無自覚な強者

事の次第

「イケてる航空総合研究所」という、いけてるこうくう氏が運営する航空関連ブログがある。

下記記事は家族旅行でのANAの対応に不満を述べたものだが、コメント欄が炎上している。

flyfromrjgg.hatenablog.com

そして本人は自分のブログに好き勝手書いて何が悪い、という感じである。

 

上記記事で、いけてるこうくう氏は不満として

  1. プレミアムカウンターで見た目でメンバーで無いと判断されたこと。
  2. 往路便の機中で、温冷を間違えたドリンクを取り下げられるときに「口付けてないですよね?」とCAから確認されたこと。
  3.  復路便の機中で、子供を着陸25分前までに必ずトイレに連れて行くようにCAから言われたこと。

 を挙げ、

 

いや~今回はセントレアのプレミアムカウンターと往復の機内で、地に墜ちたANAのサービスを見た感じがしました。スカイトラックス社で今年も5スターを獲得したエアラインとは思えないスタッフの教育ぶりです。 やはりANA本体じゃないからでしょうか?中部の地上職はANAの子会社(のはず)。そして往復のフライトはANAウィングス。やはり子会社となるとサービス水準が落ちるんですかねぇ。

地上で、機上で、仰天の不適切発言。これが5スターエアラインANAのサービスなのか!? - イケてる航空総合研究所

 と締めているのである。

この記事の要旨

  • 3の批判(というよりは中傷)は不当なものである。
  • いけてるこうくう氏は業界の月刊誌に記事が掲載されるほどの人物である以上、自分のブログに好き勝手書けるわけではない。ましてやその影響力を背景にして要求を通すことをや。影響力や立場に応じた言論ができないなら、月刊誌掲載などのセミプロライター活動は辞退すべきである。
  • 「世間知らずのお姉様」というのはCA個人に対する人格攻撃である。
  • 理不尽な要求は現場の疲弊を招きかねない。

各不満の正当性

2の疑問は理解できるところである。

当該記事のコメント欄には

CTSべーす

もしいけてるさん一家が口にしていたとしたら、CAは飲み物をその場に置いておけませんから、すぐに廃棄する必要が出てくるはずです。
詳しい状況は描写されていないのでわかりませんが、もしその時CAが1人でサービスに当たっていたとしたら、サービスを中断し、1本しかない通路をカートごと移動しギャレーに戻らねばなかったはずです。
仮に2人がペアで対応していたとしても、国内線の短いフライトタイム、他にやらねばならないことも大量にある中で大きなロスです。
であれば、飲んでいないお茶は改めて出さない限り衛生上問題なく、サービスを続行するほうがよいと判断しただけのように思えます。

と書かれており、CAの質問は理由のあるものらしいが「素人」が疑問に思って不満を述べてしまうのは仕方あるまい。

実際、2に関しては理解できる旨の反応が多いようである。

 

1に関してもメンバーとなるための出費に見合ったサービスかどうか、という判断でもあり、新千歳でスマホのみで対応できたのだから従業員の教育やマニュアルの問題とも言える。

さて問題は3である。

CAにエスパーを求める点では誕生日ファーストクラス男と一緒

いけてるこうくう氏、そんな航空ブログを書いてるぐらいだから飛行機の搭乗については当然詳しい。3の不満は自分は理解してるんだから子供のことに関して「世間知らずのお姉さま」のCAは口出しするな、ということである。

 

こっちは、世間知らずのお姉様にいちいち子供の扱い方の指図をされたくないわけです。正直、「オマエにウチの子の何がわかる!」って言いたくなります。その子にはその子の特性があって、それを一番分かってるのが親なんです。

地上で、機上で、仰天の不適切発言。これが5スターエアラインANAのサービスなのか!? - イケてる航空総合研究所

 そんな搭乗客個人の搭乗リテラシーがどの程度かなんて顔なじみにでもなって無ければわからないわけです。

ステータスを獲得できるくらい飛行機に乗っていたとしても、通常は一人で乗っているなら子連れ時に適切な行動を取れる保証は無いわけでして。

コメントにも書かれているように、乗りなれてない人にとっては声がけが無いと対処できない場合もあるわけです。

 

そうなるとリテラシーが低い方に合わせて声がけするのは合理的なわけです。

 

さて、このCAにエスパーを求める態度(もしかしたら子連れ客全員に声がけは不要と考えているのかもしれませんが)でANAと言えば誕生日にファーストクラスに乗って、誕生日を祝われなかったからと不満を投稿した方を思い出します。

www.j-cast.com

強者であることに無自覚なのか。

いけてるこうくう氏が単なる航空趣味者で、影響力が無ければここまで私は関心を持たない。私は地べたを這いずる乗り物の方が好きなので。

 

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前略 雲の上より(1) (イブニングKC)

前略 雲の上より(1) (イブニングKC)

 

 

本業が何かは知らないが、下記ツイートのように航空趣味の商業誌である月刊エアラインに記事を載せられる人である。

twitter.com

AIRLINE (エアライン) 2018年7月号

AIRLINE (エアライン) 2018年7月号

 

 

この手の雑誌に記事を載せられる人の影響力がどの程度か、航空オタクではない私にはわかりかねるのだが、一介のブロガーと同一視はできまい。

鉄道業界における川島令三氏ぐらいの影響力ならどうでもよいかもしれないが。 

川島令三 - Wikipedia

主張はほぼすべてコストや実情を度外視した具体性に乏しい妄想、理想ばかりであり、個人の趣味に偏った主張など価値観の押し付けとしか思えない姿勢への賛同者も多い。

もっとも川島氏は鉄道従業員個人を理不尽な理由で批判をしたことは無いように思う。

従業員個人の人格を攻撃している時点でアウト

 前掲の誕生日ファーストクラス男を擁護(?)する記事としては下記のがある。

note.mu

 

記事の趣旨としてはANAが「察するサービス」を押すあまり、CAが「察するサービス」を提供するためにプライバシーを無視した尋問を行ったりで、会社やCAの自己満足でしかないということである。

この記事ではCA個人の人格ではなく、あくまでも会社の方針やマニュアル、評価システムへの批判である。

 

いけてるこうくう氏は前掲の引用のように「世間知らずのお姉様」と表現しているわけである。

こうなると会社のマニュアル等よりも個人の問題になってしまう。

コメントには

 CTSべーす

いけてるさんが直接クレームを出されたのかはわかりませんが、少なくともこういうブログで発表されれば、まともな会社、或いは逆に体面を気にする会社は徹底的な社内調査をします。
その結果、特に後者の会社の場合、指摘に基づき現場の対応が問題視され、こういうクレームを受けないためにさらにマニュアルがさらに厳しくなります。
そうやって現場は疲弊していくのです。

と書かれている。このコメントをした方は名前から、航空会社の新千歳空港のスタッフだろうと思われる。

 

会社がモンスタークレーマーからの要求は無視し、従業員を守るのであれば問題ないが、体面を気にしている場合、コメントにあるように現場が疲弊したり、あるは当該CAが不利益を被るおそれがあると考えるわけである。

ましてや商業誌に記事を書けるほどの人物に文句を書かれた場合をや。

 

また

今度は往路の機内での話。どこに行ったかはあえて言いません。ストーカー読者様にはすぐに分かっちゃうんですけれども、クルーの名誉のためにも記事単体ではわからないようにしておきます(笑)。

地上で、機上で、仰天の不適切発言。これが5スターエアラインANAのサービスなのか!? - イケてる航空総合研究所

 と他の記事を読めば特定できそうなことをわざわざ書いてるのである。

これを恫喝的と捉えるのは穿ち過ぎかな?

 

私は航空に無関心なわけでもないが、地べたを這いずる乗り物の方が好きにも関わらず、今回のいけてるこうくう氏の記事に絡むのは、事が影響力を持った強者による、労働者個人の人格への攻撃だからである。そしてこのような過剰な要求が労働環境の悪化を招くからである。

つまり言論の責任と労働の問題だからである。

 

最初は一介のブロガーであろうと、影響力をつけてきた(強者になった)ならそれに応じた責任も自覚すべきだろう。