探偵業法を参考に、無資格者の規制を考えてみる

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弁護人の弘中惇一郎弁護士は昨年7月、ゴーン被告が同4月に保釈されて以降、保釈条件で指定された東京都内の住宅周辺を何者かに見張られたり、外出先まで尾行されたりしていると明らかにし、「重大な人権問題」と訴えた。

 その後、弘中氏は同12月25日、弁護団で調べた結果、行動監視していたのは東京都内の警備会社だと判明したと説明した上、ゴーン被告本人から委任状を受け、警備会社を軽犯罪法違反と探偵業法違反の罪で年内に刑事告訴すると表明。「日産が業者を使って保釈条件違反をしないか見張っている」と主張した。

探偵業法違反が、どの条文に触れる行為なのかは不明である。

探偵業法は警視庁の解説によると

探偵者、興信所等の調査業については、

  • 調査依頼者との間における契約内容等をめぐるトラブルの増加
  • 違法な手段による調査、調査対象者等の秘密を利用した恐喝等、従業者による犯罪の発生

等の悪質な業者による不適正な営業活動が後を絶ちませんでした。

それまで、日本には、調査業を規制する法律はありませんでしたが、このような状況にかんがみ立法化が検討された結果、調査業のうち探偵業について、平成18年6月「探偵業の業務の適正化に関する法律(以下「探偵業法」といいます。」)が制定され、平成19年6月に施行されました。

探偵業の業務の適正化に関する法律等の概要 警視庁

とある。

以前は法律での規制がなかったため、上記のような問題が有り、探偵業を規制する探偵業法ができたわけである。

昭和35年判決以降、整体やカイロプラクティックなどは法による義務などが無い状態であり、様々な問題が発生している。

なので、昭和35年判決を変更できない場合、法律でそれらの業務を規定し、義務や禁止事項を規定する、という規制方法が考えられる。

本記事では探偵業法や警備業法を参考に、どのような規制を立法的にできるか、考えてみる。

 

探偵業法

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=418AC1000000060

欠格事由

(欠格事由)
第三条 次の各号のいずれかに該当する者は、探偵業を営んではならない。
一 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
二 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者
三 最近五年間に第十五条の規定による処分に違反した者
四 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴力団(以下「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者
五 心身の故障により探偵業務を適正に行うことができない者として内閣府令で定めるもの
六 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者でその法定代理人が前各号又は次号のいずれかに該当するもの
七 法人でその役員のうちに第一号から第五号までのいずれかに該当する者があるもの

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律にも欠格条項はある。

第三条 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
一 心身の障害によりあん摩マツサージ指圧師、はり師又はきゆう師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
三 罰金以上の刑に処せられた者
四 前号に該当する者を除くほか、第一条に規定する業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者

整体師などは前科が有っても営業できるし、芸名(偽名)を用いても問題ない。

探偵に特権は無い。

(探偵業務の実施の原則)
第六条 探偵業者及び探偵業者の業務に従事する者(以下「探偵業者等」という。)は、探偵業務を行うに当たっては、この法律により他の法令において禁止又は制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない。

同じような規定は警備業法にもある。

(警備業務実施の基本原則)
第十五条 警備業者及び警備員は、警備業務を行うに当たつては、この法律により特別に権限を与えられているものでないことに留意するとともに、他人の権利及び自由を侵害し、又は個人若しくは団体の正当な活動に干渉してはならない。

無資格施術を規制する法律を作るなら同様の条文は必要であろう。

とりわけ、医行為(診療行為)をしてはならない、という内容は必須である。

書面の交付を受ける義務

(書面の交付を受ける義務)
第七条 探偵業者は、依頼者と探偵業務を行う契約を締結しようとするときは、当該依頼者から、当該探偵業務に係る調査の結果を犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いない旨を示す書面の交付を受けなければならない

 

(探偵業務の実施に関する規制)
第九条 探偵業者は、当該探偵業務に係る調査の結果が犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いられることを知ったときは、当該探偵業務を行ってはならない。

第7条は調査結果を違法行為に利用しない旨の書面の交付を受ける義務を定めたものである。

そして第9条は調査目的が違法行為に用いられることを知った場合には調査依頼を拒否する義務を定めたものである。

 

で、無資格者の営業を法で認める場合には、被施術者から下記の事項を理解した旨の書面の交付を受ける義務を定めるべきである。

  • 施術に国家資格制度がある旨
  • 当該施術者が無資格であること
  • 当該施術は疾病・症状などの予防、治療、緩和などを目的にしたものではないこと。

そして治療等の目的で施術を受けに来た場合には、当該施術を行わず、病院、診療所や国家資格の施術を受けるように勧める義務を定めるべきである。

説明と書面交付の義務

(重要事項の説明等)
第八条 探偵業者は、依頼者と探偵業務を行う契約を締結しようとするときは、あらかじめ、当該依頼者に対し、次に掲げる事項について書面を交付して説明しなければならない。
(略)
三 探偵業務を行うに当たっては、個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)その他の法令を遵守するものであること。
四 第十条に規定する事項*1
五 提供することができる探偵業務の内容
(略)


2 探偵業者は、依頼者と探偵業務を行う契約を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項について当該契約の内容を明らかにする書面を当該依頼者に交付しなければならない
(略)

そんなわけで、上で書いた事柄(国家資格制度など)の説明義務を課し、その旨を説明する書面の交付も義務付けるべきだろう。

 

無資格者側としては昭和35年判決を変更される前に、自らの手で無資格施術を認めて規制する法律を作ったほうが賢いと思うのだがどうだろうか?

 

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