ずんずん運動の民事裁判から見える、遺族の思い

ずんずん運動の大阪事件の被害者遺族が、NPO法人(解散済み)の理事長と副理事長に対し、5200万円の損害賠償を請求した裁判の判決がありました。

 

www.kobe-np.co.jp

事件が起きたのが大阪なので刑事裁判は大阪地裁で、遺族は神戸在住なので民事裁判は神戸地裁なわけです。

 訴訟では元理事長が責任を認める一方、施術担当でない元副理事長は「危険性を認識できなかった」と主張。山口裁判長は判決で、13年2月にも元理事長による同様の死亡事故があったことなどから、危険性を予見できたと認定した。

これだけだとわかりにくいので時事通信の記事から引用しましょう。

www.jiji.com

 元副理事長も13年の同様の死亡事故後、危険性を確認しないまま施術をブログで広報するなど、ほう助した責任があると判断した。 

 ブログによる広報で、幇助の責任を問われたわけですね。

この副理事長、刑事では書類送検はされていますが、不起訴処分となっております。

 

(2017/05/10追記)

この民事訴訟の判決が裁判所サイトに掲載されております。

神戸地裁平成27(ワ)1816

 

また,平成17年9月27日に新潟市f区内の家屋に開設したサロン(以下「新潟サロン」という。)において,身体機能回復指導を施術していたところ,施術を受けていた男児が,一時的に窒息状態となり救急搬送される事件(以下「新潟第1事件」という。)及び平成25年2月17日に同サロンにおいて身体機能回復指導を受けていた児童(当時1歳10月)が死亡する事件(以下「新潟第2事件」という。)が発生し,被告D(筆者注:理事長、施術者)は,被疑者として取調べを受け,その際,身体機能回復指導については,医師等の専門家にお墨付きを得るようにとその安全性を確認するよう促され,その危険性を指摘されていたのである。

 

また,被告E(筆者注:副理事長)は,本件事故が起こるまで,身体機能回復指導が乳児の発達に有用であることが広く乳児の保護者に認識され,被告Dは,延べ数千回もの施術を行ってきたこと,新潟第2事件は死因が明らかではないとして被告Dの刑事責任は問われていないことを理由に,被告らにおいて,身体機能回復指導の危険性を予見することはできなかったと主張する。

しかしながら,上記説示したとおり本件施術を含むうつ伏せにさせた状態で頸部をもんで刺激を与えるといった身体機能回復指導自体が有する乳児の窒息の危険性に鑑みれば,身体機能回復指導が本件事故までに数千回行われている実績があるとしても,その危険が現実化しなかったに過ぎず,数千回に及んで身体機能回復指導が行われたことをもって,被告らにおいて同施術の危険性の予見ができなかったとはいえない。

また,新潟第2事件後については,捜査の結果,G(筆者注:新潟の被害乳児)の死亡の原因が身体機能回復指導以外にあるものと判断されたわけではないのであるから,被告らにおいて,身体機能回復指導の施術に危険がないか点検・確認する機会があったというべきであり,むしろ,そうするよう検察官等から指導を受けていたにもかかわらず,何ら具体的な措置を講じなかったというのであり,Gの死因が明らかとならなかったことが,身体機能回復指導の危険性の予見可能性を否定する事情になるものではないし,証拠(甲30)によれば,被告Eは,新潟第2事件後,被告Dに対し,心臓マッサージや人工呼吸などの救急救命措置のやり方を学ぶよう示唆していたのであり,遅くとも,その頃までには,身体機能回復指導が乳児を心停止に至らせる危険性を有するものであることを認識し得たものと認められる。

(2017/05/10追記終わり)

ここで時系列を。

下記のブログ記事は報道時に書いてある記事へのリンクとなっており、時系列の把握に有用かと思います。

blogs.yahoo.co.jp


2013年2月17日 新潟で死亡事故
同年11月 新潟県警新潟地検書類送検。嫌疑不十分で不起訴処分

 

2014年6月2日 大阪で死亡事故

NPO法人の理事の男性は取材に対し、昨年も代表の施術を受けた幼児が死亡したことを明らかにしたうえで、「亡くなったのは不幸なことだが、2件とも施術と死亡との因果関係はないと考えている。警察の捜査に協力したい」と話した。

http://www.asahi.com/articles/ASG9631WYG96PTIL003.html?iref=comtop_6_02

(強調筆者)

 

2015年3月4日 理事長逮捕
理事長、副理事長書類送検

同年3月25日 大阪で理事長を起訴(業務上過失致死傷罪)
同年6月9日 初公判。理事長が施術と死亡の因果関係を認める。
同時期、新潟検察審査会は起訴相当と議決

同年7月14日 論告求刑公判

「おわびと償いの人生歩みたい」…乳児施術死、禁錮1年を求刑 「ズンズン運動」元理事長に - 産経WEST

 

弁護士は賠償を理由に執行猶予を求めている。*1

同年8月4日 大阪判決 禁錮1年執行猶予3年の有罪判決

www.sankei.com

男児の父親(46)は判決後、「軽すぎる判決で納得できない。息子に申し訳ない。今後、乳児向け施術行為に対する規制強化を国に求めたい」と話した。

 

同日 新潟地検が理事長を逮捕。

同年9月 大阪事件の遺族が神戸地裁に損害賠償請求の提訴

同年10月26日 新潟初公判
11月19日 新潟判決

www.sankei.com

執行猶予を付けた理由として「自ら罪を認め、弁済もしている」ことを挙げた。

そして、今回の民事訴訟の判決になるわけです。

民事訴訟の裁判期間は1年3ヶ月です。

神戸のご遺族は自責の念が強かったようです。

blogs.yahoo.co.jp

孫引用で。

一昨年の2月にも姫川容疑者の施術で赤ちゃんが亡くなったそうです。そのことを公表してくれていれば、息子をサロンに連れていくことは絶対にありませんでした。子どもの身体に危険が及ぶ行為をする姫川容疑者やサロンを信用してしまった自分達を責めない日はありません。

(略)

子育てサロン、ベビーサロンは赤ちゃんと親達が安心して過ごせる場所であり、安全なことのみが行われるものだと思っていました。ベビーマッサージ等の行為は無資格で広く行われていますが、私たち幼い子を持つ親にはそれが安全なものかどうかの判断がつきません。息子や私たちの苦しみを他のお子さんやご家族に味わわせたくありません。そのためには、姫川容疑者には真実を話してもらいたいと思います。また、ベビーサロンのような場所で同じことが二度と起きないよう、行政にも何らかの対応を検討していただきたいと思っております。

(下線部筆者)

 

この施術を受けさせるきっかけは副理事長が書いたブログ記事だったのでしょう。そこには死亡事故を起こしたことは書いて無く、信用してしまったわけです。

 

この自分たちにとって不都合な情報を隠蔽した広報活動への憤りなのでしょう。

 

この民事訴訟では神戸新聞の記事にある通り、元理事長は賠償責任を認めており、理事長だけを訴えれば短期に判決を得ることも可能である。

副理事長は刑事裁判にはかけられておらず(不起訴処分)、理事長だけを相手にするよりは訴訟戦術上、手間がかかることは予見できたはずである。

 

それでも敢えて副理事長も訴えた点に、ご遺族の思いを感じるのである。

 

WELQ問題でも誤った医療情報の危険性は指摘されたところであるが、このように素人を騙し、危険にさらす連中を放置してはならない。

 

整体師やカイロプラクター、リラグゼーションといった無免許業者さんや擁護される皆さん、この遺族の思いをどう考えますか?

 

(2019/12/13)

このように、被害者遺族は安全性の有無が判別できるように行政に要望している。

そして国民生活センターも、一般消費者が、施術者の国家資格の有無がわかるようにするよう求めている。

しかし、無資格業者は自分たちが不利にならないよう、国家資格制度の存在がわかる「国家資格外行為」という表記をさせないため、政治家を使って厚生労働省に圧力をかけた。

 

binbocchama.hatenablog.com

 (追記終わり)

*1:ここはよくわからない。差額を求めて民事訴訟を起こされたのか?

ヘルスケア大学の記事を添削してみる。

医師などが記事を監修しているヘルスケア大学というサイトがあるのですが、ニセ医学批判で有名な五本木クリニックの桑満先生によると

 

とのことです。

 

www.gohongi-beauty.jp

 

で、

 

整体やカイロなどに関する記事がありましたので、添削してみましょう。

www.skincare-univ.com

 

まずこの記事の監修をしている方のプロフィールです。

www.skincare-univ.com

 

理学療法士とあります。

理学療法士(PT)というのは病院や介護施設などでリハビリを行っている専門職(国家資格)です。

 

法的根拠は理学療法士及び作業療法士法になります。

理学療法士及び作業療法士法

 強調などは筆者による。

第二条  この法律で「理学療法」とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マツサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。

 

3  この法律で「理学療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、理学療法を行なうことを業とする者をいう。 

 

第十五条  理学療法士又は作業療法士は、保健師助産師看護師法 (昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項 及び第三十二条の規定*1にかかわらず、診療の補助として理学療法又は作業療法を行なうことを業とすることができる。


2  理学療法士が、病院若しくは診療所において、又は医師の具体的な指示を受けて理学療法として行なうマツサージについては、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 (昭和二十二年法律第二百十七号)第一条 の規定*2は、適用しない。

 

というわけで、病院や診療所、医師の指示の下でのみ医療従事者としての権限があります。

病院や診療所以外で、医師の指示が無い場合には施術を行うことはできません。

そのかわり健康保険や介護保険での加算が鍼灸マッサージ師や柔道整復師よりも高く、病院や介護施設に雇われるなら理学療法士のほうが有利です。

 

それに対し、我々鍼灸マッサージ師や柔道整復師は独立開業権があり、医師の指示がなくても独自判断で施術する権限があります。

 

で経歴を。

資格取得後、群馬県内の整形外科クリニックにて勤務する傍ら、BCリーグのトレーナーを担当。その後独立。同時に、全国のリハビリ職者向け技術セミナーを開催、これまで3,000人以上への指導経験をもち、現在も継続中。

「独立」ですか。後述のような独立なのでしょうか?

2014年に株式会社メディカルエージェンシーを設立、リハビリ職者向けメディアサイト[POST(http://1post.jp/)]を開設する。 

理学療法士作業療法士言語聴覚士を対象とする営利事業を行っているわけです。

 

では記事の方をチェックしましょう。

 

腰痛の治療やケアができる施設は、整形外科、接骨院、整体・カイロプラクティック、マッサージなど、さまざまです。どのような症状に、どの施設が適しているのか。それぞれの施設の特徴と選び方のポイントについてお伝えします。

とありますので、引用しながら添削してみましょう。

まずは接骨院の説明から

柔道整復師法で認められている「柔道整復」「接骨院」「ほねつぎ」は、国家資格である柔道整復師が治療を行う施設です。検査・診断は行われません。

後の鍼灸院の説明でも

検査・診断は行われません。 

 と書かれていますが、徒手検査などは行っているわけですよ。施術所によっては超音波画像検査を行っているところもあります*3

当然、レントゲン撮影や血液検査などは行なえませんが、検査をしない、というのは明らかな間違いです。

診断も、免許の範囲内で所見の告知をすることは認められています*4

もっとも診断書を出す権限もありませんし、鍼灸マッサージ師や柔道整復師の診断は法的な証拠などにはなりません。

 

なので最初の選択として整形外科に行くのは正しいです。

 

なお、接骨院の受診において

痛みが起こった時期(もしくは瞬間)が特定できる

 というのは大事です。慢性痛(いつから痛んだか、はっきりしない)は柔道整復師が診る対象ではないからです。

 

健康保険の適用範囲は、急性・亜急性が原因の外傷に対する治療のみで、慢性的な腰痛、病気(関節炎、ヘルニアなど)が原因の腰痛などは、適用外となります。

 柔道整復師の施術対象は健康保険の適用の有無に関わらず、急性外傷のみとなります*5

慢性疾患に対する施術権限は柔道整復師にはありません。

あん摩マッサージ指圧師鍼灸師の免許も持っているならともかく、柔道整復師のみの免許のところで慢性の痛みを診てもらうこと自体、間違いです。

柔道整復師(接骨院・整骨院)と無免許施術 - Togetterまとめ

 

ここで問題なのが、どのような人が開業しているかという点。柔道整復師の資格を持った人が開いている場合は特に問題ありませんが、中には整体なのに医療機関のように見せるよう「整骨院」という名前で開いているところもあるそうです。整体は医療行為ではなく、整体師には特に資格もありません。マッサージ程度のケアしかできないので、もちろん保険も適用されません。このような点も把握したうえで、注意して選びましょう。

確かに「整骨院」という名称は柔道整復師による独占使用規定がなく、整体師などの無免許業者が施術所名に使っても罰則はなさそうです。ただし不正競争防止法景品表示法あたりに違反しそうな気もしますが。

 

また施術所の開設自体は免許は不要です。免許を持った施術者がいれば良いので。

 

むしろ問題はちゃんと保健所に届け出をした接骨院整骨院でも無免許の人間に施術させている場合もあることでしょう。

 

オウム事件で逃走していた看護師が接骨院で働いていましたが、偽名なので看護師としてではなく、一般人として雇われ、施術を行っていたわけです。

 

また無免許はり治療による死亡事故も接骨院での出来事です。

d.hatena.ne.jp

 

では次に鍼灸院の解説の添削を。

東洋医学に基づいた鍼灸治療を行う施設です。

 必ずしも東洋医学の理論に基づいて行っているとは限らないのです。

この記事のテーマは腰痛ですからさまざまなアプローチ、考えがあります。超音波画像を見ながらトリガーポイントに打っていく方法もあったり。

www.jau-japan.or.jp

 

整形外科で診断を受けた後の腰痛治療、腰の張りによる痛みの軽減、腰痛の予防などの場合は、こちらの受診をおすすめします。 

 ここはその通りです。

鍼灸師のポジショニングトークと思ってくださって構いません。)

 鍼灸の治療では、神経痛(坐骨神経痛など)や、腰痛症(ぎっくり腰などの急性腰痛や、慢性の腰痛)など、対症となる傷病の範囲内にて、その病気で診断・治療を受けた医師の同意書、または診断書があれば健康保険が適用されます(同意書は3か月ごとに更新する必要があります)。

 

ただし、健康保険適用は医師の同意があっても制度的に難しく、原則としては患者さんが一度全額を払い、一部の料金を保険組合から払い戻しを受ける(償還払い)が本来の姿です。

どこの鍼灸院でも代理受領(手続きを治療院が代行してくれる)を行ってくれるわけではありません。また保険組合によっては償還払いしか認めないところもあります。

患者さんご自身で償還払いの手続きをするのであれば問題ありませんが、同一病名でお医者さんの治療を受けると鍼灸治療の保険適用が認められません。

 

このように鍼灸治療の健康保険適応は何かと面倒くさいので取り扱わない治療院もあるわけです。

代理受領で手続きをしたら患者さんが湿布や鎮痛剤をもらって不支給となるとその分を患者さんから払っていただかないといけないわけで。

 

指圧・あん摩マッサージの部分に関しては特に間違いはありません。

さすがマッサージを行うことが認められているPT資格を持っている。

一部のPTはマッサージと一緒にされるのを嫌がったり、マッサージ師がリハビリという表現を使うのを嫌がったりしてますが。

 

あとは医療費控除の対象になる、という点ぐらいは書いていただいてもよいのかと。

傷病の治療のために国家資格者の施術を受けた場合には医療費控除の対象となります。

整体やカイロプラクティックなどの無免許施術では対象になりません。

No.1122 医療費控除の対象となる医療費|所得税|国税庁

 

4 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価(ただし、疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれません。) 

 

では「そのほか、民間療法に属するもの」を見てゆきましょう。

 

腰の筋肉が張っている、全身の疲れを解消したい、リラックス・リフレッシュしたいという場合は、このような施設でもいいでしょう。 

 なぜここまで言い切れるのか。

この記事の更新日は2016/07/27とあります。

国民生活センターによる手技療法による健康被害の報告書は2012年です。

手技による医業類似行為の危害−整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も−(発表情報)_国民生活センター

 

私みたいに医事法規の判例に詳しくないのは仕方ありませんし、そうなると違法行為と指摘するのも躊躇われるでしょうが、せめて国民生活センターの報告書には触れて欲しい。

 

それが読者の安全の確保のために必要なことですから。

 

厚生労働省もこのような案内を出しております。

www.mhlw.go.jp

手技による医業類似行為に関し、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格を有しない者による施術を受けた者からの健康被害相談が報告されており、その要因の一つとして施術を受ける際にあはき師の有資格者と無資格者の判別が困難であることが指摘されています。 

 

リンク先のPDFで書かれたような国家資格者の見分け方も記載すべきでは?

 

さて、監修者は「独立」された、と経歴で書かれています。

医師の指示が必要な理学療法士が「独立」とはどういうことでしょうか?

 

実は最近、理学療法士作業療法士が整体師などとして開業しているケースが増えています。

blog.livedoor.jp

上記ブログ記事より引用

てっきり私は、開院している理学療法士は法に基づかない医業類似行為として開業しているものと思っていましたが、それを日本理学療法士協会はやめさせようとしているのでしょうか?

(略)

まあ、理学療法士の倫理観はともかく、理学療法を謳っていないなら何が法律違反なのかが正直あまりわかりません。(完全に白とも言えませんが)

(略)

しかし、理学療法士が開業する人が多くなっている理由もしっかりと理解して対策をしておかないと、協会も批判にさらされかねないと思いますが・・・(すでに批判されてるところも多い?)

 

監修者の方が独立して施術を行っていたかは不明なのですが、そういう人たちが友人・知人にいたり、そのような独立を考えている人がセミナー受講者やサイトの読者に多ければ整体などを違法行為として書くのは難しくなるんですよね。

 

米国では理学療法士にも開業権はありますし、相応の知識・技術を持っているので彼らの開業権を認めるべき、というのは立法論としてはありですが、現行の法律では独立判断での医行為は認めておりません。*6

 

理学療法士などによる整体などの問題点は健康被害が生じた場合、賠償責任保険が使えないことです。

 

理学療法士が病院や診療所以外で、医師の指示もなく行える行為は「人の健康に害を及ぼすおそれの無い行為」に限定され、健康被害が発生した時点で「おそれの無い行為」という前提が崩れますから。

togetter.com

施術行為に対して賠償保険金が支払われないと思われる、消費者の被害相談もあります。

事故情報詳細(カイロプラクティック 事故情報ID:0000241980)_事故情報データバンクシステム

テレビ宣伝のカイロプラクティックに肩こりでかかったら直後から肩から右腕に痛み。保険請求書記載の誤りを訂正してほしい。

施術行為による健康被害では賠償責任保険のお金が下りないからでしょうか?

それとも被害者が自ら加入している保険に対する請求書の記載を要求して、違法施術がバレるとまずいので事実とは異なる記載をしたのでしょうか?

事故情報詳細(リラクゼーションマッサージ, マッサージ… 事故情報ID:0000269049)_事故情報データバンクシステム

マッサージ店で施術を受け首の頸椎を痛めた。損害保険会社が調査した結果、保険対象外だったが、店が理由を教えてくれない。 

 この記載からは無免許マッサージ店だったかどうかは不明なのですが、無免許であれば理解できます。頚椎を痛めた、ということは「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」を行っていた、ということであり、違法施術ですから。

 

やはり自分とその顧客にとって不利なことは書けないものです。

もっとも私もそれを言われると否定出来ないので、ちゃんと法令や判例などのソースを提示しているわけです。

 

やはり医療記事の信頼性は一次ソースを提示しているかどうか、というところでしょうか。

*1:保健師助産師看護師法

第五条  この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。

第六条  この法律において「准看護師」とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者をいう。

第三十一条  看護師でない者は、第五条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法 (昭和二十三年法律第二百二号)の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。

第三十二条  准看護師でない者は、第六条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法 又は歯科医師法 の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。

*2:あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律

第一条  医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。

*3:厚生労働省からの通知により,検査自体に人体に対する危険性がなく,かつ,柔道整復師が施術に関わる判断の参考とする超音波検査については,柔道整復師が施術所において実施したとしても関係法令に反するものではないとの見解が示されています。

施術所における柔道整復師による超音波画像診断装置の使用について - 広島県ホームページ

*4:東京地方裁判所判決 平成5年11月1日 平成3年(特わ)1602 出典 - D1-Law.com判例体系 判例ID 28166751

*5:柔整ホットニュース

厚労省回答集決定版-柔道整復師の免許だけでは「肩凝り、腰痛などの症状には施術出来ない」 - 知らないと怖〜い整骨院の話(Yahoo版) - Yahoo!ブログ

*6:札幌高裁昭55(う)195号、歯科技工士による歯科医師法違反事件では

"歯科技工士は、歯科医師でないとしても、歯科衛生に関するある程度の教育と試験を受けてその免許を受ける者であるから、もちろん現行法令及びこれに基づく現在の歯科技工士養成制度のままでは許されないけれども、これらの法令及び制度の改正を通じて、印象採得等の一定範囲の歯科医行為につき、その全部とまではいかないとしても、その一部を、相当な条件の下に、歯科技工士に単独で行わせることとすることも立法論としては可能であると考えられる。

しかし、そのことは、いずれにしても、国民の保健衛生の保持、向上を目的とする立法裁量に委ねられた事項と解すべきであり、かかる解釈に立ちつつ、ひるがえつて現行法を検討しても、現在の法一七条、二九条一項一号及び技工法二〇条の定立にあらわれている立法裁量の内容が憲法のいずれかの条項に違反していると疑うべき事由は見当たらないのである。"

と判示している。

ロードバイクフィッティングの際の身体チェックや既往症の聞き取りは医師法に違反するか?

 県内のとある自転車屋さんでスペシャライズドのボディージオメトリーフィットを導入するという話を見かける。

https://www.specialized.com/ja/ja/body-geometry

フィットスペシャリストは広範囲に渡る18段階のプロセスを実行して、体の柔軟性や寸法を決定します。これはバイクポジションやエキップメントをあなた専用に設定するのに大変重要となります。

寸法の測定はともかく、柔軟性の測定や結果の告知は医行為の可能性が否定できない。

導入する店舗の説明では柔軟性、可動域の検査に加えて、過去の傷病歴を聞くことも書いてある。

ロードバイクに乗っている人なら身体のあちこちが痛い、ということもあるし、そういうトラブル解決に関する記事は自転車雑誌では定番である。

つまり現在の身体症状についても聞く必要があるわけで、既往症の聞き取りといい、まさに最高裁判決で示された問診の定義*1に合致してしまう。

 

で、これらの行為は医師法違反となるのか?という話である。

刑法第35条
法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

 という刑法の規定があるので法令に定められた行為か、正当な業務行為であれば違法性は阻却される可能性はある。

 

ちなみに鍼灸マッサージ師や柔道整復師などの国家資格者が問診や検査、所見告知を行うことは判例*2で認められております。

あはき柔は医業であるから診察行為は当然認められる、という考え方もできますし、医業ではないが、法律で定められた業務であるから刑法35条により違法性を阻却される、と考えることもできます。

 

逆に整体師やカイロプラクターなどの「素人」はこれらの行為を行う正当性がありません。

医業類似行為は法により禁止されており、問診や検査による所見告知は「保健衛生上害を及ぼすおそれのある行為」と判例は認めていますので。

 

と話がそれました。

 

で、制定法にはスポーツ基本法ってあるんですね。

スポーツ基本法(平成23年法律第78号)(条文):文部科学省

 

前文にスポーツの定義が書かれていますね。

スポーツは、心身の健全な発達、健康及び体力の保持増進、精神的な充足感の獲得、自律心その他の精神の涵(かん)養等のために個人又は集団で行われる運動競技その他の身体活動

 

で、スポーツ基本法における健康関連の条文を。

第二条 スポーツは、これを通じて幸福で豊かな生活を営むことが人々の権利であることに鑑み、国民が生涯にわたりあらゆる機会とあらゆる場所において、自主的かつ自律的にその適性及び健康状態に応じて行うことができるようにすることを旨として、推進されなければならない。

 

4 スポーツは、スポーツを行う者の心身の健康の保持増進及び安全の確保が図られるよう推進されなければならない。

 

5 スポーツは、障害者が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう、障害の種類及び程度に応じ必要な配慮をしつつ推進されなければならない。

 

第十四条 国及び地方公共団体は、スポーツ事故その他スポーツによって生じる外傷、障害等の防止及びこれらの軽減に資するため、指導者等の研修、スポーツ施設の整備、スポーツにおける心身の健康の保持増進及び安全の確保に関する知識(スポーツ用具の適切な使用に係る知識を含む。)の普及その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 というわけで、スポーツによる傷害防止のためなら問診や検査も問題無いように思える。

ただし、それらの権限を一般人に認めたとは明記しておらず、医療従事者によるサポートを要求しているようにも思えたりする。

 

ただ第2条において「国民が生涯にわたりあらゆる機会とあらゆる場所において、自主的かつ自律的にその適性及び健康状態に応じて行うことができるようにすること」と書いてあるので診療所や施術所以外でも問診や検査を認めているようにも思える。

 

しかし問診や検査を正当化し、施術を違法とするのはどういう線引でか、というのが不明である。

少なくとも私は問診や検査と、施術行為で違法合法が異なる判断をした判例は知りません。

「情報収集と提示」と「実際に効果をもたらすことを目的として体に触れる行為」と常識的には別けられそうですが。

 

チーム内などの特定少数でマッサージを行うなどであれば業性が否定されて違法性も否定されるが、不特定または多数に行うのであれば「業として」となる。

 

さすがに業としての施術行為まで合法であるとは思えないし、実際に無免許での施術行為で健康被害が発生している*3以上、認める理由もないだろう。

 

またスポーツ目的での施術を認めることになれば無免許業者はスポーツ目的だから合法、と主張するのは目に見えているわけでして。

散歩だってウォーキングと主張できるだろう。

 

ま、業として施術をしなければ私としては問題にする気は無い。

逆に業として施術をするような店やトレーナーが出てきたら違法性を問題にせざるを得なくなる。

そのときにフィッターやトレーナーが行う問診や検査が違法性を阻却できるかは判例上、施術行為と区別する根拠がなく、微妙なのである。

*1:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51069 断食道場の入寮者に対し、いわゆる断食療法を施行するため入寮の目的、入寮当時の症状、病歴等を尋ねる行為は、その者の疾病の治療、予防を目的とした診察方法の一種である問診にあたる。

*2:昭和12年5月5日、大審院刑事判例集16巻638頁、

東京地方裁判所判決 平成5年11月1日 平成3年(特わ)1602 出典 - D1-Law.com判例体系 判例ID 28166751

*3:手技による医業類似行為の危害−整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も−(発表情報)_国民生活センター

当ブログ記事の紹介(リンクやRT)は名誉毀損になるか?

カイロ学校や施術所の違法性を指摘する記事は拡散していただきたいのですが、おそらくタイトルの件がハードルになると思います。

まずは結論から先に。

  • 法的見解は名誉毀損で判断する対象ではない。
  • 問診や検査を行っていることは学校や施術所のサイトに記載していることであり、真実と信じる相当な理由がある(嘘なら学校や施術所が虚偽広告を行っていることになる。)。
  • 記事自体に不正競争防止法違反が成立するとしても、カイロ学校や施術所と競争関係に無い一般の方が記事を紹介しても不正競争防止法違反は成立しない
  • 鍼灸マッサージ師や医師などの場合、記事の紹介が不正競争防止法違反が成立する可能性があるので判例をちゃんと検証しましょう。

以前、togetterにもまとめています。

togetter.com

 

法的見解が名誉毀損の判断対象にならないことを判示した最高裁判決はこれ。

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面

要旨は

名誉毀損の成否が問題となっている法的な見解の表明は,判決等により裁判所が判断を示すことができる事項に係るものであっても,事実を摘示するものとはいえず,意見ないし論評の表明に当たる。

 ということです。

判決本文から引用しますと

一方,ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,上記意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り,上記行為は違法性を欠くものというべきであり,仮に上記証明がないときにも,行為者において上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当な理由があれば,その故意又は過失は否定される。

 

法的な見解の正当性それ自体は,証明の対象とはなり得ないものであり,法的な見解の表明が証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項ということができないことは明らかであるから,法的な見解の表明は,事実を摘示するものではなく,意見ないし論評の表明の範ちゅうに属するものというべきである。

 というわけです。

 

なので当ブログ記事を紹介しても名誉毀損は成立しません。

 

ただし、不正競争防止法違反*1の成立を否定はしておりませんので、カイロプラクティック業者と競争関係にある方、具体的には鍼灸マッサージ師や医師が当ブログ記事を紹介した場合、不正競争防止法違反が成立する可能性は否定できません。

 

こちらの判例に競争関係とはどんなものか、書いてありますので引用します。

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面

不競法2条1項14号(筆者注:現在の21号)にいう「競争関係」とは,必ずしも双方が販売競争を行っているというような現実の商品販売上の具体的競争関係にあることを要するものではなく,広く同種の商品を扱い,あるいは同種の役務を提供するという業務関係にある場合でよく,顧客獲得のため競争関係にあれば足りる。

腰痛や肩こりなどを解消する役務を提供しているのであれば競争関係は成立するでしょう。

 

なので鍼灸マッサージ師や整形外科医などが違法施術所紹介シリーズの記事を紹介する場合、引用の判例を精査する必要があります。 

 

ま、それ以外の方が記事を紹介するのは問題無い、ということだけご理解いただければ。

*1:第2条第1項第21号 

競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為

法学検定2016、ベーシックとスタンダード

自分の法律に関する知識を客観的に証明するものが無いこと。

そして鍼灸マッサージ師でも法律や裁判の仕組みを理解せずに無茶苦茶なことを言う人もおり、そういう人たちに法律などを理解してもらうのに適当な検定試験がないか。

その2つの目的から法学検定を受けてみた。

法学検定

「法学検定試験」は、公益財団法人日弁連法務研究財団と公益社団法人商事法務研究会が共同で組織した法学検定試験委員会が実施している、法学に関する学力を客観的に評価する、わが国唯一の全国規模の検定試験です。

 詳しい内容はリンク先を読んでいただくとして、ベーシック〈基礎〉、スタンダード〈中級〉、アドバンスト〈上級〉とあり、要項(PDF)によればベーシックは法学部1年〜2年、スタンダードは2〜3年ぐらいのレベルだそうで、この試験に合格すると単位をくれる大学もあるらしい。

 

私の法律に関する知識は国家一種試験の教養試験レベル(技官で受けて、一次だけ通過)と、医事法規、特に無免許医療の判例、そして職業選択の自由に関する理解のために憲法判例百選を読んだ程度である。あとプロバイダ責任制限法関連か。

公務員試験 新スーパー過去問ゼミ4 社会科学

公務員試験 新スーパー過去問ゼミ4 社会科学

 

 

医事法判例百選 第2版 (別冊ジュリスト 219)

医事法判例百選 第2版 (別冊ジュリスト 219)

 

 

憲法判例百選1 第6版 (別冊ジュリスト 217)

憲法判例百選1 第6版 (別冊ジュリスト 217)

 

 

 

 

あとは国民生活センター消費者庁による、消費者契約法に関する判例解説を読んだ程度。

消費者契約法に関連する消費生活相談の概要と主な裁判例等(発表情報)_国民生活センター

 

なので私の法律知識はだいぶ偏っている。

もっとも法律専門職を目指すわけでもないので偏っていても構わないのだが。

ただ、私はトラブルを解決する、あるいは予防するために法律を学んでいるのではない。

業界の法秩序を変える(判例変更や人の健康に害を及ぼすおそれのある行為の明確化)ためであり、そのためには裁判所に判断してもらえる形でのトラブルが必要なのである。

そのためにはゼネラルな法知識も必要になってくる。

弁護士は法律紛争の解決・予防の専門家であって、紛争の起こし方を提案する商売では無いはず。

紛争の解決・予防のみを考えるならビジネス法務検定の方が実用的だろう。

www.kentei.org

 

と話がそれてしまった。

まあ、想定する対象者として法学部生を出しているので学術的な面が強いです。

 

で、検定の存在を知ったのは10月になってから。

ベーシックとスタンダード、一緒に受けると割引なので一緒に申し込む。

ベーシックの問題集はスマホアプリ、スタンダードの問題集は紙で購入する。

 

2016年法学検定試験問題集スタンダード〈中級〉コース

2016年法学検定試験問題集スタンダード〈中級〉コース

 

 でもほとんど勉強できず。

電車通勤してないのでスマホで問題を解くのも不向きである。

 

そんなわけでほとんど対策もできずに本番。

ベーシックは「法学入門、憲法民法、刑法」の四択問題。

仙台では約40名の受験。

民法の物権とか債権とか全くわかりません(汗)

私が民法でわかっているのは第90条と後見人、相続関係ぐらいである。

 

すでに解答は公表されていますので採点結果。

法学入門 7/10

憲法 13/15

民法 13/20

刑法 13/15

合計 46/60

 

過去のデータを見ると30〜36点で合格なのでベーシックは記入ミスなどがなければ合格確実。

憲法民法、刑法が同じ13点ですが民法は20点あるのでいかに私が民法に弱いか、というのがわかりますな。

 

で、午後からはスタンダードの試験。

科目は「法学一般、憲法民法、刑法」に加え選択科目が1科目。

選択科目は民事訴訟法、刑事訴訟法、商法、行政法基本法総合(憲法民法、刑法)

 

当初の計画は基本法総合を選ぶつもりだったんですが、民法は上述のとおりだし、憲法だって職業選択の自由表現の自由に関する判例ばっかり読んでいて統治機構の細かいところなんて覚えていない。そんなことを午前のベーシックの試験で思い知らされた。

 

そんなわけで、以前に本人訴訟の本も読んでいるので民事訴訟法を選択することに。

 

で、採点結果

法学一般 8/10

憲法 11/15

民法 8/20

刑法 9/15

民事訴訟法 8/15

合計 44/75

 

過去のデータをみると合格ラインは40〜45点なので通知が来るまでは結果がわからない状態です。

 

でもこれで受かるのもなんだかな、という気もします。

---2016/11/29編集---

ツイートを埋め込んでいましたが、削除。

直接抗議は来てないのですが、ツイートのブログ掲載の事後報告にご不満なようでしたので。

 

なお、公開アカウントによるツイートの再利用などはツイッターの規約により了承済みとなっています。

Terms of Service | Twitter

ユーザーは、本サービス上にまたは本サービスを介してコンテンツを送信、投稿または表示することによって、当社があらゆる媒体または配信方法(既知のまたは今後開発される方法)を使ってかかるコンテンツを使用、コピー、複製、処理、改変、修正、公表、送信、表示および配信するための、世界的かつ非独占的ライセンス(サブライセンスを許諾する権利と共に)を当社に対し無償で許諾することになります。このライセンスによって、ユーザーは、当社や他の利用者に対し、ご自身のツイートを世界中で閲覧可能とすることを承認することになります。ユーザーは、このライセンスには、Twitterが、コンテンツ利用に関する当社の条件に従うことを前提に、本サービスを提供、宣伝および向上させるための権利ならびに本サービスに対しまたは本サービスを介して送信されたコンテンツを他の媒体やサービスで配給、放送、配信、プロモーションまたは公表することを目的として、その他の企業、組織または個人に提供する権利が含まれていることに同意するものとします。ユーザーが本サービスを介して送信、投稿、送信またはそれ以外で閲覧可能としたコンテンツに関して、Twitter、またはその他の企業、組織もしくは個人は、ユーザーに報酬を支払うことなく、当該コンテンツを上記のように追加的に使用できます。 

---(追記終わり)---

ちなみに民事訴訟法は私の場合、原告適格や裁判の土地管轄といったあたりが関係してきます。

本来なら手続きに関しては弁護士に任せるのが良いんでしょうけど、予め知っておかないと対応できないこともありますので。

 

冤罪が怖い人、陥れられそうな人、犯罪被害にあったときに警察の怠慢が許せない人は刑事訴訟法を勉強しても損はないかと思います。

 

行政との交渉が必要な場合もあるので行政法の理解もあったほうが話は進めやすいかも。

 

というわけでちゃんとそこら辺を勉強しておきたいのでスタンダードが落ちても気にしないことにしよう。

 

 

 

 

 

 

無免許業者をいっその事、法律で認めてしまい、規制をかけるという方法(最高裁判例変更の難しさ)

 

鍼灸マッサージ師や柔道整復師などの国家資格者はあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律や柔道整復師法において、広告できることが制限されている。

 

第七条  あん摩業、マツサージ業、指圧業、はり業若しくはきゆう業又はこれらの施術所に関しては、何人も、いかなる方法によるを問わず、左に掲げる事項以外の事項について、広告をしてはならない。
一  施術者である旨並びに施術者の氏名及び住所
二  第一条に規定する業務の種類
三  施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
四  施術日又は施術時間
五  その他厚生労働大臣が指定する事項

○2  前項第一号乃至第三号に掲げる事項について広告をする場合にも、その内容は、施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたつてはならない。

 

 

厚生労働大臣が指定する事項としては

1.もみりょうじ
2. やいと、えつ
3. 小児鍼(はり)
4. あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第9条の2第1項前段の規定による届出をした旨
5.医療保険療養費支給申請ができる旨(申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る。)
6. 予約に基づく施術の実施
7.休日又は夜間における施術の実施

8. 出張による施術の実施

9. 駐車設備に関する事項

といった具合です。

 

そんなわけで料金表示や適応症(腰痛、肩こりでさえも)を広告することができません。

 

なお、広告というのは見た者が意図せずに見せられる広告物だそうで、ネットの場合は見た者が自分自身でクリックして見るページに関しては広告とみなされません。ただしバナー広告やリスティング広告の表現は広告とみなされます。

 

適応症はともかく、料金すら表示を禁止されているものですからタウン誌などに割引券を出すようなことが国家資格者の施術所ではできません。で、適応症も書けないから広告効果が期待できず、出稿しない。

なので無免許業者ばっかり広告を出すようになり、タウン誌の運営会社も無免許業者の言いなりになるわけです。

 

で、最初に示したツイートのような憤りが出てくるわけです。

 

政治権力が無い人間が立法論を語っても仕方ないんですが、立法政策的には

  1. 国家資格者の広告規制を緩和する
  2. 無免許業者の存在を法律で認め、規制をかける

といった方法が取れるかと思います。

ただ1は難しい。

この業界、倫理観を持たない無免許業者と競争関係にある以上、過剰な表現を行う者が絶対に出てくるだろうと。

 

そんなわけで2の方がまだ実現できるのではないかと思うわけです。

 

ただ、我々国家資格者として、無免許業者に譲歩しうるのは「人の健康に害を及ぼすおそれの無い行為」を行うことを認めるまでです。

判例医師法違反とされる行為を免責するような法律は認められません。

 

なので立法で下記のことを定めるのも一つの方法かと思うわけです。

  • 問診、検査法、身体症状に関する告知、その他判例で医行為とされる行為を具体的に上げて禁止する。
  • 保健所への届け出の義務化
  • 国家資格者と同様の広告規制
  • 国家資格者と同様の義務(守秘義務など)
  • 国家資格の存在と、自身が国家資格を持たない旨を利用者に書面を用いて説明し、書面で了解を得る。

問診や検査法の禁止を無免許業者は嫌がるでしょうが、それらを医行為とする判例があるので認めるわけにはいかない。

 

違法行為が蔓延しているから、それを行うことを認めろ、というのは法治国家としては認められないわけです。

テロリストへの譲歩と変わりなく、将来、他の違法行為を立法において合法化する手段として容認されてしまう。

 

もっともこのような譲歩自体、医療従事者としては倫理観を失っているのかもしれません。

 

d.hatena.ne.jp

 昭和35年の判決の石坂修一裁判官の反対意見より

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面

 私は、多数意見の結論に賛同できない。
 原審の判示する所は、必ずしも分明であるとはいえないけれども、原審挙示の証拠とその判文とを相俟つときは、原審は、被告人が、HS式高周波器といふ器具を用ひ、料金を徴して、HS式無熱高周波療法と称する治療法を施したこと、即ち右施術を業として行つたこと、HS式無熱高周波療法は、電気理論を応用して、単なる健康維持増進のためのみならず、疾病治療のためにも行はれ、少くとも右HS式無熱高周波療法が、これに使用せられる器具の製作者、施術者並に被施術者の間では、殆んど凡ての疾病に顕著な治療効果があると信ぜられて居ること及び右治療が、HS式高周波器により二枚の導子を以つて患部を挟み、電流を人体に透射するものであることを認定して居るものと理解し得られる。
 かゝる治療方法は、健康情態良好なる人にとりては格別、違和ある人、或は疾病患者に、違和情態、疾病の種類、その程度の如何によつては、悪影響のないことを到底保し難い。それのみならず、疾病、その程度、治療、恢復期等につき兎角安易なる希望を持ち易い患者の心理傾向上、殊に何等かの影響あるが如く感ぜられる場合、本件の如き治療法に依頼すること甚しきに過ぎ、正常なる医療を受ける機会、ひいては医療の適期を失い、恢復時を遅延する等の危険少なしとせざるべく、人の健康、公共衛生に害を及ぼす虞も亦あるものといはねばならない。(記録に徴しても、HS式高周波器より高周波電流を人体に透射した場合、人体の透射局所内に微量の温熱の発生を見るのであつて、健常人に対し透射時間の短いとき以外、生理的
に無影響とはいえない。)
 されば、HS式無熱高周波療法を、健康の維持増進に止まらないで、疾病治療のために使用するが如きことは、何事にも利弊相伴う実情よりして、人体、及びその疾病、これに対する診断並に治療についての知識と、これを使用する技術が十分でなければ、人の保健、公共衛生上必ずしも良好なる結果を招くものとはいえない。
したがつて、前記高周波器を使用する右無熱高周波療法を業とする行為は、遽に所論の如く、公共の福祉に貢献こそすれ、決してこれに反しないものであるとなし得ない。
 而してあん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法が、かゝる医業類似行為を資格なくして業として行ふことを禁止して居る所以は、これを自由に放置することは、前述の如く、人の健康、公共衛生に有効無害であるとの保障もなく、正常なる医療を受ける機会を失はしめる虞があつて、正常なる医療行為の普及徹底並に公共衛生の改善向上のため望ましくないので、わが国の保健衛生状態の改善向上をはかると共に、国民各々に正常なる医療を享受する機会を広く与へる目的に出たものと解するのが相当である。
 したがつて原判示の如き器具を使用して、原判示の如き医業類似行為を業とすることを禁止する本法は、公共の福祉のため、必要とするのであつて、職業選択の自由を不当に制限したとはいえないのであるから、これを憲法違反であるとは断じ得ない。単に治療に使用する器具の物理的効果のみに着眼し、その有効無害であることを理由として、これを利用する医業類似の行為を業とすることを放置すべしとする見解には組し得ない。
 原判示は以上と同趣旨に出で居るのであるからこれを維持すべきものであると考へる。

このように、施術そのものが人の健康に害を及ぼすおそれの無い行為であっても医療ネグレクトを引き起こす以上、あはき法第12条の判例変更を目指す、というのは正しいのですが、方法論が難しい。

 

このような医療ネグレクトの被害者に裁判を行っていただかないと、判例変更(人の健康に害を及ぼすおそれが無くても医業類似行為を行っただけで禁止処罰するようにする)が難しい。

 

私のような鍼灸マッサージ師が行えるのは無免許施術を違法行為と指摘し、不正競争防止法違反で訴えられて、無免許業者の施術が「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」か否かを争うまでです。

 

なぜかと言えば、判例変更ができない場合に備え、違法行為と批判できるのは「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」に限られてしまうからです。

 

「おそれ」を立証できずに違法行為として批判した場合、判例変更がされずに損害賠償を命じられる可能性もあるわけで。

 

そして弁護士に相談したときに言われたことですが、

「裁判官は憲法判断や判例変更を避ける。」

ということです。

 

つまり私が「おそれ」を立証している場合、「おそれ」のある行為だから判例変更を判断するまでもない、という可能性が高いわけです。

 

相談した弁護士いわく

 

違憲判断や判例変更しないと救えないケースで、違憲判断や判例変更をしてでも救うべきと裁判官が考えるケースでなければ違憲判断や判例変更はされない。「人の健康に害を及ぼすおそれの無い行為」で裁判官が救うべきと考えるケースが有るか?」

 

ということでして。

 

もっともこの意見には非摘出子の相続格差違憲判断のときも、救うべき事情がなければ合憲判断されたのか?という疑問もありますが。

 

で、そういうケースとなると無免許業者が標準医療を否定し、医療ネグレクトの結果、症状が悪化したり、回復が遅れたケースになるのだろうと。

 

ただ、そういう具体的な被害までは鍼灸マッサージ師が把握するのは困難であり、医師や患者さんの協力が不可欠であります。

 

もっとも私も医師も医療ネグレクトの裁判当事者にはなれないんですけどね。

 

仮に患者さんが訴えたとしても無免許業者が高額の和解金をちらつかせて和解に持っていくという方法もあるわけです。

下記リンクは過払い金請求に関するものですが、不利な判決を出される前に2倍の和解金を提示し、判決を回避しようとしてます。

プロミスの場合(過払い金請求の話) | 庶民の弁護士 伊東良徳

しかし、プロミスは、最高裁が口頭弁論期日を指定して、自らが負ける可能性が高いと知るや、2012年3月15日付で請求認諾(原告の請求通りの義務があることを認めるということ)の書面を提出しました。民事裁判では、被告が原告の請求を認諾すると、裁判所がその内容の調書を作成し、判決をせずに終わることになっています。プロミスは敗訴判決を避けるためになりふり構わず卑劣な策略に出たのです。


 もう少し具体的に経過を説明すると、2012年2月20日、プロミスの管理部から私のところへ電話がかかってきました。最高裁が弁論期日を指定した事件の2人について和解したいというのです。私が、最高裁が口頭弁論期日を指定してるのに和解する弁護士がいると思いますか?もう勝つとわかってるのに、それに最高裁に失礼じゃないですかというと、プロミスの管理部の者は、先生の立場はわかるが弊社としては判決を受けるわけにはいかないので和解してもらえないなら認諾する方針です、というので、私は、認諾なんかしたらあちこちで大声で卑怯者といって回ってやるといいました。そうするとプロミスの管理部の者は、そういうのも望ましくないので、できれば認諾ではなく和解して訴え自体を取り下げてもらい、この裁判自体なかったことにしたい、和解金は請求額の2倍支払う、先生の立場は立場として、和解すれば請求額の2倍もらえるのに和解を蹴って認諾になったら請求額しかもらえない、依頼者はなんていうか意思確認してもらえませんかという趣旨のことをいいました。簡単にいえば、弁護士は転ばなくても依頼者は金を積めば転ぶだろう、依頼者に黙って和解を蹴ったら依頼者の利益に反する行動をしたということで弁護士が問題にされるだろうという、札束で人の面を張り、弁護士を恫喝する態度に出たのです。

(下線や強調は筆者による)

というわけで、被害者に高額和解金を蹴ってまで判決まで闘って下さい、とも言い難く、判例変更はイバラの道なのです。

プロバイダ責任制限法と消費者契約法

まずはこのまとめから。

togetter.com

消費者契約法に触れるような規約があるから是正してちょうだい、という申し入れである。

で、適格消費者団体というのはそういう不当な規約の削除を求める裁判を起こせたりする。

 

matome.naver.jp

 

このnaverのまとめの方が具体的なエピソードもあってわかりやすいでしょう。

 

で、話は変わってプロバイダ責任制限法の話。

送信防止措置(非公開や削除)に関する条項として

 

第三条  特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下この項において「関係役務提供者」という。)は、これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでない。


一  当該関係役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき。


二  当該関係役務提供者が、当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。

 

とある。

この条件を満たしている場合には権利侵害を受けた者からの損害賠償を免責しない、ということである。

 

プロバイダ責任制限法に関しては総務省が解説資料をPDFで公開している。

http://www.soumu.go.jp/main_content/000418070.pdf

8頁以降に送信防止措置については書いてある。

 

1 第1項関係
(1) 概要
本項は、特定電気通信役務提供者が、自ら提供する特定電気通信による他人の権利を侵害する情報の送信を防止するための措置を講じなかったことに関し、特定電気通信役務提供者に作為義務が生ずるのかどうかが明確ではない中で、当該情報の流通により権利を侵害されたとする者との関係での損害賠償責任(不作為責任)が生じない場合を可能な範囲で明確にするために規定するものである。
本項の規定により、特定電気通信役務提供者が不作為責任を負いうる場合が一定の範囲で明確化されることとなり、問題とされる情報に対して特定電気通信役務提供者による適切な対応が促されることになるものと期待される。

また、逆に、特定電気通信役務提供者が、問題とされる情報の送信を防止する措置を講じないことにより不作為責任を問われることをおそれるあまり、過度に送信を防止する措置を行って発信者の表現の自由を不当に侵害することを抑止する効果も有するものと考えられる。

(強調筆者)

 12頁目

(ii) 権利侵害に関する認識
次に、関係役務提供者が、不作為責任を問われる可能性があるのは、(i) の特定電気通信により当該情報が流通しているという事実を認識していた場合であって、さらに、権
利侵害に関する認識という観点から、当該関係役務提供者が当該情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき(第1号)、又は、当該関係役務提供者が当該情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき(第2号)、に限られることとするものである。
ここで、「認めるに足りる相当の理由」とは、通常の注意を払っていれば知ることができたと客観的に考えられることである。どのような場合に「相当の理由」があるとされ
るのかは、最終的には司法判断に委ねられるところであるが、例えば、関係役務提供者が次のような情報が流通しているという事実を認識していた場合は、相当の理由がある
ものとされよう。
・ 通常は明らかにされることのない私人のプライバシー情報(住所、電話番号等)
・ 公共の利害に関する事実でないこと又は公益目的でないことが明らかであるような誹謗中傷を内容とする情報

逆に、以下のような場合には、「相当な理由があるとき」には該当せず、関係役務提供者は責任を負わないものと考えられる。
他人を誹謗中傷する情報が流通しているが、関係役務提供者に与えられた情報だけでは当該情報の流通に違法性があるのかどうかが分からず、権利侵害に該当するか否かについて、十分な調査を要する場合
・ 流通している情報が自己の著作物であると連絡があったが、当該主張について何の根拠も提示されないような場合
・ 電子掲示板等での議論の際に誹謗中傷等の発言がされたが、その後も当該発言の是非等を含めて引き続き議論が行われているような場合

そんなわけで他人の名誉などを毀損する記事を書いたとしても、違法性阻却事由が主張され、その主張が明確に成り立たないものでなければ送信防止措置を取らなくても、批判した対象者に対する損害賠償責任は生じない。

 

では第3条第2項、発信者に対するプロバイダ等の責任に関してみていこう。

2 特定電気通信役務提供者は、特定電気通信による情報の送信を防止する措置を講じた場合において、当該措置により送信を防止された情報の発信者に生じた損害については、当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われたものである場合であって、次の各号のいずれかに該当するときは、賠償の責めに任じない。

一  当該特定電気通信役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき


二  特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者から、当該権利を侵害したとする情報(以下この号及び第四条において「侵害情報」とう。)、侵害されたとする権利及び権利が侵害されたとする理由(以下この号において「侵害情報等」という。)を示して当該特定電気通信役務提供者に対し侵害情報の送信を防止する措置(以下この号において「送信防止措置」とう。)を講ずるよう申出があった場合に、当該特定電気通信役務提供者が、当該侵害情報の発信者に対し当該侵害情報等を示して当該送信防止措置を講ずることに同意するかどうかを照会した場合において、当該発信者が当該照会を受けた日から七日を経過しても当該発信者から当該送信防止措置を講ずることに同意しない旨の申出がなかったとき。

権利侵害があったと認める相当な理由か、発信者に対する照会が免責の必要条件となっているわけです。

 

上記の総務省解説14頁より

(i)「権利が不当に侵害されている」

「権利が侵害されている」とは、民法第 709 条の「他人ノ権利ヲ侵害シタル」と同義であるが、「権利が不当に侵害されている」とは、単に違法な権利侵害があることに加え
て、正当防衛のような違法性阻却事由等がないことをも含む意である。これは、表現の自由との関係で本項の要件についてはできる限り限定的に規定することが望ましいこと
によるものである。

 というわけで送信防止措置は、発信された情報に違法性阻却事由が無いことまで要求しています。

 

しかしこの規定は任意規定と解釈するのが一般的なようです。*1

任意規定ということはこれに反する契約を結んでも有効というわけです。

これの反対は強行規定であり、強行規定に反する契約は無効です。

例えば最低賃金を下回る労働契約だったり、殺人契約だったり。

 

ではtogetter利用規約を見てみましょう。

利用規約 - Togetterまとめ

ユーザーは、本サービスの利用にあたって、以下に規定する各行為に該当する投稿のまとめ及び編集、コメントの投稿、並びにその他一切の行為(以下に規定する各行為に該当するTwitterの投稿をまとめ又は編集の対象に含める行為を含みます)を行ってはいけません。

ユーザーの故意・過失を問わず、以下の各行為に該当するとトゥギャッターが判断した場合、トゥギャッターは、そのユーザーに対して事前の通知又は予告をすることなく該当するまとめ若しくは編集又はコメント等の削除若しくは非公開措置、本サービスの利用停止措置又は利用機能制限等の必要な措置を採ることがあります。なお、トゥギャッターは、それらの措置又はユーザーが本条に違反したことにより受けた措置についての問い合わせ等は一切受け付けておりません。

(強調は筆者による)

 

そんなわけでtogetter利用規約プロバイダ責任制限法に背いているわけである。で、任意規定であるからにはそれは問題にならない。

 

しかし、この規定は本当に任意規定なのか?

憲法には表現の自由が規定されているものの、憲法というのは国家を規制するものであり、民間人同士を直接は規制しない。

なので具体的な法律や公序良俗などで私人間では判断されることになる。

 

で、最初に述べた消費者契約法です。

消費者契約法の対象は個人と事業者の間で結ぶ、労働契約以外の契約です。

 

そうなるとtogetter社とまとめ記事を作成する個人の間の契約も消費者契約法の規制対象なわけです。

 

で、消費者契約法第10条は

 

民法 、商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

とあるわけです。

"民法 、商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合"というのは任意規定のようです。

消費者契約法第10条 - Wikibooks

 

プロバイダ責任制限法よりも発信者(消費者)の利益を害する規約は有効なのかと。

 

というわけで、togetter社に正当な理由もなく(違法性阻却事由がある)、非公開にされた方々が特定消費者団体に被害を訴えれば条項の改正か、無効を求める申し入れ、裁判を行ってくれるのではないか、と思ったり。

 

もっともプロバイダ責任制限法のプロバイダ等って掲示板の管理者とかも含まれ、そういう個人に違法性阻却事由まで考えろ、という要求をするのは難しいのかもと思ったり。

 

ただ、記事の作成を不特定多数に解放しているサイトまで一方的な送信防止措置を認めるのは表現の自由からして問題としか思えないのである。

*1:商事法務、発信者情報開示・削除請求の実務ーインターネット上の権利侵害への対応ー41頁