これを本委員会提出の法律案とするに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕

○田口委員長
 起立総員。よって、そのように決しました。
 なお、各法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○田口委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。
 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとして、これにて散会いたします。
   午後四時十八分散会

 

衆議院会議録情報 第046回国会 本会議 第35号

 

○田口長治郎君

 ただいま議題となりました諸法案について申し上げます。
(略)
最後に、あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 いわゆる医業類似行為につきましては、本法により、何人もこれを業としてはならないこととなっておるのでありますが、昭和二十二年十二月二十日の本法公布の際、引き続き三カ月以上業としていた者で、同法施行の日から三カ月以内に届け出た者については、昭和三十九年十二月三十一日までこれを業とすることができることとなっております。しかるに、これらの届け出た業者に対する経過措置が本年末をもって終了することとなっておりますので、その生活問題等を十分考慮するとともに、最近の情勢にかんがみ、所要の改正を行なわんとするものであります。

 そのおもなる内容は、
 まず第一に、さきに申し述べました猶予期間の制限を原則として撤廃するとともに、指圧を業とする者については、特例試験を実施して、あん摩マッサージ指圧師への転換の道をも講ずるようにしたことであります。

 第二に、本法が公布された際、引き続き三カ月以上医業類似行為を業としていた者のうちには、本法施行当時、真にやむを得ない理由により業務継続のための届け出をすることができなかったと認められる者もありますので、これらの者のうち、この法律の施行の日から六カ月以内に届け出た者に限り、昭和二十三年当時届け出た者と同様に当該業務を行なうことができることとすることとしておるのでありまするが、この点は、特に厳格に運営する方針であり、知事はその受理にあたり地方審議会にはかることとし、また、特例試験を実施して、あん摩マッサージ指圧師への転換の道をも講ずるようにしたことであります。

 第三に、あん摩師の名称を用いて指圧業務を行なうことを好まない傾向が強いのにかんがみまして、あん摩師の名称をあん摩マッサージ指圧師に改めることとしたことであります。

 第四に、あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゆう、柔道整復等中央審議会の権限として、医業類似行為について調査、審議することを加え、厚生大臣はその結果を参酌して必要な措置を講じなければならないこととしたことであります。

 第五に、厚生大臣は、あん摩、マヅサージ、指圧についての業務内容及び免許資格等の事項に関し、すみやかにあん摩、マッサージ、指圧、はり、きゆう、柔道整復等中央審議会に諮問し、その結果を参酌して必要なる措置を講じなければならないこととしたことであります。

 第六に、盲人のあん摩業は近時晴眼者のため圧迫される傾向が著しいので、当分の間、文部大臣または厚生大臣は、学校または養成施設の生徒のうちに晴眼者の占める割合その他の事情を勘案して、盲人のあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため、必要があると認めるときは、晴眼者のあん摩マッサージ指圧師の学校または養成施設の設置の認定または生徒の定員の増加の承認をしないことができるようにしたことであります。

 以上が四法案の趣旨の概要でございまするが、何とぞ慎重に御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)

 

参議院会議録情報 第046回国会 社会労働委員会 第33号

 

衆議院議員小沢辰男君)

 ただいま議題となりました四法につきまして、その提案の理由を、衆議院社会労働委員会を代表いたしまして御説明申し上げたいと思います。
(略)
 次に、あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法等の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。

 あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅう及び柔道整復以外の医業類似行為については、あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法により、何人もこれを業としてはならないこととなっておりますが、昭和二十二年十二月二十日同法公布の際、引き続き三カ月以上あん摩、マッサージ、はり、きゅう及び柔道整復以外の医業類似行為を業としていた者で、同法施行の日から三カ月以内に一定の事項を届け出たものについては、なお、昭和三十九年十二月三十一日までこれを業とすることができることとなっております。

 しかるに、これらの届け出た業者に対する経過措置が本年末をもって終了することとなっておりますので、これらの業者の生活問題等を充分考慮するとともに、最近の情勢にかんがみ、所要の改正を行なわんとするものであります。以下そのおもなる内容を申し上げますと、まず第一に、さきに申し述べました本年末まで、その業務を行なうことができる期間の制限を撤廃することといたしますとともに、指圧を業とする者については、この間になお一定期間を限り特例試験を実施することにより、後に述べるあん摩、マッサージ、指圧師への転換の道をも講ずるようにしたことであります。

 第二に、あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法公布の際、引き続き三カ月以上あん摩、マッサージ、はり、きゅう、柔道整復以外の医業類似行為を業としていた者のうちには、同法施行当時真にやむを得ない理由により業務継続のための届け出でをすることができなかったと認められるものもありますので、これらの者のうち、この法律施行の日から六カ月以内に届け出た者に限り、昭和二十三年当時届け出た者と同様に当該業務を行なうことができることにしておりますが、この点は、特に厳密、厳格に運営する方針であり、一定の基準を行政庁でつくってもらい、その基準に従って都道府県知事が受理し、しかも、その受理にあたりましては、地方審議会に必ず諮問をするという措置をとる等、特に乱用にわたらないよう配慮し、実施することと考えております。また、この間に一定期間を限り、特例試験を実施することにより、あん摩、マッサージ、指圧師への転換の途をも講ずるようにしたことであります。

 第三に、昭和三十年に、指圧をあん摩業務に含めるとともに、従来届け出でにより指圧を業としていた者については、特例試験を実施することとして、容易にあん摩師へ転換する途を講ずる措置がとられたのでありますが、これにもかかわらず、これらの者のうちには、あん摩師の名称を用いて指圧業務を行なうことを好まない傾向が強く、あん摩師免許を取得した者が少ない実情にかんがみまして、あん摩師の名称をあん摩マッサージ指圧師に改めるようにしたことであります。

 第四に、あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅう、柔道整復等中央審議会の権限として、あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅう及び柔道整復以外の医業類似行為について調査審議することを加え、厚生大臣は、この調査審議の結果を参酌して必要な措置を講じなければならないようにしたことであります。

 第五に、あん摩、マッサージ、指圧につきましては、いろいろ要望があり、特に身分及び業務等につきましては新らしい考え方についての要望がありましたが、いまだ、いろいろ検討を要する点がたくさんありますので厚生大臣は、あん摩、マッサージ、指圧についての業務内容及び業務を行なうことのできる者の免許資格等の事項に関し、あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅう柔道整復等中央審議会に諮問いたし、その審議の結果を参酌して必要な立法措置をすみやかに講じなければならないことといたしたことであります。

 第六に、あん摩業は盲人にとって古来策も適当な職業とされてきたところでありますが、近時、交通難等により、晴眼者のためその職域を圧迫される傾向が著しい状況にかんがみ、あん摩業における盲人優先措置を講ずるため、当分の間、文部大臣または厚生大臣は、あん摩マッサージ指圧師のうちに晴眼者の占める割り合い、あんまマッサージ指圧師の学校または養成施設の生徒のうちに晴眼者の占める割合その他の事情を勘案して、盲人のあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認めるときは、晴眼のあん摩マッサージ指圧師の学校または養成施設の設置の認定または生徒の定員の増加の承認をしないことができるようにしたことであります。

 以上がこの法律案の趣旨の概要でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

 

参議院会議録情報 第046回国会 社会労働委員会 第34号


○委員長(藤田藤太郎君)
 あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案に対し、質疑のある方は、順次御発言を願います。

 

藤原道子
 私は、厚生当局に対して若干御質問をいたしたいと思います。
 本法は、いろいろいきさつもございまして、議員立法でございますので、私もここで反対するものではございませんが、従来、日本で盲人問題が比較的解決してまいりましたのは、あんま、はり、きゅうというようなそうした職種があったからだとさえ私は考えております。そうい5点から参りまして、現在無免許あんまというものが相当横行いたしておりますが、これに対してどういう態度で取り締まりに臨んでこられたか。


私どもが全国各地で世話になるときが多々ございますけれども、こういう場合でも、相当免許のない者が派遣されてきております。どんなに法をきびしくつくりましても、この取り締まりがなおざりになっていては何にもならないと思うのです。ことに旅館その他が高層化してまいりますと、ただでさえ晴眼者のほうが有利なんです。盲人は非常にその点においてすでに不利な状態に置かれております。さらにその上に無免許あんまが横行するというようなことになりますと、盲人に対して非常な私は不利益になると思いますが その取り締まり等に対してどういうふうにやっておいでになるのか、今後またどうおやりになるお考えであるか。私はこの点については再々委員会で御質問申し上げておりますが、何ら成果があがっていないのです。どういうお覚悟であるかを私は伺いたいと思います。

 

○政府委員(尾崎嘉篤君)

 あんまさんのうちの盲人の方に対しましてのできるだけ優遇する措置といたしまして、今回の改正案の第十九条で、働いておられます方々のうちの晴眼者と視覚障害の方々の比率、また、養成所の生徒の数でそういうような比率があまりにバランスを失してくるときには養成数を制限するというふうな措置がとられるようにこの案の中にできておりますが、それと同時に、この無免許の方々の取り締まりをしっかりせねばならないという御指摘に対しまして、われわれといたしましても、法を執行いたします立場から、数次にわたりまして府県衛生当局に取り締まりの励行を指示しておるところでありまして、たとえば文書通達によりまして、三十七年十二月二十七日に「無免許あん摩の取締りについて」というふうな通牒を出し、また、三十八年一月七日には、いろいろこの取り扱いの解釈につきまして局長通牒を出しておる。また、そのほか衛生部長会議、医務課長会議というふうなときにおきまして、たとえば本年におきましては、一月十八日の全国の衛生部長会議、また、五月十八日の医務課長会議におきまして無免許者の取り締まりを厳重にするように通達をしておるわけでございますが、なかなか成果が必ずしも十分でない点、さらに将来も一そう努力をしていきたいと思います。

 なお、実績から申し上げますと、三十六年におきましては百十七名の検挙者を出しております。これは医者の関係が六十四名、歯科医が四十九名に比べますと、数ははなはだ多いわけでございますが、実際の無免許の方々の数その他から比べますと、これではまだまだ不十分だとわれわれは思っております。なお、三十七年におきましては百二十三人の検挙が行なわれております。三十八年のデータはまだ集計ができておりませんが、やはりこの程度か、少しこれを上回るというくらいじゃないかと思っておりますが、今度の法律の改正を機会といたしまして、われわれとしましても、さらに府県衛生当局、保健所を鞭撻いたしまして、また、警察と一緒になりまして無免許を取り締まり、資格のある方々の保護につとめたいと思います。

 

藤原道子

 通達を出しただけでは実効はあがっていないと思うのです。私どもが一番問題にいたしますのは、免許のある人が無免許者を多くかかえて、しかも、免許がないにもかかわらず、それをきまっておる料金で派遣をしております。そうして同じ料金を取っていて、それで無資格者に与えられるのは非常に少ない、非常な搾取が行なわれている。こういう点についても、もう少し法律が守られるような態勢をつくってもらわなければ、ここで療術者等のことが法案に入りましても、結局取り締まりがなおざりになっていては実効はあがらないと思うのです。私は、もう何回となく、いやになるくらい無免許の問題については取り上げてきておりますので、この法案ができましたのを機会といたしまして、この点については正直者がばかをみるような結果にならないように、厳重な配慮を願わなければならないと思います。いろいろ問題点もあるのでございますが、時間の関係もございまして、私はこれ以上御質問はいたしませんけれども、通達を出しただけで安心しておったのでは、そうした不正業者があるということ、名前まで指摘して私は委員会でやったことがございますけれども、その人がいまなお同じような状態で営業を続けている。こういうことでは法律を審議するのもいやになるような気がいたします。この点につきまして有資格者が守られるように、そして、また、盲人に対しては特別あたたかい配慮がなされますことを強く要望いたしまして私の質問を終わりたいと思います。

 

○政府委員(尾崎嘉篤君)

 いまのお話につきましては、三十七年十二月二十七日に、有資格者で無資格者を雇っておる場合にも十分注意をして、適当な行政処分を実施せよ、また、有資格者の関与しない無資格者の取り締まりにつきましても、関係業界の方面の協力を得てやれというふうな通達を出しておりますので、御趣旨に沿いまして、さらに努力を一そういたしたいと思います。

 

○委員長(藤田藤太郎君)

 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

 

○委員長(藤田藤太郎君)

 御異議ないものと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御意見もなければ、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(藤田藤太郎君)
 御異議ないものと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法等の一部を改正する法律案を問題に供します。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕

○委員長(藤田藤太郎君)
 挙手総員と認めます。よって、本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。

○柳岡秋夫君
 私は、この際、あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法等の一部を改正する法律案に附帯決議を附することを提案をいたしたいと存じます。

 決議案を朗読いたしますので、御賛成を願いたいと存じます。
  政府は、左の事項について十分留意のうえ法の運用を厳正に図るべきである。

 一、医療類似行為は、今般の法改正により、無期限に認められることになるが、これはあくまで現在その業に従事している者のみに限定する法の趣旨であるから「やむを得ない事由」は、特に一定の厳密な基準を設けて運営し、苟くも、これに便乗する者のないよう厳格に実施すること。

 二、盲人の職域優先確保については、施術所の規制等今後も一層その具体化に努力するとともに、養成所の奨学制度の拡充、生業に対する長期低利融資等盲人の福祉の向上についても更に格段の努力をすること。

 三、無免許者の取締りは一層厳にすること。

 四、将来PT、OT制度の創設に当つては、特に視力障害者の地位の向上と身分の保障を実現せしめること。
   右決議する。
 以上でございます。

 

○委員長(藤田藤太郎君)

 ただいま提出されました柳岡秋夫君提出の附帯決議案を議題といたします。
 柳岡君提出の附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕

 

○委員長(藤田藤太郎君)

 総員挙手と認めます。よって、柳岡君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

 

○委員長(藤田藤太郎君)

 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。速記をとめて。
  〔速記中止〕
○委員長(藤田藤太郎君)
 速記を入れて。

参議院会議録情報 第046回国会 本会議 第31号

 

○藤田藤太郎君
 ただいま議題となりました五法案について、社会労働委員会における審議の経過と結果を報告いたします。
(略)
次に、あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本法律案の要旨は、「あん摩師」の名称を、「あん摩マッサージ指圧師」に改め、法律の題名も同様に改めること。

 昭和二十二年に、「あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法」を制定の際の経過措置による所定の届け出を行なって、いわゆる医業類似行為を認められている業者について、本年十二月三十一日までの期限を、原則として撤廃すること。

 真にやむを得ない事由によって、経過措置による所定の届け出ができなかったと当局が認めた者が、この改正法律の施行の口から六カ月以内に所定事項を届け出たときは、経過措置によって届け出をした者と同様とすること。

 当分の間、文部大臣または厚生大臣が、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持のため必要と認める場合、あん摩マッサージ指圧師の学校または養成施設で晴眼者を対象とするものの新設の認定または定員増加の承認をしないことができること等であります。

 委員会における質疑の内容は、会議録によって御承知を願います。

 質疑を終わり、討論、採決の結果、本法律案は、全会一致をもって、原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。

 なお、委員会は、柳岡委員の提案により、全会一致をもって附帯決議を行ないました。
  ―――――――――――――

 

改めて柔道整復師養成施設不指定処分取消請求事件の判決文を読んでみる。

平成医療学園のグループがあん摩マッサージ指圧師養成校の認可を求め、不認可されたことに対し、処分の取り消しを求める裁判を行っているわけですが、改めて福岡地裁で行われた、柔道整復師養成施設不指定処分取り消し請求の判決文を読んでみましょう。

 

下線や色付け、強調、脚注などは筆者による。

原告(学校側)の主張、行動は茶色

被告(国、厚生大臣)の主張、行動は青

裁判所の判断や中立事項は赤

で示しております。

また原判決分では漢数字であるところを算用数字に置き換えてもいます。

 

 


主文

一 被告が平成9年9月30日付けで通知した(厚生省収健政第371号)平成8年7月2日、同年12月2日及び平成9年4月1日付けで申請のあった柔道整復師法第一二条に基づく柔道整復師養成施設の指定についてはこれを行わない旨の処分を取り消す。

二 訴訟費用は被告の負担とする。

 

事実及び理由

第一 請求

主文同旨

第二 事案の概要

本件は、原告の柔道整復師養成施設指定申請に対し、被告が右指定を行わない旨の処分をしたことから、これを不服とする原告が、右処分は違法であるとして、その取消しを求めた訴訟である。

一 争いのない事実等

1 柔道整復師について

 

 (一) 柔道整復師とは、被告の免許を受けて、柔道整復を業とする者である(柔道整復師法(以下「法」という。)二条一項*1 )。

 

 (二) 柔道整復の業務は、打撲、捻挫、脱臼及び骨折に対して外科手段、薬品の投与等の方法によらないで、応急的若しくは医療補助的方法によりその回復を図ることを目的とするものである。*2

 

 (三) 柔道整復師の免許は、柔道整復師試験(以下「試験」という。)に合格した者に対して、被告が付与することとされ(法三条)、*3試験の受験資格は、学校教育法五六条の規定により大学に入学することのできる者で、三年以上、文部大臣の指定した学校又は被告の指定した柔道整復師養成施設(以下「養成施設」という。)において解剖学、生理学、病理学、衛生学その他柔道整復師となるのに必要な知識及び技能を修得したものに限られる(法一二条)。*4

 

 (四) 養成施設の指定

 

  (1) 養成施設の指定を受けようとするときは、設置者はその所在地の都道府県知事を経由して、被告に対し、申請手続をしなければならない(柔道整復師学校養成施設指定規則(以下「規則」という。)二条)。なお、学校の指定を受けようとするときは、文部大臣に対し同様の手続をしなければならない。 また、養成施設の指定基準は、規則四条に定められている。

 

  (2) 関係団体の同意書の添付

平成元年9月29日付け厚生省健康政策局長通知「柔道整復師養成施設指導要領について」(以下「指導要領通知」という。甲五)によれば、都道府県知事は、養成施設の設置計画書の進達に際しては、関係団体(社団法人日本柔道整復師会都道府県段階の組織及び都道府県知事において必要と認めた団体)の同意書を添付することとされている。 なお、社団法人日本柔道整復師会公益法人であり、その組織数において当業界において全国で最多の団体である。

 

2 本件の経緯

 

(一) 原告

原告は、養成施設である福岡柔道整復師専門学校(仮称。以下「本件施設」という。)の設立代表者である。なお、本件施設は、規則四条に定められた指定基準を充たしている。

 

(二) 第一次申請
原告は、福岡県内において養成施設を設置することを計画し、規則二条に従い、 平成8年7月2日、平成10年4月1日設置予定の本件施設に係る「柔道整復師養成施設指定認可申請書」を福岡県知事宛に提出した(以下、右申請書の提出を指して、「第一次申請」という。)。

 

(三) 本件審議会の開催
平成8年10月21日、第一次申請を受けて、法二五条により養成施設の指定に関する重要事項を審議することとされているあん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅう、柔道整復等審議会(以下「本件審議会」という。)が開催された。本件審議会では、次の二点を理由として、第一次申請を認めることは適当でないとの意見が出された(乙四)。

 

 (1) 新設の必要性の不存在
養成施設は、昭和48年以降新たな設立はされていないが、柔道整復師の従事者数は相当増加してきている状況にあり、従来の養成施設と同様の施設を新たに設立する特段の必要性が見い出し難いこと。

 

 (2) 関係団体等の反対意見
福岡県から、柔道整復師について不足しているとの認識になく、将来的にも不足する状況にないとして、養成数の増加を招く今回の計画は不適切である旨の意見が出されており、また、福岡県の意見書にもあるように柔道整復師の関係団体からも反対の意見が提出されていること。

 

(四) 健康政策局長の通知

平成8年10月28日付け厚生省健康政策局長の健政発第928号「柔道整復師養成施設の指定申請について」との書面をもって、原告に対し、養成施設としての指定を行わない方針である旨の厚生省健康政策局長の通知(以下「指定申請通知」という。甲三の二)がされ、福岡県知事から原告に送付された。

 

(五) 第二次及び第三次申請

原告は、同年12月2日、再度指定認可申請書を福岡県知事宛に提出した(以下、右申請書の提出を指して、「第二次申請」という。)ところ、被告から正式な回答が得られなかったため、平成9年4月1日、本件施設の設置予定日を平成10年4月1日から平成11年4月1日に変更した上で、重ねて本件施設にかかる指定認可申請書を提出した(以下、右申請書の提出を指して、「第三次申請」といい、 第一次ないし第三次申請を総称して「本件各申請」という。)。

 

(六) 原告は、第二次申請に当たり、全国柔整鍼灸協同組合九州支部支部長、同組合理事長、JB日本接骨師会理事の各同意書を得て、これを添付している(甲七ないし九)。

 

(七) 福岡県私立学校審議会の答申
平成9年1月28日に開催された福岡県私立学校審議会において、本件施設の専修学校としての設置認可についての第一次審議が行われ、第二次審議に移行することにつき支障はないとの意見となり(甲一七)、右審議会は、右意見を同年2月3日付けで福岡県知事に対し答申した(甲一八)。

 

(八) 公正取引委員会からの要請
被告は、平成九年七月七日付けで公正取引委員会から、養成施設に係る被告の指定の運用について、法令に具体的な根拠のない需給調整を行うことは競争政策の観点から極めて問題であるので、このような運用を行わないよう要請を受けた(乙五)。

 

(九) 本件審議会の再開催
本件審議会は、平成9年9月12日付けで次の意見を提出した(乙六)。

 

 (1) 養成施設の指定に当たり、法令に具体的な根拠のない需給調整を行うことは競争政策の観点から極めて問題であるとする公正取引委員会からの要請は、昨今のあらゆる分野での規制緩和、自由競争化という傾向から理解できる。

 

 (2) しかしながら、国民に適切な医療を提供する体制を整備することは医療行政の重要な柱であり、この観点から医療従事者の適正な需給を図ることが求められており、柔道整復師の養成に関しても医療保険を含む医療制度の今後の方向をも念頭に置いて議論を行う必要があると考えられる。 これらのことに加え、埼玉県知事及び福岡県知事の意見も参考としながら、今般、競争政策の観点を含め、改めて議論したものであるが、昨年の意見を変える必要はないとの結論に達したものである。

 

 (3) よって、速やかに適切な措置をとるべきである。

 

(一〇) 本件処分
本件各申請に対して、被告は、平成9年9月30日付け書面(厚生省収健政第371号)をもって、「平成8年7月2日、平成8年12月2日及び平成9年4月1日付けで申請のあった柔道整復師法第一二条に基づく柔道整復師養成施設の指定についてはこれを行わない」こととし(以下、右の指定を行わなかった行為を指して 「本件処分」という。)、その旨を原告に通知したが、本件処分の理由として、以下の点を挙げている(甲一の二)。

 (1) 柔道整復師の従事者数は相当増加してきている状況にあり、養成力の増加を伴う施設を新たに設置する必要性が見い出し難いこと。

 

 (2) 本件審議会から本件申請に関して「認めることは適当でない」との意見書が提出されていること。

 

3 柔道整復師の従事者数等について

 

 (一) 全国の柔道整復師の従事者数の推移は、昭和45年が6974人、平成6年が26,221人、平成8年が28,244人であり(乙一)、平成6年の数は、昭和45年の数の約3.76倍、平成8年の数は昭和45年の数の約4.05倍である。

 

 (二) 福岡県の柔道整復師
本件施設の設置が予定されている福岡県における柔道整復師の従事者数は、昭和55年当時193人であったが、平成6年には635人に増加しており、15年間に約3.29倍に増えている(甲二の三)。

 

 (三) 人口との対比

  (1) 平成6年7月作成の統計表によると、柔道整復師一人当たりの人口は、全国平均が4983人であり、都道府県別では、東京都が2138人、福岡県が8508人であり、人口10万人に対する柔道整復師数は、全国平均が20.1人であり、都道府県別では、東京都が46.8人、福岡県が11.8人であった(甲一 〇)。

 

  (2) 平成8年末の時点における人口10万人に対する柔道整復師数は、全国平均が22.4人であり、都道府県別では、東京都が54.2人であるのに対し、福岡県14.1人、佐賀県12.8人、長崎県16.5人、熊本県6.8人、大分県14.4人、宮崎県13.5人、鹿児島県14.3人、沖縄県5.1人、鳥取県 5.5人、島根県9.9人、岡山県11.0人、広島県12.2人、山口県9.9人、徳島県16.5人、香川県25.6人、愛媛県8.2人、高知県26.1人で あった(甲一一)。

 

 (四) 整形外科医師数

  (1) 平成6年の全国の整形外科医師数は21,661人であり、昭和45年の10,100人の約2.14倍となっている(乙二)。

 

  (2) 平成6年末における人口10万人に対する整形外科医の数は、全国平均が12.5人であり、都道府県別では、東京都が13.7人、福岡県が16.8人で あり、沖縄県を除いた中国、四国、九州地方の各県における数は、全国平均のそれを上回っている(乙三)。

 

 (五) 柔道整復師養成施設
現在指定を受けている養成施設は全国で14校(入学定員数の合計は1050名)あるが、その内6校は関東地方に、三校は近畿地方に存在し、九州、中国、四国地方には養成施設が一校もない。養成施設の新設は、昭和48年から現在まで一校も認められていない。なお、文部大臣の指定を受けた学校はない。

 

 (六) 試験実施結果
受験者数 合格者数 合格率 (パーセント)
平成5年度 1066人 963人 90.3
平成6年度 1194人 1059人 88.7
平成7年度 1213人 1005人 82.9
平成8年度 1276人 1063人 83.3
平成9年度 1296人 1137人 87.7
平均 86.4

二 争点


本件処分の違法性の有無*5

 

三 争点に関する原告の主張

 

1 被告の裁量について

 (一) 養成施設の指定基準は、規則四条の一ないし一六号に示されており、本来右各号記載の要件が充足されれば、被告による養成施設の指定がなされるべきところ、一2(一〇)記載の本件処分の理由は合理性を欠くのみならず、規則記載の要件以外の要素を判断に取り込むものであって、違法である。

 

 (二) 法及び規則の趣旨に照らせば、法で試験の受験資格を被告の指定する養成施設で「解剖学等柔道整復師となるために必要な知識及び技能を習得したもの」に限定し、規則で養成施設指定の要件を定めたのは、柔道整復師が医療の一翼を担うものであり、国民の健康を確保するため、免許が与えられ得る者は、一定水準以上の学校又は養成施設において必要な知識及び技能を習得した上で試験に合格した者でなければならないという考え方に基づき、その養成施設の教員水準の維持、向上を図り、相応の施設設備を有する環境を確保することにある。 また、原告には、憲法職業選択の自由が原則として認められているのであるから、右自由を制限することになる前記養成施設の指定の条件としては、規則に定められた基準を充たすことで足りるというべきであり、右基準を充たす以上は規則の要件を充たすか否かの判断につき、それ以外の事情を考慮することは許されない。*6

 

 (三) 私立各種学校の設置認可要件についての法的規律の構造(学校教育法・私立学校法各種学校規程)が、養成施設指定の要件についての法的規律の構造(法と規則)とパラレルな関係にあることからしても、その法律解釈として右私立各種学校の設置認可要件の解釈と同様に解すべきであるところ、学校教育法は、四条で同法一条所定の学校(以下「一条校」という。)の設置について監督庁の認可を要すると定め、八三条二項でこれを同条一項の各種学校に準用し、私立各種学校にあっては、同法三四条、私立学校法四条二号、六四条一項及び五条一項一号により、 都道府県知事が右認可の権限を有している。右各種学校の設置認可の実体的要件については、学校教育法及び同法施行規則を受けて制定された各種学校規程が、各種学校の施設、設備、教員組織等について定めているのみである。

一条校における教育は、教育基本法六条にいう公の性質を持つものとして国が相当程度その運営に関与することが同法及び学校教育法上予定されているのに対し、 各種学校における教育は学校教育法上これと明確に区別されている。 すなわち、学校教育法が、これを設置できるものを国、地方公共団体及び学校法人に限定するとともに(同法二条一項)、各学校の種類ごとにその目的、性格、修業年限、組織編成等について体系的に規定しているのに対し、各種学校については、同法の規則中に規程を置き、設置認可等一条校に関する若干の規定を準用するほか、必要な事項は監督庁がこれを定めるものとしており(同法八三条)、設置についての人格上の制限もない(各種学校には同法二条の準用はない。)等、一条校に比べ、その取扱いには格段の差がある。
したがって、学校教育法及び各種学校規程の趣旨に照らせば、各種学校の設置等を監督官庁の認可に係らせたのは、その教員水準の維持、向上を図ることによって、そこに学ぶ生徒の教育を受ける権利を実質的に保障することにあると解され、 さらに、憲法職業選択の自由が原則として認められ、また、公の性質を持つ教育にあっても私学教育の自由が一定限度認められることにかんがみれば、少なくとも私立各種学校に関する限り、その教育活動は原則として自由と解されるから、設置認可を受けるための条件としては、学校教育に類する教育を行うもので、原則として各種学校規程に定められた基準を充たすものであることをもって足りるというべきであり、同規程に定める要件を充たすか否かの判断につき、各種学校に学ぶ生徒の教育を受ける権利を実質的に保障するとの観点から知事に一定の裁量権があることは当然であるが、それ以外の事情を考慮することは許されない。

 

 (四) 法は、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律(以下 「あん摩等法」という。)と共通性を有するところ、あん摩等法一九条の反対解釈によれば、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師(以下「あん摩マッサージ 指圧師等」という。)の養成施設の認定の可否は、同条の場合を除いては、あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師に係る学校養成施設認定規則の認定基準のみに従ってなされることになる。 右の考え方は、規則による養成施設の指定についても妥当するものであるから、 右指定は、規則の基準のみに従ってなされるべきである。*7

 

 (五) したがって、柔道整復師の需給を勘案し、試験の合格者を調整する必要から、被告において養成施設指定の裁量権を有するとの被告の主張は失当である。

 

2 本件処分の理由である養成施設新設の不必要(前記一2(一〇)(1))につ いて

 

 (一) 柔道整復師の従事者数は漸次増加する傾向にあり、このことは、国民の柔道整復師に対する需要の増加を裏付けるものである。そして、このことは決して増加の必要性を否定するものではない。 柔道整復師の数が増大することは、そのサービスを受ける国民にとっては、住居の近隣に複数の柔道整復師が存在することになり、その施術内容その他医療的サー ビスの内容により、柔道整復師を選択できることとなり、利益になることはあっても、不利益になることはない。しかるに、被告は、昭和四八年以降、養成施設の指定を一切行っていない。

 

 (二) 福岡県等の九州地方やその近隣の地方においては、柔道整復師の供給は不足している。

 

 (三) 既存の養成施設が地域的偏在状況にある結果、九州、中国、四国地方において柔道整復師を志す者に著しい不利益が生じており、これらの地域における柔道整復師の供給難をもたらしている。 指導要領通知が、養成施設開設予定地域の柔道整復師関連団体の同意書の添付を求めているのも、養成施設が存在する地域を中心として柔道整復師数が一層増加することを当然の前提としているからである。 したがって、本件各申請に基づき、養成施設が新設されたとしても、柔道整復師数が増加するのは、福岡県を中心とした九州地方及び近隣の中国・四国地方においてのみである。 他の大学・専修学校は、九州地区にも多く存在するのに対し、養成施設は一校もなく、九州において、柔道整復師試験の受験資格を取得することは不可能な状況にある。九州及びその近隣地域在住の柔道整復師志望者は、近くとも大阪まで行かな ければならず、また、定員の関係で東京や東北にまで行かなければ受験資格を得られない実情にあり、その不便たるや計り知れないものがある。 また、養成施設は、当該地域の柔道整復師の研修研鑽の場を提供する核となるものでもあるが、この意味でも、九州及びその近隣地域においては不利益を被っている。 このように、本件施設の設置の必要性、合理性は極めて大きく、これに反する前 記一2(一〇)(1)の理由は合理性に欠けるものである。

 

 (四) 柔道整復師の資格は、国家試験によりその合格者に与えられるものであるところ、柔道整復師の全国的な増大の有無は、直接的には、毎年の合格者数(合格定員)に連動するものであり、養成施設の数(受験者数)によるものではない。 本件施設の定員は120名であり、この在校生全員が試験を受けたとして、平成9年度の受験者数に右数を加えると1416名となり、右数に年平均合格率86.46パーセントを乗じると合格者数は1224名となり、不合格者数は差し引き一 92名となるが、右不合格者数は、平成9年度のそれよりも33名増加したにすぎない。 また、本件施設新設によって受験者総数に対する合格率の変動を来すことがあるとしても、その範囲に止まる以上、その指定を行わないのは、明らかに既存学校の権益の保護のみに偏った不合理な措置といわざるを得ない。

 

 (五) 万一柔道整復師の合格率に大きな変動をもたらさないことが必要であるとしても、そのためには、既存学校についての定員の変更割り替えを行えば解消する問題であって、これを一切行えないとするのは、やはり既存学校の権益の保護以外に何らの理由も見出せない。

 

 (六) 柔道整復師の過剰、過当競争について
人口10万人に対する柔道整復師従事者数が全国平均を上回っている都県において、柔道整復師の経営の著しい不安定化、施術の低下の招来、適切な医療体制への支障が発生した事実はない

 

 (七) 柔道整復師数と整形外科医数について

  (1) 仮に、柔道整復師の過剰、過当競争を生む水準は、被告の主張するように、整形外科医の数、地域の社会状況等様々な観点から総合的に判断されるべきであるとしても、柔道整復師は過剰、過当競争の現状にはなく、かえって、中国、四国及び九州の各地域においては、柔道整復師の数は不足している

 

  (2) 柔道整復と整形外科とは、医療目的に重複するところがあるとしても、治療・施術の基本的な考え方や手法は異なっており、また、現実の患者への対応、親しみやすさにも差異がある。

 

  (3) 人口10万人に対する整形外科医数が全国平均を上回っている都県においても、なお、全国平均を上回る柔道整復師が存在し、現にその業務に従事している。しかし、被告が過剰、過当競争の弊害と主張する経営の著しい不安定化、施術 の低下の招来、適切な医療提供体制への支障の発生は認められず、整形外科医及び 柔道整復師の総数(供給)に対応した医療提供を求める患者数(需要)が存在する

 

3 本件処分の理由である本件審議会の意見(前記一2(一〇)(2))について

 

本件審議会の構成員は、本件各申請を審議するについて到底公正な判断を期待できるものではなかった。すなわち、本件審議会の構成員は、日本理療科教員連盟会長、日本医師会常任理事、全国療術師協会副会長、全国柔道整復学校協会会長、日本盲人会連合副会長、明治鍼灸大学大学院教授、日本鍼灸師会会長、国立身体障害者リハビリテーションセンター総長、東京都立文京盲学校長、医事評論家、獨協大学教授、日本柔道整復師会会長、前全日本鍼灸マッサージ師会法制局長の13名であったが、そのうち、医事評論家及び獨協大学教授を除いた11名はいずれも、既存の柔道整復師を構成する団体及び柔道整復師の業務と近接、関連する業種の代表者であり、柔道整復師の増加によってその属する団体所属員に不利益をもたらすと判断し、これに異を唱えることは容易に推認しうるのであって、到底公正かつ合理的な判断は期待し得ない。

 

4 既存の権益の保護のための被告の判断

 

福岡県知事の意見書に添付された社団法人福岡県柔道整復師会の意見は、根拠・ 理由を示すことなく本件施設の設置に反対しているものであり、本件処分は、社団法人福岡県柔道整復師会の意見書のみに依拠してなされており、不合理である。 また、指定申請通知によれば、「地元の柔道整復師団体からも設置に反対する意見が出されており、設立後の円滑な運営が懸念されること」が不指定の理由の一つとして挙げられているが、不合理である。 したがって、被告の判断の根拠は、既存の養成施設の権益の保護、既存柔道整復師の権益の保護以外には存しない。 事業者の参入に当たり、当該事業分野の既存事業者又は団体の同意を得ることを求める行政指導は、これにより、当該既存事業者が共同して、又は事業者団体が、参入の同意を拒否することにより新規参入を断念させ、当該事業分野の事業者のを制限し、又は参入しようとする事業者の事業活動を不当に制限する条件を付することになり、独占禁止法(三条、八条一項一号、三号)に該当する違法な行為である。

 

四 争点に関する被告の主張

 

1 被告の広範な裁量

 

 (一) 知識、技能の一定水準確保の必要性
法一二条が柔道整復師試験の受験資格を制限しているのは、柔道整復師が医療の一翼を担うものであり、国民の健康を確保するため、柔道整復師の免許が与えられ得る者は一定水準以上の学校又は養成施設において必要な知識及び技能を修得した上で試験に合格した者でなければならないとの考え方によるものである。

 

 (二) 受験者数調整の必要
また、医療従事者については、「医療の......向上を図る」(厚生省設置法五条三 〇号)観点から、需給を勘案した適正数の確保を図ることを医療行政上の重要な政策課題としており、医療法に基づく医療計画(医療法三〇条の三)や、医師、歯科医師等の需給予測を通じて、その政策の実現を図っているところであるが、柔道整復師の養成についても、当然、柔道整復師の施術に対する国民医療の需要を勘案しながら適切に行われるべきであり、例えば、柔道整復師の過剰が発生した場合、過当競争により、経営の不安定化及び施術の質の低下を招き、適切な医療提供体制の確保に支障を生じる恐れがあることから、試験の受験者数を調整する必要があるのであり、受験資格取得の対象となる学校又は養成施設は、こうした観点も含めて文部大臣又は被告の指定に係らしめることとされているのである。

 

 (三) 社会政策立法の性格
柔道整復師については、大正九年、按摩術営業取締規則の一部改正により免許等の法制化がなされたが、これは柔道整復を行う者の救済のための社会政策立法としての性格が強く、戦後の昭和二二年に新憲法の下で、あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法(同法から分離制定されたのが法である。)が制定された際の国会審議においても、あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法は、右規則の社会政策立法としての性格を引き継いだものであることが確認されている。*8

 

 (四) 被告の広範な裁量
以上の観点から、養成施設の指定については、被告の広範な裁量に委ねられているのであり、法の上では指定の要件は何ら定められておらず、規則において規定する基準はその例示であって、被告の判断は当該基準によってのみ行われなければならないものとはいえない

 

 (五) 学校教育法における各種学校の認可との関係
各種学校の認可と法における学校及び養成施設に対する指定とではその法的性質が異なり、医療従事者としての柔道整復師の養成は、国の医療政策と深く関わるものであって、公の性質を有する。 すなわち、柔道整復師に一定水準以上の知識・技能を確保する必要、試験の受験者数を調整する必要があり、さらに、法は社会政策立法としての性格が強いから、 需給調整の必要が特に高い。 かかる観点からすると、養成施設の法的性質については、学校教育法上の各種学校というより、国の政策と深く関わるという意味においては、かえって同法一条に定める学校に近いものと解されるのであって、このように、国の医療政策と密接である以上、養成施設の指定については、被告の広範な裁量に委ねられている。
したがって、規則において規定する基準は、その例示であって、被告の判断は必ずしも当該基準によってのみ行われなければならないものではない。

 

 (六) あん摩等法一九条との関係
同条は、視覚障害者にとって、あん摩マッサージ指圧師が適職として選択できる重要な職業と解され、特に、視覚障害者の職域優先を図る必要があると認められることから、これを立法上明確にした規定であるに過ぎず、認定又は承認に当たって他の要素を考慮してはならないとの趣旨までを含むものではない。 したがって、法にこのような明文がないことをもって、養成施設の指定について、規則のみに従って指定の可否を決すべきことの根拠とすることはできない。

 

2 本件処分の合理性について

 

 (一) 本件処分理由第一(養成増の不必要性)について

 

  (1) 柔道整復の業務目的は、医師(整形外科)による診療と重複するものであって、柔道整復師の需給については、整形外科医の状況も勘案する必要があり中国、四国、九州の各地域における整形外科医の従事者数は平成6年末の時点で全国平均を上回っている以上、当該地域において柔道整復師の養成増を図る特段の必要性は乏しい

 

  (2) 柔道整復師の従事者数の適正な水準を維持するために試験の合格者数を限定し、学校及び養成施設の卒業者の多数を不合格とすることとすれば、学校又は養成施設を卒業したものの免許が取得できない者が続出し、これらの者は、時間と費用の多くを無駄に費やしたこととなり、大きな不利益を受けることとなる。このため養成施設を指定するに当たって、柔道整復師の従事者数の増加傾向を考慮することは、十分合理性がある。*9

 

  (3) 柔道整復師の従事者数については、歴史的経緯により地域的偏在はあるものの、全国的にみて、従事者数が著しく増加しており、柔道整復師の養成力の実質的な増加を伴う施設を新たに設置する特段の必要性は認められない。 なお、他の大学や専修学校等も大都市に多く存在しており、決して当該養成施設のみに顕在する不利益とはいえないものである。

 

 (二) 本件処分理由第二(本件審議会の意見の考慮)について

 

  (1) 被告は、本件審議会の意見を尊重しなければならない。

 

  (2) 本件審議会の構成員のうち、既存の柔道整復師を構成員とする団体を代表する委員は、全国柔道整復学校協会会長及び日本柔道整復師会会長の二名のみであり、柔道整復師の業務と近接、関連する業種を代表する委員として、日本医師会常任理事、全国療術師協会副会長、前全日本鍼灸マッサージ師会法制局長の三名を加えても、五名であり、過半数に満たず、公正かつ合理的な判断は期待しうる。


第三 当裁判所の判断

一 本件処分における被告の裁量について

 1 法は、柔道整復師の資格を定めるとともに、その業務が適正に運用されるように規律することを目的としており(一条)、試験の受験資格として被告指定の養成施設での修業を要求している(一二条)のであるから、養成施設の指定に当たっては、その養成施設が一定の水準を備え、試験の受験資格を与え得る者を養成できるか否かを中心に判断するのが原則であると解される。

 

 2 法令の解釈は、制定目的のほか、規定の体裁等を考慮してなされるべきであるから、法をあん摩等法と対照して考察することとする。

 

  (一) 法制定の経緯
法は、昭和二二年一二月に法制化されたあん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法から、昭和四五年に分離され、単独法として制定されたものである。

 

  (二) 法とあん摩等法との共通性
あん摩マッサージ指圧師等及び柔道整復師はいずれも医療の一翼を担う者として医療類似行為を行うことは同一であるから、あん摩等法と法とに分離された後も、 数次の改正の内容、当該法律に基づく規則の内容も後記の一点を除いては同様のものとなっている。 すなわち、あん摩等法二条は、あん摩マッサージ指圧師等の免許は、学校教育法五六条の規定により大学に入学できる者で三年以上文部大臣の認定した学校又は被告の認定した養成施設であん摩マッサージ指圧師等となるのに必要な知識及び技能を習得したもので、被告が行うあん摩マッサージ指圧師等の試験に合格した者に被告が与えるとされ、あん摩マッサージ指圧師等の学校又は養成施設認定の実体的要件については、あん摩等法では後記の一点を除いて具体的な基準を定めておらず、 同法を受けて制定されたあん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師に係る学校養成施設認定規則が、右学校又は養成施設の施設、設備、教員組織等について定めているのみである。

 

  (三) あん摩等法と法との違い
右のように、あん摩マッサージ指圧師等と柔道整復師とは、その免許や試験受験資格及びその養成施設の認定・指定については、横並びの規定となっているが、あん摩マッサージ指圧師についてのみ、著しい視覚障害のある者(以下「視覚障害者」という。)に対する受験資格が特例として緩和され(あん摩等法一八条の二)、かつ、前記学校及び養成施設の認定・承認をしないことができる例外(同法 一九条)が規定されている点が異なっている。
すなわち、同法一九条一項は、「当分の間、文部大臣又は厚生大臣は、あん摩マッサージ指圧師の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合、あん摩マッサー ジ指圧師に係る学校又は養成施設において教育し、又は養成している生徒の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合その他の事情を勘案して、視覚障害者であ るあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認めるときは、あん摩マッサージ指圧師に係る学校又は養成施設で視覚障害者以外の者を教育し、又は養成するものについての第二条第一項の認定又はその生徒の定員の増加についての同条第三項の承認をしないことができる。」と特に規定しているところ、この規定の趣旨は、あん摩マッサージ指圧師の養成業への参入を自由に認めると、生計の維持が著しく困難となり、業務内容の質の低下を招き、ひいては適切な医療体制の確保に支障を生じるおそれがあるから、前記認定規則の基準を充たすものであっても、認定されない場合があることを定めたものであると解される。

ところで、*10には、右のような規定は存しないから、規則の指定基準を充たす養成施設において修業した者に対し試験の受験資格を与えることで、業務内容の質の低下を防止し、適切な医療体制を確保することは可能であると考えられ、右基準が充たされる以上は、被告は原則として、養成施設の指定を行わなければならないものであると解される。

 

 3 仮に、医療行政等の観点から、指定基準を充たすにもかかわらず例外的に指定を行わないことができる場合があるとしても、右に述べたところによれば、それは被告の広範な裁量に委ねられるものではなく、個別案件において合理的かつ具体的な理由が示されなければならないと考えられる。

そこで、次項以下において、本件処分の理由について検討する。

 

二 本件処分の理由
 

第一(新設の必要性の不存在)について

 

柔道整復師の従事者数は、増加傾向にあるが(第二の一3(一))、柔道整復師の数が増大することは、そのサービスを受ける国民にとっては、その施術内容その他医療サービスの内容等により、柔道整復師を選択できることとなり、国民にとっ て利益になることはあっても、不利益にはならないものである。

ところが、平成8年末時点における人口10万人に対する柔道整復師の数は、全国平均で22.4人であるのに対し、福岡県では14.1人であり、福岡県以外の九州各県、中国地方全県及び四国地方の一部の県についても、人口10万人に対する柔道整復師の数は、いずれも全国平均を大きく下回っている。

また、既存の養成施設は九州、中国、四国地方には一校もなく、このことが右の一要因になっていると考えられる。 本件施設の定員との関係について検討すると、平成9年度の試験受験者数は1296人、合格者数は1137人、合格率は87.7パーセントであり、平成5年度から同9年度までの年平均合格率は、86.46パーセントであるところ、原告主張のとおり、本件施設の定員が120名であるとすると、平成9年度の試験受験者 数は1416名となるが、右人数が受験したと仮定して、合格率を右年平均合格率 86.46パーセントとして計算すると、合格者は1224名となる。この場合、 不合格者数は平成9年度のそれよりも33名増加するに過ぎない。

ところで、人口10万人に対する柔道整復師従事者数が全国平均を上回っている地域において、柔道整復師の経営の著しい不安定化、施術の低下の招来、適切な医療体制への支障が発生したとの事実は本件全証拠によるも認められないし、全国的にも柔道整復師が過剰、過当競争の状態にあると認めるに足りる証拠もない。また、柔道整復師数と整形外科医数との間の相関関係を認めるに足りる証拠も存しない。 したがって、柔道整復師数を増加させるべきか否かの点につき、当該地域の整形外科医数を考慮しなければならないということはできないし、柔道整復師数は増加していることが認められるものの、全国的に柔道整復師数が過剰な状況にあると認めることもできず*11特に福岡県を含む、九州、中国地方及び四国地方の一部では、 柔道整復師の供給が全国平均水準を下回り、不足していることが認められるのであるから、本件処分の理由第一の、養成施設を新たに設置する必要性がないとの判断は、その根拠が薄弱なものであるといわざるを得ない。

 

三 本件処分の理由第二(本件審議会の意見)について

 

本件審議会の権限は、被告の諮問に応じ、重要事項を調査審議することにある (法二五条)から、被告は、養成施設の指定をするに当たっては、本件審議会の意見に拘束されることなく判断することができるものであるところ、福岡県知事の意見書に添付された社団法人福岡県柔道整復師会の意見は、理由根拠を示すことなく、単に「社団法人福岡県柔道整復師会は反対します」と示されているのみであり、他方、原告は、第二次申請において、全国柔整鍼灸協同組合九州支部長、同組 合理事長、JB日本接骨師会の各同意書を添付して申請したものである。 また、公正取引委員会事務総局経済取引局総務課長から、平成9年7月7日付けで、厚生省健康政策局総務課長宛に、養成施設の指定に係る被告の指定の運用については、競争政策の観点から極めて問題であるので、このような運用を今後行わないよう強く要請する旨の書面が出されたところ、右書面(乙五)には、養成施設の指定に係る厚生省の運用は、法令に具体的な根拠のない需給調整であり、養成施設への新規参入を不当に制限するものであるとともに、右需給調整の結果、昭和46年以来養成施設への新規参入が全くないため、養成施設のみならず、柔道整復師自体について著しい地域的偏在が生じており、柔道整復の利用者のニーズに応えるものとなっていないなど、競争政策の観点からは極めて問題である旨記載されている。

そもそも、公正かつ自由な競争を維持・促進するためには、参入・退出の自由が保障されている必要があるから、行政機関は、法令に具体的な規定がない参入・退出に関する行政指導により公正かつ自由な競争が制限され、又は阻害され、独占禁止法との関係において問題を生じさせるおそれが生じないよう十分留意すべきである。 右によると、本件審議会の意見は問題をはらむものであって、被告はこれに拘束されるものではなく、これを尊重すべきものでもないというべきである。*12

 

四 以上によると、規則に規定されている指定基準が充たされている以上、被告において裁量の余地はなく、被告は、本件施設を養成施設に指定しなければならなかったものである。仮に、裁量の余地があったとしても、それは前記のとおり小さなものであり、被告の裁量権の行使には逸脱があったというべきである。したがって、本件処分は違法であり、取り消されるべきものである。

 

五 よって、本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結日 平成10年6月29日)
福岡地方裁判所第一民事部
裁判長裁判官 古賀寛
裁判官 金光健二
裁判官 秋本昌彦

*1:第二条  この法律において「柔道整復師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、柔道整復を業とする者をいう。

*2:学校と国は柔道整復師の業務が打撲、捻挫、脱臼、骨折を対象としたもののみに限られる、と了解しているわけである。この裁判は柔道整復師の業務範囲について争っているわけではないが。

教育内容については https://togetter.com/li/938891 を参照のこと。

*3:第三条  柔道整復師の免許(以下「免許」という。)は、柔道整復師国家試験(以下「試験」という。)に合格した者に対して、厚生労働大臣が与える。

*4:第十二条  試験は、学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)第九十条第一項 の規定により大学に入学することのできる者(この項の規定により文部科学大臣の指定した学校が大学である場合において、当該大学が同条第二項 の規定により当該大学に入学させた者を含む。)で、三年以上、文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大臣の指定した学校又は都道府県知事の指定した柔道整復師養成施設において解剖学、生理学、病理学、衛生学その他柔道整復師となるのに必要な知識及び技能を修得したものでなければ、受けることができない。

*5:違憲性とは書いていない。つまり制定法に反していないかどうかが問題にされている。

*6:あくまでも制定法に背いていないかどうかだけの判断を求めている。仮に違憲性を問題にした場合、地裁判決では確定しないだろう。

*7:第十九条  当分の間、文部科学大臣又は厚生労働大臣は、あん摩マツサージ指圧師の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合、あん摩マツサージ指圧師に係る学校又は養成施設において教育し、又は養成している生徒の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合その他の事情を勘案して、視覚障害者であるあん摩マツサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認めるときは、あん摩マツサージ指圧師に係る学校又は養成施設で視覚障害者以外の者を教育し、又は養成するものについての第二条第一項の認定又はその生徒の定員の増加についての同条第三項の承認をしないことができる。

*8:福岡地裁はこの点については特に判断していない。しかしあはき法に関して言えば、あはき法第19条はまさに社会政策立法的であり、あん摩師養成校不認可の裁判でも国側はその旨主張している。

*9:法科大学院はどうした?むしろこの裁判で負けたからどうでも良くなったのか?

*10:柔道整復師法のこと

*11:全国的に過剰であり、局所的には不足している場合であればどう判断したのだろうか。

*12:審議会の審議内容について判断しており、メンバー構成の公正さについては判断していない。