エステに休業要請が出され、マッサージが対象外なのは当然のことである。
(2021/04/24追記)
2021年4月25日から再び緊急事態宣言が出され、休業要請が出される。
東京都による休業要請対象の業種は下記ページである。
「リラクゼーション業」は休業要請対象業種である。
なお、国家資格者によるマッサージ施術所は休業要請の対象外である。
(2021/04/24追記終わり)
さて、東京都から新型コロナウイルスの感染対策として、休業要請する対象施設のFAQが出された。
これを受けて報道されるわけだが、
日経では「エステ休業、マッサージOK 東京都が対象業種公表」というタイトルで
東京都は13日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために休業を求める施設や店舗の詳細な業態をまとめた。床面積100平方メートル超のネイルサロンやエステサロンが休業対象となった一方、マッサージ店は対象外で、関連した業界でも判断が分かれた。「生活に不可欠かどうか」が判断基準の一つだが、個人の生活観に関わるだけに議論を呼びそうだ。
と報じている。
ツイッターで検索すると、なぜエステが休業対象で、マッサージが対象外なのか、疑問に思っている人が結構いる。
5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の反応もこんな感じだ。
マッサージ師からすればこの違いは当然のことである。
エステ業者の不満が書かれた新聞記事を批判的に取り上げたら、同業者からは結構いいねされた。
本日の読売より。
— びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 (@binbo_cb1300st) 2020年4月14日
アホか、としか言いようがない。
ちゃんと衛生について教育を受け、設備の条件もある鍼灸マッサージと、誰でも行えて、設備条件すら無いエステを一緒にするな。 pic.twitter.com/Uw6eFonTck
なので以下、解説していこう。
1次ソースを確認しよう
疑問に思われている方は東京都の資料は読んでないと思われる。
東京都の資料で対象外としている「鍼灸・マッサージ」は「※有資格者が治療を行うもの」と書かれている。
また同じ「医療施設」の欄には「整体院」も書かれている。ただし、これも「※有資格者が治療を行うもの」であって、後述する、法的な免許を持たない整体院は休業要請の対象外では無い(休業要請の対象とも断定できないが)。
報道では
医療施設は▼病院▼診療所▼歯科▼薬局▼鍼灸・マッサージ▼接骨院▼整体院▼柔道整復です。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200414/k10012385421000.html
と、有資格者が行う施設に限定される旨が省略され、誤解を招く元になっている。
なので法的な免許を持たない、エステ店などが「マッサージ」や「整体」を名乗っても休業要請の対象外にはなれない。
一方、エステは「商業施設」に分類されている。
業としてマッサージを行うには免許が必要。
業としてマッサージを行うには、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(以下、あはき法)第1条により、医師免許か、あん摩マッサージ指圧師の免許が必要である。
第一条 医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。
しかし町中にある「マッサージ店」は必ずしもあん摩マッサージ指圧師の免許を持っているとは限らない。なので「リラクゼーション」「もみほぐし」と言った名称で営業していることが多い。
また免許が必要なマッサージは厚生省の通知では
法第一条に規定するあん摩とは、人体についての病的状態の除去又は疲労の回復という生理的効果の実現を目的として行なわれ、かつ、その効果を生ずることが可能な、もむ、おす、たたく、摩擦するなどの行為の総称である。
昭和三八年一月九日 医発第八号の二各都道府県知事あて厚生省医務局長通知
とされる。
なので、いわゆる性感マッサージに免許は不要であるから、免許を持たない者のマッサージ営業を性的サービスと勘違いしてもやむを得なかったりする。
国家資格者のマッサージ施術所は、換気能力と消毒設備を備えなければいけない。
病院、診療所の開設に保健所の認可が必要なように、国家資格を持ったマッサージ店(施術所)の開設には保健所のチェックが必要である(正確には事後に行われるが。)。
あはき法より。
第九条の五 施術所の構造設備は、厚生労働省令で定める基準に適合したものでなければならない。
○2 施術所の開設者は、その施術所につき、厚生労働省令で定める衛生上必要な措置を講じなければならない。
第十条 都道府県知事は、施術者若しくは施術所の開設者から必要な報告を提出させ、又は当該職員にその施術所に臨検し、その構造設備若しくは前条第二項の規定による衛生上の措置の実施状況を検査させることができる。
あはき法施行規則より
(施術所の構造設備基準)
第二十五条 法第九条の五第一項(法第十二条の二第二項において準用する場合を含む。)の厚生労働省令で定める基準は、次のとおりとする。
一 六・六平方メートル以上の専用の施術室を有すること。
二 三・三平方メートル以上の待合室を有すること。
三 施術室は、室面積の七分の一以上に相当する部分を外気に開放し得ること。ただし、これに代わるべき適当な換気装置があるときはこの限りでない。
四 施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること。
(衛生上必要な措置)
第二十六条 法第九条の五第二項(法第十二条の二第二項において準用する場合を含む。)の厚生労働省令で定める措置は、次のとおりとする。
一 常に清潔に保つこと。
二 採光、照明及び換気を充分にすること。
と換気能力や消毒設備が義務付けられているのである。
エステは誰でも開業、施術できる。
エステは施術行為自体を直接規制する法律は無い。
なので誰でも行えるのである。
ただし、保健衛生上、危害を及ぼすおそれがあれば医師法違反になるし、浮腫などの病的な状態へのマッサージを行えば無免許マッサージとなる。
また法律が無いので、店の構造にも法的な規制はない。
ただ取引に関しては特定商取引法などで規制を受ける(クーリングオフやそれが可能なことを示す書面の交付義務など。)。
そんなわけで免許と保健所の確認が不要なエステと、それらの確認が必要なマッサージでは自ずと扱いが異なって当然なのである。