以前、医療目的でなければ無免許でマッサージをしても良い、と主張をしているあん摩マッサージ指圧師のめりー氏を、めりー氏の実名を挙げて批判した記事を書いた。
めりー氏からプライバシー侵害として、削除の申請がはてな社にされた。
そして、5月10日、はてな社から私にメールで連絡が来た。
- インターネット上に自ら公表した氏名・勤務先・自宅の住所・電話番号・メールアドレスが記載されており、それのみを理由とする削除申立である場合は、原則として削除を行わない
- ただしインターネット上に自ら公表した可能性がある氏名・勤務先・自宅の住所・電話番号・メールアドレスについても、本人からの削除要請があり、さらに以下に該当する場合は原則として削除手続きを進める
- 公表されていたページがすでに削除されている場合
- 公表されていたページの管理者に対し、プライバシーが侵害されているとする当事者または代理人より正式に削除の要請が行われている場合
ということであり、はてなからのメールにもその主旨が書いてあった。*1
私の返答内容は下記のとおりである(事態の複雑化を避けるため、本記事ではめりー氏の本名は記載せず、返答での本名部分は「めりー」に置き換える。また返信したメールはテキストメールなので強調などは本記事独自である)。
以下の理由により記事及び氏名の削除には応じられません。
めりー氏(以下、対象者)があん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(以下、あはき法)第1条、第12条、医師法第17条に反する、違法な無免許業務を肯定・推奨していることは本件記事で指摘したとおりである。
対象者は本件記事作成当時、医療記事を書くライターであるが、削除申請理由には医療ライター稼業を廃業したなどとは書かれていない。
メディアが法令を無視するようなライターに医療記事や施術業務に関する記事の執筆を依頼し、結果として誤った知識を拡散させる恐れが有る。
メディアが記事作成を依頼するライターの質を判断する上で、医療法規を理解し、遵守している又は理解せず、違法な行為も肯定的に考えるかは重要な判断材料である。
よって医療に関する記事を書くライターが医療法規に反する行為を肯定している事実は公共の利害に関する事柄である。
違法業務があたかも合法なように書いた記事がメディアを通じて拡散されるのは前述のとおり、誤った知識を拡散させるのみならず、本人は合法だと信じながら犯罪業務を行う者を増やすことにもつながる。
そのような社会的な損失と、ライターとしての実名のプライバシーが侵害されることの損失を比較考量すれば社会的には前者が大きい。
また対象者は私が把握している限りでは、あん摩マッサージ指圧等の施術業務に従事しているあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師(以下、鍼灸マッサージ師)でもある。
鍼灸マッサージ師は医師や看護師などと同様に、法律(あはき法)で定められた医療職である。よって、保健衛生上の必要性から設けられた免許制度を肯定するか、否定するかは鍼灸マッサージ師としての保健衛生に対する考えとも言える。
医療職が保健衛生に関してどのような考えを持っているかは施術を受ける患者、患者を紹介するケアマネなどの医療福祉職、施術者として雇う、施術所開設者にとっては重要な情報である。
また将来、施術所を開設する場合においては、その施術所に勤務を希望する者にとって、開設者が免許制度に関してどのような考えを持っているのかも重要な情報である。
制度がどうあるべきか、であれば立法論に属する話であり、思想としてプライバシー保護の対象と考えられるが、対象者の言動は現在の法律を無視する反社会的なものである。
よって対象者のプライバシー侵害による損失よりも、実名を書く、社会的な利益が大きい。
5月15日、はてな社から、私の反論を受理し、めりー氏に削除不可と連絡した旨、メールが来た。
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*1:転載許可を得ていないので転載はしない。