あるカイロプラクティック協議会のガイドラインではカテゴリー2Bのカイロプラクターは独立判断で施術できない。

一般社団法人 日本カイロプラクターズ協会(JAC)以外にもカイロの団体が有り、その一つに日本カイロプラクティック団体協議会(JCCO)というのがある。

日本カイロプラクティック団体協議会

JCCOは、世界保健機関(WHO)が2005年に発表した『カイロプラクティックの基礎教育と安全性に関するWHOガイドライン』を推進する国内カイロプラクティック団体で構成する、業界を代表する多団体協議会です。
私達は、これまでの日本のカイロプラクティック業界の独善的な隠ぺい体質を脱却し、明確な基準の設定と視覚化、日本の制度に適した専門教育、全ての情報公開、民主制な組織運営を目指します。

カイロプラクティックのWHOガイドラインを推進するとした上で、「カイロプラクティックの基礎教育と安全性に関する JCCO ガイドライン(ジャパン・スタンダード)」というのを作成している。

http://jchiro.info/report/2013/jccoguideline.pdf

以下にジャパンスタンダードを規定するにあたり重点を置いた 3 項目を挙げる。
① 『WHO ガイドライン』に準じた日本の基準を定める(国際基準の推進)
日本の現状に適した基準を定める(日本独自の社会歴史文化の尊重)
③ 敢えて明確で短い文章による基準を明確に定める(歪曲防止による厳格運用)

と日本の現状に適した基準を定めるとしている。このガイドラインは法制化を目的にしているようだが、未法制化の現状への対応を書いている。

但し、カイロプラクティック法制度化へ向けた移行期に於いては、以下の通り、『正カイロプラクター』と『准カイロプラクター』の 2 段階を設定し、准カイロプラクターを正カイロプラクターにアップグレードする教育プログラムを実施することにより、将来的に正カイロプラクターに一本化し、『カイロプラクター』の単一基準を達成していく。

とし、正カイロプラクター、准カイロプタクターを以下のように定義づけている。

正カイロプラクター

以下、3 つの区分の教育修了者を『正カイロプラクター』とする。将来的には、この基準を日本に於ける『カイロプラクター』と定義する。

区分 1 日本の正規大学による 6 年制専門学士教育*1

(4 年制健康科学系学士+2~3 年の卒後(修士)専門教育課程を含む)

 

区分 2 海外正規大学による 6 年制専門学士同等の学位教育で、且つWHO ガイドラインのカテゴリーⅠ(A)修了者

 

区分 3 区分 1 または区分 2 と同等と認められる大学の学位教育

准カイロプラクター

日本に於ける法制化前後移行期の特例処置として、前記カイロプラクティック教育の基準に満たない者の内、WHO ガイドラインカテゴリーⅡ(B)修了者を『准カイロプラクター』に設定する。

(略)

『准カイロプラクター』の活動は、『正カイロプラクター』(前記の区分 1・2・3の該当者)の指導下であることを条件に容認されるとし、担当する正カイロプラクターが管理責任を負うものとする。また准カイロプラクターの臨床活動については正カイロプラクター同様に後記の継続研修を義務付ける。
准カイロプラクターは、個々の既修教育の内容に応じ、必要な補追教育を修めることで、前記、区分 3 の『正カイロプラクター』へのアップグレードを認める。

  • 准カイロプラクターはWHOガイドラインのカテゴリー2B相当であること。
  • 准カイロプラクターは正カイロプラクターの指導下でしか活動できない。

と定めている。

なお、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)が現業者に対して提供している安全教育ブログラムはカテゴリー2B相当であるが、修了者に対し、JCRやJACは独立した施術の制限を設けていないようである。

JCR試験受験資格プログラムについて:JCR試験受験資格プログラム

JCR試験受験資格プログラムの特色
1. WHOガイドラインで提示されている期間限定の教育プログラム
世界保健機関(WHO)による「カイロプラクティックの基礎教育と安全性に関するガイドライン」※1のカテゴリーII (B)で求められている、安全な施術に必要な医学教育など期間限定の教育プログラム。

すでにカイロプラクティックの看板を掲げて臨床業務を行っているが、WHOガイドラインで必要とされる教育を未だ満たしていない施術者が対象です。

 

2.  試験合格者はWHO基準のカイロプラクターとして認知
本プログラム修了後は、国際的な第三者試験委員会である、国際カイロプラクティック試験委員会(IBCE)※2によるカイロプラクティック統一試験を受験し、その合格をもってWHO基準を満たすカイロプラクターとして認められます。

 

3. 業務自主規制を遵守することで、登録機構の名簿へ登録
国民生活センターの依頼で作成された業界の「安全性と広告に関するガイドライン」に基づいた業務自主規制を遵守することを条件に、WHO基準カイロプラクターは日本カイロプラクティック登録機関(JCR) ※3の名簿に登録されます。日本カイロプラクティック登録機構は、名簿を公開することで、利用者が安全なカイロプラクティック施術者を選ぶことができます。

WHOガイドラインの教育カテゴリー

ここまでカテゴリーに関する説明をしていなかった。

JACが翻訳したWHOガイドラインから引用する。

https://www.jac-chiro.org/whojpnguide.pdf

またローマ数字は機種依存文字なので算用数字で書く。

2.1 カテゴリーI-正規なカイロプラクティック教育
・ ヘルスケアの教育も体験も一切ない学生が対象。
・ 医師やそれに類似したヘルスケア従事者がカイロプラクターとして正規な資格を求めるときの追加教育。


2.2 カテゴリーII―限定的なカイロプラクティック教育
カイロプラクティックを導入しているが、現在法律のない国や地域における医師やそれに類似するヘルスケア従事者に対する限定的なカイロプラクティック教育。これは正規の資格につながるものではない。
そのような教育は、正規な教育を構築するための第一ステップ、すなわちカイロプラクティック導入のための一時的な措置であるべきである。そのようなコースは登録に必要な最低限のもので、当然、適切で正規なプログラムが実施可能になれば、ただちにそれに置き換えられるべきである。

・ 法制化を目指しながら、現在は法律がなく、カイロプラクティック業者がいる国や地域において許容できる最低限要求される教育。
この規定は正規な資格につながるものではないが、登録のための最低限の基準。このコースは暫定的な措置で、適切で正規なプログラムが実施可能になれば、ただちにそれに置き換えられるべきである。

というわけでカテゴリー1は正規な教育、カテゴリー2は法制化されていない場合の教育であり、正規の資格に繋がるものではない。

で、それぞれA,Bとある。

カテゴリー1A

3.1 カテゴリーI(A)
下記の教育モデルには多くの多様性が考えられるが、ここでは全日制教育に関し、大きく3つの方法に分けている。


・ 大学レベルの基礎科学で1~4年の予備コースの後、専門大学または総合大学での4年間フルタイム教育。例としては、付録2参照。


・ 公立または私立大学で行われる5年間のカイロプラクティックの学士コースが組み込まれた学士プログラム。新入生は大学入学資格を必要とし、大学の入学条件や募集条件に準じる。


カイロプラクティックの学士プログラムまたは適切な健康科学の学位を取得した後に2~3年の前専門修士プログラム。

これだけをみると上から

  • 大学レベルの基礎科学修了後、4年間の教育が必要
  • 高卒後、5年間の教育が必要
  • 健康科学の学位取得後、2〜3年の教育が必要

とある。

日本で唯一のWHO基準のカイロ教育をうたっている東京カレッジオブカイロプラクティックは高卒後、4年の修業年数であり、カテゴリー1Aの基準を満たしていないように思うのだが、どうなんだろう?

募集要項|国際認証の学校 東京カレッジオブカイロプラクティック | TCC

募集要項
入学日時
2020年4月
募集人員
20名
修業年限
4年間(全日制)
学科名
国際認証ドクターオブカイロプラクティックプログラム
入学時期
4月
講義時間
月曜~金曜 9:10~18:00※¹
※¹ WHO基準カイロプラクティック教育は、基礎医学およびカイロプラクティック学を総合し4200時間以上と定められています。

海外では、夏期、冬期休みが長く、修業年限が5~6年かかりますが、TCCでは休みを短く、4年間で凝縮して卒業できるように編成されています。

で、WHOガイドラインの詳しい説明を見ると

4.2 入学条件
条件を満たした対象者は、高等教育、大学、あるいは、それに相当する機関を修了し、特定のプログラムで必要とされる基礎科学の適切な教育を受けた者である。

と高卒ではなく、高等教育で基礎科学の適切な教育を受けたものとされる。

TCCの募集要項には

受験資格
以下の項目をすべて満たした者

  1. 高等学校を卒業または卒業見込みの者(大検取得者も可)
  2. 外国人の場合、ビザを所有し、かつ日本語が堪能であること
  3. 心身ともに健康であること

とあるわけで、カテゴリー1Aの条件は満たしていないように思える。

カテゴリー1B

WHOガイドラインより

3.2 カテゴリーI(B)
以前に医学および他のヘルスケア職業教育を受けた学生のためのプログラム。
このコースでは、学生の過去の教育歴によって教育期間や科目要求が異なる。例としては付録3を参照。 

というわけで、すでに医療系免許を持った者に対する教育である。

カテゴリー2A

WHOガイドラインより

3.3 カテゴリーII(A)
コンバージョン(転換)プログラムは、以前に医学および他のヘルスケア職業教育を受けた学生が 「限定的」なカイロプラクティック資格を得るためのものであり、便宜上構築されるべきで、パートタイムの教育で最低限の条件を満たすものである。但し、正規の資格につながるものではない。例としては、付録4を参照。

と、これまたすでに医療系免許を持った者に対する教育カテゴリーである。

JACのサイトでは

3)カテゴリーII(A):
カイロプラクティックがそれほど普及していない環境の中で、他の医療従事者がカイロプラクターに取って代わる治療を行っている場合がこれに該当する。日本国内の現状には 当てはまらない。

と書いているが、むしろ今の日本ではカテゴリー2Aの教育を行うべきであろう。

当然、この教育対象者はすでに医療系国家資格を持つ者であり、その免許の業務範囲内で活動すべきである。

具体的に言えば独立判断施術が可能なのは医師免許又はあん摩マッサージ指圧師の免許を保有した者に限定し、看護師やPTなどは医師の指示の下で行なうべきである。

 

そのように「適法な」業務を行って国民に根付いてこそ、法制化を目指せるのではなかろうか? 

カテゴリー2B

WHOガイドラインより

3.4 カテゴリーII (B)
このコースは、希望者の過去の教育歴や経験によって、内容や期間が大幅に異なる。このコースを修了するときには、学生はカイロプラクティックの学士レベルという条件で、パートタイムの学習を通して安全で基本的なカイロプラクティック・ケアを提供するための十分な知識と技術を修得する。但し、このコースは正規の資格につながるものではない。例としては、付録5を参照。

詳しくは

これは「カイロプラクター」を自任し、限定的な教育を受けた人々が、安全な業務のために最低限の要件を満たすためのプログラムである。多くの国々では、カイロプラクティックの最低限の教育として、公的な必要条件は特に存在しない。これは無資格のカイロプラクティック業務につながり、患者の安全にとって望ましきことではない。これらのプログラムでは学生が、安全なカイロプラクティック業務のために最低限の必要条件を満たす目的がある。 

とある。

というわけで、日本国内で無免許でのカイロプラクターに対する教育はこれになるし、JCRが提供しているプログラムもカテゴリー2B相当としている。

もっともカテゴリー2Bの教育基準は

7.3 基礎教育
教育期間は、少なくとも 2500 時間の全日制もしくは定時制プログラムで、1000 時間以上の指導のもと臨床経験を含む。例としては、付録 5 を参照。

とあるのだが、JCRのプログラムは独立判断での施術のレポートを課している。

プログラム概要:JCR試験受験資格プログラム|東京カレッジオブカイロプラクティック

3年間、2673時間(予定)
スクーリング合計123時間    視聴覚科目ビデオ合計150時間
3年間の自己学習 1200時間、3年間の臨床実習 1200時間

実際に顔を合わせての教育はスクーリングの123時間である。

臨床実習と言っても正規カイロプラクターの直接指導下では無いので、果たしてWHOの基準を満たしていると言えるのか、疑問ではある。

 

*1:ガイドライン注釈:平成 25 年 9 月 17 日現在、区分1のカイロプラクティック教育は日本国内に存在しないが、日本に必要なカイロプラクティック教育として設定する。