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ロードバイクフィッティングの際の身体チェックや既往症の聞き取りは医師法に違反するか?

 県内のとある自転車屋さんでスペシャライズドのボディージオメトリーフィットを導入するという話を見かける。

https://www.specialized.com/ja/ja/body-geometry

フィットスペシャリストは広範囲に渡る18段階のプロセスを実行して、体の柔軟性や寸法を決定します。これはバイクポジションやエキップメントをあなた専用に設定するのに大変重要となります。

寸法の測定はともかく、柔軟性の測定や結果の告知は医行為の可能性が否定できない。

導入する店舗の説明では柔軟性、可動域の検査に加えて、過去の傷病歴を聞くことも書いてある。

ロードバイクに乗っている人なら身体のあちこちが痛い、ということもあるし、そういうトラブル解決に関する記事は自転車雑誌では定番である。

つまり現在の身体症状についても聞く必要があるわけで、既往症の聞き取りといい、まさに最高裁判決で示された問診の定義*1に合致してしまう。

 

で、これらの行為は医師法違反となるのか?という話である。

刑法第35条
法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

 という刑法の規定があるので法令に定められた行為か、正当な業務行為であれば違法性は阻却される可能性はある。

 

ちなみに鍼灸マッサージ師や柔道整復師などの国家資格者が問診や検査、所見告知を行うことは判例*2で認められております。

あはき柔は医業であるから診察行為は当然認められる、という考え方もできますし、医業ではないが、法律で定められた業務であるから刑法35条により違法性を阻却される、と考えることもできます。

 

逆に整体師やカイロプラクターなどの「素人」はこれらの行為を行う正当性がありません。

医業類似行為は法により禁止されており、問診や検査による所見告知は「保健衛生上害を及ぼすおそれのある行為」と判例は認めていますので。

 

と話がそれました。

 

で、制定法にはスポーツ基本法ってあるんですね。

スポーツ基本法(平成23年法律第78号)(条文):文部科学省

 

前文にスポーツの定義が書かれていますね。

スポーツは、心身の健全な発達、健康及び体力の保持増進、精神的な充足感の獲得、自律心その他の精神の涵(かん)養等のために個人又は集団で行われる運動競技その他の身体活動

 

で、スポーツ基本法における健康関連の条文を。

第二条 スポーツは、これを通じて幸福で豊かな生活を営むことが人々の権利であることに鑑み、国民が生涯にわたりあらゆる機会とあらゆる場所において、自主的かつ自律的にその適性及び健康状態に応じて行うことができるようにすることを旨として、推進されなければならない。

 

4 スポーツは、スポーツを行う者の心身の健康の保持増進及び安全の確保が図られるよう推進されなければならない。

 

5 スポーツは、障害者が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう、障害の種類及び程度に応じ必要な配慮をしつつ推進されなければならない。

 

第十四条 国及び地方公共団体は、スポーツ事故その他スポーツによって生じる外傷、障害等の防止及びこれらの軽減に資するため、指導者等の研修、スポーツ施設の整備、スポーツにおける心身の健康の保持増進及び安全の確保に関する知識(スポーツ用具の適切な使用に係る知識を含む。)の普及その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 というわけで、スポーツによる傷害防止のためなら問診や検査も問題無いように思える。

ただし、それらの権限を一般人に認めたとは明記しておらず、医療従事者によるサポートを要求しているようにも思えたりする。

 

ただ第2条において「国民が生涯にわたりあらゆる機会とあらゆる場所において、自主的かつ自律的にその適性及び健康状態に応じて行うことができるようにすること」と書いてあるので診療所や施術所以外でも問診や検査を認めているようにも思える。

 

しかし問診や検査を正当化し、施術を違法とするのはどういう線引でか、というのが不明である。

少なくとも私は問診や検査と、施術行為で違法合法が異なる判断をした判例は知りません。

「情報収集と提示」と「実際に効果をもたらすことを目的として体に触れる行為」と常識的には別けられそうですが。

 

チーム内などの特定少数でマッサージを行うなどであれば業性が否定されて違法性も否定されるが、不特定または多数に行うのであれば「業として」となる。

 

さすがに業としての施術行為まで合法であるとは思えないし、実際に無免許での施術行為で健康被害が発生している*3以上、認める理由もないだろう。

 

またスポーツ目的での施術を認めることになれば無免許業者はスポーツ目的だから合法、と主張するのは目に見えているわけでして。

散歩だってウォーキングと主張できるだろう。

 

ま、業として施術をしなければ私としては問題にする気は無い。

逆に業として施術をするような店やトレーナーが出てきたら違法性を問題にせざるを得なくなる。

そのときにフィッターやトレーナーが行う問診や検査が違法性を阻却できるかは判例上、施術行為と区別する根拠がなく、微妙なのである。

*1:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51069 断食道場の入寮者に対し、いわゆる断食療法を施行するため入寮の目的、入寮当時の症状、病歴等を尋ねる行為は、その者の疾病の治療、予防を目的とした診察方法の一種である問診にあたる。

*2:昭和12年5月5日、大審院刑事判例集16巻638頁、

東京地方裁判所判決 平成5年11月1日 平成3年(特わ)1602 出典 - D1-Law.com判例体系 判例ID 28166751

*3:手技による医業類似行為の危害−整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も−(発表情報)_国民生活センター