- 本記事の要旨
- 長尾クリニックでリハビリリーダーをしていたというカイロプラクター(国家資格無し)、作本 正次氏。
- 作本氏のカイロプラクティック業務。レントゲン撮影のポジショニングと写真の読影。医師法違反は確実である。
- 長尾医師の言動は犯罪業務の「助長」であり、行政処分すべき。
- 作本氏の犯罪業務を「幇助」している兵庫県芦屋市の芦屋(R)いいだ内科クリニック、飯田 哲士医師
長尾 和宏という、メディアによく出る医師がいる。
一般書籍もたくさん出しているようだ。
本記事の要旨
- 長尾医師の保健師助産師看護師法(保助看法)違反疑惑。看護師や理学療法士、鍼灸マッサージ師などの医療系国家資格を持たない作本 正次氏(カイロプラクター)を長尾クリニックのリハビリのリーダーとしていた。
- 作本氏の医師法第17条違反(無免許医業)。作本氏は現在、カイロプラクティック店を経営している。その業務内容はレントゲン写真の撮影の際のポジショニング、レントゲン写真の読影を伴い、医師法違反の犯罪業務である。
- 長尾医師による医師法違反業務の助長。作本氏のカイロ店のサイトには長尾医師が作本氏を推薦する動画・言葉が掲載されている。
- カイロプラクターが読影することを認識しながらレントゲン撮影をしている芦屋(R)いいだ内科クリニックの飯田 哲士医師は医師法違反の幇助犯か、共同正犯である。
長尾氏は新型コロナウィルスに関し、イベルメクチンという薬剤を推し、医師免許をかけるとも言ったそうで。
長尾院長は現在、2類相当に分類されるコロナを季節性インフルエンザと同じ、5類扱いにするよう提言。(略)
また「イベルメクチンという特効薬があって、誰でも使える。疥癬(かいせん)の治療で普段使ってる薬。これを全国民に配る」と話し、「アベノマスク」に匹敵する「スガノメクチン」制度も提案した。
その上で長尾院長は「僕が言ってることが間違ってたら、僕は責任取って医者辞めます」と強い覚悟をにじませ、「1年半やってきて確信してる。今のやり方はわざわざ重症化するのを待っているようにしか見えない。早く治療すればそれで終わり。私が診てる人は1人も死んでない。最初にコンタクトした医者がちゃんとやるには法改正、5類落としが大前提。今やるべきだと思います」と締めくくった。
長尾和弘医師の提言に賛同の声 コロナを5類扱いにすれば「全て氷解」「イベルメクチンという特効薬が…これを全国民に配る」(中日スポーツ) - Yahoo!ニュース
もっとも長尾氏によれば
「5類にして混乱すれば医師免許を返上する」と言ったけど、イベルメクチンに
医師免許を賭けるなんて一言も言っていないのに、勝手にそんなことになっている。
だそうである。
私のTLでは長尾氏の言動に関しては不評である。
私は医師や薬剤師では無いので薬剤の効能について、あれこれ言う資格は無いと思うが、イベルメクチンに関し、新型コロナウィルスの感染予防に有効なエビデンスは無いようである。
また長尾氏は反HPVワクチンらしい。
子宮頚がんワクチン被害者を診てほしい|Dr.和の町医者日記 https://t.co/icsNsWyJkc
— Calci (@Calcijp) 2021年8月18日
この人反HPVワクチンだったことはもっと知られて良いと思います。
医科の範囲内である、新型コロナウィルスの治療方針や感染症に関する政策に関して、専門知識が無い私がブログ記事を書く意味はない。
私が記事を書くということは無免許医療の話である。
長尾クリニックでリハビリリーダーをしていたというカイロプラクター(国家資格無し)、作本 正次氏。
「カイロプラクティック・ステーション ありがとう」というカイロ店が兵庫県西宮市にある。
院長と称する作本 正次氏のプロフィールには
高校(太成高校:現 太成学院大学高校)卒業後、カイロプラクティックの専門学校に入学(2年制)。
専門学校卒業後、尼崎市の長尾クリニックにて3年半勤務し、退職後『中央カイロプラクティック院堺』にて3年間勤務。
2008年8月17日
当院開院。
https://chiro-st.com/about/#sec1
(強調は筆者による。以下、改行も含め同様。)
とある。
日本で医師以外に、独立して身体の状況を判断し、全身の慢性症状を治療できるのは鍼灸マッサージ師のみである。
そして晴眼者向けの鍼灸マッサージ師の養成施設の教育期間は3年以上であるから、作本氏は医療系国家資格を持たない無資格者であると判断できる。
で、長尾クリニックで勤務していたわけだが、このカイロ店のサイトに、長尾氏が推薦する言葉を動画で寄せている。
https://www.youtube.com/watch?v=hdQdq3SVsCI
画像のテキストは動画から書き起こされたものである。
以下画像のテキスト。
長尾クリニックの長尾和宏と申します。
作本先生はウチのクリニックのリハビリのリーダーとして、5年前まで働いていただいていました。
彼は本当に勉強熱心で、研究熱心ですね!
休みの日も日曜日でも、いつも時間があったらカイロとか師匠のところに勉強に行って・・・本当に患者さん想いで勉強熱心で・・・
今もがんばってるって聞いてますけども、私もこの通りだいぶ歳いって、腰が曲がって、首が曲がってきましたんで、作本先生の治療を受けたいな!と・・・時間があったら行こうかな?と思っているところです。
長尾クリニックで「リハビリのリーダー」として働いていたそうである。
リハビリは無資格者でも行えるのか?
リハビリに関しては理学療法士や作業療法士は名称独占であり、リハビリ自体は無資格でも行える、という言説がある。
なお、理学療法士は医師や看護師と異なり、名称独占資格であるため、理学療法士でなくても理学療法を業として行える場合がある。
(業務)
第十五条 理学療法士又は作業療法士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として理学療法又は作業療法を行なうことを業とすることができる。
2 理学療法士が、病院若しくは診療所において、又は医師の具体的な指示を受けて、理学療法として行なうマツサージについては、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)第一条の規定は、適用しない。
とある。
PT,OTを含むコメディカルの法律は、保助看法の例外として、診療の補助行為の一部を業として行うことを認める規定となっている。
医師が無資格者に指示して、行わせることができる行為の範囲
このブログでは何度も言及しているが、医師が無資格者に診療の補助行為をさせたとして、保助看法違反に問われた富士見産婦人科病院事件では、医師が無資格者に行わせることができる行為の条件として
医師が無資格者を助手として使える診療の範囲は、おのずから狭く限定されざるをえず、いわば医師の手足としてその監督監視の下に、医師の目が現実に届く限度の場所で、患者に危害の及ぶことがなく、かつ、判断作用を加える余地に乏しい機械的な作業を行わせる程度にとどめられるべきものと解される。
東京高裁平成元年2月23日判決 昭和63(う)746
と判示されている。
長尾クリニックにおける、リハビリリーダーの仕事は?
長尾クリニックでは現在も診療補助スタッフを募集している。
具体的な仕事の内容は書かれていない。
また現在は理学療法士も在籍しているようである。
理学療法士がいれば、無資格者がリハビリのリーダーにはなれまい。
つまり作本氏が在籍していたとき、少なくともリーダー就任時には長尾クリニックにPTがいなかったと推測される。
「判断作用を加える余地に乏しい機械的な作業」しか行わないのであればリーダーである必要も無いと思う。看護師が判断を伴う行為をするのであれば、その看護師がリーダーであるべきだろう。
現在の作本氏の業務は医師法第17条に違反する業務である。作本氏が現在と同様の行為を長尾クリニックでしていたとなれば、長尾氏も医師法違反、保助看法違反となる。
しかし長尾クリニックで、作本氏にカイロプラクティック施術や、判断を伴う行為をさせていたと直接認められる記述が見当たらない。
なので長尾氏に関しては保助看法違反の「疑惑」を指摘する程度しかできない。
もっとも作本氏が長尾クリニックで、判断要素に乏しい機械的な作業しかしてなかった場合、医師である長尾氏が「患者さん想いで勉強熱心で」と評価したり、「先生」と呼ぶだろうか?
作本氏のカイロプラクティック業務。レントゲン撮影のポジショニングと写真の読影。医師法違反は確実である。
カイロ店のサイトによると
当院では初回の施術を行う前に、提携医療機関にてどんな症状の方でも頚椎(首の骨)のレントゲン撮影をお願いしております。
だそうである。
で、撮影に関しては以下のように説明している。
スクリーンショットのテキストより
ゆがみを見る専用のレントゲン写真になるため、「いかに真っ直ぐに撮影しているにも関わらず、首の骨がどれぐらいゆがんでいるのか?」が重要になります。
首のレントゲン写真なら何でも良いというわけではございません。
アトラス・オーソゴナルで使用するレントゲン写真は、『撮影時の患者さんの姿勢』・『レントゲンのカメラの角度』・『カメラと患者さんまでの距離』など細かく決まり事があります。
当院では、アトラス・オーソゴニスト認定の院長が撮影には必ず立ち会い、妥協することなく細かくセッティングを行なった状態で、医師に撮影していただきます。
要は作本氏が体位・姿勢などを決め(ポジショニング)、医師はボタンを押すだけ、ということである。
レントゲン撮影のためのポジショニングは人の健康に害を及ぼすおそれのある行為である。
私のフォロワーの方はご存知のように、医療系国家資格を持たない者が治療目的で行える行為は「人の健康に害を及ぼすおそれの無い行為」に限定される。*1
前述の富士見産婦人科病院事件の裁判では、行為自体ではほとんど危険性のない超音波検査も、「誤った観察や判定をする危険が常に多分に存在し、ひいては検査結果を医師の診断、治療の用に供することによって、その診断等を誤らせる危険性があるものといわざるをえない。 したがって、Aが無資格でしていた本件超音波検査は、人の健康に害を及ぼすおそれのあるものであったと認められ」るとしている。
レントゲン撮影は放射線被曝を伴うものであり、保健衛生上の危険性が有ることは疑いがない。
では撮影のためのポジショニングはどうか?
適切な診断のためには適切な画像が必要であり、適切な画像を得るためには適切な撮影が必要である。
そして撮影ごとに放射線被曝がある以上、無駄な撮影は避けるべきである。
不適切なポジショニングは無駄に撮影回数を増やしたり、適切な診断ができなくなるという点で、人の健康に害を及ぼすおそれの有る行為である。
以下のツイートは看護師による放射線照射について、放射線科医であるPKA先生に聞いたときの回答である。
@binbo_cb1300st 禁止です。ポジショニングも不可。
— PKA (@PKAnzug) 2014年11月6日
よって、医師でも診療放射線技師でもない作本氏のポジショニングは医師法17条に違反する犯罪業務である。
無資格者によるレントゲン写真の読影は医師法違反である。
カイロ店のサイトによれば
レントゲン撮影を行うことで、生まれつきの骨の奇形や加齢による変形など各々に起こっている首の変化を確認し、リスクを無くし安全で安心な施術を提供する事が出来ます。
(必要な診断は全て医師に行っていただきます。)またそのレントゲンを0.5mm・0.25度単位でカイロプラクティック的に分析する事で、正確にゆがんでいる方向と角度を導き出し、的確な施術が行え、患者さん自身も自分のゆがみを目で見て確認することができるので、「自分がどれぐらいゆがんでるのか?わかって良かった!」と喜んでいただいております。
だそうだ。
ちなみに医師、歯科医師以外によるレントゲン写真の読影は医師法、歯科医師法違反である。
国家資格である柔道整復師がレントゲン写真を撮影し、読影したのが医師法違反に問われた事件で最高裁は、撮影行為は診療放射線技師法違反(当時)であって、医師法違反ではない、と判断し、撮影行為に医師法違反を適用した控訴審の判断を誤りとしたが、
被告人(筆者注:柔道整復師)は、エックス線写真の読影により骨折の有無等疾患の状態を診断することをも業としたものであって、この行為については同法三一条一項一号の罪(筆者注:医師法17条違反の罰則)が成立するのであるから、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するということはできない。
と判示されている。
柔道整復師は骨折の応急手当を認められている国家資格であるが、それでもレントゲン写真の読影は医師法違反となるのである。ましてや医療系国家資格を持たないカイロプラクターをや。
問診や身体状態の検査も行っている。
症状、疾病の治療を目的として症状や既往歴を尋ねるのは問診であり、医行為である。
最高裁では以下のように判示している。
断食道場の入寮者に対し、いわゆる断食療法を施行するため入寮の目的、入寮当時の症状、病歴等を尋ねる行為(原判文参照)は、その者の疾病の治療、予防を目的とした診察方法の一種である問診にあたる。
で、作本氏のカイロ店のサイトには
2受付
(略)
受付で問診表(初診者申告書)をお渡し致しますので、当院自慢のキレイな待合室で記入をお願い致します。
(略)
3カウンセリングと事前説明
ご記入いただいた問診表を基に、詳しく症状やお身体の状態について、お伺いしていきます。
メンタル系疾患や婦人科疾患、お薬のことなど、お話しにくいこともあると思いますが、お身体の為ですので、詳しくお話いただけますよう、よろしくお願いします。
と症状や既往歴を聴取する旨が書かれている。
また触診して身体状態を判断する旨のことも書かれている。
以下、スクリーンショットのテキスト
当院で行なっている『アトラス・オーソゴナル』では、首の筋肉や神経を押してみての硬さや痛さのチェックと、足の長さのチェックで患者さんがどのような状態にあるか?またどれぐらいゆがんでいるのか?の評価をしていきます。
無資格者が身体状況の判断を伴う行為ができないのは前述のとおりである。
カイロプラクティック施術の危険性
カイロプラクティックによる健康被害は行政によって報告されている。
よって、カイロプラクティックは人の健康に害を及ぼすおそれのある行為である。
手技による医業類似行為の危害−整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も−(発表情報)_国民生活センター
長尾医師の言動は犯罪業務の「助長」であり、行政処分すべき。
作本氏のカイロプラクティック施術業務が犯罪業務であることは前述のとおり。
よって、彼を推薦することを公にしている長尾氏は犯罪を「幇助」しているとは言えないものの「助長」していると言える。
ちなみに医師に対する処分の理由として医師法には
第七条 医師が第四条各号のいずれかに該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 三年以内の医業の停止
三 免許の取消し
第四条 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
一 心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
三 罰金以上の刑に処せられた者
四 前号に該当する者を除くほか、医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者
とある。
医師に対する処分を決定するのが医道審議会であるが、実際は刑事処分の後追いがほとんどであり、独自に「品位を損するような行為」を判断して処分したことは無いようである。
医の倫理の基礎知識|医師のみなさまへ|医師のみなさまへ|公益社団法人日本医師会
ちなみに弁護士の場合、弁護士法56条で「弁護士及び弁護士法人は、この法律(略)又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し、所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたときは、懲戒を受ける。」とあり、日弁連が定めた弁護士職務基本規定第14条で違法行為の助長を禁止している。
医師法違反業務の助長は「医師としての品位を損するような行為」であり、本来なら行政処分すべきだと考える。
作本氏の犯罪業務を「幇助」している兵庫県芦屋市の芦屋(R)いいだ内科クリニック、飯田 哲士医師
作本氏のカイロ店の提携医療機関として、長尾クリニックとともに紹介されているのが芦屋市の芦屋(R)いいだ内科クリニック(以下、「いいだクリニック」)である。
芦屋(R)いいだ内科クリニック|阪神芦屋駅1分|内科 消化器内科 内視鏡(胃カメラ・大腸カメラ)
いいだクリニックに関しては「当院からの依頼で頚部(首)のレントゲン撮影をしていただいております。」と書いてあり、長尾クリニックには撮影をしてもらっている旨が書かれていない。
これが長尾医師を犯罪業務の「幇助」ではなく「助長」と書く理由である(反対解釈)。
もっとも飯田氏に関しては、作本氏が読影することを認識した上で撮影しているのだから共同正犯の可能性も否定できない。
私は法律の素人なので共同正犯と幇助犯の区別がわからないが、罰金刑以上に処せられれば医業停止や医師免許取り消しも有り得る訳である。
この記事を読まれた医師の先生方には、整体師やカイロプラクターなどの無資格業務に関わらないよう、お願い申し上げます。