「独立組織」と称する、日本カイロプラクティック登録機構と日本カイロプラクターズ協会の一体性
本記事では、遠山清彦前財務副大臣が理事長をしている日本カイロプラクティック登録機構(JCR)と一般社団法人日本カイロプラクターズ協会(JAC)が事実上、一体の組織であることを示す。
- JCRとは
- 登録商標「日本カイロプラクティック登録機構」の権利者はJACである。
- JCRのドメイン登録者はJACの会長である。
- JCRは法人格の無い、任意団体か?
- 新型コロナウィルスの感染対策に関する記述の変遷。
- JCRに関する当ブログ記事の表現が名誉毀損等であるとして、JACが筆者に発信者情報開示請求を行った。
JCRとは
日本カイロプラクティック登録機構(JCR:JapanChiropractic Register)は、日本カイロプラクターズ協会(JAC)の協力のもと2008年に設立されたカイロプラクターを登録する独立組織です。
登録対象者はWHO(世界保健機関)ガイドラインに準拠した教育プログラムを修了しJCR登録試験に合格した者です。
登録者の名簿を一般公開し、その名簿を厚生労働省や関係省庁へ提出することで安全なカイロプラクターを選ぶ基準を示すことを目的としています。将来、カイロプラクティックが制度化される際に、行政による適正なカイロプラクター登録機関が設置されるまで本機構が代替的な役割を担います。
住所は
東京都港区西新橋3-24-5 レック御成門川名ビル503
JAC事務局内
とある。
登録商標「日本カイロプラクティック登録機構」の権利者はJACである。
JCRの規則を見ると
第1条
(名称) この団体の名称を日本カイロプラクティック登録機構(以下本会)という。英文名はJapan Chiropractic Register (JCR)という。 名称を保護するために、サービスマークで商標登録する。
とある。
「日本カイロプラクティック登録機構」の商標を検索すると
(111)登録番号:第4796934号 (151)登録日:平成16(2004)年 8月 20日 (450)登録公報発行日:平成16(2004)年 9月 21日 (441)公開日:平成15(2003)年 11月 20日 (210)出願番号:商願2003-93155 (220)出願日:平成15(2003)年 10月 23日 先願権発生日:平成15(2003)年 10月 23日 更新申請日:平成26(2014)年 3月 26日 (156)更新登録日:平成26(2014)年 4月 15日 (180)存続期間満了日:令和6(2024)年 8月 20日 商標(検索用):日本カイロプラクティック登録機構 (541)標準文字商標:日本カイロプラクティック登録機構 (561)称呼(参考情報):ニッポンカイロプラクティックトーロクキコー,カイロプラクティックトーロクキコー (732)権利者 氏名又は名称:一般社団法人日本カイロプラクターズ協会
と、JACが権利者として出てくる。
JCRのドメイン登録者はJACの会長である。
JCRのドメインは「chiroreg.jp」であるが、whoisで検索すると
Domain Information: [ドメイン情報] [Domain Name] CHIROREG.JP [登録者名] 竹谷内 啓介 [Registrant] Takeyachi Keisuke [Name Server] uns01.lolipop.jp [Name Server] uns02.lolipop.jp [Signing Key] [登録年月日] 2009/09/01 [有効期限] 2021/09/30 [状態] Active [最終更新] 2020/10/01 01:05:09 (JST) Contact Information: [公開連絡窓口] [名前] [代理公開情報]GMOペパボ株式会社 [Name] GMO Pepabo, Inc.
と出てくる。
竹谷内 啓介氏であるが、JACの会長である。
JAC役員紹介::一般社団法人日本カイロプラクターズ協会(JAC)
JCRの理事には名前が乗っていない。
JCRは法人格の無い、任意団体か?
私が見る限り、JCRのウェブサイトには法人格(一般社団法人、NPO法人など)の表示が無い。
なのでJCRは法人格が無いものと推測される。
法人格があれば商標登録やドメイン登録もその法人名で行うだろう。
新型コロナウィルスの感染対策に関する記述の変遷。
現在、JCRには以下の文書が掲載されている。強調は筆者による。
今月初旬、遠山氏はJCR理事長に再任されました。名簿提出の際には、JCR理事の村上佳弘氏と日本カイロプラクターズ協会(JAC)会長の竹谷内啓介氏も同席し、カイロプラクティック業界による新型コロナウイルス感染症対策の取り組みや、業界の現状について意見交換が行われました。
実はこの文書、当初は別の表現であり、下の画像の表現であった。下線部は筆者による。
JCRのウェブサイトには新型コロナウィルスに関する厚労省のページへのリンクはあるが、JCRが作成した文書・ガイドラインは見当たらない。
https://www.jac-chiro.org/pdf/guidelines/chirocovid19.pdf
そんなわけで、私は下記ツイートを行った。
JCRの文書
— びんぼっちゃま@公明党の遠山清彦前財務副大臣が便宜を図った団体から発信者情報開示請求を受けてます。 (@binbo_cb1300st) 2020年12月10日
"今月初旬、遠山氏はJCR理事長に再任されました。…当会での新型コロナウイルス感染症対策の取り組みや、国内外のカイロプラクティック業界の現状について意見交換が行われました。"
コロナ対策ってJCRではなく、JACでやってるんじゃないの?https://t.co/CykRBv5z5B
そしたらJCRサイトの文書が削除され、訂正されてupされ直したのである。
JCRとJACが事実上、一体の組織であることは公然の事実だと思うのだが、JCRが「独立組織」であるという形式・建前は維持しなければならないことらしい。*2
JCRに関する当ブログ記事の表現が名誉毀損等であるとして、JACが筆者に発信者情報開示請求を行った。
私のツイッターをフォローしてくれている方はご存知のように、当ブログ記事のいくつかの記事に関し、名誉毀損や信用毀損(権利侵害)であるとして、JACからはてな社に対して記事の削除と発信者情報の開示請求が申し立てられた。
私のブログ記事に関し、 #日本カイロプラクターズ協会 から記事の削除申立と #発信者情報開示請求 が #はてな 社に対して行われた。#プロバイダ責任制限法 #カイロプラクティック #医師法 #医業類似行為 pic.twitter.com/19FT1DYGIr
— びんぼっちゃま@公明党の遠山清彦前財務副大臣が便宜を図った団体から発信者情報開示請求を受けてます。 (@binbo_cb1300st) 2020年10月17日
この記事を執筆している時点ではまだ審査結果が出ていない。
すでに非開示決定はされていました。
開示請求を申し立てられた記事の一つに下記記事がある。
この記事に関する申立で権利侵害の表現として指摘されたのはJCRに関する表現だけで、JACに関する表現ではなかった。
それを「弊会(申立人、JAC)」への権利侵害である、と申し立てているのである。
なお発信者情報開示請求に関してはプロバイダ責任制限法で以下のように定められている。
(発信者情報の開示請求等)
第四条 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。
一 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
「自己の権利を侵害されたとする者」で無ければ発信者情報の開示を請求する権利がないのである。
「独立組織」であるJCRに関する表現で、なぜJACが発信者情報開示請求をしているのか?
JCRが法人格の無い、任意団体だからだろうか?
しかし民事訴訟法では
(法人でない社団等の当事者能力)
第二十九条 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。
とあり、法人格が無くてもJCRの理事長である遠山清彦前財務副大臣の名前で請求は可能である。
そんなわけで、遠山清彦前財務副大臣が理事長をしている日本カイロプラクティック登録機構は、一般社団法人日本カイロプラクターズ協会と事実上、一体の組織であると言える。
食品衛生法:チクロ禁止事件に見る、安全性の積極的な立証の必要性。
医業類似行為に関する昭和35年判決は
原審弁護人の本件HS式無熱高周波療法はいささかも人体に危害を与えず、また保健衛生上なんら悪影響がないのであるから、これが施行を業とするのは少しも公共の福祉に反せず従つて憲法二二条によつて保障された職業選択の自由に属するとの控訴趣意に対し、原判決は被告人の業とした本件HS式無熱高周波療法が人の健康に害を及ぼす虞があるか否かの点についてはなんら判示するところがなく、ただ被告人が本件HS式無熱高周波療法を業として行つた事実だけで前記法律一二条に違反したものと即断したことは、右法律の解釈を誤つた違法があるか理由不備の違法があり、右の違法は判決に影響を及ぼすものと認められるので、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものというべきである。
と、原審(仙台高裁判決)が、人の健康に害を及ぼすおそれの有無について判示していない、として 破棄差戻しをしたものである。
「医業類似行為を業とすることを禁止処罰するのも人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局する趣旨と解しなければならない」とも判示されているため、おそれを立証しなければならない、と考える人が多いが、その点に関する疑問は下記記事に書いた。
要約すれば、業として行われた無免許施術に関し、人の健康に害を及ぼすおそれが無いことの立証をしていない、できてないことを判示すれば良く、 検察官はおそれを立証する必要はない、という考えである。
その考えを補強するため、爆発物取締罰則についても記事を書いた。
もう一つ、私の考えを補強するため、食品衛生法における、食品添加物の規制と裁判例を紹介する。
食品衛生法第12条 食品添加物の販売等の禁止
第十二条 人の健康を損なうおそれのない場合として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定める場合を除いては、添加物(天然香料及び一般に食品として飲食に供されている物であつて添加物として使用されるものを除く。)並びにこれを含む製剤及び食品は、これを販売し、又は販売の用に供するために、製造し、輸入し、加工し、使用し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。
長いので端折った書き方をすると
人の健康を損なうおそれのない場合として厚生労働大臣が定める場合を除いては、添加物等は、これを販売等してはならない。
となる。
厚生労働大臣が「人の健康を損なうおそれのない場合」と定めた場合のみ、添加物は販売などができるわけである。
チクロに関する裁判例
食品添加物として許可、禁止された経緯は以下の通り。
チクロは、砂糖の40倍の甘味があるとされる人工甘味料で、日本では昭和31年に食品添加物に指定された。
(略)
しかし米国で1968年、発がん性の疑いが指摘され、日本でも大騒ぎになった。昭和44年、米国で使用が禁止されたのに続き、日本でも添加物の指定が取り消され、使用禁止になった。
チクロの販売を禁止されたことにより、損害を受けた、として事業者が国を訴えた裁判がある。
一審*1
で請求は棄却され、
控訴審判決では
食品衛生法六条(筆者注:現在は12条)の趣旨によれば、化学的合成品たる食品添加物の指定の取消に当つては、当該食品添加物が人の健康を害する虞れのないことについて積極的な確認が得られないというだけの理由で十分であつて、それが人の健康を害する虞れがあることの証明を要するものではないと解される。
と、判示されている。
よって、昭和35年判決の解釈も、人の健康に害を及ぼすおそれが無いと証明された行為のみを禁止処罰の対象外にしたのであって、禁止処罰の際に、おそれがあることを証明する必要はないと考えるべきである。
もし、おそれの立証をする必要が有るとするなら、無免許施術による健康被害が多数報告されている現代において、昭和35年判決を維持するのは相当ではない。
なお、無免許業者の失業などがあるから判例変更はできない、という意見もあるがチクロ事件控訴審では
なにびとも人の健康を害する虞れがないとは認められない食品添加物を使用した食品を販売する権利、自由を有するものではない
と判示され、原審においても
本件措置の方法の違法をいう原告の主張は、帰するところ国民一般の享有すべき保健衛生上の安全を犠牲にして業者の経済的利益を保護すべきであるというに等しく支持することができない。
と判示されている。
法律の知識がない人であっても
国民一般の保健衛生上の安全>>業者の経済的利益
であることは理解できるだろう。
無免許業者の営業権や財産権が、国民の安全より優先することはない。
整体師などの無免許業者が営業を継続したいなら、まずは自分の施術が安全であることを第三者によって証明してもらうべきだろう。
保健指導は医行為ではなかった?誤った保健指導は人を殺す。
保健指導は医行為なのか?
タトゥーの最高裁決定に関し、
って判示からは、保健指導も医行為に含まれる=医師の業務独占であるとしか読めないけれども、保健指導が保健士の名称独占だけれども業務独占ではない点(保健師助産師看護師法29条)と整合するのか?
— まっぷぇ (@mappue) 2020年9月20日
保助看法29〜31条の規定からは、保健指導については医行為ではないことが前提になっているんじゃないか?保健指導も医行為に含まれるかのような最高裁の判示は保助看法の規定と整合しないのではないか?と。
— まっぷぇ (@mappue) 2020年9月20日
といったコメントが有った。
保健師助産師看護師法(保助看法)の条文
第二条 この法律において「保健師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者をいう。
第三条 この法律において「助産師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう。
第五条 この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。
第二十九条 保健師でない者は、保健師又はこれに類似する名称を用いて、第二条に規定する業をしてはならない。
第三十条 助産師でない者は、第三条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法(昭和二十三年法律第二百一号)の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。
第三十一条 看護師でない者は、第五条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。
というわけで、保健師又はこれに類似する名称を用いない限り、保健師でない者が保健指導に従事しても法的には問題なさそうである。
保健師の「保健指導に従事すること」と、助産師の「保健指導を行うこと」の違いがよくわからないけど。
第三十五条 保健師は、傷病者の療養上の指導を行うに当たつて主治の医師又は歯科医師があるときは、その指示を受けなければならない。
第三十七条 保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし(略)
と「傷病者の療養上の指導」を行う場合、傷病者に主治医がいる場合には、主治医の指示を必要としている。
「傷病者の療養上の指導」というのは「保健指導」に含まれるのだろう。
断食の指示は医師法違反で訴追されていない。
問診について判示した最高裁決定では
断食道場の入寮者に対し、いわゆる断食療法を施行するため入寮の目的、入寮当時の症状、病歴等を尋ねる行為(原判文参照)は、その者の疾病の治療、予防を目的とした診察方法の一種である問診にあたる。
としている。この事件の一審判決では
(罪となるべき事実)
被告人はAと共謀のうえ
第一、医師でないのに、昭和四三年六月一二日ころから同年七月二一日ころまでの間、東京都…所在の関東断食道場東京支部において、別表(一)記載のとおりBほか六名の者に対し、診察(問診)、下剤ミルマグの投与などの診療行為をなし、もつて医業を行い
第二、薬局開設者ないし医薬品販売業の許可を受けたものでなく、かつ、法定の除外事由がないのに、業として昭和四三年六月一二日ころから同年七月二一日ころまでの間、前同所において、別表(二)記載のとおりBほか一一名の者に対し、下剤ミルマグ合計一四瓶を一瓶あたり金二〇〇円で販売したものである。東京簡易裁判所 昭和47年04月19日 昭和45年(ろ)第665号
とあり、断食の指示をした事自体は罪とされていない。
控訴審判決でも
被告人が原判示のB外六名に対して前示の如く入寮当時の症状、病歴等を尋ねた行為は、当該相手の求めに応じてそれらの者の疾病の治療、予防を目的として、本来医学の専門的知識に基づいて認定するのでなければ生理上危険を生ずるおそれのある断食日数等の判断に資するための診察方法というほかないのであつて、いわゆる問診に当るものといわなければならない。
東京高等裁判所 昭和47年12月06日 昭和47年(う)第1260号
と判示されている。
「本来医学の専門的知識に基づいて認定するのでなければ生理上危険を生ずるおそれのある」が「断食日数等の判断」にかかっているのか、「診察方法」にかかっているのか、曖昧ではあるが、断食日数等を判断し、告知・指示した行為については訴追されていないのである。
となると「傷病者の療養上の指導」は危険性があっても、医行為では無いのかもしれない。
指導のために必要な判断を行うための診察は医行為だけど。
誤った保健指導は人を殺す
祈祷師による殺人事件
誤った、というよりは未必の故意での殺人事件とされたのが、栃木の祈祷師が、1型糖尿病の子供の親に対し、インスリン投与を中止するように指導した事件である。
この事件ではインスリン不投与の指示で被害者が入院しており、被告人もその情報を得ていた。そのため未必の故意の立証ができたとも言える。
しかし、最初のインスリン不投与で死亡した場合、未必の故意の立証は困難となり、民事ですら賠償を得るのが困難となる。
最初のインスリン不投与の指示で患者が死亡し、法的責任を逃れた次世紀ファーム研究所事件
7月15日。豊島母娘は岐阜県恵那市の「山の家」に入った。その日の夕食時、美也子(筆者注:亡くなった少女の母親)は堀(筆者注:次世紀ファーム研究所代表)に、桂子(筆者注:亡くなった少女、美也子の娘)がⅠ型糖尿病であり、インスリンを持参しなかったことを告げた。堀は「よく分かりました。もう大丈夫です」と答えたという。さきの本宮は、堀が豊島母娘に「治療はもう始まっているのですよ」と言っていたのを聞いている。…
が、しかし。当然ながら桂子の状態はその夜からどんどん悪化した。…
18日朝。桂子が寝息をたてていないことに気づいた本宮がびっくりして堀に報告。救急車を呼んだがすでに遅かった。医師が不審を抱き警察に連絡した。マスコミの知るところとなり、「次世紀ファーム研究所事件」として一時メディアを騒がせたのだった。
この事件は刑事事件としては翌06年に山田和子が過失致死と薬事法違反で起訴されたが、昨年2月の岐阜地裁判決で前者は無罪、後者は懲役1年、執行猶予3年、罰金50万円の判決が下され確定した。母親の美也子は起訴猶予、そして堀は証拠不十分で不起訴であった。美也子は事件後まもなく8月に家族や友人の働きかけによって真光元神社を脱会。翌06年に夫とともに堀らに対して民事訴訟を東京地裁に起こした。
民事訴訟は結局、被害者の両親の敗訴となった。
薬学博士を名乗っていたが、薬剤師でもなく、薬剤師と名乗っていたわけではない堀は死亡を予見できなかった、ということだ。
しかし2011年7月、東京高裁・設樂隆一裁判長は「堀は、医療の専門家でもなく、1型糖尿病についての知識もない」「緊急に病院へ搬送すべきであると判断することは困難であったといわざるを得ない」などとして、両親の訴えを却下しました。
栃木の事件が判例になったことにより、ニセ医学の抑止に関して楽観的な意見を見かけるが、医療系国家資格を持たない者の誤った指導で、一発で死亡した場合、殺人罪での立件は困難なのではないか?
症状・疾病の治療等を謳う場合、保健指導は求められがちであり、誤った保健指導は健康被害をもたらすから無免許での治療行為は禁止処罰されて然るべきである。
初めて私のブログを読まれる方に説明すると、本記事で紹介したような無免許治療が放置されているのは、本来、それを禁止していた法律に関し、最高裁が「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」に禁止処罰対象を限定した判決を出したためである(業界では昭和35年判決という。)
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51354
その結果、無免許治療が野放しとなり、健康被害が発生し、死人も出ている。
消費者庁:法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に[PDF]
例え施術行為が人の健康に害を及ぼすおそれが無くとも、症状・疾病の治療等を求める患者は症状改善・予防のための保健指導を求めるものである。
誤った保健指導が健康被害をもたらしうるのは本記事で紹介した事件のとおりである。
よって、無免許での、医療関連性を持った施術を禁止したとしても憲法22条に違反しないのは最高裁判所大法廷昭和40年7月14日判決(刑集 第19巻5号554頁)に照らし、明らかである。
ところで、旧薬事法二九条一項は、医薬品の販売業を営もうとする者に対し、販売の対象が、同法二条四項にいわゆる医薬品に該当する限り、法定の登録を受くべきことを義務づけているものであることは、その規定自体に照らして明らかである。
そして、同法がかような登録制度をとつているのは、販売される医薬品そのものがたとえ普通には人の健康に有益無害なものであるとしても、もしその販売業を自由に放任するならば、これにより、時として、それが非衛生的条件の下で保管されて変質変敗をきたすことなきを保しがたく、またその用法等の指導につき必要な知識経験を欠く者により販売されこれがため一般需要者をしてその使用を誤らせるなど、公衆に対する保健衛生上有害な結果を招来するおそれがあるからである。
このゆえに、同法は医薬品の製造業についてばかりでなく、その販売業についても画一的に登録制を設け、同法二条四項にいわゆる医薬品に該当する限りその販売について、一定の基準に相当する知識経験を有し、衛生的な設備と施設をそなえている者だけに登録を受けさせる建前をとり、もつて一般公衆に対する保健衛生上有害な結果の発生を未然に防止しようと配慮しているのであつて、右登録制は、ひつきよう公共の福祉を確保するための制度にほかならない。
されば、旧薬事法二九条一項は、憲法二二条一項に違反するものではなく、これと同趣旨に出た原判決は相当であつて、論旨は理由がない。
タトゥー裁判(医師法違反事件)の最高裁決定を読んで。医業類似行為への影響など。
彫師がタトゥー施術をしたことが医師法違反事件に問われた事件で、最高裁の決定が出され、被告人の無罪が確定した。
決定文が裁判所サイトに掲載されたので思うところを書いていく。
無罪となった控訴審判決時に書いた記事は下記のとおり。
要旨など
本決定の裁判所サイトの記載である。
事件番号 平成30(あ)1790
事件名 医師法違反被告事件
裁判年月日 令和2年9月16日
法廷名 最高裁判所第二小法廷
裁判種別 決定
結果 棄却
原審裁判所名 大阪高等裁判所
原審事件番号 平成29(う)1117
原審裁判年月日 平成30年11月14日
判示事項
というわけで、「医行為の意義」「医行為であるかどうかの判断方法」が今回の決定で判示されているわけである。
決定文を読んでみよう。
決定文本文より
医行為の意義
本文より(下線以外の改行、装飾は筆者による。以下同様)
(1) 医師法は,医療及び保健指導を医師の職分として定め,医師がこの職分を果たすことにより,公衆衛生の向上及び増進に寄与し,もって国民の健康な生活を確保することを目的とし(1条),この目的を達成するため,医師国家試験や免許制度等を設けて,高度の医学的知識及び技能を具有した医師により医療及び保健指導が実施されることを担保する(2条,6条,9条等)とともに,無資格者による医業を禁止している(17条)。
このような医師法の各規定に鑑みると,同法17条は,医師の職分である医療及び保健指導を,医師ではない無資格者が行うことによって生ずる保健衛生上の危険を防止しようとする規定であると解される。
したがって,医行為とは,医療及び保健指導に属する行為のうち,医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為をいうと解するのが相当である。
というわけで医行為とは
- 医療及び保健指導に属する行為であること(医療関連性)
- 医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為であること(保健衛生上危険な行為)
の両方を満たす行為である。
医業類似行為の定義
なお、医業類似行為の行政上の定義は
「医業類似行為」は、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある「医行為」ではないが、一定の資格を有する者が行わなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為であると解している
とされている。
ここでも医療関連性は要件とされていないが、過去の裁判例では
「疾病の治療又は保健の目的を以て光熱器械、器具その他の物を使用し若しくは応用し又は四肢若しくは精神作用を利用して施術する行為であって他の法令において認められた資格を有する者が、その範囲内でなす診療又は施術でないもの、」
換言すれば
「疾病の治療又は保健の目的でする行為であって医師、歯科医師、あん摩師、はり師、きゅう師又は柔道整復師等他の法令で正式にその資格を認められた者が、その業務としてする行為でないもの」
仙台高裁 昭和28年(う)375号
と医療関連性を持った、無資格施術のことを医業類似行為としていた。
今回の決定で、行政(厚労省)も医業類似行為の定義も変えざるを得ないだろう。
医行為であるかどうかの判断方法
(2) ある行為が医行為に当たるか否かを判断する際には,当該行為の方法や作用を検討する必要があるが,方法や作用が同じ行為でも,その目的,行為者と相手方との関係,当該行為が行われる際の具体的な状況等によって,医療及び保健指導に属する行為か否かや,保健衛生上危害を生ずるおそれがあるか否かが異なり得る。
また,医師法17条は,医師に医行為を独占させるという方法によって保健衛生上の危険を防止しようとする規定であるから,医師が独占して行うことの可否や当否等を判断するため,当該行為の実情や社会における受け止め方等をも考慮する必要がある。そうすると,ある行為が医行為に当たるか否かについては,当該行為の方法や作用のみならず,その目的,行為者と相手方との関係,当該行為が行われる際の具体的な状況,実情や社会における受け止め方等をも考慮した上で,社会通念に照らして判断するのが相当である。
状況などによって、保健衛生上危害を生ずるおそれがあるか否かが異なる、と決定文では述べている。
疾病の治療等の目的を持って、症状、病歴などを聞くのは問診であり、医行為である。*1
なので医師免許などを持たない者が業として行えば無免許医業として禁止処罰の対象となる。
問診自体は身体に対する直接の危険性は無い。
ただ誤った診察は適切な治療機会を逸失する可能性が有るので、「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」である。*2
医療関連性の無い場面、例えば身体に負荷のかかるレジャーなどをする場合に既往症を聞くのは医行為か?という問題がある。
レジャーの可否を決めるために既往症を聞いてるのであって、治療などの医療関連性が無い以上、適切な治療機会の逸失を招く恐れもあるまい。
治療などの医療関連性を持ったときに、病歴の聴取が医行為となるわけだから、症状の治療、予防、改善などを謳っている整体師やカイロプラクターが症状等の聴取をする旨、表示している場合、違法性を指摘しやすくなったと言える。
タトゥー施術が医行為かどうかの判断と整体等への考え
被告人の行為は,彫り師である被告人が相手方の依頼に基づいて行ったタトゥー施術行為であるところ,タトゥー施術行為は,装飾的ないし象徴的な要素や美術的な意義がある社会的な風俗として受け止められてきたものであって,医療及び保健指導に属する行為とは考えられてこなかったものである。
また,タトゥー施術行為は,医学とは異質の美術等に関する知識及び技能を要する行為であって,医師免許取得過程等でこれらの知識及び技能を習得することは予定されておらず,歴史的にも,長年にわたり医師免許を有しない彫り師が行ってきた実情があり,医師が独占して行う事態は想定し難い。
このような事情の下では,被告人の行為は,社会通念に照らして,医療及び保健指導に属する行為であるとは認め難く,医行為には当たらないというべきである。タトゥー 施術行為に伴う保健衛生上の危険については,医師に独占的に行わせること以外の方法により防止するほかない。
歴史を免罪符にするのは、放置されていた無免許施術を肯定しかねない考え方なので納得しかねる。
ただ、「装飾的ないし象徴的な要素や美術的な意義がある社会的な風俗」、「医学とは異質の美術等に関する知識及び技能を要する行為」といった要件で医療関連性を排除しているから、この判示内容を、整体師やカイロプラクターなどの無免許施術の免罪符にはできまい。
補足意見では
医師免許取得過程等でタトゥー施術行為に必要とされる知識及び技能を習得することは予定されておらず,タトゥー施術行為の歴史に照らして考えてもタトゥー施術行為を業として行う医師が近い将来において輩出されるとは考え難い。
したがって,医療関連性を要件としない解釈をとれば,我が国においてタトゥー施術行為を業として行う者は消失する可能性が高い。
と述べられている。
その点、整体やカイロプラクティックなどはあん摩マッサージ指圧師や医師、理学療法士などが行えば良いのであって、無免許での整体やカイロを禁止しても施術そのものを行えなくなるわけではない。
また補足意見では
医療関連性を要件としない解釈はタトゥー施術行為に対する需要が満たされることのない社会を強制的に作出しもって国民が享受し得る福利の最大化を妨げるものであるといわざるを得ない。
とある。
タトゥーを入れてもらうのは装飾目的であるが、整体やカイロプラクティックの利用者は症状の治療や予防などを目的にしているのであって、整体やカイロプラクティックを受けること自体を目的にしているのではない。
そのような医療関連性を持った目的は国家資格者で十分まかなえるのである。
無免許業者からは、国家資格者の施術で治らなかった患者を治したぞ、という反論が来そうだが、それは地域の全ての国家資格者の施術を受けた患者さんだろうか?
疲労の回復も同様であるから、リラクゼーション業も、この決定を免罪符にはできない。
新規立法の必要性
タトゥー 施術行為に伴う保健衛生上の危険については,医師に独占的に行わせること以外の方法により防止するほかない。(法廷意見)
タトゥー施術行為に伴う保健衛生上の危険を防止するため合理的な法規制を加えることが相当であるとするならば,新たな立法によってこれを行うべきである。(補足意見)
というわけで、危険性を防止するには医師法ではなく、新規立法でやってね、と判示している。
弁護団の会見によれば、当面は業界団体による自主規制を行っていくそうである。
さて、新規立法をどうすべきか。
- タトゥー単独の制度、法律
- 非医療施術全体の制度、法律
また
- 免許制
- 届出制
という場合分けが考えられる。
私としては医療関連性が無いと装って、実際には疲労回復や保健目的の施術を行う無免許業者を排除したいところである。
無免許でのアートメイクが認められたわけではない。
補足意見で
最後に,タトゥー施術行為は,被施術者の身体を傷つける行為であるから,施術の内容や方法等によっては傷害罪が成立し得る。本決定の意義に関して誤解が生じることを慮りこの点を付言する次第である。
とある。
医業類似行為に関する昭和35年判決では、危害を及ぼさなければ無免許でも問題ない、と報道され、その誤解により今でも無免許施術は放置されたままである。
そして、この判決に関するツイッターの反応を見てみると、アートメイクも無免許でOKみたいな誤解をしている発言が見受けられる。
本決定では美容整形が医療関連性を有するか、判断はしてないが控訴審では
ところで,医療とは,現在の病気の治療と将来の病気の予防を基本的な目的とするものではあるが,健康的ないし身体的な美しさに憧れ,美しくありたいという願いとか醜さに対する憂いといった,人々の情緒的な劣等感や不満を解消することも消極的な医療の目的として認められるものというべきである。
美容整形外科手術等により,個人的,主観的な悩みを解消し,心身共に健康で快適な社会生活を送りたいとの願望に医療が応えていくことは社会的に有用であると考えられ,美容整形外科手術等も,このように消極的な意義において,患者の身体上の改善,矯正を目的とし,医師が患者に対して医学的な専門的知識に基づいて判断を下し,技術を施すものである。
以上からすると,美容整形外科手術等は,従来の学説がいう広義の医行為,すなわち,「医療目的の下に行われる行為で,その目的に副うと認められるもの」に含まれ,その上で,美容整形外科手術等に伴う保健衛生上の危険性の程度からすれば,狭義の医行為にも該当するというべきである。したがって,医業の内容である医行為について医療関連性の要件が必要であるとの解釈をとっても,美容整形外科手術等は,医行為に該当するということができる。
と美容整形を医療関連性が有るとしている。
そして本決定ではこの点を否定もしていないのである。
最高裁で美容目的も医療関連性が有ると判示してくれてれば良かったのだが、裁判例はあるわけである。
*1:
裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan
*2:富士見産婦人科病院事件の保健師助産師看護師法違反事件 東京高裁昭和63(う)746 判例タイムズno.691 1989.5.15 p152 東京高裁(刑事)判決時報40巻1〜4号9頁
新型コロナウィルスの症状が出ているのにも関わらず、施術したのは「ボディケア」という無資格マッサージ業者であり、あん摩マッサージ指圧師では無い。なのに「マッサージ」と報道される。
- 新千歳空港温泉のボディケア施設、体癒し處の施術者が新型コロナウィルス陽性と発表。施術した利用者は濃厚接触者だが、特定できず。
- 当該施設、業種が「マッサージ」と報道される。
- 当該ボディケア施術者は、味覚障害が有るにも関わらず、施術業務を続けた。
- 無免許業者の不始末が、「マッサージ師」が行ったと誤解される風評被害
新千歳空港温泉のボディケア施設、体癒し處の施術者が新型コロナウィルス陽性と発表。施術した利用者は濃厚接触者だが、特定できず。
産経新聞より。強調は筆者による。以下同様。
北海道は28日、千歳市の新千歳空港温泉内にあるボディケア施設の従業員が新型コロナウイルスに感染したと発表した。濃厚接触者に該当する可能性のある客33人が特定できておらず、道は心当たりのある人に道の相談窓口(011・204・5020)へ連絡するよう呼び掛けている。
道によると、感染者が確認されたのは新千歳空港国内線ターミナルビル4階の新千歳空港温泉内にあるボディケア施設。従業員は16日の発症後も23日まで勤務し、27日に陽性が確定した。症状は軽いという。
2020.8.28 20:19
新千歳空港ターミナルビルディング株式会社のプレスリリースは以下の通り。
令和2年8月27日(木)、新千歳空港国内線4Fテナント「新千歳空港温泉」におけるボディケア施設の施術従業員の1名が新型コロナウイルスに感染したことが判明し、保健所は当該ボディケア施設をご利用の一部のお客様ならびに施術従業員につきましても濃厚接触者であると判断しました。
PDFもリンクされており、そのボディケア施設というのは「体癒し處」という名称であるが、運営会社は当該PDFでは明記されていない。
ぐぐってみると下記の求人ページが見つかった。
体・癒し處 / 新千歳空港温泉 【未経験歓迎】リラクゼーションセラピストの募集詳細
応募資格
・未経験者歓迎!(無料研修制度有り)
・経験者優遇(スキルチェックの上、研修優遇<要:実務1年以上>)
・学歴・年齢不問、第二新卒OK<<下記のような方大歓迎です>>
・セラピーやエステ等が好きな方
・明るい接客や人に喜んでもらうことが好きな方
・ひとの役に立ちたい方
と「未経験者歓迎」と有るので無免許施術であることがわかる。
これだけなら当ブログで取り上げる必要も無かったのだが…
当該施設、業種が「マッサージ」と報道される。
NHKのサイトより
マッサージ利用客に連絡呼びかけ
08月28日 18時19分
道は27日に新型コロナウイルスへの感染が確認された20代の女性が、新千歳空港のマッサージ店の従業員で、店の利用者33人が濃厚接触者となる可能性があるとして、心当たりのある人は道に連絡をするよう呼びかけています。
27日に新型コロナウイルスへの感染が確認された千歳市に住む20代の会社員について、道は新千歳空港の国内線ターミナルビルの4階にあるマッサージ店「体癒し處」の従業員だと発表しました。
この従業員は今月16日から症状が出ていましたが、その後も今月20日を除いて23日まで勤務を続けていたということです。
とNHKから「マッサージ」「マッサージ店」と報道される。
北海道の発表では
8月27日に公表した新型コロナウイルス感染症患者(道内1741例目)の方は、新千歳空港国内線ターミナルビルの「新千歳空港温泉におけるボディケア施設」の施術従業員であり、この方に施術された方の特定が困難であることが判明しました。つきましては、該当の日時に当該施設を利用した方は、濃厚接触者となる可能性があるため、相談窓口にご連絡ください。
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/ssa/singatakoronahaien.htm
と「ボディケア施設」と発表しているにも関わらず、NHKは「マッサージ店」と報道しているのである。
私のブログを初めて読む方に説明すると、業としてマッサージを行うためにはあん摩マッサージ指圧師か、医師免許が必要である。
ただし、下記まとめ記事で紹介した事情により、無免許でのマッサージが、「ボディケア」とか「リラクゼーション」と名乗って横行しているのが実態である。
他の報道機関でも「マッサージ」と報じていた。
当該ボディケア施術者は、味覚障害が有るにも関わらず、施術業務を続けた。
また別の報道では
北海道は28日、新型コロナウイルスに感染した20代の女性が、新千歳空港にある温泉施設のマッサージコーナーの従業員であることを公表した。施設は空港ターミナルビルの4階にあり、1回1時間から2時間ほど、体や足などのマッサージをしていた。女性はマスクをして施術をしていたが、客がマスクをしていたかはわからないという。女性は8月16日にせきや味覚障害の症状が出ていたが、23日まで勤務を続けていた。北海道は8月15日~19日、21日~23日の8日間に施設を利用した33人に対し、濃厚接触の可能性があるとして、連絡するよう呼び掛けている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1efa16786e56b1a98756b10665feb170d03419af
とある。
せきだけでは判断が難しいが、このご時世で、味覚障害は第一に新型コロナの罹患を疑うべきだろう。
まあ、医療系免許を持たない「素人」に感染防御を意識しろ、というのはラクダに空を飛べ、と要求するぐらいに無茶なことかもしれないが。
「素人」施術が感染を拡大する恐れが有るとして、横浜市民病院での無免許施術は中止された。
地元あはき社団、クラスター危機訴え
新型コロナウイルス患者らに対処する医療従事者をケアするため、7月上旬から横浜市民病院内で実施されていた、「株式会社りらく」によるリラクゼーションサービスの提供が、8月6日までだった終了期日を待たずして中止された。医療分野外の事業者が「感染症指定医療機関」で活動することによる感染拡大の危険性を含め、地元の横浜市鍼灸マッサージ師会(横浜師会)が横浜市に強く疑義を呈した結果、サービスの中断に至った。
新型コロナに感染しただけなら責めるべきではないが、症状を自覚した後も施術をしたことについては責められて然るべきだろう。
無免許業者の不始末が、「マッサージ師」が行ったと誤解される風評被害
あん摩マッサージ指圧師になるためには3年間の医療教育が必要である。
そのため感染症に関する知識や意識が、ボディケアと称する「素人」とは違うのである。
このような無免許業者の、衛生知識や意識の低さから来る不始末を、あたかも国家資格者であるあん摩マッサージ指圧師がしでかした、と誤解を招く報道は風評被害をもたらすものである。
実際、愛知県は、感染を拡大させた整体師(誰でも名乗れる素人)を「マッサージ」と発表し、後に訂正した。
感染者のプライバシーを侵害することはできれば避けたいところであるが、我々鍼灸マッサージ師が、まともに衛生教育も受けていない者の不始末による風評被害を被るのであれば話は別である。
栃木の祈祷師による殺人事件:1型糖尿病の児童に対する医療ネグレクトと、このような「治療」行為が放置されている原因
1型糖尿病の児童に対するインスリンの不投与を指示したとして殺人罪に問われた祈祷師(医療系の免許は持っていない。)に対する最高裁の決定(上告棄却)がされた。
栃木県で2015年4月、治療と称して1型糖尿病を患う男児(当時7)にインスリンを投与させず衰弱死させたとして、殺人罪に問われた建設業近藤弘治(ひろじ)被告(65)=同県下野(しもつけ)市=の上告審で、最高裁第二小法廷(草野耕一裁判長)は被告側の上告を退けた。
決定文が裁判所サイトで公開されている。
最高裁判所第二小法廷 令和2年8月24日決定 平成30(あ)728
直リンクだと見れない場合が有るので、そのときは裁判所サイトで、事件番号などで検索してみてください。
認定事実
最高裁決定文より。青字は被告人の言動である。
(1)被害者と1型糖尿病の説明
(1) 被害者(平成19年生)は,平成26年11月中旬頃,1型糖尿病と診断され,病院に入院した。
1型糖尿病の患者は,生命維持に必要なインスリンが体内でほとんど生成されないことから,体外からインスリンを定期的に摂取しなければ,多飲多尿,筋肉の痛み,身体の衰弱,意識もうろう等の症状を来し,糖尿病性ケトアシドーシスを併発し,やがて死に至る。現代の医学では完治することはないとされるが,インスリンを定期的に摂取することにより,通常の生活を送ることができる。
(2)被告人に関することと、治療を受ける経緯
(2) 被害者の退院後,両親は被害者にインスリンを定期的に投与し,被害者は通常の生活を送ることができていたが,母親は,被害者が難治性疾患である1型糖尿病にり患したことに強い精神的衝撃を受け,何とか完治させたいと考え,わらにもすがる思いで,非科学的な力による難病治療を標ぼうしていた被告人に被害者の治療を依頼した。
被告人は,1型糖尿病に関する医学的知識はなかったが,被害者を完治させられる旨断言し,同年12月末頃,両親との間で,被害者の治療契約を締結した。
被告人は,その頃,母親から被害者はインスリンを投与しなければ生きられない旨説明を受けるなどして,その旨認識していた。
被告人による治療と称する行為は,被害者の状態を透視し,遠隔操作をするなどというものであったが,母親は,被害者を完治させられる旨断言されたことなどから,被告人を信頼し,その指示に従うようになった。
被告人は,被害者の治療に関する指示を,主に母親に対し,メールや電話等で伝えていた。
こんな被告人の指示に従うこと自体、アホくさい、両親も同罪だ、という意見を見かけるが、窮地に陥り、精神的に弱っているとこんなものである。
だから無免許治療を放置してはならないのだが、後述するように、何の医療系免許を持たない者が治療を謳っていても、取り締まることができないのである。
(3)指示の誤りを認めず。悪化はインスリン投与のせいと主張。
(3) 被告人は,平成27年2月上旬頃,母親に対し,インスリンは毒であるなどとして被害者にインスリンを投与しないよう指示し,両親は,被害者へのインスリン投与を中止した。
その後,被害者は,症状が悪化し,同年3月中旬頃,糖尿病性ケトアシドーシスの症状を来していると診断されて再入院した。
医師の指導を受けた両親は,被害者の退院後,インスリンの投与を再開し,被害者は,通常の生活に戻ることができた。
しかし,被告人は,メールや電話等で,母親に対し,被害者を病院に連れて行き,インスリンの投与を再開したことを強く非難し,被害者の症状が悪化したのは被告人の指導を無視した結果であり,被告人の指導に従わず,病院の指導に従うのであれば被害者は助からない旨繰り返し述べるなどした。
このような被告人の働きかけを受け,母親は,被害者の生命を救い,1型糖尿病を完治させるためには,被告人を信じてインスリンの不投与等の指導に従う以外にないと一途に考え,被告人の治療法に半信半疑の状態であった被害者の父親を説得し,同年4月6日,被告人に対し,改めて父親と共に指導に従う旨約束し,同日を最後に, 両親は,被害者へのインスリンの投与を中止した。
ここで被告人が自分の非を認めていれば良かったのですが、医学教育を受けずに治療を商売にしているから、自分の非や誤りを認めるわけにはいかないんですよ。
(4)(5)治療効果の擬態と被害者の死亡
(4) その後,被害者は,多飲多尿,体の痛みを訴える,身体がやせ細るなどの症状を来し,母親は,被害者の状態を随時被告人に報告していたが,被告人は,自身による治療の効果は出ているなどとして,インスリンの不投与の指示を継続した。
同月26日,被害者は,自力で動くこともままならない状態に陥り,被告人は母親の依頼により母親の実家で被害者の状態を直接見たが,病院で治療させようとせず,むしろ,被告人の治療により被害者は完治したかのように母親に伝えるなどした。
母親は,被害者の容態が深刻となった段階に至っても,被告人の指示を仰ぐことに必死で,被害者を病院に連れて行こうとはしなかった。
(5) 同月27日早朝,被害者は,母親の妹が呼んだ救急車で病院に搬送され, 同日午前6時33分頃,糖尿病性ケトアシドーシスを併発した1型糖尿病に基づく衰弱により死亡した。
被告人は「自身による治療の効果は出ている」と言ったわけですね。
で、その結果、男児は殺された(殺人罪だから法的にも間違った表現ではない。)わけです。
医療ネグレクト殺人事件の先例でも、治療効果を装って患者を殺した。
医療ネグレクトの殺人事件としては成田ミイラ化遺体事件という先例がありますが、
(3) 被告人は,脳内出血等の重篤な患者につきシャクティ治療を施したことはなかったが,Bの依頼を受け,滞在中の千葉県内のホテルで同治療を行うとして,Aを退院させることはしばらく無理であるとする主治医の警告や,その許可を得てからAを被告人の下に運ぼうとするBら家族の意図を知りながら,「点滴治療は危険である。今日,明日が山場である。明日中にAを連れてくるように。」などとBらに指示して,なお点滴等の医療措置が必要な状態にあるAを入院中の病院から運び出させ,その生命に具体的な危険を生じさせた。
(4) 被告人は,前記ホテルまで運び込まれたAに対するシャクティ治療をBらからゆだねられ,Aの容態を見て,そのままでは死亡する危険があることを認識したが,上記(3)の指示の誤りが露呈することを避ける必要などから,シャクティ治療をAに施すにとどまり,未必的な殺意をもって,痰の除去や水分の点滴等Aの生命維持のために必要な医療措置を受けさせないままAを約1日の間放置し,痰による気道閉塞に基づく窒息によりAを死亡させた。
と、今回と同様、治療の誤りが露呈しないようとして、患者を殺しているわけです。
なぜ無免許治療が放置されているか?最高裁の昭和35年判決
このブログを初めて読まれた方は疑問に思っていないだろうか?
なぜ医師などの医療系免許を持っていない者の治療(と称する)行為が放置されているのか?、と。
本来、このような無免許治療はあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(あはき法)第12条で「医業類似行為」として禁止されているのである。
第十二条 何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。ただし、柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)の定めるところによる。
第1条はあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師のことであり、これらは法律に基づいた医療系免許である。当ブログの筆者はこの3つの免許を持っている者(3つ持っているので鍼灸マッサージ師と呼ばれる。)である。
ところが最高裁はこの条文に関し、
ところで、医業類似行為を業とすることが公共の福祉に反するのは、かかる業務行為が人の健康に害を及ぼす虞があるからである。
それ故前記法律が医業類似行為を業とすることを禁止処罰するのも人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局する趣旨と解しなければならないのであつて、このような禁止処罰は公共の福祉上必要であるから前記法律一二条、一四条は憲法二二条に反するものではない。
しかるに、原審弁護人の本件HS式無熱高周波療法はいささかも人体に危害を与えず、また保健衛生上なんら悪影響がないのであるから、これが施行を業とするのは少しも公共の福祉に反せず従つて憲法二二条によつて保障された職業選択の自由に属するとの控訴趣意に対し、原判決は被告人の業とした本件HS式無熱高周波療法が人の健康に害を及ぼす虞があるか否かの点についてはなんら判示するところがなく、ただ被告人が本件HS式無熱高周波療法を業として行つた事実だけで前記法律一二条に違反したものと即断したことは、右法律の解釈を誤つた違法があるか理由不備の違法があり、右の違法は判決に影響を及ぼすものと認められるので、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものというべきである。
と判決を出し、「人の健康に害を及ぼすおそれ」が立証されない限り摘発されないこととなった。*1
我々の業界では昭和35年判決と呼んでいる。
この最高裁判決には反対意見があり、特に石坂修一裁判官の反対意見で示された、適切な治療機会の逸失は「消極的弊害」として、以後の医療法規の判例で用いられる考えとなる。*2
かゝる治療方法は、健康情態良好なる人にとりては格別、違和ある人、或は疾病患者に、違和情態、疾病の種類、その程度の如何によつては、悪影響のないことを到底保し難い。それのみならず、疾病、その程度、治療、恢復期等につき兎角安易なる希望を持ち易い患者の心理傾向上、殊に何等かの影響あるが如く感ぜられる場合、本件の如き治療法に依頼すること甚しきに過ぎ、正常なる医療を受ける機会、ひいては医療の適期を失い、恢復時を遅延する等の危険少なしとせざるべく、人の健康、公共衛生に害を及ぼす虞も亦あるものといはねばならない。
…
而してあん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法が、かゝる医業類似行為を資格なくして業として行ふことを禁止して居る所以は、これを自由に放置することは、前述の如く、人の健康、公共衛生に有効無害であるとの保障もなく、正常なる医療を受ける機会を失はしめる虞があつて、正常なる医療行為の普及徹底並に公共衛生の改善向上のため望ましくないので、わが国の保健衛生状態の改善向上をはかると共に、国民各々に正常なる医療を享受する機会を広く与へる目的に出たものと解するのが相当である。
そして、この反対意見で懸念された消極的弊害が成田ミイラ化遺体事件であり、今回の糖尿病男児に対する殺人事件である。
またズンズン運動と呼ばれた無免許施術では施術で子供が亡くなり、業務上過失致死傷罪で有罪判決が出ている。
判決によると、被告は昨年6月、大阪市淀川区の施設で、神戸市の男児に対し、身体機能を高めるとして首をもむなどの施術を行い、6日後に死亡させた。
柴山裁判長は判決理由で、平成25年2月にも新潟県の男児=当時(1)=が被告の施術後に死亡したことを挙げ、「施術の危険性を十分認識できたのに検証せず、注意義務違反の程度は大きい」と指摘。
死ぬほどではないが、無免許施術による健康被害が国民生活センター、消費者庁から報告されている。
手技による医業類似行為の危害−整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も−(発表情報)_国民生活センター
法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に(消費者庁)[PDF]
消費者庁には、「整体」、「カイロプラクティック」、「リラクゼーションマッサージ」などの法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術で発生した事故の情報が、1,483 件寄せられています(平成 21 年9月1日から平成 29 年3月末までの登録分)。そのうち、治療期間が1か月以上となる神経・脊髄の損傷等の事故が 240 件と全体の約 16%を占めています。
どうすれば無免許治療を根絶できるか?
と言っても難しい。
まずあはき法第12条について、再び裁判所に判断してもらわなければいけない。
刑事事件の場合はまず検察が起訴しなければいけないのだが、判例に反する起訴を、行政である検察官は行わない。
強制わいせつ罪の判例が変更された事件は、検察が性的欲求を満たす目的があったとして起訴したが、弁護人に、性的欲求が有ったことの立証を妨げられたからである。
三権分立が悪い形で発現しているのが無免許治療の法的状況である。
そうなると民事裁判であはき法12条について判断してもらう手が考えられる。
無免許治療を受けた患者が、
治療契約はあはき法第12条に違反する違法な施術を行う契約だから、契約は公序良俗に反し、無効である。
と主張して、治療費の返還を求めることが考えられる。
実際、そんな風に争った裁判の判決は見当たらないのだが、近いものはあった。
binbocchama.hatenablog.com
この事件で、最初から治療行為があはき法第12条に違反する施術だった、と主張していれば、と思う。
もっともこの論法で無免許治療業者を訴えた場合、判決が出される前に、口外不可の条件で和解に持ち込まれると思うし、和解された事件は判例集には当然載らない。
そこが無免許治療の根絶を願う者にとってのハードルである。
素人考えでも、死人や健康被害が出ている以上、昭和35年判決を現代でも維持するのは相当ではない、と思うが。
ラフィネを運営する株式会社ボディワークホールディングスのドメインから、当ブログへのアクセス。リラクゼーション業が犯罪業務でない、と言うなら私を訴えれば良い。他に誰が訴えることができるのだ?
はてなブログの機能として、どこのリンクから記事を閲覧したのかを表示する機能がある。
そしたらラフィネの親会社である株式会社ボディワークホールディングスが所有する、bwhd-rg.jpというドメインから、ラフィネのギフト券などの問題を指摘する記事へのアクセスが有ることがわかった。
私は当該記事で、ラフィネの業務を犯罪扱いしている。
リラクゼーション業界トップの企業が、私の法的責任を追求できないとすれば、リラクゼーション業界自体は犯罪扱いされることから法的に保護されていない、ということである。
- bwhd-rg.jpからのアクセス
- bwhd-gr.jpはボディワークホールディングスが所有するドメイン
- グループウェアからのアクセスか?
- ラフィネの業務が適法なら、私の記事の削除や賠償請求をすべきだろう。
- 匿名である、びんぼっちゃまの身元を特定し、記事の削除と損害賠償を求める方法。
- ラフィネが違法・犯罪行為と指摘されて、法的対応を取れなければ、その他のリラクゼーション業者も、違法業務と指摘されても反論・対抗できない。
bwhd-rg.jpからのアクセス
このURLへアクセスしても403Forbiddenでアクセスできない。
bwhd-gr.jpはボディワークホールディングスが所有するドメイン
ドメインの所有者を調べたところ、ラフィネを運営する株式会社ボディワークの親会社、株式会社ボディワークホールディングス(以下BWHD社)であった。
グループウェアからのアクセスか?
「bwhd-rg.jp」でぐぐってみると、サイボウズのOffice8のマニュアルが出てきたりする。
アクセス元ページのタグを開くとこんな感じである。
「cgi-bin」や「MyFolderMessageView」という表示から、グループウェアのメッセージ機能からのアクセスかと思われる。
「MyFolderMessageView」で検索するとサイボウズ関連のページもヒットする。
またトップページ「/」からのアクセスも有るので、グループウェアのトップページからもアクセス可能なように表示されていると思われる。
サイボウズOfficeでは可能なようである。
トップページでの連絡内容の設定 | サイボウズ Office 10 マニュアル
このグループウェアがラフィネのセラピストを含む、全従業員が使っているのか、BWHD社の正社員のみが使っているのか、わからないが、トップページに表示されているならBWHD社の幹部たちは私の記事を把握している、ということである。
ラフィネの業務が適法なら、私の記事の削除や賠償請求をすべきだろう。
さて、私は当該記事で
ラフィネの施術業務は違法業務であるから、施術契約は公序良俗に反し無効である。
(略)
こうなると「病的状態の除去」を目的にマッサージを行っている、と言っても過言ではなく、医師免許やあん摩マッサージ指圧師の免許を持って無ければ犯罪業務になる。
このような違法業務の契約は公序良俗に反し、無効である(民法90条)。
なので事情を知らなかった利用者は施術を受けた後であっても、施術料金の返還を求めることができる。
といった見出しや文章も書いている。
もし合法な施術を業務としているなら、当該記事を業務妨害と捉えられても、常識的には仕方ないだろう。
実際には法解釈の問題であって、前提とする事実が真実である限り、通常は不法行為に問えない。*1
ただし、競合事業者なら話は別である。
不正競争防止法の、信用毀損行為(虚偽事実告知)は、誤った法解釈の告知は許さないと考えられる。*2
しかし、
- リラクゼーション業者とあん摩マッサージ指圧師は競合するのか?
- 競合するなら無免許側は、免許制度の存在と、自身が無免許であることを告知しなければ消費者契約法に違反(不利益事実の不告知)するのではないか?
といった問題が上げられる。
匿名である、びんぼっちゃまの身元を特定し、記事の削除と損害賠償を求める方法。
プロバイダ責任制限法(プロ責法)に基づき、はてな社に発信者情報開示請求を行う。
同時に当該記事の削除を請求してもよかろう。
はてな発信者情報開示の流れ - Hatena Policies
私の身元を特定したら私に対して裁判を起こせば良いわけである。
個人事業主がそんなことをしようとすると弁護士費用も大変で、同業者の寄付やクラウドファンディングで費用を集める必要が有るだろう。
その点、BWHD社はリラクゼーション業界第1位の企業である。*3
弁護士費用を賄える程度の金銭的余裕は有るだろう。
自分の金で弁護士費用を用意できるなら、意思決定もスムーズだろう。
ラフィネが違法・犯罪行為と指摘されて、法的対応を取れなければ、その他のリラクゼーション業者も、違法業務と指摘されても反論・対抗できない。
業界トップのBWHD社が私を訴えることができなければ、他のリラクゼーション業者、特に個人事業主では無理であろう。
BWHD社が私を訴えることができない理由として
- 不正競争の虚偽事実告知に、知的財産権以外の法的見解は含まれない。
- 無免許マッサージでない、という判決を得られる見通しが無い。
というのが考えられる。
1であれば施術が違法であるわけではない、という言い逃れが可能であるが、犯罪業務呼ばわりされるのを法的に防ぐことができない。
2であれば業務が合法である、という自信がBWHD社にも無い、ということになる。
ラフィネの従業員セラピスト、BWHD社の社員、BWHD者への就職を考えている学生諸君、そしてその他のリラクゼーション業に携わる人々に考えていただきたい。
業界トップの企業が犯罪業務呼ばわりされても、法的対応を取れない業界は正常なのか?
と。
対して影響力のない、匿名のブログに対応するよりは無視する、という対応も経営判断として有りかもしれない。
しかし業界1位であると自認し、社長が業界団体を作り上げ、その会長もしていた企業である。
リラクゼーション業従事者の名誉を毀損される状況を放置して、業界のリーディングカンパニーと言えるのだろうか?
*1:
謝罪広告等請求事件 - 平成15年(受)第1793号 - 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄自判 東京高等裁判所
*2:実際には特許権を侵害していないも関わらず、競合業者が特許権を侵害している、と告知するのは不正競争になる。特許権を侵害しているかどうかは法解釈のように思える。ただし、知財以外の法的見解に関しては意見・論評として、実際に違法かどうかを判断しない裁判例も見受けられる。
損害賠償等請求控訴事件 不正競争 民事訴訟 - 平成27年(ネ)第10020号 - 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
*3:
清水秀文 interview:リラクゼーション業界の将来のために動き出した! | モアリジョブ