無資格業者による健康法の記事の有害性

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幻冬舎プラスやyahooニュースに、医療系国家資格を持たない手技療法業者が書いた、生理不順が足を揉んで改善した、という記事が掲載され、医師たちによる抗議で非公開になった、という記事です。

 

で、非公開にされた記事のアーカイブはこちら

https://archive.is/lXg3O

この記事を書いた方は前澤香苗さんです。

「子宮の反射区に静脈が見えてしまっているから、婦人科系が弱いんじゃない?」と聞くと、やはり婦人科系に問題があるのだということ。

 その後、詳しく話を聞いてみると、20代前半の頃から薬を飲まないと生理が来ないのだというのです。 

 病歴や症状を聞くのは問診であり、医師法第17条に違反するのは最高裁判例でも示されております。

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面

断食道場の入寮者に対し、いわゆる断食療法を施行するため入寮の目的、入寮当時の症状、病歴等を尋ねる行為(原判文参照)は、その者の疾病の治療、予防を目的とした診察方法の一種である問診にあたる。 

 さて、非公開にされた記事の方ですが

足の先だけが真っ青になり、足先から上は別人の足のようにパンパンに浮腫(むく)み、靴も履(は)けないほどの状態になってしまったのでした。 

この部分に関し、

宋医師は「これを読む限りですが、マッサージにより外傷に近いことが起こっている可能性はある」と指摘した。 

 とある。

 

マッサージ師の私としても、通常のマッサージでここまで浮腫むとは考えられず、まさに外傷であろうと推測する。というより、この施術者は炎症性浮腫を知らないのではないか?

 

ちなみに無資格者が取り締まりを受けずに済む施術は「人の健康に害を及ぼすおそれの無い行為」に限定される*1

医師法第17条違反(無免許医業)は、抽象的な危険性のみで成立する*2ので炎症を招く施術行為は医師法第17条やあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第1条、第12条に違反するといえる。

 

で、前澤さんの記事ですが

まずは母はAさんに、自然に生理が来る様になるまで、一切の薬を止めるよう(漢方薬も含め)勧めました。

医師による処方薬の中断をさせて子供が亡くなって、殺人事件で有罪判決が出ているのですが。

www.shimotsuke.co.jp

佐藤基(さとうもとい)裁判長は「(駿君が)死亡する危険性を知りながら、投与しないよう指示した」として殺人の関与と殺意を認定し、懲役14年6月(求刑懲役15年)を言い渡した。

宋医師も

「むしろ、このような方法に“希望”を託し、適切な医療を中止したり、遠ざかったりしてしまうと、健康を損なうだけでなく、欲しかったはずの子どもが持てないなど、人生に大きな影響が起こることも考えられます」

と言っております。

 

ちなみにあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律では

第四条  施術者は、外科手術を行い、又は薬品を投与し、若しくはその指示をする等の行為をしてはならない。 

 とあり、投薬の指示は禁じられております。

薬の服用の禁止指示が「投薬の指示」に該当するかは微妙なのですが、それによって患者が死亡すれば殺人罪に問われるのは前掲の裁判例のとおりです。

 

ちなみにこの条文の違反に対しては直接の罰則規定はなく、医師法第17条違反として処理されます。

 

というわけで前澤さんの母の行為もあはき法や医師法違反じゃないですかね?

 

さて、WELQといい、今回の記事といい、誤った健康情報は適切な医療を受ける機会を失わせたり、医療の拒否を招きかねない、という点では有害です。

 

この記事を書いた前澤さん、官足法友の会認定講師ということですが、自身で施術行為も行っているようです。

body care | kanae maezawa

 

そんなわけで、法定の医療資格を持たない無資格者が治療等を目的とした施術行為について、書くことを禁止することはできないか、と思ったりするわけです。

少なくとも自らの施術に誘引する目的の記事ぐらいは禁止できないかと。

 

こんな提案をすると表現の自由との兼ね合いで無理ではないか、と思われるでしょう。

 

しかし虚偽・誇大ではない灸の広告の規制に関し、合憲判断を出した最高裁判決があったりします。

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面

論旨は、本件広告はきゆうの適応症を一般に知らしめようとしたものに過ぎないのであつて、何ら公共の福祉に反するところはないから、同条がこのような広告までも禁止する趣旨であるとすれば、同条は憲法一一条ないし一三条、一九条、二一条に違反し無効であると主張する。

しかし本法があん摩、はり、きゆう等の業務又は施術所に関し前記のような制限を設け、いわゆる適応症の広告をも許さないゆえんのものは、もしこれを無制限に許容するときは、患者を吸引しようとするためややもすれば虚偽誇大に流れ、一般大衆を惑わす虞があり、その結果適時適切な医療を受ける機会を失わせるような結果を招来することをおそれたためであつて、このような弊害を未然に防止するため一定事項以外の広告を禁止することは、国民の保健衛生上の見地から、公共の福祉を維持するためやむをえない措置として是認されなければならない。されば同条は憲法二一条に違反せず、同条違反の論旨は理由がない。

 なお右のような広告の制限をしても、これがため思想及び良心の自由を害するものではないし、また右広告の制限が公共の福祉のために設けられたものであることは前示説明のとおりであるから、右規定は憲法一一条ないし一三条及び一九条にも違反せず、この点に関する論旨も理由がない。 

 垂水裁判官は補足意見で、この規制は過酷に過ぎる気もするが、立法の問題である、としています。で、反対意見は灸の広告で掲げた適応症は虚偽・誇大でないからこの事件に関しては処罰は違憲である、という立場です。そして反対意見の奥野裁判官は

また、多数意見は「その結果適時適切な医療を受ける機会を失わせるような結果を招来する」というのであるが、
若し然りとすれば、むしろ当初からきゆう等の施術の業務を禁止すべきであつて、既に医業類似行為として病気治療上効果のあることを認めて、その業務を免許しておきながら、その施術を受けると適時適切な医療を受ける機会を失わせるとの理由で、正当な広告までも禁止することは、それ自体矛盾であるという外はない。

としています。

このような反対意見があるにも関わらず、適応症の広告の禁止が合憲と判断されるのですから、無資格者が広告として健康に関する記事を書くことを禁止することはできると思うんですがね。

ちなみにサイトでの記述は広告とはみなされていないので、鍼灸マッサージも今は好きなように書けます。

もっとも医療法が改正され、病院・診療所のサイトでの記述にも規制がかかり、鍼灸マッサージ師や柔道整復師のサイトにも規制がかけられようとしていますが。

 

大麻取締法では

 第四条  何人も次に掲げる行為をしてはならない。
一 〜三(略)
四  医事若しくは薬事又は自然科学に関する記事を掲載する医薬関係者等(医薬関係者又は自然科学に関する研究に従事する者をいう。以下この号において同じ。)向けの新聞又は雑誌により行う場合その他主として医薬関係者等を対象として行う場合のほか、大麻に関する広告を行うこと。

 とあり、この広告禁止に関する裁判*3では

 

なお、大麻取締法四条四号は大麻に関する広告を禁止しているが、これは大麻に関して公に意見を発表することを全面的に禁止したものではなく、右に述べた大麻の有害性にかんがみ、保健衛生上の危険防止の観点から、大麻について専門的な知識を持ち合わせていない一般大衆に対する広告を禁止するものであるから、所論の主張するような憲法の各規定に何ら違反するものではない(麻薬及び覚せい剤に関する広告を禁止する麻薬及び向精神薬取締法二九条の二及び覚せい剤取締法二〇条の二参照。)。

 と判示し、大麻取締法の広告禁止の規定が憲法21条(表現の自由)に反しないとしています。同様の広告規制規定は麻薬取締法などにもあります。

 

なので施術所等の名前を出して、無資格者が健康法等に関する記事を一般向けに書くことを禁止しても良いのではないか、と思っています。

それこそ適切な医療受診の機会確保のために。

 

ただ、そういう禁止規定を立法化する場合、あはき法ですむのか、それとも医療法レベルで考えないといけないのか。

 

医療法レベルとなると私はなんら関与できないので、このような記事を問題視する医師の先生方に、医師会(というか日本医師連盟)を通じて立法化の圧力をかけてほしいのです。