あはき柔等の第1回広告検討会議事録より、その2:無資格者問題

その1は下記記事。

binbocchama.hatenablog.com

なお、法律家の構成員が「医業類似行為」と表現しているのは、あはき柔および人の健康に害を及ぼすおそれのある行為(又は届け出医業類似行為)を指すと思われる。

 

○小川代理(日盲連)

 実際、あん摩、はり、きゅうで患者さんが困るのは、あはきの情報を知りたいということもありますが、資格のない人たちの広告によって、あはきかどうかの見分けが付かない、紛らわしいということで、実際に患者さんに無資格者の被害も出ておりますので、無資格者の取締りの明確化。そして、この問題については指導体制を整備してほしいと思います。実際、届けを出した者に対しては、指導監督が行き届くのでしょうが、全く届けを出していない人、無資格者の行為に対して、どのように情報を得て指導するか、これをまず 1 点はやっていただきたいと思います。

○山口構成員(患者団体)

 先ほど無資格者の話が出ていたのですが、私たちの所でも整体とかカイロプラクティック、マッサージ屋さんと言うのでしょうか、アルバイトの人がやっているようなもみほぐしとか、そういう所できつく押されて被害を受けたという御相談が結構あります

ところが、相談のときに、いや、整体やカイロプラクティックというのは資格がないのだということを言うとびっくりされるのです。ですから、今、どの人がどの資格を持っていて、何を対象にしているのかということが非常に分かりにくくなっています。

 先ほど治療ということをおっしゃったのですが、例えば施術という言葉を使えば、治療ではないのですねというイメージになるわけです。今、どういう資格者がやっているのかということが分からない実態になるような名前であることに非常に問題があって、特にあはき、柔整というのは国家資格ですから、やはり、国家資格であることを一般の方が知ることができるような内容にする必要があるのではないか。

 そうすると、無資格者がやっていることについては、なぜここまで許されているかと、今、すごく重なっている部分があると思います。資格者はここまでできるが、無資格者でもこんなことをやっているではないか。そこをもう少し整理していく必要があって、それを一般の人がちゃんと使い分けができるように、ガイドラインの中できちんと整備していく必要があるのではないかと思います。

○前田構成員(医事法)

 今の御意見で話させていただいてもいいかなと思ったのですが、有資格者と無資格者の間での広告制限等の違いはいろいろ問題になっていたと思います。

今、山口構成員がおっしゃったように、資格を持っている人間ができる範囲とほとんど変わらないか、もしかしたら、制限がないぐらい無資格者のほうがいろいろなものを挙げているというのはやはりおかしいと思います

通常で考えると、今医療法等も広告制限というのは制限列挙から包括方式に変わってまいりましたので、その点では広まってはいるのですが、これは逆に有資格者だからこそと捉えることもできるのではないかと思っております。

つまり、無資格者にとっては、元の制限列挙にしてくれれば、このような事態は起こらないので、同じか又は全く負担が掛からない形で即、広告できること自体が、無資格者の今の現状に関わっているのではないかと思っております。

少し広告のあり方も有資格者、無資格者で変えていくべきではないかと考えます。

○釜萢構成員(医師会)

 私どもも無資格者の方の広告のあり方が一番、今回の検討の中で大事だと思っております

(略)

それぞれの法律の中で、この業務はこの資格がないとできないということになると、資格がないのにそれをやれば虚偽ということになりますから、そういう整理が確かにいいのだろうと思いますが、実際にそれが果たしてうまくいくのかということについては、現時点では非常に難しそうだなという予想を持っております。

それを今回の検討の中で、しっかり実のあるものにしなければいけないと思って今日は出てまいりました。

○石川構成員(全鍼)

先ほど山口構成員がおっしゃっていたように、国民の健康を守るという観点から、平成 27 年 5 月 26 日に消費者庁さんから確か発表していただいた内容になると思うのですが、結構、いわゆる国家資格がない所で怪我をしている方がいらっしゃるという現状があるのであれば、私たちが幾ら発信しても、そんなに浸透性がなかったりとも思われてしまいますので、せめてそこは、国家資格があるのかないのかというところを分かってもらえるような、発信を国からしてもらえるような、そういう体制だけでも国に責任を持って作ってもらえれば、国民が安心して鍼灸マッサージ施術を受けられるのかなと思っています。

○磯部構成員(法科大学院教授)

 従前、医業類似行為の規制については 2 つのポイントがあって、直接的に人体に有害となるという意味で、積極的な弊害があるという点に加えて、そういうのに頼ることで、患者が適切な医療を受ける機会を失するおそれがあるという、消極的弊害もあると。この 2 つを当初、厚生省は規制の根拠に挙げていたはずですが昭和 30 年代の最高裁が、いろいろな理屈はあるのですが、職業選択の自由にも関わる話だしということで、積極的な弊害が具体的にあるようなものについてのみ、要は積極的弊害がある場合のみを規制対象とするという解釈をしているものですから、恐らくその点、そこは狭く解しているところがあると思うのです。

あん摩、はり、きゅう、柔整以外の医業類似行為については、医学的観点から人体に危害を及ぼすおそれがあれば禁止処罰にするけれど、それ以外については放任しているというのが、恐らく今までの運用のような気がするのですが、そもそもその考え方自体、学説上は批判があって、結論から言えば消極的弊害ということをやはり重視するべきではないかと、私などは考えていますし、恐らく多数説はそうではないかと思います

 そういう意味では、放任行為であるとされている業務に従事する人も、医業ないしは医業類似行為へのアクセスを不当に害するような形で広告等をする場合には、それは広告行為が規制されてもよいでしょうし、医業類似行為を行う業務においても、国民が医療へのアクセスを損なわれてしまうような、そういう消極的弊害が起こり得るような広告であれば、これも規制の対象としていいのだという、そういう考え方に立って、今後このガイドラインについて考えるということでよいのであれば、それはそれで私は大賛成だなという気がしている次第です。

○福島座長

 やはり一番大事なのはペイシェントセーフティなので、先ほどの消極的弊害ということに関しても、これはどうやって患者を守るかということを考えていくというのが、大きな視点だなということを、ずっと伺ってきました。そうすると、ただガイドラインを作るというだけではなくて、そのガイドラインが本当に運用されるためには、職能団体がどういう行動をするのかということも含めて、それから、どこまで患者さんたちに向けて、理解できる言葉で書けるのかということも含めて、もちろん市町村の権限も含めて、やっていかなければいけない。

○釜萢構成員(医師会)

 それから、先ほど磯部先生からお話がありまして、消極的な弊害というのは私は初めて伺ったのですが、それはすごく大事で、無資格者をどうやって規制していくかという根拠が私はよく分からなかったので、すごく難しいだろうと思っていたのですが、医療安全を確保する意味から、国民を守るためにどのようにしっかりと規制の網を掛けるかということが大分見えてきたような気がしまして、そこを是非しっかりと詰めていくことが大事だなと感じた次第です。

 ○磯部構成員(法科大学院教授)

 私が先ほど申し上げたのは、「医業類似行為」というのは、それは 6 文字のそういう言葉の行為であって、医行為とは違うのです。医師が業を独占し、一部看護師ができるというのはあくまでも医行為の話であって、これは医業類似行為ということである。それを、なぜ法定 4業務でなければ免許なくやってはいけないのかという規制根拠の話を先ほど申し上げて、それはそれ相応の人体に有害性があることもあるし、また医業類似行為であるからこそなのでしょうね。

それを頼ることで、かえって患者が適切な医療を受ける機会を奪われてしまってはいけないということなので、私の先ほどの理解では、そういう消極的な弊害も規制の根拠として位置付けるのであれば、「○○院」という言葉を使って、本来は病院にアクセスしようと思っていたにもかかわらず間違って医業類似行為にかかってしまうようなことは、やはり望ましくないということになるはずなのです。

 ただ、そうは言っても、医業類似行為として脈々とやられてきた実績があるので、それを根底から引っ繰り返してゼロからにしろというつもりはもちろんないのですが、そこは分けたほうがいいという感覚です。

 ○木川構成員(弁護士)

 確認ですが、そうすると、単純に無資格者がやる行為というのは無資格医業だから、広告以前の話なのではないかと思うのですが、それをなぜここで議論しなければいけないのかというのも分からなかったのです。 

 ○南構成員(日鍼)

 先生の疑問は私もそのままそうなのです。無資格の広告の問題というのが出てきました。それも議論の論点の案に挙がっています。いわゆる整体だったら整体屋ということで看板が上がっています。マッサージでしたらマッサージ屋ということで看板が上がっています。いわゆる国家資格を取得していない方が、人の体に触わって何らかの施術をしているということそのもの、業としてやっていること自体が、あはき法であったり、医師法であったり、既に現行法に違反しているのではないかという議論は常にあって、先ほど磯部構成員がおっしゃられた最高裁判例があるとか、職業選択の自由があるとか、私も100 %詳しいわけではないのですが、そういう部分があって、そこに突っ込んでいくと、それこそ先ほどの医療か医療ではないかというのと同レベルか、それ以上の問題が出てきて、広告の話ではなくなってしまうようなところなのです。

 ただ、実態として、現状を我々としては飲み込みにくいところなのですが、産業としてはそれなりに日本国中にあって、実際に動いているという中で、そこで健康被害を生まないためにどうするのだ、誤解を生まないような広告というのは何なのだということを考えていくしかないのかなというように、私はそういう気がしています。 

 ○坂本構成員(学校協会)

 正にそうだと思うのです。無資格の業者というのは山ほどいて、ややもすれば誇大な広告に走っている所もあるのではなかろうかと思うのです。そういった所に広告制限を掛けなくて、資格者のほうにばかり制限を掛けたら何の意味もないというところは実際はあるのだと思います。したがって、先ほどどなたかが言われていましたが、鍼灸治療院、接骨院ということを掲げているために医療機関だと思って患者が来るという実態よりも、そちらのほうが怖いなと。
 お聞きしたいことがあって、山口構成員だったらお分かりになるかもしれませんが、いわゆる医療機関だと思って行ってしまうというような実態というのは、かなりあるのですか。

○山口構成員(患者団体)

 実際にお話を伺っている中で、「それは医療機関ではないですよね」と言ったら、混乱されているというようなことはあります。だから、見分ける基準が明確に分かっていない。それで、「先生」と呼ばれる人はみんな医師だろうという感覚です。

○坂本構成員(学校協会)

 どのぐらいそういう事例があるのか分からないのですが、もしそうだとすると、きちんと説明する必要はあるのだろうと思います。ただ、その前に無資格が横行しているという問題というのは、もっと大きな問題であるということは、この検討会では御認識いただきたいと思っております。

○釜萢構成員(医師会)

 この広告の検討の中で無資格を扱わなければならない理由は、国民の医療の安全が脅かされているという大変強い危機感からであり、そういう資格がなくて業に携わっている方を排除するということでは決してないのですが、国民の安全を守るためには、資格のない業者に対してもしっかりと目を光らせていかなければいけないという認識です。

そうでないと、健康被害の事例は医師の所にたくさん来るわけですそういう無資格の施設で術を受けることによって健康被害が生じた事例を、私どもはたくさん経験しております。ですから、それを何とかしなければいけないだろうという危機感から、 1 つはこの検討会が開かれていると認識しております。

○木川構成員(弁護士)

 無資格者の話を広告に限定していった場合に、要するに無資格者が医業類似行為をやっていると誤認させるような広告をしてはいけないということになるのかなと思うのです。

そうした場合に、医業類似行為とそこに至らないものは何かという話になってきて、鍼灸は分かりやすいと思いますが、マッサージ、体に触わるものがどこから以上だったら医業類似行為で、どこから以下ならそうならないのかということが明確になれば、それ以下のものをやっているということについては、医業類似行為をやっていると誤認させることにならないし、それ以上をやっているということになったらそれは誤認させるということになるのかなと思います。

 例えば体に触わるものというのは、通常のエステのようなものもあると思いますが、エステを誰もマッサージだとは思わないのかもしれませんし、それもマッサージに含まれると思うのかもしれませんし、具体例を挙げていけば、どこかである程度の線引きができるのかなとも思います。