言語聴覚士法

カイロ制度化推進(準備)会議で、行政側の意見として、法制化のためには国民からの支持が必要であり、そのようにして法制化した例として言語聴覚士法(ST法)が挙げられた、ということである。

 

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 http://www.chiro-times.sakura.ne.jp/ebook/105/html5.html#page=1

というわけで、言語聴覚士法を見ていこう。

まずwikipediaを見てみよう。

言語聴覚士 - Wikipedia

米国では修士レベルの教育が必須であるようだ。

日本では高卒後、3年以上の教育が必要である。

で、

言語聴覚士の職務は医療にとどまらず、福祉や教育にもまたがっているため理学療法士作業療法士とは異なり、「医師の指示の下に」業を行う者とはされていない。ただし、言語聴覚士の職務の一部には「身体に危害を加えるおそれのある行為」があり、これらについては、医師や歯科医師の指示の下に行うものとされている。具体的には、嚥下訓練、人工内耳の調整、その他厚生労働省令で定める行為についてである(第42条)。この「その他厚生労働省令で定める行為」には、他動運動や抵抗運動をともなったり、薬剤や器具を使用したりするものに限って、音声機能、言語機能にかかわる検査と訓練も含まれる。

とあり、その業務は必ずしも医療に限定されないようです。

Wikipediaの記事には言語聴覚士法成立までの紆余曲折が書かれています。

では条文を見ていきましょう。

言語聴覚士法の内容

(定義)

第二条 この法律で「言語聴覚士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、言語聴覚士の名称を用いて、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うことを業とする者をいう。

対比のため、理学療法士及び作業療法士法(PTOT法)も見ていこう。

(定義)

第二条 この法律で「理学療法」とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マツサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。

2 この法律で「作業療法」とは、身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行なわせることをいう。

3 この法律で「理学療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示の下に理学療法を行なうことを業とする者をいう。

4 この法律で「作業療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、作業療法士の名称を用いて、医師の指示の下に作業療法を行なうことを業とする者をいう。

PTOT法第2条は1,2項で理学療法作業療法を定義し、3,4項でPT、OTの定義を書き、「医師の指示の下に」各療法を行なうことを業とする者、と定義している。

 

なので、STは医師の指示が無くても業務を行える、というわけである。

主治の医師がいる場合(連携)

(連携等)

第四十三条 言語聴覚士は、その業務を行うに当たっては、医師、歯科医師その他の医療関係者との緊密な連携を図り、適正な医療の確保に努めなければならない。

2 言語聴覚士は、その業務を行うに当たって、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者に主治の医師又は歯科医師があるときは、その指導を受けなければならない。

3 言語聴覚士は、その業務を行うに当たっては、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者の福祉に関する業務を行う者その他の関係者との連携を保たなければならない。

というわけで、STは主治の医師又は歯科医師が有るときはその指導を受けなければならない。逆に言えば主治の医師又は歯科医師がいない場合には独立判断で、診療の補助に該当しない業務を行える。

 

PTOT方には(連携等)という項目は無いし、条文中にも「連携」という文言はない。

ただしPTに関しては以下の通知がある。

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000060414.pdf

理学療法士が、介護予防事業等において、身体に障害のない者に対して、転倒防止の指導等の診療の補助に該当しない範囲の業務を行うことがあるが、このように理学療法以外の業務を行うときであっても、「理学療法士」という名称を使用することは何ら問題ないこと。

また、このような診療の補助に該当しない範囲の業務を行うときは、医師の指示は不要であること。

 というわけで、PTも身体の障害のない者に対し、「診療の補助」に該当しない業務を行える。

連携に関する条文は公認心理師法にもある。

(連携等)
第四十二条 公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。


2 公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。

こちらは「指導」ではなく、「指示」である。

 経過措置における「適法に」

で、ST法の既存業務従事者に対する経過措置であるが

附則抄

(受験資格の特例)

第三条 この法律の施行の際現に病院、診療所その他厚生省令で定める施設において適法に第二条に規定する業務を業として行っている者その他その者に準ずるものとして厚生労働省令で定める者であって、次の各号のいずれにも該当するに至ったものは、平成十五年三月三十一日までは、第三十三条の規定にかかわらず、試験を受けることができる。

一 厚生労働大臣が指定した講習会の課程を修了した者

二 病院、診療所その他厚生労働省令で定める施設において、適法に第二条に規定する業務を五年以上業として行った者

 と「適法に」という修飾語がついております。

 

臨床工学技士法附則抄の経過措置にも「適法に」と有ります。

(受験資格の特例)

第三条 この法律の施行の際現に病院又は診療所において、医師の指示の下に、適法に生命維持管理装置の操作及び保守点検を業として行つている者であつて、次の各号のいずれにも該当するに至つたものは、平成五年三月三十一日までは、第十四条の規定にかかわらず、試験を受けることができる。

一 学校教育法第五十六条の規定により大学に入学できる者又は政令で定める者

二 厚生大臣が指定した講習会の課程を修了した者

三 病院又は診療所において、医師の指示の下に、適法に生命維持管理装置の操作及び保守点検を五年以上業として行つた者

 

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 というわけで、無免許で診察行為や、医師でも教育を受けなければ安全に行えない施術を業として行っていれば医師法に違反するわけで、「適法に」とは言えなくなるわけです。