カイロタイムズの記事から見る、カイロ団体の法制化への活動とリラクゼーション扱いされることへの懸念

ここ最近は日本カイロプラクターズ協会(JAC)に関する記事を書いてたが、カイロプラクティックの業界団体はJAC以外にも有る。

 

そしてそういう複数の団体が集まって、カイロプラクティック制度化推進(準備)会議(以下、推進会議)という団体を立ち上げている。

カイロプラクティック制度化推進(準備)会議

本会は、主に事業者並びに施術者で構成される団体の代表者が集まり、業界を取り纏めるための意見交換を行い、業界秩序を構築し、カイロプラクティック療法の制度化推進を行うことを目的としています。
本会は、国内法に基づく行政の指導を仰ぎ、国民に対しての安心で安全な施術提供環境を確立し、カイロプラクティック療法が国民の健康回復・増進の選択肢の一つとして認知された法制化の実現を目指した活動をおこなっています。

で、この推進会議の活動がカイロタイムズという業界紙で取り上げられている。

カイロプラクティック・手技療法業界紙 - カイロプラクティック業界紙 カイロタイムズ

バックナンバーは下記リンク

https://www.chiro-times.co.jp/%E9%80%A3%E8%BC%89/%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%AD%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%82%BA%E9%81%8E%E5%8E%BB%E5%8F%B7/

以下、古い記事から紹介し、どのような動きがあるのか、紹介する。

なお、104号(2016年2月15日発行)以前はJavaScriptを有効化し、Flashを導入しないと見れないので、105号以降の記事を見ていく。またテキストのコピペができないので、引用が不正確になることをご了承願いたい。

105号(2016年5月16日発行)

カイロタイムズ105

見出しには第2回カイロプラクティック意見交換会とある。

これが推進会議の前身である。

2015年8月に開催された意見交換会には厚生労働省の担当官も出席。

で、法制化の必要条件として担当官から

  1. エビデンスの構築
  2. 業界の統一
  3. 医療関係者団体との調整

が示される。

そして2016年3月に第2回の意見交換会が開催され、厚労省の担当官の他、消費者庁の担当官も参加。

  • カイロは厚労省の所管ではないこと。
  • 法制化には国民の支持を獲得してから行政に訴えるべきであること。最近の事例では言語聴覚士法がその例である。
  • WHOは国外の機関であり、日本には関係ない。

というのが厚労省消費者庁の担当官から示された。

なお、JACは第1回で決められた合意を破ったため、第2回には招かれなかった、とのこと。

107号(2016年11月21日発行)

カイロタイムズ107

2016年8月開催。

名称をカイロプラクティック法制化推進(準備)会議と改める。

厚労省医事課と消費者庁消費者安全課からオブザーバー参加。

消費者庁の担当者から「カイロプラクティックの定義は何ですか?」という質問。

施術者側としては「明快に答えられる状況にない」とのこと。

108号(2017年2月20日発行)

カイロタイムズ108

 2016年11月、第2回推進会議開催。

医事課と消費者安全課からオブザーバー参加。

日本カイロプラクティック登録機構(JCR)への講師派遣を要請したようであるが、いろいろ問題がありそうである。

「事故が発生する確率はゼロではない」と書いてるので、現段階ではカイロプラクティックは違法施術と言える。

行政側からは、三浦レポートを受けて、その後、業界としてどのように安全対策を積み重ねてきたかがポイントになる、という指摘。

別のカイロ団体は事故報告そのものの捏造を疑い、三浦レポートに反証することを大事にしてるようだが。

消費者庁「法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に」に対する当会の見解および対応::一般社団法人日本カイロプラクターズ協会(JAC)

110号(2017年8月21日発行)

カイロタイムズ110

2017年4月、第3回推進会議開催。

医事課と消費者安全課からオブザーバー参加。

自主規制案が上程、可決。

受領者の安全を優先するため、国際基準の資格化よりも現実的な対応が必要という認識。

111号(2017年11月20日発行)

カイロタイムズ111

2017年9月、第4回推進会議開催。

医事課から課長補佐と係長がオブザーバー参加。

消費者庁から参加団体あてに『カイロプラクティックの施術に関する安全対策について(要請)』が届いた。

http://www.jfcp.org/topics/2017/img/yousei%20to%20JFCP%20H290526.pdf

カイロプラクティックに関わるものは少なく見積もって2万人程度。WHOガイドラインを満たしたカイロプラクターは約600名程度。

行政からはWHO基準以外のも含めて統一する必要がある、という指摘。

医業類似行為レベルの臨床活動であることを改めて証明したい考えだ。

 

医業類似行為の一翼を担う業界として生き残るか、バラバラのまま終わるのか。

と記事には書かれている。推進会議はカイロプラクティックが医業類似行為であることに誇りを持っているようである。

113号(2018年5月21日発行)

カイロタイムズ113号

2018年2月、第5回推進会議開催。

行政からオブザーバー参加は無し。後日報告。

最低限、事故を起こさないレベルで業界の統一基準を作ることを基本方針とする。

記事には周辺状況として「健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン」に言及し、

カイロプラクティックで行なう医学的根拠に基づく施術は違法行為に当たるということだ。

と書かれている。 

binbocchama.hatenablog.com

 

消費者庁からはカイロを含め、無資格の医業類似行為は全てリラクゼーションにしてはどうか?という提案が有るらしい。

結論としてまとめる業界が団結し、医業類似行為のカイロプラクティックとして資格化を目指すか、このまま行動せずにリラクゼーションに移行して医療根拠に基づく施術活動を諦めるか、二択のときが近づいている。

広告検討会で「非医業類似行為」と書かれたことを見て、どう思ったのやら。

傍聴者のチェック表には推進会議の名前があった。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000203605_00013.html

114号(2018年8月20日発行)

カイロタイムズ114号

2018年6月、第6回推進会議開催。

医事課から課長補佐と専門官、消費者安全課から課長補佐がオブザーバー参加。

定義の統一に困難を極めている。

行政からは国民の安全が重要であること、エビデンスが整理されれば線引しやすい、との意見。

116号(2019年2月18日発行)

カイロタイムズ116号(高解像度)

2018年10月、第7回推進会議開催。

医事課の課長補佐が出席。

平成29年は事故情報データバンクへのカイロの事故の登録数が減少。

文春の記事が誤解している、という指摘。

ameblo.jp

なお、116号には日本リラクゼーション業協会のコンテストの記事も載っている。

 

binbocchama.hatenablog.com

117号(2019年5月20日発行)

カイロタイムズ117号(高解像度)

 2019年2月、第8回推進会議開催。

業界統一定義は取りまとめられた模様。

業界史作成の分科会の設置の決定。

119号(2019年11月18日発行)

カイロタイムズ119号(高解像度)

 2019年8月、第9回推進会議開催。

医事課から情報分析官が出席。

民間資格としてでもカイロプラクターを認証する環境を整備し、その上で将来的に国家資格化を目指すという段階を踏まなければならない。

 医師法に違反する違法行為をそのまま国家資格はできまい。

本来であれば既存の医療免許の範囲内でカイロプラクティックを行い、それで認知させた後に独立開業の国家資格化を目指すべきだと思うのだが。

 

binbocchama.hatenablog.com

 このブログ記事を執筆時点での最新号が119号である。

2019年11月8日には第10回の推進会議が開かれた。

活動報告 - カイロプラクティック制度化推進(準備)会議

業界より11名、行政より1名の出席者により、試験委員会によるカイロプラクティック資格認証案の協議・採択と実施スケジュールの決定、業界整備に関する状況報告をおこないました。
引き続き、行政機関の指導を仰ぎながら、業界の整備と課題の解決を進めることを決議し、業界整備を進めるために団体会員・個人会員の加入促進を決定しました。

なんか活動報告のページを見れば良かった気もしますが。

あと別のカイロ業界誌の推進会議に関する記事。

カイロプラクティックの現状と制度化活動の意味 | カイロプラクティックジャーナル

制度化活動の延長上にて、行政より「無資格の医業類似行為は全てリラクゼーション業へ移行してはどうか」旨の提案を受けたが、医学的根拠に基づき施術をおこなうカイロがリラクゼーション業へ移行した場合、療法としての根底が崩れ、単なる手技行為となってしまう。

 

日本のカイロを守るためには、医業類似行為であり続けることが重要な意味を持つ。 

 とやはり医業類似行為であることへの拘りと、リラクゼーション扱いされることへの危機感が見て取れる。