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ヘルスケア大学の記事を添削してみる。

医師などが記事を監修しているヘルスケア大学というサイトがあるのですが、ニセ医学批判で有名な五本木クリニックの桑満先生によると

 

とのことです。

 

www.gohongi-beauty.jp

 

で、

 

整体やカイロなどに関する記事がありましたので、添削してみましょう。

www.skincare-univ.com

 

まずこの記事の監修をしている方のプロフィールです。

www.skincare-univ.com

 

理学療法士とあります。

理学療法士(PT)というのは病院や介護施設などでリハビリを行っている専門職(国家資格)です。

 

法的根拠は理学療法士及び作業療法士法になります。

理学療法士及び作業療法士法

 強調などは筆者による。

第二条  この法律で「理学療法」とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マツサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。

 

3  この法律で「理学療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、理学療法を行なうことを業とする者をいう。 

 

第十五条  理学療法士又は作業療法士は、保健師助産師看護師法 (昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項 及び第三十二条の規定*1にかかわらず、診療の補助として理学療法又は作業療法を行なうことを業とすることができる。


2  理学療法士が、病院若しくは診療所において、又は医師の具体的な指示を受けて理学療法として行なうマツサージについては、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 (昭和二十二年法律第二百十七号)第一条 の規定*2は、適用しない。

 

というわけで、病院や診療所、医師の指示の下でのみ医療従事者としての権限があります。

病院や診療所以外で、医師の指示が無い場合には施術を行うことはできません。

そのかわり健康保険や介護保険での加算が鍼灸マッサージ師や柔道整復師よりも高く、病院や介護施設に雇われるなら理学療法士のほうが有利です。

 

それに対し、我々鍼灸マッサージ師や柔道整復師は独立開業権があり、医師の指示がなくても独自判断で施術する権限があります。

 

で経歴を。

資格取得後、群馬県内の整形外科クリニックにて勤務する傍ら、BCリーグのトレーナーを担当。その後独立。同時に、全国のリハビリ職者向け技術セミナーを開催、これまで3,000人以上への指導経験をもち、現在も継続中。

「独立」ですか。後述のような独立なのでしょうか?

2014年に株式会社メディカルエージェンシーを設立、リハビリ職者向けメディアサイト[POST(http://1post.jp/)]を開設する。 

理学療法士作業療法士言語聴覚士を対象とする営利事業を行っているわけです。

 

では記事の方をチェックしましょう。

 

腰痛の治療やケアができる施設は、整形外科、接骨院、整体・カイロプラクティック、マッサージなど、さまざまです。どのような症状に、どの施設が適しているのか。それぞれの施設の特徴と選び方のポイントについてお伝えします。

とありますので、引用しながら添削してみましょう。

まずは接骨院の説明から

柔道整復師法で認められている「柔道整復」「接骨院」「ほねつぎ」は、国家資格である柔道整復師が治療を行う施設です。検査・診断は行われません。

後の鍼灸院の説明でも

検査・診断は行われません。 

 と書かれていますが、徒手検査などは行っているわけですよ。施術所によっては超音波画像検査を行っているところもあります*3

当然、レントゲン撮影や血液検査などは行なえませんが、検査をしない、というのは明らかな間違いです。

診断も、免許の範囲内で所見の告知をすることは認められています*4

もっとも診断書を出す権限もありませんし、鍼灸マッサージ師や柔道整復師の診断は法的な証拠などにはなりません。

 

なので最初の選択として整形外科に行くのは正しいです。

 

なお、接骨院の受診において

痛みが起こった時期(もしくは瞬間)が特定できる

 というのは大事です。慢性痛(いつから痛んだか、はっきりしない)は柔道整復師が診る対象ではないからです。

 

健康保険の適用範囲は、急性・亜急性が原因の外傷に対する治療のみで、慢性的な腰痛、病気(関節炎、ヘルニアなど)が原因の腰痛などは、適用外となります。

 柔道整復師の施術対象は健康保険の適用の有無に関わらず、急性外傷のみとなります*5

慢性疾患に対する施術権限は柔道整復師にはありません。

あん摩マッサージ指圧師鍼灸師の免許も持っているならともかく、柔道整復師のみの免許のところで慢性の痛みを診てもらうこと自体、間違いです。

柔道整復師(接骨院・整骨院)と無免許施術 - Togetterまとめ

 

ここで問題なのが、どのような人が開業しているかという点。柔道整復師の資格を持った人が開いている場合は特に問題ありませんが、中には整体なのに医療機関のように見せるよう「整骨院」という名前で開いているところもあるそうです。整体は医療行為ではなく、整体師には特に資格もありません。マッサージ程度のケアしかできないので、もちろん保険も適用されません。このような点も把握したうえで、注意して選びましょう。

確かに「整骨院」という名称は柔道整復師による独占使用規定がなく、整体師などの無免許業者が施術所名に使っても罰則はなさそうです。ただし不正競争防止法景品表示法あたりに違反しそうな気もしますが。

 

また施術所の開設自体は免許は不要です。免許を持った施術者がいれば良いので。

 

むしろ問題はちゃんと保健所に届け出をした接骨院整骨院でも無免許の人間に施術させている場合もあることでしょう。

 

オウム事件で逃走していた看護師が接骨院で働いていましたが、偽名なので看護師としてではなく、一般人として雇われ、施術を行っていたわけです。

 

また無免許はり治療による死亡事故も接骨院での出来事です。

d.hatena.ne.jp

 

では次に鍼灸院の解説の添削を。

東洋医学に基づいた鍼灸治療を行う施設です。

 必ずしも東洋医学の理論に基づいて行っているとは限らないのです。

この記事のテーマは腰痛ですからさまざまなアプローチ、考えがあります。超音波画像を見ながらトリガーポイントに打っていく方法もあったり。

www.jau-japan.or.jp

 

整形外科で診断を受けた後の腰痛治療、腰の張りによる痛みの軽減、腰痛の予防などの場合は、こちらの受診をおすすめします。 

 ここはその通りです。

鍼灸師のポジショニングトークと思ってくださって構いません。)

 鍼灸の治療では、神経痛(坐骨神経痛など)や、腰痛症(ぎっくり腰などの急性腰痛や、慢性の腰痛)など、対症となる傷病の範囲内にて、その病気で診断・治療を受けた医師の同意書、または診断書があれば健康保険が適用されます(同意書は3か月ごとに更新する必要があります)。

 

ただし、健康保険適用は医師の同意があっても制度的に難しく、原則としては患者さんが一度全額を払い、一部の料金を保険組合から払い戻しを受ける(償還払い)が本来の姿です。

どこの鍼灸院でも代理受領(手続きを治療院が代行してくれる)を行ってくれるわけではありません。また保険組合によっては償還払いしか認めないところもあります。

患者さんご自身で償還払いの手続きをするのであれば問題ありませんが、同一病名でお医者さんの治療を受けると鍼灸治療の保険適用が認められません。

 

このように鍼灸治療の健康保険適応は何かと面倒くさいので取り扱わない治療院もあるわけです。

代理受領で手続きをしたら患者さんが湿布や鎮痛剤をもらって不支給となるとその分を患者さんから払っていただかないといけないわけで。

 

指圧・あん摩マッサージの部分に関しては特に間違いはありません。

さすがマッサージを行うことが認められているPT資格を持っている。

一部のPTはマッサージと一緒にされるのを嫌がったり、マッサージ師がリハビリという表現を使うのを嫌がったりしてますが。

 

あとは医療費控除の対象になる、という点ぐらいは書いていただいてもよいのかと。

傷病の治療のために国家資格者の施術を受けた場合には医療費控除の対象となります。

整体やカイロプラクティックなどの無免許施術では対象になりません。

No.1122 医療費控除の対象となる医療費|所得税|国税庁

 

4 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価(ただし、疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれません。) 

 

では「そのほか、民間療法に属するもの」を見てゆきましょう。

 

腰の筋肉が張っている、全身の疲れを解消したい、リラックス・リフレッシュしたいという場合は、このような施設でもいいでしょう。 

 なぜここまで言い切れるのか。

この記事の更新日は2016/07/27とあります。

国民生活センターによる手技療法による健康被害の報告書は2012年です。

手技による医業類似行為の危害−整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も−(発表情報)_国民生活センター

 

私みたいに医事法規の判例に詳しくないのは仕方ありませんし、そうなると違法行為と指摘するのも躊躇われるでしょうが、せめて国民生活センターの報告書には触れて欲しい。

 

それが読者の安全の確保のために必要なことですから。

 

厚生労働省もこのような案内を出しております。

www.mhlw.go.jp

手技による医業類似行為に関し、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格を有しない者による施術を受けた者からの健康被害相談が報告されており、その要因の一つとして施術を受ける際にあはき師の有資格者と無資格者の判別が困難であることが指摘されています。 

 

リンク先のPDFで書かれたような国家資格者の見分け方も記載すべきでは?

 

さて、監修者は「独立」された、と経歴で書かれています。

医師の指示が必要な理学療法士が「独立」とはどういうことでしょうか?

 

実は最近、理学療法士作業療法士が整体師などとして開業しているケースが増えています。

blog.livedoor.jp

上記ブログ記事より引用

てっきり私は、開院している理学療法士は法に基づかない医業類似行為として開業しているものと思っていましたが、それを日本理学療法士協会はやめさせようとしているのでしょうか?

(略)

まあ、理学療法士の倫理観はともかく、理学療法を謳っていないなら何が法律違反なのかが正直あまりわかりません。(完全に白とも言えませんが)

(略)

しかし、理学療法士が開業する人が多くなっている理由もしっかりと理解して対策をしておかないと、協会も批判にさらされかねないと思いますが・・・(すでに批判されてるところも多い?)

 

監修者の方が独立して施術を行っていたかは不明なのですが、そういう人たちが友人・知人にいたり、そのような独立を考えている人がセミナー受講者やサイトの読者に多ければ整体などを違法行為として書くのは難しくなるんですよね。

 

米国では理学療法士にも開業権はありますし、相応の知識・技術を持っているので彼らの開業権を認めるべき、というのは立法論としてはありですが、現行の法律では独立判断での医行為は認めておりません。*6

 

理学療法士などによる整体などの問題点は健康被害が生じた場合、賠償責任保険が使えないことです。

 

理学療法士が病院や診療所以外で、医師の指示もなく行える行為は「人の健康に害を及ぼすおそれの無い行為」に限定され、健康被害が発生した時点で「おそれの無い行為」という前提が崩れますから。

togetter.com

施術行為に対して賠償保険金が支払われないと思われる、消費者の被害相談もあります。

事故情報詳細(カイロプラクティック 事故情報ID:0000241980)_事故情報データバンクシステム

テレビ宣伝のカイロプラクティックに肩こりでかかったら直後から肩から右腕に痛み。保険請求書記載の誤りを訂正してほしい。

施術行為による健康被害では賠償責任保険のお金が下りないからでしょうか?

それとも被害者が自ら加入している保険に対する請求書の記載を要求して、違法施術がバレるとまずいので事実とは異なる記載をしたのでしょうか?

事故情報詳細(リラクゼーションマッサージ, マッサージ… 事故情報ID:0000269049)_事故情報データバンクシステム

マッサージ店で施術を受け首の頸椎を痛めた。損害保険会社が調査した結果、保険対象外だったが、店が理由を教えてくれない。 

 この記載からは無免許マッサージ店だったかどうかは不明なのですが、無免許であれば理解できます。頚椎を痛めた、ということは「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」を行っていた、ということであり、違法施術ですから。

 

やはり自分とその顧客にとって不利なことは書けないものです。

もっとも私もそれを言われると否定出来ないので、ちゃんと法令や判例などのソースを提示しているわけです。

 

やはり医療記事の信頼性は一次ソースを提示しているかどうか、というところでしょうか。

*1:保健師助産師看護師法

第五条  この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。

第六条  この法律において「准看護師」とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者をいう。

第三十一条  看護師でない者は、第五条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法 (昭和二十三年法律第二百二号)の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。

第三十二条  准看護師でない者は、第六条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法 又は歯科医師法 の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。

*2:あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律

第一条  医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。

*3:厚生労働省からの通知により,検査自体に人体に対する危険性がなく,かつ,柔道整復師が施術に関わる判断の参考とする超音波検査については,柔道整復師が施術所において実施したとしても関係法令に反するものではないとの見解が示されています。

施術所における柔道整復師による超音波画像診断装置の使用について - 広島県ホームページ

*4:東京地方裁判所判決 平成5年11月1日 平成3年(特わ)1602 出典 - D1-Law.com判例体系 判例ID 28166751

*5:柔整ホットニュース

厚労省回答集決定版-柔道整復師の免許だけでは「肩凝り、腰痛などの症状には施術出来ない」 - 知らないと怖〜い整骨院の話(Yahoo版) - Yahoo!ブログ

*6:札幌高裁昭55(う)195号、歯科技工士による歯科医師法違反事件では

"歯科技工士は、歯科医師でないとしても、歯科衛生に関するある程度の教育と試験を受けてその免許を受ける者であるから、もちろん現行法令及びこれに基づく現在の歯科技工士養成制度のままでは許されないけれども、これらの法令及び制度の改正を通じて、印象採得等の一定範囲の歯科医行為につき、その全部とまではいかないとしても、その一部を、相当な条件の下に、歯科技工士に単独で行わせることとすることも立法論としては可能であると考えられる。

しかし、そのことは、いずれにしても、国民の保健衛生の保持、向上を目的とする立法裁量に委ねられた事項と解すべきであり、かかる解釈に立ちつつ、ひるがえつて現行法を検討しても、現在の法一七条、二九条一項一号及び技工法二〇条の定立にあらわれている立法裁量の内容が憲法のいずれかの条項に違反していると疑うべき事由は見当たらないのである。"

と判示している。