以下の記事はリラクゼーション業、Re.Ra.Kuを営む株式会社メディロムが、法令上の問題があり国内の株式市場で上場できなかったという記事である。
- リラクゼーションは業態がグレーゾーンなので国内上場ができない。
- マッサージに関しては通知や裁判例がある
- リラクゼーション業が合法だと思うなら、回答義務の有る照会手続きを取るべき
- マッサージでなくても、医療関連性と人の健康に害を及ぼすおそれがあれば違法行為である。
- 医療関連性の有無
- 保健衛生上の危険性
リラクゼーションは業態がグレーゾーンなので国内上場ができない。
上記記事はリラクゼーション業のRe.Ra.Kuを運営する株式会社メディロムが、国内で株式上場を目指したけど、業界がグレーゾーンであることを解消できなかったため、上場できず、米国で上場した旨が書かれている記事である。
以下、記事より引用。馬渕氏は記者、江口氏はメディロムの社長であり一般社団法人日本リラクゼーション業協会の理事でもある。
改行、強調は筆者による。
馬渕:そんなリラクですが、日本での上場を目指していたものの、上場はできなかったそうですね。なぜでしょうか。
江口:一口で言うと、業態がグレーゾーンと判断されたからです。2006年から2013年にかけて東京証券取引所引受部の方から問題点を教えてもらいました。昭和22年に施行された、「あはき法(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師などに関する法律)」という法律の第一条に「医師以外の者で、あん摩、マッサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。」とあります。しかし、問題はその「マッサージとはなにか?」というのが定義されてないんですよ。
馬渕:マッサージの定義がわからない?
江口:そう。マッサージの定義がないので、リラクゼーションという業態自体グレーゾーン扱いされてしまったんです。
で、再度上場を目指すも
江口:今度は厚生労働省からの文書回答をもらってくださいとの返答でした。企業としても、個人としても、業界団体産業団体としても陳情はしましたけど、回答はなかったのです。内閣府、総務省も行きました。省庁間を3年間ぐらい回り続けました。
ということで、国内上場を諦め、米国で上場したそうである。
マッサージに関しては通知や裁判例がある
マッサージを含む、あん摩に関しては厚生省が以下のように通知をしている。
法第一条に規定するあん摩とは、人体についての病的状態の除去又は疲労の回復という生理的効果の実現を目的として行なわれ、かつ、その効果を生ずることが可能な、もむ、おす、たたく、摩擦するなどの行為の総称である。*1
また裁判例では
あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法一条にいう「あん摩」とは、慰安または医療補助の目的をもって、身体を摩さつし、押し、もみ、またはたたく等の行為を言う。*2
とされている。
リラクゼーション業が合法だと思うなら、回答義務の有る照会手続きを取るべき
どういう質問を出したのか、わからないが少なくとも経済産業省のグレーゾーン解消制度や厚労省の法令適用事前確認手続は利用してないようだ。
自分たちの業務が合法だという自信があるならこれらの制度を利用すれば良い。
ただし、照会したビジネスが違法と判断される可能性もある諸刃の刃である。
マッサージでなくても、医療関連性と人の健康に害を及ぼすおそれがあれば違法行為である。
マッサージであるかどうかはあはき法1条の問題である。
一方、マッサージでなくても医業類似行為はあはき法12条で禁止されている。
第十二条 何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。ただし、柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)の定めるところによる。
厚労省によればマッサージは医業類似行為に含まれるので、リラクゼーション業の手技がマッサージであろうが無かろうが、医業類似行為であれば犯罪行為となる。
で、その医業類似行為の定義であるが厚労省は質問主意書への答弁として、令和元年5月31日に
なお、厚生労働省としては、「医業類似行為」とは、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある「医行為」ではないが、一定の資格を有する者が行わなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為であると解しており、それには、あん摩、マッサージ及び指圧、はり、きゅう並びに柔道整復のほか、これら以外の手技、温熱等による療術行為であって人体に危害を及ぼすおそれのあるものが含まれると考えているところである。*3
と回答している。
この後、タトゥー裁判の最高裁決定が有り、
医行為とは,医療及び保健指導に属する行為のうち,医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為をいうと解するのが相当である。
と医行為は医療関連性が有る行為に限定された。医行為を業として行うことが医業であり、それに類似する行為である医業類似行為もまた医療関連性が有る行為に限定される。
そんなわけで、リラクゼーション業に医療関連性が有り、その施術が人体に危害を及ぼすおそれがあれば医業類似行為に該当し、やはり違法行為となる。
医療関連性の有無
ではRe.Ra.Kuのウェブサイトを見て、医療関連性が有るかどうか、検証してみよう。
コース紹介のページを見ると疲労回復や便秘解消、冷えの予防、腰痛対策などを目的にしていることがわかる。
以下、スクリーンショットである。
疲労回復を目的にしているのは明白であろう。
老廃物を流す、や腰の痛みが気になる方、とあるから腰痛対策と言えるだろう。
冷えや便秘に効果が期待できます、とある。
小腸・大腸の働きを正常に戻す、自律神経のバランス調整とある。
これらの記述から医療関連性が有るのは明白であろう。
保健衛生上の危険性
リラクのサイトには
リラクには年に一度、CLPの技術と接遇力を競い合う社内コンテストがあります。1000名を超えるCLPの中から予選会を行い、 リラクカレッジで定める評価軸を基に、メダリストを輩出します。 このような環境で、日々切磋琢磨するリラクのCLPだからこそ、重大事故数0の施術を実現しております。
と書いてある。「重大」事故数0なので、軽微な事故はあるとも解釈できる。
もっとも人体に危害を及ぼすおそれがない、と第三者によって証明されています、といった記述は無いようである。
なお、人体に危害を及ぼすおそれというのは何も施術による危険性だけではない。
症状の原因や身体の状況を誤って判断すれば適切な治療を受ける機会を逸失する。
なので診察・診断行為は医行為なのである。よってなんら国家資格を持たない者に許される行為は判断要素に乏しい機械的な作業に限定される。
ではRe.Ra.Kuのウェブサイトを再び検証してみよう。
身体の状態をアプリに入力し、身体の状態に合わせてコースを提案するそうである。
病歴、症状とは書いてないが、施術者が身体の状態に応じて、つまり判断してコースを提示するわけである。
ここでも身体の状態を確認する旨、表示している。コミュニケーションというのが身体的なものか、言語的なものかは不明だが、前者であれば触診とも言えようし、後者なら問診と言える。
身体状況を把握して、メンテナンスペースを提案している。
身体状況を告げ、治療検査・入院の慫慂(しょうよう)をした無資格者は医師法違反の有罪判決が確定している。
ME装置(筆者注:超音波診断装置)を操作して患者の具体的病状、病名等を独自に診断、判定し、その結果及び検査治療方法等を自ら患者に告知し、かつ、精密検査ないしは手術のための入院を慫慂するという行為を反覆継続する意思で行つたことは、医師が行うのでなければ保健衛生上人体に危害を及ぼすおそれのある行為を業として行つたものとして、医師法一七条にいう医業に該当するものと解される。*4
よって、身体の状況を把握し、施術の頻度を提案するのは人の健康に害を及ぼすおそれのある行為であり、無免許で業として行えば犯罪業務である。
実際には身体の状態を判断せず、機械的に施術していたとしても、被施術者が身体の状態を判断してもらって施術していたと判断すれば医業類似行為の罪は成立する。
以上より、株式会社メディロムがRe.Ra.Kuブランドで提供しているリラクゼーションサービスはあはき法12条に違反する犯罪業務である。