マッサージ(類似行為)の目的は3つに別けられる。そして「派遣マッサージ」は風営法による規制が必要だ。

新井浩文容疑者の受けていた「マッサージ」について解説する記事が多く出回っているが、あん摩マッサージ指圧師の免許に触れている記事は見当たらない。

headlines.yahoo.co.jp

 

この記事では(性)風俗店か否かだけを問題にしている。

以下、上記記事より引用。強調は筆者による。

今回の事件とは別の出張マッサージ店関係者は“グレーゾーン”の存在を示唆するが、常連客は「嫌がる相手に本番行為はあり得ない」と新井容疑者を批判する。

 

「マッサージをする上で、従業員の胸や股間が体に触れ、時には鼠蹊部に手が及ぶこともあり、ギリギリの“プレイ”を楽しむ人もいるが、“本番行為”は大NGで、今回の事件のようなことはあってはならない」と指摘する。

 

管理が徹底されているようにもみえるが、密室で男女が一線を越えてしまう可能性を尋ねると、「店の知らないところで“行為”があるというのは、可能性としてある」と否定しなかった

 前出のヒクソン高田氏は「交渉次第で、お互いの同意があれば“それ以上のプレイ”も存在する。従業員から持ちかけられる場合もあると聞く。風俗に飽きた人や、風俗が怖いという人にもユーザーは多く、店舗がどんどん増えている」と話した。

と「出張マッサージ」で性風俗店紛いのサービスが受けられる可能性を示している。

 

目的別のマッサージ(類似行為)

マッサージの目的は3つに別けられる。

  • 医療関連性のある目的
  • 性的目的
  • 接待目的

この3つだ。

私のようにあん摩マッサージ指圧師が行っているのは医療関連性のマッサージであり、免許が必要なのも医療関連性のあるマッサージに限定される。

医療関連性のあるマッサージ

あん摩マッサージ指圧師の免許が必要な(あん摩)マッサージについては厚生省から通知が出されている。

法第一条に規定するあん摩とは、人体についての病的状態の除去又は疲労の回復という生理的効果の実現を目的として行なわれ、かつ、その効果を生ずることが可能な、もむ、おす、たたく、摩擦するなどの行為の総称である。*1

またマッサージ以外に医業類似行為という、医療系免許を持たない者による治療行為の定義があるが「疾病の治療又は保健の目的を持ってする行為であって、医師や法令で資格の認められた者が、その業としてする行為以外のもの」と裁判例では示され、最高裁は医業類似行為に関し、

前記法律一二条は「何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない」と規定し、同法一条に掲げるものとは、あん摩(マツサージおよび指圧を含む)、はり、きゆうおよび柔道整復の四種の行為であるから、これらの行為は、何が同法一二条の医業類似行為であるかを定める場合の基準となるものというべく、結局医業類似行為の例示と見ることができないわけではない。*2

と判示しているので、「疾病の治療又は保健の目的」も免許が必要なマッサージの目的と言える。

 

疲労回復に関しては、医薬品の認可を受けていない食品の場合、疲労回復の効果を表示できないことから保健目的だとわかるだろう。

www.fukushihoken.metro.tokyo.jp

体の機能の一般的増強、増進を目的とする表現は医薬品的な効能効果に該当します。
医薬品的な表現例
疲労回復」
「体力増強」
「精力回復」
「老化防止」
「学力向上」
「新陳代謝を高める」
「血液を浄化する」
「風邪を引きにくい体にする」
「肝機能向上」
「細胞の活性化」
など

また美容目的も医療関連性のある目的であることがタトゥー無罪判決で示されている。

 

binbocchama.hatenablog.com

 大まかに言って

  • 疾病の診断、治療若しくは予防
  • 疲労回復
  • 美容

は医療関連性のある目的だから、これらの目的でマッサージを行う場合にはあん摩マッサージ指圧師の免許が必要である。

性的目的のマッサージ(類似行為、リラクゼーション)

法令上はいわゆるファッションヘルスやデリヘルが該当しよう。

 

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条

6 この法律において「店舗型性風俗特殊営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。


一 浴場業(公衆浴場法(昭和二十三年法律第百三十九号)第一条第一項に規定する公衆浴場を業として経営することをいう。)の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業*3


二 個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業(前号に該当する営業を除く。)
(以下省略)

7 この法律において「無店舗型性風俗特殊営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。


一 人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの
(以下省略)

 なお「異性の客」とあるので、同性を対象にした性的サービスは性風俗営業の規制対象外である。

www.bengo4.com

日本標準産業分類には「リラクゼーション」というのがあるのだが、ファッションヘルスは無い。

なので総務省に、ファッションヘルスはリラクゼーションに含まれるのかを問い合わせたところ、含まれるという回答であった。

 

接待目的のマッサージ

医療関連性や性的目的では無い目的をこうカテゴライズした。

なお、「接待」というのも風営法に書かれている表現であり、警察庁は「接待」の解釈について通達を出している。

https://www.npa.go.jp/laws/notification/seian/hoan/hoan20180130.pdf

7ページ目より

1 接待の定義
接待とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」をいう。
この意味は、営業者、従業者等との会話やサービス等慰安や歓楽を期待して来店する客に対して、その気持ちに応えるため営業者側の積極的な行為として相手を特定して3の各号に掲げるような興趣を添える会話やサービス等を行うことをいう。言い換えれば、特定の客又は客のグループに対して単なる飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為等を行うことである。

(中略)
また、接待は、通常は異性によることが多いが、それに限られるものではない

 

3 接待の判断基準

(中略)

(6) その他

客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する行為は、接待に当たる。ただし、社交儀礼上の握手、酔客の介抱のために必要な限度での接触等は、接待に当たらない。
また、客の口許まで飲食物を差出し、客に飲食させる行為も接待に当たる。
これに対して、単に飲食物を運搬し、又は食器を片付ける行為、客の荷物、コート等を預かる行為等は、接待に当たらない。

接待として身体に触れる営業自体は風営法では規制されていない。接待のある飲食店、例えばキャバクラなどは接待飲食店として風営法の規制対象である。

 

というわけで、あん摩マッサージ指圧師の免許を持たず、性風俗店の届け出をしてない店で、マッサージのような行為をしている場合、キャバクラ呼ばわりされても当然なのである。

 

binbocchama.hatenablog.com

 

なお、性風俗店ではないレベルの身体接触役務を規制するものとしては東京都の特定異性接客営業等の規制に関する条例というのがあるが、それはあくまでJKビジネス規制に限定される。

http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/about_mpd/keiyaku_horei_kohyo/horei_jorei/jkbusiness_reg.files/jorei.pdf

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。


(1) 青少年

18歳未満の者をいう。

(2) 特定異性接客営業

店舗型特定異性接客営業及び無店舗型特定異性接客営業をいう。

(3) 店舗型特定異性接客営業

次のいずれかに掲げる営業であって、青少年が客に接する業務に従事していることを明示し、若しくは連想させるものとして東京都公安委員会規則(以下「公安委員会規則」という。)で定める文字、数字その他の記号、映像、写真若しくは絵を営業所の名称、広告若しくは宣伝に用いるもの又は青少年が客に接する業務に従事していることを明示し、若しくは連想させるものとして公安委員会規則で定める衣服を客に接する業務に従事する者が着用するもので、青少年に関する性的好奇心をそそるおそれがあるもの風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号。以下「法」という。)第2条第1項に規定する風俗営業、同条第6項に規定する店舗型性風俗特殊営業又は同条第11項に規定する特定遊興飲食店営業に該当するものを除く。)をいう。


イ 店舗を設け、当該店舗において専ら異性の客に接触し、又は接触させる役務を提供する営業


ロ 店舗を設け、当該店舗において専ら客に異性の人の姿態を見せる役務を提供する営業

ハ 店舗を設け、当該店舗において専ら異性の客の接待(法第2条第3項に規定する接待をいう。第5号ニにおいて同じ。)をする役務を提供する営業(イに該当する営業を除く。)

ニ 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、客に接する業務に従事する者が専ら異性の客に接するもの

 

(4) 店舗型特定異性接客営業者

東京都の区域内において営業所を設けて店舗型特定異性接客営業を営む者をいう。


(5) 無店舗型特定異性接客営業

次のいずれかに掲げる営業であって、青少年が客に接する業務に従事していることを明示し、若しくは連想させるものとして公安委員会規則で定める文字、数字その他の記号、映像、写真若しくは絵を広告若しくは宣伝に用いるもの又は青少年が客に接する業務に従事していることを明示し、若しくは連想させるものとして公安委員会規則で定める衣服を客に接する業務に従事する者が着用するもので、青少年に関する性的好奇心をそそるおそれがあるもの(法第2条第7項に規定する無店舗型性風俗特殊営業に該当するものを除く。)をいう。

イ 専ら異性の客に接触し、又は接触させる役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの

ロ 専ら客に異性の人の姿態を見せる役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの

ハ 専ら異性の客に同伴する役務を提供する営業(イ又はロに該当する営業を除く。)

ニ 専ら異性の客の接待をする役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの(イ又はハに該当する営業を除く。)

(以下省略)

 

風営法性風俗特殊営業が「 異性の客の性的好奇心に応じて」というのに対し、東京都の条例は「青少年に関する性的好奇心をそそるおそれがあるもの」という点が違う。

JKビジネスは性的サービスではない、という建前であるから風営法の規制は受けない。なので東京都(警視庁)が条例を作ったわけである。

 

まあ、接待目的の中でも、性的好奇心をそそるか否かで分けるべきかもしれないが。

特定した、とかネットで騒がれているような店は写真などを見る限りでは「性的好奇心をそそる」と言えそうである。

 

とりあえず、あん摩マッサージ指圧師の免許を持たず、性風俗店としての届け出もせずに営業できる「マッサージ」などの身体に接触する役務は接待目的に限定されると言える。

接待目的のマッサージ(リラクゼーション)の規制の必要性

さて、今回の新井浩文容疑者の事件、営業が合法であることを前提にするなら被害にあったセラピストは接待目的の営業だ。

 

そして性風俗店でない「派遣マッサージ」で性風俗店まがいの「交渉」が行わたり、強引に性行為をされる危険性があるのは最初に掲載した記事のとおり。また届け出をせずに性風俗営業をして逮捕されている事例もある。

 

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 警察白書でも

(2)売春事犯及び風俗関係事犯の現状
① 売春事犯
平成27年中の売春事犯の総検挙人員に占める暴力団構成員等(注)の割合は19.3%(104人)と、依然として売春事犯が暴力団の資金源になっていることがうかがわれる。

最近では、インターネットの出会い系サイト等を利用する事犯のほか、マッサージ店やエステ店を仮装した違法性風俗店における事犯など、潜在化傾向がみられる。

と書かれている。*4

そして性風俗店ではないJKビジネスを警視庁が条例で規制しているのは前述のとおり。

 

なので接待目的のマッサージ類似行為は風営法で規制すべきと考える。

 

*1:○あん摩師、はり師、きゅう師又は柔道整復師の学校又は養成所等に在学している者の実習等の取り扱いについて
昭和三八年一月九日医発第八号の二各都道府県知事あて厚生省医務局長通知

*2:

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面

*3:いわゆるソープランド

*4:

https://www.npa.go.jp/hakusyo/h28/honbun/html/s2150000.html

新井浩文(パク・キョンベ)容疑者を厳罰に処するなら、被害者のセラピストも処罰すべき

俳優の新井浩文容疑者が強制性交罪の容疑で逮捕されたそうである。

 

 

被害者の所属する店に関する「派遣マッサージ店」と「派遣エステ店」という報道

例えば読売新聞の報道

新井容疑者「やっていないこともある」一部否認 : 国内 : 読売新聞オンライン

マッサージ店の女性従業員に乱暴したとして、警視庁は1日、俳優・新井浩文(本名・朴慶培パクキョンベ、韓国籍)容疑者(40)(東京都世田谷区太子堂)を強制性交容疑で逮捕した。調べに対し、事実関係を大筋で認めているが、「押さえつけてはいない」などと一部否認しているという。

 発表によると、新井容疑者は昨年7月1日未明、自宅マンションで、出張マッサージ店から派遣された30歳代の女性従業員の頭を押さえつけるなどした上で性的暴行を加えた疑い。

 同店は「セラピスト」と呼ばれる女性従業員がマッサージをし、客に性的サービスがないことへの同意書の署名を求めている。新井容疑者も、昨年3月に初めて利用した際に署名していた。事件当日は4回目の利用で、この女性従業員を指名したのは初めてだったという。

(強調は筆者による。以下同様。)

 

というわけで出張マッサージに来た女性従業員を強姦した容疑である。

 

で、NHKの報道。

新井浩文容疑者 禁止事項の書類にサイン 違法性を認識か | NHKニュース

東京 世田谷区の俳優、新井浩文容疑者(40)は去年7月、東京・世田谷区の自宅で、派遣型エステ店で働く30代の女性セラピストに性的な暴行をしたとして、1日、警視庁に逮捕されました。

エステ店」と報道している。

 

この違いは何か。

疲労回復などのマッサージを業とするにはあん摩マッサージ指圧師の免許が必要である。

この「出張マッサージ」、性的なサービスではなく、健全なマッサージである、という報道もある。

被害女性は俳優と分からず 熟練セラピストでショックで店辞める― スポニチ Sponichi Annex 芸能

出張マッサージ店は風俗店ではなく、性的なサービスはなかった。新井容疑者も昨年3月の初回利用時に「本番行為禁止」とした旨の念書に署名押印している。捜査関係者は「女性は抵抗したが、どうしようもなかったようだ」と話した。被害女性はマッサージのレッスンを受けた熟練のセラピストで、事件のショックにより同店を辞めている。

 

さて、業としてマッサージを行う場合、医師免許か、あん摩マッサージ指圧師免許が必要である。

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(以下「あはき法」)


第一条 医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。

私的にレッスンを受けていたとしてもそれは無免許マッサージの罪の免責理由にはならない。

 

で、そのマッサージ(あん摩、指圧)の定義であるが厚生省の通知では

法第一条に規定するあん摩とは、人体についての病的状態の除去又は疲労の回復という生理的効果の実現を目的として行なわれ、かつ、その効果を生ずることが可能な、もむ、おす、たたく、摩擦するなどの行為の総称である。*1

とされている。

 

なので性的な目的でマッサージを行うのであればマッサージ師免許は不要であるし、疲労回復などの健全な目的でマッサージを行うのであればマッサージ師免許が必要である。

 

 

しかし疲労回復などのマッサージであっても、無免許で営業しているのが多数である。

彼らの言い分は「マッサージとは違う手技である。」とし、リラクゼーションとかボディケアとかと称している。

そしてそれらの施術者は「セラピスト」と名乗ることが多い。

「マッサージ師」ではなく、「セラピスト」と名乗っている時点で無免許業者とほぼ判断できる。

 

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しかし名称を変更していようとも、実態が疲労回復などを目的としたマッサージである場合、無免許で業として行えば犯罪である。

 

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 NHKが「エステ店」と報道

記事冒頭にも引用したように、ほとんどの報道機関は被害者を「出張マッサージ店のセラピスト」と表現していたが、NHKでは「派遣エステ店」と表現している。

 

これはマッサージ師の業界団体とNHKの間でドキュメント72時間の放送内容に関し、一悶着があったため、NHKは無免許マッサージの問題を認識しているためである。

 

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平成29年度第7回あはき等法推進協議会開催 | 社会福祉法人 日本盲人会連合

協議会終了後、昨年11月24日に放送(12月2日再放送)されたNHKドキュメント72時間「“コリ”にまつわるエトセトラ」が無免許者を助長するような内容だったことについて番組担当者との話し合いを行いました。NHKは放映の訂正等は行わないが今後はデーターベース化して局内で情報を共有するとの回答でした。

「本番行為禁止」のマッサージ店?

前掲のスポニチの記事を再び引用する。

被害女性は俳優と分からず 熟練セラピストでショックで店辞める― スポニチ Sponichi Annex 芸能

出張マッサージ店は風俗店ではなく、性的なサービスはなかった。新井容疑者も昨年3月の初回利用時に「本番行為禁止」とした旨の念書に署名押印している。

免許を持ったマッサージ店でも性的サービスではないことを注意している店舗・施術所はある。

実際、そういうトラブルを経験している鍼灸マッサージ師もいる。

 しかしそういう合法なマッサージ店で「本番行為禁止」の念書を取るのは聞いたことがない。

 

NHKでは

その後の調べで、新井容疑者はエステ店が用意した、女性の体に触れるなどの禁止事項を記した書類にサインしていたことが、捜査関係者への取材でわかりました。さらに女性は、禁止事項を読み上げて伝えていたということです。

新井浩文容疑者 禁止事項の書類にサイン 違法性を認識か | NHKニュース

と報道している。「女性の体に触れるなどの禁止事項」が合法なマッサージ店でも注意されることがあるのは前述のとおり。

しかしNHKのテレビやラジオで「本番行為禁止」なんて放送するわけにもいかないでしょう。

 

「本番行為禁止」の念書を取るなんて明らかに性風俗店ではないか。

それなら無免許で「マッサージ」をしていてもあはき法上は問題ない。

風営法上はともかくとして。

 

被害者を派遣した店は無免許マッサージなり、風営法違反で処罰されるべき

というわけで、健全なマッサージ店だったら無免許マッサージだし、性的なサービスを行い、公安委員会に届け出をしてなかったら風営法違反だ。

そして派遣した店は性的サービスでは無い、としている以上、公安委員会には届け出をしていまい。

 

どちらにせよ派遣した店舗は処罰されるべきである。

 

今回の事件では「マッサージ」の状況も検証されるだろうから、立証が面倒だから無免許マッサージや風営法違反の立件をしない、という言い訳はできないはずである。 

 

 なお、無届け出の性風俗店営業の場合、従業員は処罰対象にはならなかったように思うが、風営法には詳しくない。

これが無免許マッサージの場合はマッサージをした従業員も処罰対象である。

 

(2019/02/20追記)

過去には無免許での派遣マッサージ店があはき法違反で摘発されている。

www.e-shugi.jp

 無資格のマッサージ師を全国の健康ランドやホテルに派遣していたなどとして、神奈川県警生活経済課と厚木署は、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師等に関する法律違反の疑いで、東京都新宿区のマッサージ師派遣会社「エーワン」の会長と社長(会長の実弟)の両容疑者を逮捕しました。

 同課の調べでは、両容疑者は、横浜市瀬谷区の健康センター内に、県知事に無届けでマッサージ施術所を開設し、6月15日~7月26日の間、無資格のマッサージ師4人を使い13回にわたり、同区内の美容師女性ら9人にマッサージを行わせたということです。
 4人のうち中国人男女2人がすでに逮捕されていました。
 当時同社所属のマッサージ師は700人いましたが、そのうち522人は無資格だったとも伝えられています。

(2019/02/20追記終わり)

 

(追記)

無免許マッサージの危険性を軽く見られる方もおられるようである。

 

しかし、無免許マッサージで健康被害は発生しており、子供も殺されているのである。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/consumer_safety_release_170526_0002.pdf

www.j-cast.com

 

(追記2)

こんな具合に表向きは(無免許)マッサージ店として営業し、性風俗営業をしているケースもあります。

 

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(追記3)

もし、健全なマッサージ業務(無免許マッサージ、違法行為)という前提で新井容疑者を強姦罪に問う場合、被害者も無免許マッサージで処罰されなければいけないのは本文で述べたとおり。

 

もし、無免許マッサージを処分しない場合、被害者の業務に関する証言は不起訴処分を前提にした可能性が否定できなくなる。 

 そういう不起訴処分を約束されての証言は証拠能力を持たない。

ロッキード事件で問題になり、証拠不採用となった。

司法取引 - Wikipedia

アメリカ合衆国在住の重要証人が、自己負罪拒否特権を理由に、日本での証言を拒否したのに対し、日本の検事総長(事件当時は布施健)が、刑事訴訟法第248条に規定された起訴便宜主義に基づき、起訴をしないことを約束し事実上の免責を与えて、アメリカ合衆国の裁判官に証人尋問を嘱託して作成した「嘱託証人尋問調書の証拠能力」が争われた。下級裁判所では、日本の法秩序の基本的理念や手続構造に反する重大な不許容事由を有するものでないとして、嘱託証人尋問調書の証拠能力を認めたが、最高裁判所は刑事免責に関する立法の欠如を理由に、嘱託証人尋問調書の証拠能力を否定した。

現在は司法取引制度が導入されているものの、それは企業犯罪、組織犯罪などが対象であり、性犯罪、業法違反などは対象外であるようだ。

日本版司法取引制度とは|2018年6月施行の背景と運用リスク|刑事事件弁護士ナビ

裁判においても『被疑者が、起訴不起訴の決定権をもつ検察官の、自白をすれば起訴猶予にする旨のことばを信じ、起訴猶予になることを期待してした自白は、任意性に疑いがあるものとして、証拠能力を欠くものと解するのが相当である』という解釈が定着しています。 

*1:○あん摩師、はり師、きゅう師又は柔道整復師の学校又は養成所等に在学している者の実習等の取り扱いについて
昭和三八年一月九日医発第八号の二各都道府県知事あて厚生省医務局長通知

爆発物取締罰則と医師法17条、あはき法12条の対比

前回の記事では、昭和35年判決に関し、人の健康に害を及ぼす虞の立証は必要無く、無免許業者がおそれが無いことを証明できなければ違法施術と判断して良い、という趣旨で書いた。

 

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その考えを補強するために、爆発物取締罰則を取り上げようと思う。

 

刑事裁判の立証責任

 刑事裁判は国家権力(検察)と個人の戦いであり、個人を刑罰にかけるものだから原則として検察に立証責任がある。いわゆる推定無罪の原則であり、刑事訴訟法336条に「犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない。」とある。

 

しかし、立証責任が被告人に転嫁されている罪もある。例えば名誉毀損罪は公共性、公益性、真実性が満たされれば例え他人の名誉を毀損したとしても罪にはならないが、これらの証明責任は被告人側にあるのである。

つまり真実であること、あるいは真実と確信する根拠があることを被告人が証明しないと名誉毀損罪が成立してしまうのである。

 

同様に被告人に立証責任を転嫁している例として、爆発物取締罰則があるのである。

爆発物取締罰則

今回の記事に関係する条文は以下の通り。

第一条 治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用シタル者及ヒ人ヲシテ之ヲ使用セシメタル者ハ死刑又ハ無期若クハ七年以上ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス

 

第三条 第一条ノ目的ヲ以テ爆発物若クハ其使用ニ供ス可キ器具ヲ製造輸入所持シ又ハ注文ヲ為シタル者ハ三年以上十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス

 

第六条 爆発物ヲ製造輸入所持シ又ハ注文ヲ為シタル者第一条ニ記載シタル犯罪ノ目的ニアラサルコトヲ証明スルコト能ハサル時ハ六月以上五年以下ノ懲役ニ処ス

 

明治時代の規則ですのでカナ表記です。

で、wikipediaより引用。

6条が、3条に規定する爆発物使用予備罪について「治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的」がないことの挙証責任を被告人側に負わせ、その証明ができなかった場合は3条に規定する罪の法定刑より軽い法定刑の範囲で処罰される旨規定している。つまり、両者の適用関係は以下のとおりとなる。

  • 上記目的が存在すると証明されたときは、3条の罪が成立
  • 上記目的が存在するか否か真偽不明のときは、6条の罪が成立
  • 上記目的の不存在が証明されたときは、3条の罪も6条の罪も不成立

第1条の「治安を妨げ又は人の身体財産を害せんとするの目的」を加害目的とします。

爆発物等を製造、輸入、所持又は注文した場合、

  • 加害目的が存在すると証明されたときは3条の罪が成立し、3年以上10年以下の懲役又は禁固
  • 加害目的が無いことを証明できない場合は6条の罪が成立し、6ヶ月以上5年以下の懲役
  • 加害目的が無いことが証明されたら無罪

となります。

あはき法第12条と医師法第17条と保健衛生上の危険性

昭和35年判決は「医業類似行為を業とすることを禁止処罰するのも人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局する趣旨と解しなければならない」と判示している。

 

一方、医行為の定義としては「医学上の知識と技能を有しない者がみだりにこれを行うときは保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」とされている。*1

昭和35年判決の「人の健康に害を及ぼす虞」も「保健衛生上危害を生ずるおそれ」も意味としては一緒であろう。これらを「保健衛生上の危険性」とする。

 

私としては無免許での医療関連性のある行為に関しては

  • 保健衛生上の危険性が存在すると証明されたときは医師法第17条違反となり、3年以下の懲役、100万円以下の罰金
  • 保健衛生上の危険性が無いことを証明できない場合にはあはき法第12条違反となり、50万円以下の罰金
  • 保健衛生上の危険性が無いことが証明されたら無罪

だと考えている。

そもそも昭和35年判決では、全く無害な行為まで禁止処罰するのは問題があると考えたのではなかろうか。

昭和35年判決に対する批判としては、人の健康に害を及ぼす虞があると証明されるまで、虞のある行為が放置される、ということがある。

そしてその結果、無免許施術による健康被害が多発し、消費者庁が無免許施術による健康被害の報告書を出す状況になっている。

そういう事実も加味すれば、当時はともかく、現在でも昭和35年判決を維持しようとすれば、無免許業者に対し、保健衛生上の危険性が無いことの立証責任を求めざるを得まい。

 

憲法31条との関係

解釈だけで立証責任を被告人に転嫁するのは罪刑法定主義を定めた憲法31条に違反するのでは?と疑問に思われるかもしれない。

爆発物取締罰則の6条はちゃんと規定が書かれているわけである。

 

しかしあはき法第12条は成文上、人の健康に害を及ぼす虞の有無に関わらず、無免許で行う治療又は保健目的の行為(医業類似行為)を禁止したものである。

そして憲法22条との関係はともかく、おそれの判断をせずに禁止処罰したとしても憲法31条には違反しない。

 

禁止処罰に制限を設けたのは最高裁の「解釈」であって、法律ではない。

よって、立証責任を無免許業者に転嫁しても憲法31条に違反するものではない。

医業類似行為の違法性の認定は「人の健康に害を及ぼすおそれ」について「判断」すれば良く、立証までは必要ない。

昭和35年判決ですが

ところで、医業類似行為を業とすることが公共の福祉に反するのは、かかる業務行為が人の健康に害を及ぼす虞があるからである。

それ故前記法律が医業類似行為を業とすることを禁止処罰するのも人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局する趣旨と解しなければならないのであつて、このような禁止処罰は公共の福祉上必要であるから前記法律一二条、一四条は憲法二二条に反するものではない。

とあるので、無免許施術を違法と言うには「人の健康に害を及ぼすおそれ」を立証しなければならない、という誤解があります。

で、再び判決文ですが

しかるに、原審弁護人の本件HS式無熱高周波療法はいささかも人体に危害を与えず、また保健衛生上なんら悪影響がないのであるから、これが施行を業とするのは少しも公共の福祉に反せず従つて憲法二二条によつて保障された職業選択の自由に属するとの控訴趣意に対し、原判決は被告人の業とした本件HS式無熱高周波療法が人の健康に害を及ぼす虞があるか否かの点についてはなんら判示するところがなく、ただ被告人が本件HS式無熱高周波療法を業として行つた事実だけで前記法律一二条に違反したものと即断したことは、右法律の解釈を誤つた違法があるか理由不備の違法があり、右の違法は判決に影響を及ぼすものと認められるので、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものというべきである。

と仙台高裁への破棄差戻しを決定したのである。

ちなみにこれは無罪判決ではなく、差し戻し控訴審で再び有罪判決になり、被告人は再び上告。そして上告が棄却されて有罪判決が確定しております。

 

で、「原判決は」、「HS式無熱高周波療法が人の健康に害を及ぼす虞があるか否かの点についてはなんら判示するところがなくと述べているわけですね。

 

あはき法第12条に関する最高裁判決はHS式無熱高周波療法以外にもう一つあり、昭和35年判決を引用しております。

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面

職権をもつて調査すると、あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法が医業類似行為を業とすることを禁止処罰するのは、人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局する趣旨と解すべきこと当裁判所の判例とするところである(昭和二九年(あ)第二九九〇号、同三五年一月二七日大法廷判決、刑集一四巻一号三三頁参照)

しかるに原判決は、被告人が業とした本件重畳電位波発信静電機療法と称する療法が人の健康に害を及ぼす虞があるか否かについて何ら判断するところがなく、ただ被告人が同療法を業として行つただけで前記法律一二条に違反したものと即断したのは、同法の解釈を誤つた違法があるか理由不備の違法があり、右の違法は判決に影響を及ぼすものと認められるので、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものというべきである。

「原判決は」被告が行った療法について「人の健康に害を及ぼす虞があるか否かについて何ら判断するところがなく」と判示しているわけです。

 

これらの判決文から、最高裁が問題にしたのは、原判決が「人の健康に害を及ぼす虞があるか否かについて何ら判断するところが」ない、ということが読み取れる。

 

つまり、最高裁が求めているのは「人の健康に害を及ぼす虞があるか否か」についての判断であって、虞の立証では無いのです。

 

HS式療法の最初の控訴審で「被告はHS式療法が有効無害であるとして、当該療法の禁止処罰は憲法22条に違反すると主張するが、被告は当該療法が無害である根拠を示していない。よって主張の前提が成り立たない。」と判示しておけば良かったんじゃないですかね。

 

HS式無熱高周波療法の差し戻し控訴審ではおそれを「立証」していたのですが、当時は医業類似行為の危険性についての統計は無かったのでしょう。

 

しかし、今は整体、カイロプラクティック、リラクゼーションなどの手技療法の健康被害については行政が報告書を出しております。

 

なので手技療法に関してはこの報告書を証拠として提出すれば、手技療法を行っている無免許業者に、人の健康に害を及ぼすおそれが無いことの立証責任を負わせることができます。

 

手技療法で健康被害が発生しているにも関わらず、無免許業者は安全性の証明をしていない。

これで人の健康に害を及ぼすおそれの有無についての判断を示せるわけです。

 

それで違法と言えるか?

 

個別の手技療法の危険性を証明しないから理由不備の違法がある、と無免許業者は主張するかもしれません。

 

それに関しては歯科医師法違反の判例が参考になります。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=58368

 弁護人松本健男、同田中泰雄の上告趣意のうち、憲法三一条、二二条一項違反をいう点は、印象採得、咬合採得、試適、装着等は、歯科医業に属するものであり、歯科医師でなければ何人もこれを行うことができないとすることが憲法三一条、二二条一項に違反するものでないこと、及び、歯科医師法一七条、二九条一項一号が、所論のように明らかに患者に対し保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為のみに適用されるとの限定解釈を施さなくても、右憲法条項に違反するものでないことは、いずれも当裁判所の判例(昭和三三年(あ)第四一一号同三四年七月八日大法廷判決・刑集一三巻七号一一三二頁)の趣旨に徴し明らかであるから、所論違憲の主張は理由がなく、判例違反をいう点は、所論引用の判例は事案を異にし本件に適切でなく、その余は、単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。

歯科医師法違反事件の小法廷判決なので、あはき法違反で引用することは難しいですが、ここで引用されている大法廷判決を引用しましょう。

この大法廷判決は司法書士法違反事件でも引用されております。

 思うに、印象採得、咬合採得、試適、嵌入が歯科医業に属することは、歯科医師法一七条、歯科技工法二〇条の規定に照し明らかであるが(なお、昭和二六年(あ)四四七六号、同二八年六月二八日第二小法廷判決、集七巻六号一三八九頁参照)、右施術は総義歯の作り換えに伴う場合であつても、同じく歯科医業の範囲に属するものと解するを相当とする。

 

けだし、施術者は右の場合であつても、患者の口腔を診察した上、施術の適否を判断し、患部に即応する適正な処置を施すことを必要とするものであり、その施術の如何によつては、右法条にいわゆる患者の保健衛生上危害を生ずるのおそれがないわけではないからである。

されば、歯科医師でない歯科技工士は歯科医師法一七条、歯科技工法二〇条により右のような行為をしてはならないものであり、そしてこの制限は、事柄が右のような保健衛生上危害を生ずるのおそれなきを保し難いという理由に基いているのであるから、国民の保健衛生を保護するという公共の福祉のための当然の制限であり、これを以て職業の自由を保障する憲法二二条に違反するものと解するを得ないのは勿論、同法一三条の規定を誤つて解釈したものとも云い難い。所論は、右に反する独自の見解に立脚するものであつて、採るを得ない。

 

「明らかに患者に対し保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為のみが禁止されるわけではなく、そう解釈しても憲法に違反するものでない。」と主張しましょうか。

 

あと医師法違反の最高裁判決でも

なお、コンタクトレンズの処方のために行われる検眼及びテスト用コンタクトレンズの着脱の各行為が、いずれも医師法一七条にいう「医業」の内容となる医行為に当たるとした原判決の判断は、正当である。

とあり、この「原判決の判断」は

 なお、所論は、本件で医師法に違反するとされた検眼、コンタクトレンズの着脱の各行為は、人体に対し何らの危険性も認められないと主張するので、この点についてさらに考察するに、医師法一七条がその取締りの根拠としている無資格者の行う医業における危険は、抽象的危険で足り、被診療者の生命、健康が現実に危険にさらされることまでは必要としないと解するのが相当であり、所論の当否もこの観点から決すべきである。

とした上で、

記録によれば、それ(注:行政通知)が発せられた当時からみると現在では医療機器等の格段の進歩が認められ、検眼機を用いての検眼及びテスト用コンタクトレンズの着脱自体による人体への危険は相当程度減少しているということができるが、なお担当者の医学的知識が不十分であることに起因し、検眼機の操作、データの分析を誤り、またテスト用コンタクトレンズ着脱の際に眼球損傷、細菌感染を招くとかコンタクトレンズの適合性の判断を誤る等の事態が皆無とはいえないうえ、特に最終的にコンタクトレンズの処方をすることを目的としてこれらの行為が行われる本件のような事案においては、検眼またはテスト用コンタクトレンズ着脱時の判断の誤りがひいてコンタクトレンズの処方の誤りと結び付くことにより、コンタクトレンズを装着した者に頭痛、吐き気、充血、眼痛、視力の低下等の結果をもたらし、最悪の場合は失明に至る危険性もないとはいえないことが認められる。

そうすると、少なくとも処方のために行われる検眼及びコンタクトレンズの着脱の各行為については、原判決のようにこれをコンタクトレンズの処方の一部というかどうかはともかくとしても、実際に各患者に対してコンタクトレンズを処方した場合はもとより、原判決別表番号7、8及び10の事案のようにたまたま事情があって診療当日処方するまでに至らなかった場合を含め、行為の性質上すべて医行為に当たるというべきである。

と判断しております。

合理的な疑いを差し挟む余地

推定無罪という言葉がありますが、刑事裁判における有罪の認定に当たっては,合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要です。

で、それがどの程度か?ということに関しては判例があります。

要旨としては

有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」というのは,反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいうものではなく,抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いをいれる余地があっても,健全な社会常識に照らしてその疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には有罪認定を可能とする趣旨である。

ということです。

 

手技療法による健康被害が発生している状態で、とある無免許業者が手技療法を行い、医師などの専門家による安全性の証明を受けていない場合、健全な社会常識に照らせばその療法は人の健康に害を及ぼす虞がある、と言えるのではないでしょうか?

 

 

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難聴を治癒すると称して祈祷と療術を施し高額の料金を取得した行為に公序良俗に反する部分があるとした事例

消費者庁がまとめてた、消費者問題に関する裁判例の資料【PDF】です。

http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/review_meeting/pdf/140917_shiryou01-3.pdf

タイトルの裁判例は、PDFの一番最後のページに書いてあります。

昭和58年3月31日判決 名古屋地裁 昭和54(ワ)2242 判時1081号104 頁

下線部は消費者庁より。その他の強調は筆者による。

漢数字は算用数字に置き換えた。

公序良俗違反の契約無効による返還請求)


三 前記一、3で認定した被告の療術行為が医師法17条で禁止されている医業の内容である医療行為に当たるとは認められず、またあん摩師・はり師・きゆう師及び柔道整復師法12条で禁止されている医業類似行為に当たるものとも認められない

 そして前認定のごとき被告の加持祈とうはそれ自体が公序良俗に反するということができないのはもちろんである。

 

 しかしそれが人の困窮などに乗じて著しく不相当な財産的利益の供与と結合し、この結果当該具体的事情の下において、右利益を収受させることが社会通念上正当視され得る範囲を超えていると認められる場合には、その超えた部分については公序良俗に反し無効となるものと解すべきである。

 

 本件においては前記一で認定したように、原告をはじめその家族は、師からも見放された春子の難聴を治すため、いわば藁をも掴みたい心境にあり、これに対し被告は過去に難病を治癒させた例のあることを引き合いに出し、春子の難聴も治癒できる旨言明して、原告を契約締結に誘引し、そして昭和51年11月26日から昭和54年3月3日まで、この間春子の難聴はいっこうに回復の兆しがなかったのに、再三治ると繰り返し、合計737回にわたり春子を殆ど毎日のように通わせて加持祈とうを継続し、一回金8,000円による合計金589万6,000円という高額な料金を取得したものであって、以上のような事情の下では、被告に対し右料金全額の利得をそのまま認めるのは著しく不相当であり、社会一般の秩序に照らし是認できる範囲を超えているものといわざるを得ない。

しかして前記一認定のように、被告が属している善導会では1回の料金が金2,000円と決められていること、また被告は最初春子の難聴を1年のうちに治す旨言明し、しかも前記のように高額な料金を取得し続けてきたのであって、かかる点からすると、療術開始後相当期間経過してもなお症状に回復の兆しがなければ、原告に対しその事情を通知し、療術を続けることの再考を促し、損失の不当な拡大を防止すべきであったと認められること、その他本件にあらわれた諸般の事情を考慮すると、被告が原告から支払を受けた料金のうち、昭和51五1年11月26日から昭和52年12月までの間合計354回について1回当り金2,000円による合計金70万8,000円については被告の取得を是認できないわけではないが、その余の金518万8,000円について被告の取得を認めるのは公序良俗に反し、契約はその限度で無効である。

 

認定した被告の療術行為ですが

  3 被告のした施術ないし加持祈とうの大要は以下のとおりであった。

(一)バイブレーターによるマッサージ。患者の着衣の上にタオルを置き、その上から約一五分間、市販のバイブレーターを用いて身体をマッサージする。

(二)高野山温灸患者の身体の上にタオルと八つ折りにした市販の紙を重ねて置き、その上から高野山燈心会本部特製の円筒形のもぐさの固まり(直径約一・五センチ、長さ約一五センチ)に点火した部分で軽く圧して皮ふを温める。全身数十箇所のつぼに約一〇分間施す。

(三)高野山オリーブ油を脱脂綿にしみこませて耳に入れる。

(四)吸引。直径約一・八センチ、長さ約四・五センチのガラス製の円筒形の器具を用いて、患者の首の皮ふを押圧して引っ張る。一〇回位施す。

(五)抜き取り封じ。市販のプラスチック製の色付きコップにざらめ砂糖を入れ、その上に人形を印刷してある形を細かく折って入れ、コップに蓋をする。その蓋の上に善導会本部会長小松観晃から買受けた紙(悪霊を押さえる意味の梵字が印刷されている。)を約一〇分間呪文を唱えながら糊ではりつける。

(六)延命封じ。鬼を追い払う意味の文字や六体地蔵の図案が書いてある紙を患者の身体に当て、これを二重に封筒に入れて川に流す。

ちなみに被告は医師免許や鍼灸マッサージ師の免許を持っているわけではない。

難聴の治療と称してこれらの行為を行うのはマッサージや灸、医業類似行為ではないか?と思うわけで、この判決は我々にとって受け入れがたいものである。

 

昭和35年判決前であるが、下記の行為は医業類似行為として有罪となっている。

被告人が本件において行つた施療行為は、疾病の患部に新聞紙片を八つ折にしたものをあて、その上を「ほう」の木の丸棒の一端に火を点じたもので押えて、疾病を治療するという方法であつて、この方法による施療行為を原判示のようになしたことは、被告人の認めるところであり、原判決挙示のその余の証拠によつて、これを認めるに十分である。


そして、右方法による施療行為は、本法にいうあん摩、はり、きゆう又は柔道整復の術には該当しないと解することができるけれども、疾病治療の方法として行つた右施療行為は、本法第十二条に所謂医業類似行為に該当すると解するを相当とする

名古屋高裁昭和30年(う)768

 

ところで、この判決文の全文は判例データベースで読めるのだが、実は原告は被告の療術行為が医行為であるとか、医業類似行為であるとは主張していないのである。

もちろん、被告も医業類似行為に該当するかどうかの主張をしていない。

判決理由のところでいきなり「医業類似行為」という言葉が出てくるのである。

弁論主義というルール

民事訴訟には弁論主義というルールがあり、原告、被告ともに主張していない事実を判決の理由にしてはいけないのである。

 

仮に、この裁判官(この事件は裁判官は一人である。単独事件という。)が、被告の療術行為を医業類似行為と認定し、違法施術の契約だから民法90条に違反し無効。だから全額返金しろ、という判決を書いたとする。

 

そうすると被告は弁論主義に反する、という理由で控訴し、高裁も控訴を認めることになる。

 

なので、原告の主張の範囲内でしか賠償額を認定できない。

原告の公序良俗違反に関する主張は下記のようなものであった。

  3 公序良俗違反の契約無効による返還請求

 (一) 春子の難聴は現在の西洋医学による治療を見離され、物理的療法である訓練以外に方法がないと診断され、このため当時原告としては藁をも掴む気持であった。そこに前記のような被告の自信に満ちた言葉があって、原告はその療法を信じて本件治療契約を締結したものである。かような被告の行為は何としても子の病気を治したい親の弱みにつけこんで、法外な料金を博する暴利行為であり、本件治療契約の正当な対価を超えた部分は公序良俗に反し無効である。そして本件治療契約における正当な対価は一回につき金一、〇〇〇円を超えない。

 (二) 従って被告は原告に対し受領済みの前記治療費のうち右超過分を返還すべき義務がある

これに基づいて、判決を書いたわけである。

3とあるので1,2もあるのだが債務不履行に基づく損害賠償請求、治療費返還契約に基づく請求だったのでさすがに認めるわけにはいかなかった。

この判決、消費者取引判例百選にも載ってたりする、先駆的な判断である。

 

消費者取引判例百選 <別冊ジュリスト135>

消費者取引判例百選 <別冊ジュリスト135>

 

 

ということはこの時点で、この判決が控訴審でひっくり返される可能性は否定できない状況である。

被告の控訴は予想できることである。

だから裁判官は控訴審での答弁で、控訴棄却、あるいは原告が控訴して満額を取れるように「医業類似行為」という単語を判決で書いたのでは無いかと思われる。

まさに判官びいきである。これは裁判官が一人であったからこそ書けたのだろう。

合議事件(裁判官が3人)では書けないのでは無かろうか?

 

この当時(昭和58年)はそんなにコンピューターは普及してなかっただろうし、判例データベースなんて無く、紙の判例集に当たらなければならない時代だった。

なので原告代理人の弁護士が、医業類似行為という概念やあはき法を知らなくても仕方なかったのである。

 

控訴審の行方

判例データベースで見てみるとこの事件は「控訴」と書かれている。

しかし、控訴審は収録されていないようである。

おそらく和解か、和解せずに控訴を取り下げたと思われる。

データベースの表示からはどちらが控訴したのか、それとも両方控訴したのかは読み取れない。

それぞれの控訴は以下のようなものだろう。

 

被告主張

原審判決の取り消しを求める。

原告の請求の棄却を求める。

原告主張

被告の療術行為は医業類似行為であり、違法な施術契約であるから民法90条に違反して無効。

全額返せ。

当時の判例

さて、医業類似行為であっても昭和35年判決により、違法施術と言うには「人の健康に害を及ぼすおそれ」を証明しなければいけないのでは?という疑問もあるだろう。

 

この当時には無資格施術による健康被害をまとめた消費者庁の報告書国民生活センターの報告書は無い。

しかしこの事件は無効な治療による暴利行為である。

治らない治療行為を規制するのも、あはき法第12条の目的であることはあはき法制定時の国会議事録からも読み取れる。

 

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そしてこの当時(昭和58年)、薬事法に関しては以下の最高裁判決がすでに出ていた。

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面

一 薬事法一二条が製造業の許可を受けないで業として製造することを禁じている医療用具で同法二条四項、同法施行令一条別表第一の三二に定めている「医療用吸引器」は、陰圧を発生持続させ、その吸引力により人(若しくは動物)の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること又は人(若しくは動物)の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことを目的とする器具器械であれば足り、必ずしも電動力等の強力な動力装置を備えているもの又は専ら手術に用いられるものに限定されず、また、人の健康に害を及ぼす虞が具体的に認められるものであることを要しない

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面

 一 薬事法二条一項二号にいう「医薬品」とは、その物の成分、形状、名称、その物に表示された使用目的・効能効果・用法用量、販売方法、その際の演述・宣伝などを総合して、その物が通常人の理解において「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている」と認められるものをいい、これが客観的に薬理作用を有するものであるか否かを問わない。このように解しても、憲法三一条、二一条一項、二二条一項に違反しない。


二 その名称、形状が一般の医薬品に類似している本体「つかれず」及び「つかれず粒」(いずれもクエン酸又はクエン酸ナトリウムを主成分とする白色粉末又は錠剤)は、たとえその主成分が、一般に食品として通用しているレモン酢や梅酢のそれと同一であつて、人体に対し有益無害なものであるとしても、これを、高血圧、糖尿病、低血圧、貧血、リユウマチ等に良く効く旨その効能効果を演述・宣伝して販売したときは、薬事法二条一項二号にいう「医薬品」にあたる。

 

これらの最高裁小法廷判決で引用している大法廷判決が以下である。

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面

同法がかような登録制度をとつているのは、販売される医薬品そのものがたとえ普通には人の健康に有益無害なものであるとしても、もしその販売業を自由に放任するならば、これにより、時として、それが非衛生的条件の下で保管されて変質変敗をきたすことなきを保しがたく、またその用法等の指導につき必要な知識経験を欠く者により販売されこれがため一般需要者をしてその使用を誤らせるなど、公衆に対する保健衛生上有害な結果を招来するおそれがあるからである

このゆえに、同法は医薬品の製造業についてばかりでなく、その販売業についても画一的に登録制を設け、同法二条四項にいわゆる医薬品に該当する限りその販売について、一定の基準に相当する知識経験を有し、衛生的な設備と施設をそなえている者だけに登録を受けさせる建前をとり、もつて一般公衆に対する保健衛生上有害な結果の発生を未然に防止しようと配慮しているのであつて、右登録制は、ひつきよう公共の福祉を確保するための制度にほかならない

されば、旧薬事法二九条一項は、憲法二二条一項に違反するものではなく、これと同趣旨に出た原判決は相当であつて、論旨は理由がない。

というわけで、この大法廷判決を引用すれば昭和35年判決を変更することは可能だったと思われる。

この大法廷判決を引用している最高裁小法廷判決は同じ薬事法のものが多いが、旅行業法の憲法判断でも引用されている。

 

和解か控訴取り下げ?

控訴は判決文の送達を受けてから二週間以内にしなければならない。

判決に不服があればとりあえず控訴してから控訴理由を検討する、というのが通常らしい。

被告は控訴した後、時間をかけて検討したら成文上、あはき法第12条に違反することを知ったはずである。そして昭和35年判決も知っただろうが、そこで憲法22条の判例を調べたら上記の薬事法判例が出てくるのである。

 

原告は、被告の療術行為が医業類似行為であり、違法行為だから民法90条に違反して無効と主張してくるだろう。

そこで人の健康に害を及ぼすおそれの立証を求めた場合、薬事法の大法廷判決を引用して、判例を変えてくる可能性がある。

実際、昭和48年の全農林警職法事件判決では国家公務員法のスト禁止に関する限定解釈の判例が変えられた。

 いわゆるD事件についての当裁判所の判決(昭和四一年(あ)第一一二九号同四四年四月二日大法廷判決・別集二三巻五号六八五頁)は、本判決において判示したところに抵触する限度で、変更を免れないものである。

 

もし、自分の療術行為が違法行為と裁判所に認定されたら、他の患者からも返還訴訟を起こされるおそれがある。

 

このようなリスクが有るなら一審で認められた賠償金は諦めてしまおう。

 

これで原告側が控訴していなければ、被告が控訴を取り下げれば済む話である

 

ただし、原告側が控訴していれば、自分が控訴を取り下げても裁判は行われる。

それなら全額認めて和解しよう。そうすれば裁判所から違法行為と判断されずに済む。

口外不可条項もつければ良し。

 

というわけで、被告側は控訴の取り下げや和解をする動機は十分です。

 

原告側からすればさっさと支払ってもらった方が楽なのです。

 

今までも無免許施術の返金訴訟はあったかもしれません。

消費者契約法で返金を求めて敗訴した事案が国民生活センター判例集には載っております。

http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20131121_2.pdf

東京地裁平成25年3月26日判決

 

原告の主張

消費者である原告は、肩こりや頭痛などの症状についてインターネットで通院先を探し、被告らとの間でカイロプラクティックの施術契約を締結し、施術を受けた。

原告は、被告らが、原告の猫背、頭痛、肩こりはカイロプラクティックによる施術によって治るとは限らないにもかかわらず、それを故意に告げず、かえって、原告らの症状が治ると将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供したため、原告は、本件各施術によって症状が治るのが確実であると誤認したと主張し、法4条2項により本件各施術契約を取消す旨の意思表示をし、不当利得の返還請求をした。

 

判決の内容

カイロプラクティックの施術における「猫背、頭痛、肩こりの症状を改善させる効果の有無」については、消費者契約の目的となる役務についての「質」に該当すると認められる。

被告らが、本件各施術によって猫背、頭痛、肩こりの症状が改善していく旨の説明をしたことは認められるが、施術によって症状が改善しないと認めることはできないから、被告らが本件各施術によって症状が改善しないにもかかわらず改善する場合があると告げたと認めることはできない。

また、被告らが、原告に対し症状が軽減、消失しないことを告知しなかったことが法4条2項に反するとはいえない。

そして、被告らが「猫背、頭痛、肩こりが治る」などという断定的明言をした事実を認めることはできず、原告において、猫背、頭痛、肩こりが確実に治ると誤信したと認めることは困難である。被告らが、症状が改善しない場合があることを故意に告げなかったとも認められない。

以上により、原告の本件各施術契約の申込みの意思表示につき、法4条2項に基づいて取消すことはできないとして、原告の請求を棄却した。

 

これ、施術者が無免許であるか否かは不明ですが、無免許であれば今回の記事で書いたように、違法施術だから民法90条に反する、と主張すべきでした。

そしてそのように主張して返金を求める裁判例を私は知りません。

仮にそういう請求をした裁判があっても前述の理由で和解で終わったのでしょう。

和解で終わった裁判は判例集には載りません。

 

この事件、私としては控訴審で戦って、判決を得てもらいたかったのですが。

そうすれば消費者庁国民生活センターの報告書に書かれている被害は少なくて済んだかもしれませんし、ずんずん運動で殺されずに済んだかもしれません。

 

ま、個人の利益と社会の利益が必ずしも一致しないのです。

 

あはき柔広告検討会議事録における、柔道整復師の業務範囲

柔道整復師法成立過程における国会議事録の記事はこちら。

binbocchama.hatenablog.com

もっぱらの要旨は

柔道整復師の場合は、その沿革等において、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等とは異なる独自の存在を有しており、また、その施術の対象も、もっぱら骨折、脱臼の非観血的徒手整復を含めた打撲、捻挫など新鮮なる負傷に限られているのであります

ということである。

そして現在、開催されているあはき柔の広告検討会では柔道整復術の内容に関し、日本柔道整復師会(日整)の三橋構成員などがいろいろ話している。

www.mhlw.go.jp

日本柔道整復師会|日本柔道整復師会とは 役員紹介

 

まず第2回議事録より

○三橋構成員

今、柔道整復師の看板について、骨折、脱臼、打撲、捻挫が書けるとおっしゃっていましたが、保健所からは、開設の際に接骨院であれば骨折、脱臼、打撲、捻挫という表記はするなと。接骨院と書けばそれしかできないのだからということで、看板の表記は外してくれと、必ず指導されております。

(中略)

そして、先ほどからいろいろと議論になっている自由診療の部分については、我々柔道整復師については自由診療は確かにありますが、これはいわゆる施術所の中で行われるものというのは占有面積で認められているものですから、柔道整復術以外のものはできないわけですので、例えば柔道整復術の中で認められているものを明記するぐらいは、我々としては可能かなと思いますが、なかなかこの自由診療の明記というのは非常に難しい、また特に料金の明記も非常に難しいのかなと思っているところです。

第3回議事録より

○三橋構成員

 今、坂本先生から意見も出ましたけれども、この本検討会は、医業類似行為というくくりで、いわゆる広告検討会をスタートしているわけなのですが、やはり柔道整復師、あはき、マッサージ、全部、法が違います。根本的に施術行務も違うわけですから、1つの枠の中で話し合って、また議論するというのは非常に難しいのかなと。本日もほとんどが柔道整復師に関することなので、いかがなものかなというふうに思いました。


 実は前にもお願いをして、作業部会でもいいので、何か議論ができる場所をつくってもらえないかという話もさせていただきました。その中で本日いろいろとお話を頂いて、例えば保険適用外という話がありましたけれども、実は我々柔道整復師にしてみれば実費診療、実費施術や保険適用外施術というのは、いわゆる柔道整復師しかないのですよね。

以前に恐らく医療機関でもあったと思うのですが、保険を使えるのだけれども承知で、例えば自分の設定をした金額で患者さんから費用を徴収するという形が、本来の自由診療あるいは実費施術であって、例えばカイロや整体、そういうものは我々の保険適用外ではないと。

我々のいわゆる実費セールス、保険適用外というのは柔道整復師しかないので、ほかに何かできるのかと逆に聞きたいぐらいの話です

第4回議事録より

○三橋構成員

 1つは、今、座長がお話しになったように、柔道整復師の業務というのは、明らかな骨折、打撲、捻挫、挫傷、あはきのほうはそうではなくて、いわゆる慢性に至っているものまで、医師の同意をもってやるとか、あるいはなくてもやっている場合もあるわけですね。

その中で、患者さんが見えたときに、例えば急性外傷でないものも同じ施術所の中で扱っていて、昔よくあった振替請求ということで、本来保険が使えないものを今度は現金施術という形でやっている部分があるのですね。

 前回私もちょっとお話をさせていただいたのですが、柔道整復師のいわゆる保険外施術、自由診療というのは柔道整復しかないのですね。いわゆる骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷、これしかないわけです

ただ、あはきさんのほうに関して言うと、いわゆる適応症がふえるということですよね。簡単に言うと。結局、行ったり来たりというのが同じ施術所の中で行われてしまうというのが、多分、保険者様はみんなそれを危惧していると思うのですね。

 

○三橋構成員

 今、加護構成員から言われて、実際、柔道整復師は、何回も言っているとおり、自由診療ないのですね

ですから書きようがないのですけれども、先ほど申し上げたとおり、骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷、これしかないわけですから、問題は、きょう出ませんでしたけれども、7番目のところのインターネット、ウェブサイトのところで、厚生労働省はどこまで、医事課はどこまでやるのか、できるのか、まとめようとしているのかがよく見えてこないので、いわゆる無資格の問題もそうですけれども、ウェブサイトについてもさわれないとか、ではどこまでやるのだと。

 

 

タトゥー無罪判決を読んで

タトゥーの彫師が大阪地裁で医師法違反の有罪判決を受け、大阪高裁で逆転無罪判決を受けたのは報道の通りである。

裁判所サイトに控訴審の判決文が掲載されたので思う所を書いていく。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=88172

 

本文だが、まず第1に「本件公訴事実及び原判決の判断」、第2に「本件控訴の趣意及び主張の概要」、第3に「当裁判所の判断」、第4に「結論」とある。

裁判所の判断を見るには第3を読めば良い。

判決文のPDFでは16ページ目からになる。

 判決文を読む場合、当事者の主張と裁判所の判断を区別して読まないと、当事者の主張を判例と誤解しかねないので注意が必要である。*1

 

で、

当裁判所は,医業の内容である医行為については,保健衛生上の危険性要件のみならず,当該行為の前提ないし枠組みとなる要件として,弁護人が主張するように,医療及び保健指導に属する行為であること(医療関連性があること),従来の学説にならった言い方をすれば,医療及び保健指導の目的の下に行われる行為で,その目的に副うと認められるものであることが必要であると解する。

と判断しているわけである。

 

 

医療及び保健指導

判決文より

 医師法は,医療関係者の中心である医師の身分・資格や業務等に関する規制を行う法律であるところ,同法1条は,医師の職分として,「医師は,医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し,もって国民の健康な生活を確保するものとする」と規定している。

すなわち,医師法は,「医療及び保健指導」という職分を医師に担わせ,医師が業務としてそのような職分を十分に果たすことにより,公衆衛生の向上及び増進に寄与し,もって国民の健康な生活を確保することを目的としているのである。

この目的を達成するため,医師法は,臨床上必要な医学及び公衆衛生に関して,医師として具有すべき知識及び技能について医師国家試験を行い,免許制度等を設けて,医師に高度の医学的知識及び技能を要求するとともに,医師以外の無資格者による医業を禁止している。

医師の免許制度等及び医業独占は,いずれも,上記の目的に副うよう,国民に提供される医療及び保健指導の質を高度のものに維持することを目指しているというべきである。

 以上のような医師法の構造に照らすと,医師法17条が医師以外の者の医業を禁止し,医業独占を規定している根拠は,もとより無資格者が医業を行うことは国民の生命・健康にとって危険であるからであるが,その大きな前提として,同条は,医業独占による公共的な医師の業務の保護を通じて,国民の生命・健康を保護するものである,言い換えれば,医師が行い得る医療及び保健指導に属する行為を無資格者が行うことによって生ずる国民の生命・健康への危険に着目し,その発生を防止しようとするものである,と理解するのが,医師法の素直な解釈であると思われる。

そうすると,医師法17条は,生命・健康に対して一定程度以上の危険性のある行為について,高度な専門的知識・技能を有する者に委ねることを担保し,医療及び保健指導に伴う生命・健康に対する危険を防止することを目的としているとする所論の指摘は,正当である。

したがって,医師は医療及び保健指導を掌るものである以上,保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為であっても,医療及び保健指導と関連性を有しない行為は,そもそも医師法による規制,処罰の対象の外に位置づけられるというべきである。

美容整形

医行為を治療目的に限定したら、美容整形はどうなるのよ?というのが今回の事件の当初から言われていた。そんな疑問に対して

① 美容整形は,一般に,身体外表の正常部位や老化の現れた部位に対して,外科手術等を施し,より美しくさせ,あるいは若返らせることによって,形態や容姿が原因となる精神的負担を軽減し,個人を社会に適応させる形成外科の一分野といわれ,昭和53年の医療法改正により,診療標榜科名として「美容外科」が追加されている。

(略)



 ところで,医療とは,現在の病気の治療と将来の病気の予防を基本的な目的とするものではあるが,健康的ないし身体的な美しさに憧れ,美しくありたいという願いとか醜さに対する憂いといった,人々の情緒的な劣等感や不満を解消することも消極的な医療の目的として認められるものというべきである。

美容整形外科手術等により,個人的,主観的な悩みを解消し,心身共に健康で快適な社会生活を送りたいとの願望に医療が応えていくことは社会的に有用であると考えられ,美容整形外科手術等も,このように消極的な意義において,患者の身体上の改善,矯正を目的とし,医師が患者に対して医学的な専門的知識に基づいて判断を下し,技術を施すものである。

 

 以上からすると,美容整形外科手術等は,従来の学説がいう広義の医行為,すなわち,「医療目的の下に行われる行為で,その目的に副うと認められるもの」に含まれ,その上で,美容整形外科手術等に伴う保健衛生上の危険性の程度からすれば,狭義の医行為にも該当するというべきである。したがって,医業の内容である医行為について医療関連性の要件が必要であるとの解釈をとっても,美容整形外科手術等は,医行為に該当するということができる。

と判示している。

私は医業類似行為(無資格施術)の禁止を求めるものであるが、医業の目的に美容が含まれるという解釈が示された以上、無資格者による美容目的の施術は医業類似行為でもある、と解釈できよう。

とりわけ美容整体などと称している宣伝を見ると、その原因が骨盤の歪みとし、骨盤矯正を行う、としているのもある。

また小顔矯正と宣伝して景品表示法の命令が出たこともある。

消費者庁:小顔になる効果を標ぼうする役務の提供事業者9名に対する景品表示法に基づく措置命令について[PDF]

どちらにせよ美容整体というのは「患者の身体上の改善、矯正」を目的にしているわけである。

これはエステにも当てはまるだろう。

疲労回復(リラクゼーション)

さて、今回の判決では「医療及び保健指導」に関する行為が医療関連性のある行為と言えるが、疲労回復を目的にした行為は治療でなくても保健の範疇だろう。

実際、健康食品では疲労回復の効果を表示できず、医薬品でなければ疲労回復の効果を表示でできない。*2

 

またリラクゼーションの業界団体のカウンターパートの役所は経済産業省のヘルスケア産業課だそうだ。

ヘルスケアであって保健ではない、ということも無いと思う。

binbocchama.hatenablog.com

 

保健衛生上の危険性要件

 検察官や原判決は,保健衛生上の危険性要件のみで足りるという解釈に基づき,本件行為はこの要件を満たすから医行為に当たると結論づけている。確かに,後にみるように,本件行為が保健衛生上の危険性要件に該当することは否定し難い。

とタトゥー施術が保健衛生上の危険性要件に該当することを認め、

しかしながら,現代社会において,保健衛生上の危害が生ずるおそれのある行為は,医療及び保健指導に属する行為に限られるものではなく,これとは無関係な場面で行われる行為の中でも,いろいろと想定される。

そういう状況の下で,医師法17条の医行為を「医師が行うのでなければ保健衛生上の危害を生ずるおそれのある行為」という要件のみで判断する場合,その危害防止に医学的知識及び技能が求められるか否かの判断が決定的に重要な意味を持つこととなるが,この要件は,理容行為等について本件当事者間でも見方を異にしていることにも表れているように,必要とされる医学的知識及び技能並びに保健衛生上の危害についての捉え方次第で判断が分かれ得るという意味で,一定の曖昧さを残していることは否定できない。

と目的を限定せずに保健衛生上の危険性のみで医師法違反を判断する場合、曖昧さが残る、と指摘している。

そのうえで、

そうすると,保健衛生上の危険性要件の他に,大きな枠組みとして医療関連性という要件も必要であるとする解釈の方が,処罰範囲の明確性に資するものというべきである。

と判示している。

 

医行為の定義としては本判決文でも引用されている最高裁判決では

被告人の行為は、前示主張のような程度に止まらず、聴診、触診、指圧等の方法によるもので、医学上の知識と技能を有しない者がみだりにこれを行うときは生理上危険がある程度に達していることがうかがわれ、このような場合にはこれを医行為と認めるのを相当としなければならない。 

 と判示している。

ちなみにこの最高裁判決当時、指圧はあはき法第1条の免許には入っておらず、指圧が免許の業務となるのは昭和30年の改正でである。

そしてこの最高裁判決も昭和30年であるが、指圧が第1条に含まれる前である。そして昭和35年判決はまだ無い。

なので「人の健康に害を及ぼすおそれ」を証明しなくてもあはき法第12条違反で処罰することも可能であった。

そこを医師法第17条違反で起訴した、ということは保健衛生上の危険性を認識し、立証可能であると検察は判断し、裁判所もそれを認めた、ということである。

あはき法第12条違反は罰金刑のみであるが、この事件では医師法第17条違反として、懲役1年の実刑判決となっている。*3

 

医行為を認定するに当たり、どの程度の医学的知識・技能が安全性に必要とされるか?という問題は確かにある。

義務教育では習わない、身体の仕組みや疾病の知識が必要であれば医行為とすべき(A案)か、それとも医学部で習うような高度の知識が必要な場合のみに医行為と認定すべき(B案)か。

 

今回の判決は医療関連性がある場合、A案であり、医療関連性が無ければ医師法違反には問えない、ということになるだろう。

 

世間の多数はB案で考えていると思われる。

それは法的な資格制度が無いカイロプラクティック業界の声明などから判断できる。

 カイロ業界の認識

日本では整体師やカイロプラクターと名乗るのに法的な資格は不要である。

会員はWHO基準の教育を受けていると称している、一般社団法人日本カイロプラクターズ協会(JAC)は消費者庁の「法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に」という報告書に対し、下記ページで見解を示している。

www.jac-chiro.org

上記見解から引用する。強調などは筆者による。

(2) 禁忌対象疾患の認識
  禁忌対象疾患を評価する知識は教育背景により大きく異なります。厚生労働省医政局医事課へ登録者名簿を提出している日本カイロプラクティック登録機構(JCR)はWHO指針の教育課程を履修したカイロプラクターの試験及び登録制度を実施しています。  JCR登録者は禁忌対象疾患の知識を有しているため、安全対策として消費者にカイロプラクティックを受診する際は「JCR登録者」を選択するよう勧告することが望ましいです。

 JCRというのは事務局がJACの事務局内にあり、事実上、JACと一体化している組織である。*4

 

「禁忌対象疾患を評価する知識」、「禁忌対象疾患の知識」というのは広い意味で医学的知識と言える。

 

(3) 一部の危険な手技の禁止
  三浦レポートでは危険な手技として「頚椎に対する急激な回転伸展操作を加えるスラスト法」が挙げられていますが、具体的な方法の定義が不明確です。またカイロプラクティックの主要な施術法であるアジャストメント(スラストを利用した手技)が危険であることを示す客観的な統計調査の裏付けはなく、頸椎マニピュレーションによる事故の発生頻度は医療事故の発生頻度に比べるとはるかに低いことが文献から明らかです。 カイロプラクティック治療の危険性は施術者の教育背景により大きく変わることを認識しなければなりません。

 

医療事故の発生頻度に比べると頚椎マニピュレーションによる事故の発生頻度ははるかに「低い」そうだが、法的な免許を持たないものに許される行為は「人の健康に害を及ぼすおそれの無い行為」であるから、事故の発生は「絶対無い」が原則である。

医療事故と比べて発生頻度が「低い」としても、事故が発生しているのであればそれこそ違法施術である。

 

と今回の判決の解説から脱線してしまったが「カイロプラクティック治療の危険性は施術者の教育背景により大きく変わる」と自ら述べている。

 

他にもJAC会員の教育内容や知識の高さを示して、他のカイロプラクターや整体師などと区別してくれという旨が書いてある。

 

 そういうわけでJAC自身、保健衛生上の危険性と医師法違反に関してはB案と考えているのであろう。

あるいは知識や技能などの能力があれば医師法違反にはならないと。

ただし、能力があれば医師法違反にならない、という解釈が誤りであることは、タトゥー弁護団が引用したコンタクトレンズに関する医師法違反事件の控訴審*5

 まず、所論は、原判決は、医師法一七条において医師資格を有しないものが業として行うことを禁じられている医行為について、これを「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」と解し、被告人と共謀したAの行った検眼、コンタクトレンズ着脱、コンタクトレンズ処方等の各行為をこの意味における医行為に該当するとしたが、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為などというものは世の中に存在せず、ある行為から右危害を生ずるか否かはその行為に関する技能に習熟しているかどうかによって決まるのであって医師資格の有無に関係しないとして、医師法に関する原判決の前記のような解釈は社会の実態を無視した恣意的な解釈である、と主張する。

 そこで検討するに、医師法は、医師について厚生大臣の免許制度をとること及び医師国家試験の目的・内容・受験資格等について詳細な規定を置いたうえ、その一七条において「医師でなければ医業をしてはならない」と定めているところからすれば、同法は、医学の専門的知識、技能を習得して国家試験に合格し厚生大臣の免許を得た医師のみが医業を行うことができるとの基本的立場に立っているものと考えられる。

そうすると、同条の医業の内容をなす医行為とは、原判決が説示するように「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」と理解するのが正当というべきであって、これと異なる見解に立つ所論は、独自の主張であって、採用の限りでない

と判示されていることからも明らかである。

自らの施術の安全性を訴えるために無資格者が、自らが受けた教育や医学的知識・技能を主張するのであれば、医師法違反を自白するのに等しい。

ましてや目的が医療関連性がある場合においてをや。

保健衛生上の危険性の基準の明確化

そんなわけで、今回の判決により医師法違反に問われる保健衛生上の危険性の基準が明確化されたと私は考える。 

 

もっとも富士見産婦人科病院事件の保健師助産師看護師法違反事件*6では

医師が無資格者を助手として使える診療の範囲は、おのずから狭く限定されざるをえず、いわば医師の手足としてその監督監視の下に、医師の目が現実に届く限度の場所で、患者に危害の及ぶことがなく、かつ、判断作用を加える余地に乏しい機械的な作業を行わせる程度にとどめられるべきものと解される。

とあるので、無資格者による、判断作用を伴う行為は違法行為(医師法第17条、保助看法31条、あはき法第12条違反)とすでに言える状態ではある。

しかし医療関連性の無い行為までこの基準を広げると色々支障が出そうではある。

例えばスポーツのコーチが競技のために選手の身体について判断するのは医行為か?など。

 

医行為を医療関連性のある行為に限定した場合、このような問題は生じにくいと思われる。

もっとも健康目的でスポーツジムに行ってる場合にはまた別の判断になると思うが。

「身体上の改善、矯正」が目的なら医行為と判断すべきだろう。

 

上告の行方

大阪高検はこの無罪判決を不服として最高裁に上告したことが報道されている。

最高裁の判断としては

  • 控訴審の判断を肯定して上告棄却(無罪確定)
  • 従来どおり、保健衛生上の危険性のみで判断し、控訴棄却、第1審の有罪判決の確定
  • 目的が限定されることを肯定しつつも、目的要件は異なるとして破棄差戻しまたは破棄自判

といったところが考えられる。

3番目の異なる目的要件だが、私は医行為に目的が必要としても薬機法の医薬品や医療機器の定義である、「疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすこと」を目的に定義されると考えていた。

よって、タトゥー施術は身体の構造に影響を及ぼす行為であり、保健衛生上の危険性もあるから有罪判決が維持されると考えていたのである。

なので無罪判決は予想外であった。

 

仮に危険性要件だけで医行為性を判断し、原審破棄するとしても、美容目的が医療関連性を有する、という考えまで否定はしないだろう。

裁判所にその考えを示させた、という点では美容目的施術を医業類似行為として規制したい我々にとって有意義だったし、弁護団に寄付した成果としては十分なものである。

 

なお、コンタクトレンズに関する医師法違反事件及び富士見産婦人科病院事件は両方とも下級審判決(裁判例)である。

それらの判決文を某役所に提示しても「個別事案です。」とあしらわれるのである。

これが判例と裁判例の重みの違いである。

これらの裁判例の判示内容は結局の所、指圧の医師法違反事件の最高裁の判示内容に包含されるので、上告審で判断を示さなくても良い、と判断されたのだろうが。

 

できればそこらへんの基準を最高裁で直接判示してほしいものである。

*1:しかし、民事裁判の場合は当事者が主張していないことを判決の根拠にしてはいけない(弁論主義)ので、おかしな判決のときは当事者がちゃんとした主張をしているかどうかを確認することも大事である。
例えば加持祈祷治療料金の返金を求めた事件である、名古屋地裁 昭和54年(ワ)2242号では「認定した被告の療術行為が医師法一七条で禁止されている医業の内容である医療行為に当たるとは認められず、またあん摩師・はり師・きゆう師及び柔道整復師法一二条で禁止されている医業類似行為に当たるものとも認められない。」と判示しているが、原告被告ともに、被告の療術行為が医行為や医業類似行為であるとは主張していない。
仮に裁判所が被告の療術行為を医業類似行為と認定して返金を命じる判決を出せば弁論主義に反する判決として、控訴審では破棄差戻しを受ける可能性がある。原告代理人である弁護士に、医業類似行為という概念を示すために、わざわざ書いた判決と思われる。
この事件は控訴されたが、和解があったのか、控訴審の判決文は判例データベースでは探せなかった。
おそらく医業類似行為という概念を知った原告側代理人が、薬事法などの判例を示し、被告の療術行為は医業類似行為であり、違法行為であるから公序良俗に反するとして、全額返金を受けたのではないかと推測される。

*2:

http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_9.pdf 7ページ目

*3:大阪高等裁判所 昭和28年05月21日判決

*4:住所は一般社団法人日本カイロプラクターズ協会事務局内となっている。

日本カイロプラクティック登録機構《組織紹介》

*5:

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail3?id=20209

*6:東京高裁平成元年2月23日判決 昭63(う)746
判例タイムズno.691 1989.5.15 p152 東京高裁(刑事)判決時報40巻1〜4号9頁