性風俗店における無免許マッサージ(性的でなくて、疲労回復などを目的とする)

kutabirehateko.hateblo.jp

導入部を要約すると、疲労困憊で深夜に家でマッサージをして欲しいが、デリヘルなら来てくれるだろうか?とつぶやいたところ、フォロワーから回春マッサージ系のデリヘルを提案され、頼んでみた、という感じである。

 

フォロワーが紹介したリンクは下記の通り【18禁注意】

中洲のアロマ・エステ店一覧|九州風俗情報ぴゅあらば

お店に「マッサージ」とか「治療院」という表現があって、ちゃんとあん摩マッサージ指圧師の免許を持って、治療院を運営する身としては困るわけです。

 

私は男なので大した被害はないが、こういうので勘違いした方が、女性のマッサージ師に性的なサービスを求めるのは困るのである。

 

法律

あん摩マッサージ指圧師免許

当ブログが初めての方に説明すると、業としてあん摩、マッサージ、指圧を行う場合にはあん摩マッサージ指圧師という免許が必要である。

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(あはき法)

第一条 医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。

しかし、一般の方が「マッサージ屋」と思っているところはほぼ無免許だったりする。

なぜ無免許のマッサージ屋などが営業できているのは下記記事を読んで欲しい。

binbocchama.hatenablog.com

風営法性風俗特殊営業)

デリヘルというのは風営法第2条第7項第1号で無店舗性風俗特殊営業と位置づけられている。第6項の店舗型性風俗特殊営業の条文も引用する。

6 この法律において「店舗型性風俗特殊営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。


一 浴場業(公衆浴場法(昭和二十三年法律第百三十九号)第一条第一項に規定する公衆浴場を業として経営することをいう。)の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業

二 個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業(前号に該当する営業を除く。)
(略)


7 この法律において「無店舗型性風俗特殊営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
一 人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの

(略)

 

東京都 特定異性接客営業等の規制に関する条例

それと東京都にはいわゆるJKビジネスを「特定異性接客営業」として規制する条例がある。

http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/about_mpd/keiyaku_horei_kohyo/horei_jorei/jkbusiness_reg.files/jorei.pdf

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。


(1) 青少年

18歳未満の者をいう。

(2) 特定異性接客営業

店舗型特定異性接客営業及び無店舗型特定異性接客営業をいう。

(3) 店舗型特定異性接客営業

次のいずれかに掲げる営業であって、青少年が客に接する業務に従事していることを明示し、若しくは連想させるものとして東京都公安委員会規則(以下「公安委員会規則」という。)で定める文字、数字その他の記号、映像、写真若しくは絵を営業所の名称、広告若しくは宣伝に用いるもの又は青少年が客に接する業務に従事していることを明示し、若しくは連想させるものとして公安委員会規則で定める衣服を客に接する業務に従事する者が着用するもので、青少年に関する性的好奇心をそそるおそれがあるもの風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号。以下「法」という。)第2条第1項に規定する風俗営業、同条第6項に規定する店舗型性風俗特殊営業又は同条第11項に規定する特定遊興飲食店営業に該当するものを除く。)をいう。


イ 店舗を設け、当該店舗において専ら異性の客に接触し、又は接触させる役務を提供する営業


ロ 店舗を設け、当該店舗において専ら客に異性の人の姿態を見せる役務を提供する営業

ハ 店舗を設け、当該店舗において専ら異性の客の接待(法第2条第3項に規定する接待をいう。第5号ニにおいて同じ。)をする役務を提供する営業(イに該当する営業を除く。)

ニ 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、客に接する業務に従事する者が専ら異性の客に接するもの

 

(4) 店舗型特定異性接客営業者

東京都の区域内において営業所を設けて店舗型特定異性接客営業を営む者をいう。


(5) 無店舗型特定異性接客営業

次のいずれかに掲げる営業であって、青少年が客に接する業務に従事していることを明示し、若しくは連想させるものとして公安委員会規則で定める文字、数字その他の記号、映像、写真若しくは絵を広告若しくは宣伝に用いるもの又は青少年が客に接する業務に従事していることを明示し、若しくは連想させるものとして公安委員会規則で定める衣服を客に接する業務に従事する者が着用するもので、青少年に関する性的好奇心をそそるおそれがあるもの(法第2条第7項に規定する無店舗型性風俗特殊営業に該当するものを除く。)をいう。

専ら異性の客に接触し、又は接触させる役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの

ロ 専ら客に異性の人の姿態を見せる役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの

ハ 専ら異性の客に同伴する役務を提供する営業(イ又はロに該当する営業を除く。)

専ら異性の客の接待をする役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの(イ又はハに該当する営業を除く。)


(6) 無店舗型特定異性接客営業者

東京都の区域内において事務所若しくは受付所(前号イからニまでに規定する役務の提供以外の客に接する業務を行うための施設をいう。以下同じ。)を設けて、若しくは東京都の区域内及び区域外に事務所及び受付所を設けないで東京都の区域内に住所を有して、又は客の依頼に応じて派遣される同号イからニまでに規定する役務を行う者と当該客とが接する場所を東京都の区域内に設定して無店舗型特定異性接客営業を営む者をいう。

(7) 特定異性接客営業者

店舗型特定異性接客営業者及び無店舗型特定異性接客営業者をいう。

(8) 特定衣類着用飲食店営業

茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業のうち、水着、下着その他の公安委員会規則で定める衣服を客に接する業務に従事する者が着用することによって、客の性的好奇心をそそるおそれがあるもの(法第2条第1項に規定する風俗営業、同条第11項に規定する特定遊興飲食店営業又は第2号に規定する特定異性接客営業に該当するものを除く。)をいう。


(9) 特定衣類着用飲食店営業者

東京都の区域内において営業所を設けて特定衣類着用飲食店営業を営む者をいう。

 

風営法性風俗特殊営業が「 異性の客の性的好奇心に応じて」というのに対し、東京都の条例は「青少年に関する性的好奇心をそそるおそれがあるもの」という点が違う。

JKビジネスは性的サービスではない、という建前であるから風営法の規制は受けない。なので東京都(警視庁)が条例を作ったわけである。

警察庁の通知によれば「客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する行為は、接待に当たる。」

https://www.npa.go.jp/laws/notification/seian/hoan/hoan20180130.pdf

 

なお、無免許マッサージ店やエステ店を装った売春や違法性風俗店がある旨、警察白書では指摘されている。

https://www.npa.go.jp/hakusyo/h28/honbun/html/s2150000.html

(2)売春事犯及び風俗関係事犯の現状
① 売春事犯
平成27年中の売春事犯の総検挙人員に占める暴力団構成員等(注)の割合は19.3%(104人)と、依然として売春事犯が暴力団の資金源になっていることがうかがわれる。

最近では、インターネットの出会い系サイト等を利用する事犯のほか、マッサージ店やエステ店を仮装した違法性風俗店における事犯など、潜在化傾向がみられる。

 

こういった事情もあり、医師や鍼灸マッサージ師、あるいは許認可を受けた介護事業者以外で、もっぱら身体に接触する役務を提供する事業は風営法で規制すべきと考える。

当然、整体やリラクゼーションも身体に接触する役務として風営法で規制すべきであろう。

 

性風俗店は「リラクゼーション」と表現して欲しい。

リラクゼーションというのは無免許マッサージを、違法性を指摘されないように言い換えただけではあるが、「マッサージ」という用語を無資格者に使わせない、というのではいろいろ不便もあろう。無資格者がマッサージの代わりに使っているのであれば性風俗店にもぜひ、マッサージという言葉は使わず、リラクゼーションと表現して欲しい。

 

日本標準産業分類にリラクゼーションは記載されているが、管轄する総務省に、デリヘルはリラクゼーションに含まれるかどうか、尋ねたところ、「含まれる」という回答であった。

 

最初にも述べたが、性風俗店が「マッサージ」や「治療院」という表現をするため、勘違いした男性から、女性のマッサージ師が性的サービスを求められて困っているのである。

 

 当該記事のデリヘルの違法性

だんだん、自分が何を言いたいのか、わからなくなってきた。

なので当該記事のデリヘルのマッサージ、リラクゼーションの違法性を指摘することにしたい。

 

 

昨日は一週間の疲れが溜まって「誰か家に来て身体を揉んでくれたらいいのになあ!」という気持ちがピークに達した。コンビニで支払いを済ませながらコンビニには話し相手は置いていないのだとふと思った。人と話がしたい、とも思った。帰ったら持ち帰った汚れ物を洗濯して、取り込んだ洗濯物を畳んで仕舞って、部屋を片付けなければいけない。仕事の事務処理もある。でもとても頭がまわらない。 誰か女の人に家に来てほしい。家事を手伝って、肩を揉んで、おしゃべりにつきあってほしい。

夫の留守にデリヘルを呼んだ - はてこはときどき外に出る

 「疲れが溜まって」と表現していることから、疲労回復を目的にしていると思われる。

なお、世間には病気の治療などの医療目的でなければマッサージに免許は不要、という風説が流れているが、疲労回復を目的にした場合でもマッサージには免許が必要である。

厚生省の通知より

法第一条に規定するあん摩とは、人体についての病的状態の除去又は疲労の回復という生理的効果の実現を目的として行なわれ、かつ、その効果を生ずることが可能な、もむ、おす、たたく、摩擦するなどの行為の総称である。*1

 もっとも利用者側がそういう意図でも、施術者側にそういう意図がないとすれば違法性を問うのは難しくなるが。

 

最初にどのような症状があるかなど一般的な質問をされる。オイルを使うかどうか。指圧が中心だが、とくによくほぐしてほしい部位はあるか。「バリニーズマッサージがお出来になると読んでお願いしたので、ストレッチがあるコースがいい」と伝えると、指圧にもストレッチは取り入れているという。もう考えるために頭を働かせるのも億劫で、Aさんのご判断におまかせしたいとお伝えした。

夫の留守にデリヘルを呼んだ - はてこはときどき外に出る

 

症状、病歴を尋ねることは問診であり、医行為である旨の最高裁判決があります。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51069

断食道場の入寮者に対し、いわゆる断食療法を施行するため入寮の目的、入寮当時の症状、病歴等を尋ねる行為は、その者の疾病の治療、予防を目的とした診察方法の一種である問診にあたる。

また「Aさんのご判断におまかせしたい」とあるが、免許を持たない者に許される行為は「患者に危害の及ぶことがなく、かつ、判断作用を加える余地に乏しい機械的な作業」*2であり、身体の状況について判断しながらの施術は無資格者には許されない行為である。

 

痛むところ、痺れるところを伝えると「じゃ、ここからこっちへこんな風に痺れるでしょ?」と打てば響くような答えが返ってくる。

夫の留守にデリヘルを呼んだ - はてこはときどき外に出る

 

 

「どこがどう凝っていて」と身体所見を告知しており、これまた違法行為である。

なお、違法行為となるのは無免許でとして行うからであり、家族や知人など、特定少数の方の体を触って、身体所見を告知しても直ちに違法になるものではない。

 

これまで、この手の性風俗店やJKリフレで疲労回復や肩こりなどの解消を唄っているものも見受けられたが、利用者側は性的目的で来ており、そのような健康目的は期待していないものと思っていた。

 

今回の記事は健康目的で性風俗店の利用があることを示し、性風俗店に対しても医業類似行為業者としての規制が必要な旨、認識する次第である。

*1:○あん摩師、はり師、きゅう師又は柔道整復師の学校又は養成所等に在学している者の実習等の取り扱いについて
昭和三八年一月九日医発第八号の二各都道府県知事あて厚生省医務局長通知

*2:保健師助産師看護師法違反事件
東京高裁昭和63(う)746 判例タイムズno.691 1989.5.15 p152
東京高裁(刑事)判決時報40巻1〜4号9頁