あはき柔等の第1回広告検討会議事録より、その1:柔道整復師の不正広告の対応は根性論である。

本年5月10日より、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会が開催されている。

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第1回の検討会の議事録が公開されたので忘備録として抜粋しておく。

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検討会の構成員

まず、検討会の構成員であるが、グループを分けて紹介する。

あはき柔の国家資格者の関係者

なお、日盲連の小川氏は日盲連会長の竹下義樹構成員の代理で出席である。

 

法律関係者

医事法講義(新編第3版)

医事法講義(新編第3版)

 

なお、構成員である日盲連会長の竹下義樹氏も弁護士である。

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その他

その他は大まかに分けて、医師、健康保険、患者団体と分けられる。

 

検討会の目的

松田医事専門官の発言より

今回、御議論いただく論点として 3 つ挙げさせていただいております。

規制の対象となる広告の範囲等について明確に定めた規制がなく、都道府県様により、指導等の差が生じていくということがあり、今回、広告に関するガイドラインの作成についてどう考えるか。

また、正確な情報を提供し、その選択を支援する観点から、広告事項の拡大を考えてはどうか。

あと、望ましくない広告が無資格類似業者においてある、その指導・保護についてどう考えるのかということで、無資格類似業者の広告のあり方について、今回検討会で検討したいと思っております。

 

柔整の不正広告対応は根性論

○三橋構成員(柔整)

 今、指導という話がありましたが、今までも、例えば広告の規制ということで、我々のほうから、いわゆる不正な広告が上がっているという情報提供を保健所にするわけですが、保健所がどこまで施術所の中に入っていけるのか。

例えば、看板だけを見て、この看板はおかしいですよと言うだけで帰ってくるパターンがほとんどなのです。

例えば中まで入って行って指導するとか、そこまでなかなか至らないケースが多くて、そこまで保健所に指導権限を与えていただけるのかどうかというのも、 1 つの課題ではないかと思いますが。

○山口構成員(患者団体)

 私たちの所では、 28 年前から電話相談ということで、これまで 6 万件近い電話相談をお聞きしています。

その中で、特に柔整のことについての相談が数多く届いています

特に最近目立つのが、広告の問題で言いますと、やはりクーポンとか割引券といった広告が横行していて、そのことによって、かなり誘導されてトラブルになっていると、このような例が多いということもあります。

また、先ほどから御説明に出ていた診察日、診療日、診察時間、こういう医療機関と思ってしまうような表記がかなりされていて、一般の方が医療機関との区別が付いていない。

まして、柔整の方たちも先生と呼ばれていることが多いので、その方たちが、例えば「私は完全に治してあげるよ」とか「痛み止めなんかは飲まないほうがいい」と整形外科で行われている治療に対して意見を言うということで、一般の方がかなり混乱しているという問題を感じています

 

 それとプラスして言いますと、保険請求ができるということもありまして、費用請求に対しての不信感が結構あって、実際に医療費のお知らせが来たときに、実際に行った回数と違っているとか、打撲はしていないのに打撲と書いてあると

こういった御相談がかなり以前から届いています。特にいわゆる混合診療は医療ではできませんが、この分野ではできるということも一般的には知られていませんので、その辺り、かなり混乱しているような状況があるのではないか。そういった問題意識をこれまで持ってまいりました。

 

 そういったときに、今回ガイドラインを作るという方向性ですが、ガイドラインを作るときに、一般の方にもどういうことが守備範囲なのかとか、何ができて、何ができないのかということをしっかりと、今一度改めて情報提供をしていくことが必要ではないかということです。

○三宅構成員(健保連

保険者の立場としては、やはり不適切な広告で誤解を招いて、患者さんが誘引されることがあってはならないと考えております。例えば意見としては重なりますが、医療機関だと誤解して誘引をされたり、先ほど来から出ている治療や治療院という言葉を使ったり、あるいは施術自体全てが健康保険の対象だと誤解をし、誘引されるということがあってもならないと考えております。もちろんその結果が、患者の健康被害に、あるいは無理・強引な誘引は不正請求につながると私どもは考えておりますので、その点は厳しく対応すべきと考えております。

 現在の広告の状況は、非常に不適切なものが多く、荒れていると考えております。健保組合は全国に 1,400 ありますが、その一部で作られた「保険者機能を推進する会」というグループがありまして、こちらが千代田区内の柔整の施術所の看板広告をほぼ全件歩いて調査をしたことがありました。これは新聞でも取り上げられて相当数の問題が見付かったということで話題になっております。そうした実態も踏まえて、早急に患者を守る、あるいは不正を防ぐという観点で、法令なりガイドラインを明確に規定していただきたいというのが 1 点です。

(略)

 また、先ほど来から各先生方から指導の問題も御指摘がありましたが、医療法の中には、広告違反の場合は 30 万円の罰金という条項が第 87 条にあります。それ以外に第 6 条の 8 などでは、都道府県知事が例えば必要な報告を命じたり、立ち入ったり、検査をしたり、中止、是正の命令ができるなどという明確な規定があります。柔整あはき法にはそこまでの規定がなく、 30 万円の罰金条項だけだというところです。
 この辺りは私ども一般人には指導根拠がよく分からないというか、恐らく地域保健法や、各都道府県の条令等でしっかりしていただいているかとは思いますが、指導根拠の規定はどこかに明確に 1 つの柱を置く必要があるのではないかと考えております。そのことによって、いきなり告発して罰金というのは難しいとは思いますので、しっかり指導をしていけるようにそういったことが必要だと考えております。

 さらに柔整あはきの場合は、療養費という保険の対象になる場合があります。この療養費の世界におきましては、受領委任取扱規程による受領委任という仕組みがあります。これは保険者も入りまして、契約協定を結ぶというものです。やはりこの中で、今回作られたガイドラインに沿って広告の規制という項目もしっかり明示して、厚生局にも指導をしていただいて、一定期間従わないような場合は、受領委任の取扱いを中止することが必要だと考えております。

 不正を調査するのには大変時間が掛かるということは理解ができます。ただ広告、看板などについては、ガイドラインさえきちんと整理すれば、それが違法かどうか、適切か不適切かというのは、すぐに分かる話ですので、そこはすぐに指導して改善命令をしていただいて、ほかの不正の調査とは別にできるはずだと思っておりますので、法や受領委任取扱規程に基づいて、厳しい対応を取っていただきたいと考えております。そうしなければ、患者さんの健康に不利益が生じる心配もありますし、また真面目にやっていらっしゃる施術所さんも浮かばれないと考えております。

○三橋構成員(柔整)

 先ほどから名称の話が出ていますが、実は我々日本柔道整復師会に新入会の柔道整復師が来られるのですが、その中で、治療院という名称で届出をしてくる柔道整復師が何人かいるのです。そうしますと、保健所で例えば治療院と名前を付けて通ってしまうと、厚生局でも受けざるを得ないというところで、厚生局に電話をしても、「いや、もう、一度保健所で通ってしまうと」というようなことで、実は変えられないみたいな話になってしまって、我々から逆に施術者にその話をして、改めて治療院という名称を外させて、接骨院という名前で登録させるということをしております。

しかし、例えば個人でやられているような柔道整復師の方々は、そのまま通ってしまうと、治療院という名前で恐らくやられていると思います。通常であれば、これは法的にも認められていないので、これはいかがなものかなと思いますので、先ほど申し上げたとおり、保健所と厚生局の情報提供、あるいはつながりがどうなっているのか、もう一度考えなければいけないかと思います。

 

 先ほど健保連の委員から、受領委任の取扱いのお話がありました。今回、新たに我々の受領委任の取扱いの中で、規定が一部変更になって、今までは広告については、ただ柔道整復師法だけでしたが、今回、新たに施術の担当方針ということで、「違法な広告により、患者が自己の施術所において施術を受けるように誘引してはならない」という規定が載りました。ということで、今回から、違法な広告をして患者を集めれば、いわゆる受領委任の取扱いの停止処分にもなり得るという形で、取扱いの規定が変わったのです。その中でも、違法と判断するのはどこなのだと、所管は保健所ということで、医療課から Q&A が出ていますが、保健所に尋ねると、保健所の所管は分かるのですが、そこからどのような形で厚生局に情報提供するのか、あるいはどのような形でその情報を持っていくのか全く記されていないと。もう 1 つ何かステップ的に、こういう形で文章を上げろとか、こういう形で保健所から段階を経て上のほうに、例えば厚生局、厚生労働省なり何なりに上げていくような文章をもう一本出してもらわないと、なかなか動けないという情報も頂いております。

 その中で、我々きちんとやっている施術者からすると、今、柔道整復師法で決められているものは、患者さんがそれを見ても果たして分かるかどうかと思いますが、昔はほねつぎと言えば接骨院だなと思っていただいたのですが、今、ほねつぎと言っても、何をやっているのかさっぱり分からないと。中には無資格の整体がどちらかというと接骨院よりも知名度が上がって、どちらが本当の接骨院なのか分からなくなっている。中には整体院の看板を見ますと、次世代型接骨院だと。何とか整体院と書いてある所もあるのです。そういうのを見ますと、我々のほうからも、接骨院というのは骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷を扱っているのだぐらいはせめて表記をさせていただけると非常に有り難いと思います。先ほどから話が出ているように、いわゆる無資格の方々の看板を我々も考えていかなければいけないのかなと。例えば接骨院、あるいは病院でも「院」というのが付きます。あるいはあはきのほうでも鍼灸院とか「院」が付きますが、「院」というのは公共性を保つものであって、例えば「院」は無資格者は使えないとか、そのような規定ももしできればいいのかなと思います。以上です。

○前田構成員(医事法)

 例えば柔整だと「整体」という名前を使って、整体は国家資格ではありませんので、いわゆる広告制限は余り掛かっておりません。それに対して、届出のほうは接骨院になっているので、柔整師になっていますので、保険が適用できる。いわゆる療養費が使えると。

こういったところで、非常にあり得ないような広告をした上で患者さんを集めて請求だけを行っている方が全国的に非常に多くなっている点があったので、やはり無資格に対しての広告制限もきちんと捉えた内容を作るべきだと考えております

加護構成員の発言より

奈良県橿原市の加護です。先ほど南構成員からも御指名いただきましたが、先ほど来、三橋構成員、山口構成員、その他構成員の先生方から出ていますが、指導権限を与えよというところですが、これは明確に県、若しくは厚生労働局というのが決められています。

 現場としては実際、根性論なのです。すみません、言葉は非常に悪いです。うがった捉え方をしていただきたくはないのですが、何度注意しても聞いてくれない所に追い込みを掛ける根性はあるのかどうか。それが、ほぼない。県の職員や厚生労働局の職員が駄目だと言っているわけではありません。手が少ない。なかなか全体にわたって、全てを回ることができないというのが現状です。

 

 しかしながら、先ほど言ったような悪意を持って営業をなされる施術所に関しては、ほかの施術所に影響が出ますので、迷惑が掛かりますので、何遍でも注意しに行くのですが、そこを県、厚生労働局のほうに、きっちり法的指導をせよという要望を上げても、実際、犯罪に手を染めるまで行かない。はっきり言って法律違反ですので、犯罪と言えば犯罪です。しかしながら大きな金が掛かっているとか、被害者が出たという場合であっても、半年掛かります。半年掛けて、潜入をするような事態になります。

 

 私ども市町村からしたら、市民の声を頂いて、すぐさま、「あなたの所はこういうことをしているけれども、それはおかしいのではないですか。市民から困惑した電話が掛かってきていますよ。そこは是正できるものなら、すぐさま是正してください」というお電話を掛けさせていただきます。それで、「それは申し訳なかった」と言って、すぐさま対応していただける所も多々ありますが、中には一切聞いてくれない所がある。「お前、誰にもの言うてんねん」という所も出てきます。

「お前、誰にもの言うてんねん」と言われたら、「私たちは市民の声をお伝えしています」という言い方をさせていただきます。

 

 しかしながら、それを県、近畿厚生局に上げていったところで、なかなか動いてもらえない。実際の話、国から動けというように、このガイドラインの中で定めていただければ有り難いのですが、こうなったら動けよと決めていただかなければ、はっきり言って動かないです。県のほうから文句が掛かってきても、私は受けて立ちますが、動かないです。一部、動いておられる都道府県もあります。ちゃんとした所もあります。そうしたら、それはどこで違うのかと言ったら、根性なのです。追い込みを掛ける根性があるのかどうかだけなのです。ごめんなさい、言葉は悪いです。別段、ケンカを売りに行っているわけでも何でもありませんしね。市民、県民、住民が紛らわしいので迷惑を被っている。

 これは先ほども出ましたが、スポーツをしている絵の下に「保険申請可」と書いてあるわけです。怪我をしたら仕方ないでしょう。早く治療してもらって、早く治してもらわないといけません。しかしながら、今日は 5,000m 走ったから疲れている、揉んでもらうと言って実際に行かれます。行かれるのは別段問題ないです。自費で行かれたらよろしい。でも、「保険申請可」と書いてあるので、保険申請できると思っておられます

そういう所に私、お電話させてもらったのですが、親からえらい剣幕で電話が掛かってきます。「いやいや、お父さん、こうこうこうなんですよ。施術所の先生から、そういう説明を受けられたでしょう」、「そんなもん、関係あるかい」という話になってしまいます。

 

 それを、きっちり現場に行って、「保険申請可というのは別に書いてもらえませんか」とか、「そういう絵は取り除いてもらえませんか」と。先ほども出ましたが、腰を曲げて、ここにクラッシュマークを付けて、腰痛に対して下に「保険申請可」と書いてあるわけです。

 

 怪我をされたら仕方ないです。当然のことです。でも、それで行かれるのは慢性の腰痛の方です。それを、きちんと先生は説明してくれたでしょうと。だから、きっちりした先生は説明してくれます。一部、説明しないで「署名もいいから、こっちで書いておくから」と言う方もいらっしゃいます。

 そういうところをきっちりしていこうと思うと、職員のやる気になってくるのです。それで各都道府県、各市町村で差があってはならない。かく言う私どもの所も、新規に開設しようという人がどんどん減っています。やめて隣町に行かれる方がいる、ちょっと間違った捉え方をしていただいていると思うのですが。

 そういうところで言っていったら、 2 時間の会議、この回数でガイドラインを決められますか。決めなければいけませんが、これだけ委員さんが集まって、いろいろな意見を出して、決めなければいけませんが、いろいろなケースがあります。

 私はケースを何本か出せよと言われたら、帰る新幹線に間に合わないほど出せます。東京の協会の方とも一緒にお仕事をさせてもらったこともあるし、当然、社団の先生方ともさせていただいています。いろいろなケースがあります。金額が何千万という不正請求から、 24 万ぐらいとか、 5,000 円とか、そういうところでやっているから今度訴えられるのですが、先ほど少し出ました受領委任のやり方で訴えられるのですが。

 今回は広告の検討会ということですので、極論、先ほどから言っています、根性論で仕事をしなければならないのかとなったら、今は男女同権で、女性の方も当然一緒に仕事をしてもらっています。かく言ううちも担当は女性です。女性だから良い悪いではないです。そういう場面に、上司としてかわいい部下を、ウワーッて怒鳴りつける所にお前行って来いって行かせられるかというと、やはりもう一人誰かついて行けよという話になります

 

 私どもは市内全域ですが、今は国保も県域化、平成 30 年度から全国で都道府県化されています。そうなってくると範囲が広くなって、国保の支援センターのほうが指導しに行くというのがしんどくなってくる。だから、ますますそういう悪い人らを、故意に違法行為をする人たちを、押さえ込むことができなくなってしまうので、ここについてはきっちり、そんな根性論で仕事をしなくていいように、先ほど先生も言ってくれましたが、そういう明文化できるガイドライン、いろいろな問題に対して明文化できるものを、ここで作らせていただきたいと考えています。長々とすみません。

○三橋構成員(柔整)

 いわゆる自由診療という部分で自由競争、実はここに一番引っ掛かってくるのは、今、我々柔整のほうでも一番問題になっているのが、ウェブサイトの広告なのです

いわゆる交通事故について、これも厚生労働省からしてみると、うちの範疇ではない、管轄ではないということで、はねられてしまうのです。(略)

 そこで、平成 26 年に医事課のほうから、いわゆる「交通事故専門」、「むち打ち専門」というのは違法広告ですよという文書は出してもらいました。しかしながらウェブサイトでは、今、例えば交通事故でその接骨院に行くと見舞金が 5 万円もらえるとか、本当に目を覆いたくなるような、いろいろな広告が出ています

しかしながら、なかなか持っていきようがない。その中で、例えば現在のところでは広告会社がウェブサイトを作りませんかと、うちなんかにも毎日のように電話が掛かってきます。そこに、今は弁護士事務所がついているんですね。弁護士事務所が同じようになって、こういう形で載せませんか、いわゆるコンサルティングしませんか、受けませんかという、弁護士事務所から毎日のようにダイレクトメールが入ってきます。そんな中で今、交通事故のウェブサイトというのは作り上げられているような状況もあって、これを何とかしなければいけないだろうと。

(略)

我々普通にやっている施術者からすると何とかしてほしい。特に今は昔と違って、自身で開業して施術所を持つのではなくて、いわゆる企業がグループみたいな形で、何十店、何百店という形で接骨院を増やしてやる。そうすると、全く同じような広告、全く同じようなウェブサイト、それを使って広告を広げていくような、その内容が本当に集客を目的とした内容なものですから。

(略)

 先ほど橿原市の委員がおっしゃいましたが、私も会員から近所に不正な広告、こんなのを上げているから何とかしてくれと言われて、保健所に行きました

保健所は取り合ってくれません。

それから、区役所に行きました。区役所も取り合ってくれません。都庁も行きましたが駄目です。警視庁も行きました、JARO も行きました。警視庁に行ったら、まず区役所に言って駄目だったら、もう一回言ってくれと。それでも駄目だったら、今度は都庁に持って行ってくれと。都庁で駄目だったら、もう一回都庁に言ってくれと。それでも駄目だったら警視庁に来てくれと。警視庁のほうからも、事件性がなければなかなか取り上げられないと、では、どこに持って行ったらいいのだということなのです。