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無免許業者をいっその事、法律で認めてしまい、規制をかけるという方法(最高裁判例変更の難しさ)

 

鍼灸マッサージ師や柔道整復師などの国家資格者はあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律や柔道整復師法において、広告できることが制限されている。

 

第七条  あん摩業、マツサージ業、指圧業、はり業若しくはきゆう業又はこれらの施術所に関しては、何人も、いかなる方法によるを問わず、左に掲げる事項以外の事項について、広告をしてはならない。
一  施術者である旨並びに施術者の氏名及び住所
二  第一条に規定する業務の種類
三  施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
四  施術日又は施術時間
五  その他厚生労働大臣が指定する事項

○2  前項第一号乃至第三号に掲げる事項について広告をする場合にも、その内容は、施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたつてはならない。

 

 

厚生労働大臣が指定する事項としては

1.もみりょうじ
2. やいと、えつ
3. 小児鍼(はり)
4. あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第9条の2第1項前段の規定による届出をした旨
5.医療保険療養費支給申請ができる旨(申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る。)
6. 予約に基づく施術の実施
7.休日又は夜間における施術の実施

8. 出張による施術の実施

9. 駐車設備に関する事項

といった具合です。

 

そんなわけで料金表示や適応症(腰痛、肩こりでさえも)を広告することができません。

 

なお、広告というのは見た者が意図せずに見せられる広告物だそうで、ネットの場合は見た者が自分自身でクリックして見るページに関しては広告とみなされません。ただしバナー広告やリスティング広告の表現は広告とみなされます。

 

適応症はともかく、料金すら表示を禁止されているものですからタウン誌などに割引券を出すようなことが国家資格者の施術所ではできません。で、適応症も書けないから広告効果が期待できず、出稿しない。

なので無免許業者ばっかり広告を出すようになり、タウン誌の運営会社も無免許業者の言いなりになるわけです。

 

で、最初に示したツイートのような憤りが出てくるわけです。

 

政治権力が無い人間が立法論を語っても仕方ないんですが、立法政策的には

  1. 国家資格者の広告規制を緩和する
  2. 無免許業者の存在を法律で認め、規制をかける

といった方法が取れるかと思います。

ただ1は難しい。

この業界、倫理観を持たない無免許業者と競争関係にある以上、過剰な表現を行う者が絶対に出てくるだろうと。

 

そんなわけで2の方がまだ実現できるのではないかと思うわけです。

 

ただ、我々国家資格者として、無免許業者に譲歩しうるのは「人の健康に害を及ぼすおそれの無い行為」を行うことを認めるまでです。

判例医師法違反とされる行為を免責するような法律は認められません。

 

なので立法で下記のことを定めるのも一つの方法かと思うわけです。

  • 問診、検査法、身体症状に関する告知、その他判例で医行為とされる行為を具体的に上げて禁止する。
  • 保健所への届け出の義務化
  • 国家資格者と同様の広告規制
  • 国家資格者と同様の義務(守秘義務など)
  • 国家資格の存在と、自身が国家資格を持たない旨を利用者に書面を用いて説明し、書面で了解を得る。

問診や検査法の禁止を無免許業者は嫌がるでしょうが、それらを医行為とする判例があるので認めるわけにはいかない。

 

違法行為が蔓延しているから、それを行うことを認めろ、というのは法治国家としては認められないわけです。

テロリストへの譲歩と変わりなく、将来、他の違法行為を立法において合法化する手段として容認されてしまう。

 

もっともこのような譲歩自体、医療従事者としては倫理観を失っているのかもしれません。

 

d.hatena.ne.jp

 昭和35年の判決の石坂修一裁判官の反対意見より

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面

 私は、多数意見の結論に賛同できない。
 原審の判示する所は、必ずしも分明であるとはいえないけれども、原審挙示の証拠とその判文とを相俟つときは、原審は、被告人が、HS式高周波器といふ器具を用ひ、料金を徴して、HS式無熱高周波療法と称する治療法を施したこと、即ち右施術を業として行つたこと、HS式無熱高周波療法は、電気理論を応用して、単なる健康維持増進のためのみならず、疾病治療のためにも行はれ、少くとも右HS式無熱高周波療法が、これに使用せられる器具の製作者、施術者並に被施術者の間では、殆んど凡ての疾病に顕著な治療効果があると信ぜられて居ること及び右治療が、HS式高周波器により二枚の導子を以つて患部を挟み、電流を人体に透射するものであることを認定して居るものと理解し得られる。
 かゝる治療方法は、健康情態良好なる人にとりては格別、違和ある人、或は疾病患者に、違和情態、疾病の種類、その程度の如何によつては、悪影響のないことを到底保し難い。それのみならず、疾病、その程度、治療、恢復期等につき兎角安易なる希望を持ち易い患者の心理傾向上、殊に何等かの影響あるが如く感ぜられる場合、本件の如き治療法に依頼すること甚しきに過ぎ、正常なる医療を受ける機会、ひいては医療の適期を失い、恢復時を遅延する等の危険少なしとせざるべく、人の健康、公共衛生に害を及ぼす虞も亦あるものといはねばならない。(記録に徴しても、HS式高周波器より高周波電流を人体に透射した場合、人体の透射局所内に微量の温熱の発生を見るのであつて、健常人に対し透射時間の短いとき以外、生理的
に無影響とはいえない。)
 されば、HS式無熱高周波療法を、健康の維持増進に止まらないで、疾病治療のために使用するが如きことは、何事にも利弊相伴う実情よりして、人体、及びその疾病、これに対する診断並に治療についての知識と、これを使用する技術が十分でなければ、人の保健、公共衛生上必ずしも良好なる結果を招くものとはいえない。
したがつて、前記高周波器を使用する右無熱高周波療法を業とする行為は、遽に所論の如く、公共の福祉に貢献こそすれ、決してこれに反しないものであるとなし得ない。
 而してあん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法が、かゝる医業類似行為を資格なくして業として行ふことを禁止して居る所以は、これを自由に放置することは、前述の如く、人の健康、公共衛生に有効無害であるとの保障もなく、正常なる医療を受ける機会を失はしめる虞があつて、正常なる医療行為の普及徹底並に公共衛生の改善向上のため望ましくないので、わが国の保健衛生状態の改善向上をはかると共に、国民各々に正常なる医療を享受する機会を広く与へる目的に出たものと解するのが相当である。
 したがつて原判示の如き器具を使用して、原判示の如き医業類似行為を業とすることを禁止する本法は、公共の福祉のため、必要とするのであつて、職業選択の自由を不当に制限したとはいえないのであるから、これを憲法違反であるとは断じ得ない。単に治療に使用する器具の物理的効果のみに着眼し、その有効無害であることを理由として、これを利用する医業類似の行為を業とすることを放置すべしとする見解には組し得ない。
 原判示は以上と同趣旨に出で居るのであるからこれを維持すべきものであると考へる。

このように、施術そのものが人の健康に害を及ぼすおそれの無い行為であっても医療ネグレクトを引き起こす以上、あはき法第12条の判例変更を目指す、というのは正しいのですが、方法論が難しい。

 

このような医療ネグレクトの被害者に裁判を行っていただかないと、判例変更(人の健康に害を及ぼすおそれが無くても医業類似行為を行っただけで禁止処罰するようにする)が難しい。

 

私のような鍼灸マッサージ師が行えるのは無免許施術を違法行為と指摘し、不正競争防止法違反で訴えられて、無免許業者の施術が「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」か否かを争うまでです。

 

なぜかと言えば、判例変更ができない場合に備え、違法行為と批判できるのは「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」に限られてしまうからです。

 

「おそれ」を立証できずに違法行為として批判した場合、判例変更がされずに損害賠償を命じられる可能性もあるわけで。

 

そして弁護士に相談したときに言われたことですが、

「裁判官は憲法判断や判例変更を避ける。」

ということです。

 

つまり私が「おそれ」を立証している場合、「おそれ」のある行為だから判例変更を判断するまでもない、という可能性が高いわけです。

 

相談した弁護士いわく

 

違憲判断や判例変更しないと救えないケースで、違憲判断や判例変更をしてでも救うべきと裁判官が考えるケースでなければ違憲判断や判例変更はされない。「人の健康に害を及ぼすおそれの無い行為」で裁判官が救うべきと考えるケースが有るか?」

 

ということでして。

 

もっともこの意見には非摘出子の相続格差違憲判断のときも、救うべき事情がなければ合憲判断されたのか?という疑問もありますが。

 

で、そういうケースとなると無免許業者が標準医療を否定し、医療ネグレクトの結果、症状が悪化したり、回復が遅れたケースになるのだろうと。

 

ただ、そういう具体的な被害までは鍼灸マッサージ師が把握するのは困難であり、医師や患者さんの協力が不可欠であります。

 

もっとも私も医師も医療ネグレクトの裁判当事者にはなれないんですけどね。

 

仮に患者さんが訴えたとしても無免許業者が高額の和解金をちらつかせて和解に持っていくという方法もあるわけです。

下記リンクは過払い金請求に関するものですが、不利な判決を出される前に2倍の和解金を提示し、判決を回避しようとしてます。

プロミスの場合(過払い金請求の話) | 庶民の弁護士 伊東良徳

しかし、プロミスは、最高裁が口頭弁論期日を指定して、自らが負ける可能性が高いと知るや、2012年3月15日付で請求認諾(原告の請求通りの義務があることを認めるということ)の書面を提出しました。民事裁判では、被告が原告の請求を認諾すると、裁判所がその内容の調書を作成し、判決をせずに終わることになっています。プロミスは敗訴判決を避けるためになりふり構わず卑劣な策略に出たのです。


 もう少し具体的に経過を説明すると、2012年2月20日、プロミスの管理部から私のところへ電話がかかってきました。最高裁が弁論期日を指定した事件の2人について和解したいというのです。私が、最高裁が口頭弁論期日を指定してるのに和解する弁護士がいると思いますか?もう勝つとわかってるのに、それに最高裁に失礼じゃないですかというと、プロミスの管理部の者は、先生の立場はわかるが弊社としては判決を受けるわけにはいかないので和解してもらえないなら認諾する方針です、というので、私は、認諾なんかしたらあちこちで大声で卑怯者といって回ってやるといいました。そうするとプロミスの管理部の者は、そういうのも望ましくないので、できれば認諾ではなく和解して訴え自体を取り下げてもらい、この裁判自体なかったことにしたい、和解金は請求額の2倍支払う、先生の立場は立場として、和解すれば請求額の2倍もらえるのに和解を蹴って認諾になったら請求額しかもらえない、依頼者はなんていうか意思確認してもらえませんかという趣旨のことをいいました。簡単にいえば、弁護士は転ばなくても依頼者は金を積めば転ぶだろう、依頼者に黙って和解を蹴ったら依頼者の利益に反する行動をしたということで弁護士が問題にされるだろうという、札束で人の面を張り、弁護士を恫喝する態度に出たのです。

(下線や強調は筆者による)

というわけで、被害者に高額和解金を蹴ってまで判決まで闘って下さい、とも言い難く、判例変更はイバラの道なのです。