あはき法制定時の国会議事録(12条関連)

 あはき等法は明治四十四年内務省令第十号(按摩術営業取締規則)、明治四十四年内務省令第十一号(鍼術灸術営業取締規則)、昭和二十一年厚生省令第四十七号(柔道整復術営業取締規則)、昭和二十一年厚生省令第二十八号(按摩術営業取締規則、鍼術灸術営業取締規則及び柔道整復術営業取締規則の特例に関する省令)及び昭和二十二年厚生省令第十一号(医業類似行爲をなすことを業とする者の取締に関する省令)がいずれも昭和二十二年法律第七十二号(日本國憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律)第一條の規定によつて、昭和22年十二月末日限りその効力を失うため、それらの省令に代えて成立した法律である。

制定時はあん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法であり、現在、12条の2で規定されている、既存の医業類似行為業者の特例は19条であった。

第十九条 この法律公布の際、引き続き三箇月以上、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としていた者であって、この法律施行の日から三箇月以内に、省令の定める事項につき都道府県知事に届け出た者は、第十二条の規定にかかわらず、なお、昭和三十年十二月三十一日までは、当該医業類似行為を業とすることができる。

 

あはき法は議員立法と説明されることが多く、その法律構成からも信じやすいのだが、あはき法は政府提出の閣法である。

 

で、12条(医業類似行為の禁止)の制定目的に、消極的弊害の防止(適切な医療受診機会の逸失防止)があることを示す議事録があったので紹介する。

衆議院会議録情報 第001回国会 厚生委員会 第37号

この当時は旧字体なので読みにくい。

○太田委員
 次には十九條の醫業類似行為を昭和三十年十二月まで既得權を認められる。それからは許可しないというならば、それは有害であるから許可しないのか有效でないから許可しないのか。もし有害であるならば、既得權をもなぜ認めるか、そこに何かの試驗とかいう方法でもとらないと、はなはだ矛盾するように思うのでありますが、いかがでありましようか。

 

○久下説明員(厚生事務官)

 第十九條についてのお尋ねでございますが、まずその根本である十二條において將來に向つてこれを一律に禁止し、現在やつておる者について當分の間既得權の存置をいたしたのであります。
その趣旨は、實は從來これらの醫療が實際問題として、先ほど申しましたような性質において認められておる理由は、少くとも害はないという程度のものだけが認められておるのでありまして、ただその害がないという事柄の判斷でございますが、從來の考え方は、そういう療術行為を身體に行いますこと、それ自身によつて、害が生じないという意味合において認められておるのであります。積極的な治療效果というものについては、必ずしも嚴密に判斷されておらないのであります。

從いましてこれがいたずらに萬病にいいとか、あるいは相當な數多い疾病效果があらかどうかということについては、過去においては檢討をされておらないのでございます。

從いまして同時にまたいわゆる醫業類以行為というものは、そういう面から見て、醫學の素養のない人々が廣告をしておるようなことに對して、萬全の效果があるかどうかということについては、むしろこれは多くの場合否定をしなければならぬではないかと思つておるのであります。

そういう意味合において、これを一般の者が信用してかかつておることについて、病氣が治らない場合が起るという、消極的な害がないとも言えない場合があるのであります。

それらの問題を考慮いたしまして、一面においては十二條においてこれを行うことができないという規定を設けますとともに、從來の既得檢を一定の期間認めておるのであります。

 

従来でも施術そのもので害が生じるものは医師法違反などで摘発して、認めていなかった。

療術行為は施術によって害が生じない、ということで認めていた。

しかし療術の効果の有無は判断していなかった。

広告しているような効果が万全にあるとはとても言い難い。

このような療術の効果を信じた患者が、適切な医療受診の機会を逸失することになるおそれがある。

 

そんなわけであはき法第12条の目的として、消極的弊害の防止があったのは明らかである。

そのような目的を無視した昭和35年判決は立法裁量権を無視し、結果として無資格施術の健康被害を招いている以上、国の公衆衛生の維持向上を規定する憲法25条第2項に違反する。