不正競争であるかどうかを判断するために、非弁行為(要免許行為)か否かを判断した裁判例

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上記判決は、弁護士である原告らが,ネットの誹謗中傷記事削除などを唄うコンサルティング業者である被告を不正競争(品質誤認惹起表示)であるなどとして、慰謝料を求めた事案の控訴審である。

前掲判決文(PDF)の7ページ目から「当裁判所の判断」とあるので、そこから引用すると

 

 原告らは,被告ウェブサイト(広告)では,まさしく削除請求を代行するとうたっており,非弁活動の広告がなされているものであるから,適法に任意削除請求ができないにもかかわらず,これが適法に可能であるように表示しており,「役務の質,内容」について消費者を誤認させる表示に当たる旨主張する。(判決文10ページ目)

 

非弁活動というのは法律事務などを弁護士に独占させている弁護士法第72条違反の活動である。

弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

つまりは要免許行為を無免許で行っていることであり、違法行為ということである。

要するに、要免許行為を行えない無免許事業者であるにも関わらず、要免許行為を行う旨、表示しているのだから品質誤認惹起表示である、という主張である。

そのような主張に対し、知財高裁は

これら(筆者注:被告ウェブサイトの記述)によれば,原判決が述べるように,被告が,顧客と顧客が削除を求める相手との関係でどのように関わるのかについて明確でなく,技術的サポートの内容も具体的ではないものの,被告が顧客に代わって削除依頼を直接行ったり,法的助言を行ったりするものと理解することはできない。そうすると,被告ウェブサイトが,本来,被告が適法に行うことができない法律的な業務について,これを行うことが適法に可能であるように表示したとまではいうことができず,したがって,「役務の質,内容」について消費者を誤認させたということはできない。(判決文11ページ目)

と、被告ウェブサイトに記述されている行為は違法行為では無いと判断し、品質誤認惹起表示では無いと判断している。

 

大事なのは品質誤認惹起表示であるか否かを判断するために、無免許の事業者が表示している行為が要免許行為か否かを判断していることである。

 

我々の業界で言えば、医業類似行為であると判断できる記述、つまり「疾病の治療又は保健の目的を持ってする行為」を無資格者がウェブサイトなどで表示していた場合、それらを行えるのは医師や鍼灸マッサージ師のみであるから品質誤認惹起表示である、として訴えるのである。

 

そうなれば表示している行為が違法行為か否かを判断する必要がある。

その際、無資格者は昭和35年判決を引用して、人の健康に害を及ぼすおそれの無い行為、あるいはおそれが立証されていないのだから合法な行為である、と主張してくるだろう。

 

それに対して、昭和35年判例の維持が不適切なことを論じれば良い。

 その論点に関しては下記記事参照。

 

binbocchama.hatenablog.com