亀石倫子弁護士に対する懲戒請求(棄却済み)。日弁連は医師法に関する大阪弁護士会の議決と、裁判例の矛盾を整合できなかった。懲戒請求対象者の日弁連での地位の違いによる、懲戒請求審査での第三者の違法行為の認定の違い。

エックス(旧twitter)で述べていたが、私は整体師(法定の医療免許を持っていない、無免許治療業者)を紹介する投稿をTwitterで行った弁護士に対し、違法行為(医師法17条違反、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(あはき法)12条違反)の助長であるとして大阪弁護士会に対して令和3年6月に懲戒請求を行なった。

https://www.osakaben.or.jp/01-aboutus/claim/chokai/index.php

令和4年8月、大阪弁護士会は請求を棄却。

そのため私は同年10月に日弁連綱紀委員会に異議申出行う。

令和5年4月、日弁連綱紀委員会は異議申出を棄却。

同年5月、日弁連綱紀審査会に綱紀審査を申し出る。

で、9月20日に綱紀審査申し出は棄却された。

 

しかし完全な負け戦というわけでもない。

大阪弁護士会の議決内容と反する医師法違反の裁判例や学説があり、その裁判例などを証拠に反論したが、後掲するように、日弁連の綱紀委員会、綱紀審査会はその矛盾を整合する説明をしなかった。

 

対象弁護士は日弁連の刑事再審法改正実現プロジェクトチーム副座長という役職についており、懲戒処分をした場合、刑事再審法改正の実現に支障が出そうである。

日弁連は自らの重要な施策実現のためには、消費者問題視覚障害者の生活なんてどうでも良いようだ。

www.kokusen.go.jp

nichimou.org

 

binbocchama.hatenablog.com

本記事は、本件懲戒請求に対する判断とベリーベスト法律事務所に対する懲戒処分(業務停止)を比較し、日弁連の判断のダブスタぶりを指摘するのが目的である。

本件懲戒請求では人の健康に害を及ぼす恐れが証明されていない治療行為の前提としての診察(病名診断ではない。)を医師法違反と判断した裁判例を提示できなかったため、整体師の違法性が認定されなかったと思われる。

後述するように無害な治療を前提とした病名診断は医師法違反で有罪になっている。

 

一方、ベリーベストの懲戒処分では前例のないケースで、裁判例も無いにも関わらず、東京弁護士会及び日弁連はベリーベストから業務委託を受け、その料金を受け取っていた司法書士法人新宿事務所を弁護士法違反と判断した。

新宿事務所はこの件で刑事処分は受けておらず、司法書士会に対する懲戒請求はあったが、棄却されている。

www.gyotei6m.com

 

懲戒請求対象とした弁護士と投稿

大阪弁護士会所属 亀石倫子弁護士

懲戒請求の対象とした弁護士は大阪弁護士会所属の亀石倫子弁護士である。

医師法に関して言えばタトゥーは治療などの医療関連性が無いから医行為では無い旨主張し、無罪判決を勝ち取った経験を有している。

www.call4.jp

なので無免許医業に関する知見は普通の弁護士よりも有るわけである。

現在は日弁連の刑事再審法改正実現プロジェクトチーム副座長という役職についている。

現在の日弁連会長は再審法改正を公約として当選したらしく、亀石弁護士は日弁連の重要施策を担う要職にあるわけである。

youtu.be

懲戒請求対象とした投稿

懲戒請求対象としたのは以下の投稿である。

議決書では下記投稿は投稿2、引用している本人の投稿は投稿1となっている。

またスレッドとして(投稿3)

この「マッサージ」がちゃんとあん摩マッサージ指圧師免許を持った者によるマッサージなのか、無免許マッサージなのかは不明である。

で、(投稿4)

と、「首や肩の凝り、腰痛に悩んでいる方」に紹介した姿勢矯正を勧めているわけである。投稿1で「猫背&ストレートネッ クが治って体の不調もなくなり本当によい」と投稿していることも併せれば、首や肩の凝り、腰痛の治療を目的にしている役務として姿勢矯正の整体院を勧めていることは明らかである。言い換えれば当該整体院の業務を「医療及び保健指導に属する行為」と亀石弁護士は認識していたわけである。

亀石弁護士が紹介した整体院

亀石弁護士は投稿で、当該整体師のTwitterアカウントへのリンクを貼ったが、当該整体師のアカウントのプロフィールには下記整体院のウェブサイトへリンクが貼られている。

shisei-mint.com

議決書では整体師はA、整体院は「A整体院」と記されている。なので以下、同様に記述する。

投稿2へのレスではAのウェブサイトを読んだと思われる投稿がある。

広告効果は抜群だ。

Aは法定の医療免許を有していない。

Aのプロフィールは下記ページの通りだが、医師免許やあん摩マッサージ指圧師免許、柔道整復師免許といった、独立判断で治療できる、法定の医療免許は保有していない。

後述の理由で、日本では誰でも整体師やカイロプラクターと名乗ることができ、整体師やカイロプラクターになれるとする(民間)資格商法業者も多数存在する。

院長東岡誠はこんな人|姿勢矯正専門整体院mint(大阪市北区南森町)

上記ページのプロフィールに書いてある日本カイロプラクティックドクター専門学院もそんな資格商法業者であって、厚生労働大臣や知事に認可された学校では無い。

 

binbocchama.hatenablog.com

 

binbocchama.hatenablog.com

 

A整体院の役務は医療関連性がある

懲戒請求時には下記画像のように「慢性症状専門整体院です。」と紹介していたが、現在はそのような表示はしていないようだ。

https://shisei-mint.com/index.html 2021/05/31時点

今でも下のようなメニュー表示をしているのだから、この整体院の役務が「医療及び保健指導に属する行為」であることは疑いあるまい。

https://shisei-mint.com/index.html より

 

A整体院は整骨院と比較し、「十分な問診」を行う旨を表示している。

A整体院は「もみほぐし店」と柔道整復師が施術する「整骨院」と比較した上で、「十分な問診」を行う旨、表示している。

https://shisei-mint.com/fee.html

整体の料金を知りたい方へ|姿勢矯正専門整体院mint(大阪市北区南森町)

法律で定められた医療免許である柔道整復師が運営する整骨院接骨院)と比較している時点で、自らの業務が医療及び保健指導に属することを自白しているようなものである。

 

また施術のが流れのページで、以下のように説明している。強調は筆者による。

当日は、受付後に問診票をご記入いただきますので、予約時間の5分程前にお越しくださいますようお願いいたします。

(略)

最適な施術のため、じっくりカウンセリングと検査を行います。
症状の原因と思われる姿勢や事柄、仕事中の姿勢、ケガの経験、現在治療中の病気からスポーツ歴まで、症状と照らし合わせて原因を調べます。痛みや不調には必ず原因があるので、原因を見極めることから当院の施術は始まります。

(略)

姿勢のゆがみを調べます。患部だけでなく、全身の姿勢をチェックすることで、原因を特定していきます。

(略)

カウンセリングやチェックを踏まえ、「姿勢のゆがみ」、「痛み」の原因をご説明させていただきます
そして、患者様に一番適した施術方法をご提案させていただきます。

ボキボキしない安心の整体|姿勢矯正専門整体院mint(大阪市北区南森町)

問診が医行為であるとした最高裁判例はある。

被告人が断食道場の入寮者に対し、いわゆる断食療法を施行するため入寮の目的、入寮当時の症状、病歴等を尋ねた行為は、それらの者の疾病の治療、予防を目的としてした診察方法の一種である問診にあたる。

裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

A整体院で既往歴を聴取していることは前掲のページの記述を見れば明らかだろう。

よって、A整体院の業務は医行為であり、医行為を業として行なっているのだから医師法17条に違反する違法な業務である。

問診に関する亀石弁護士の認識

亀石弁護士は以前、下記の投稿(議決書では投稿5)をしている。

引用しているニュース(甲12)は、草津温泉での時間湯で、医療免許を持たない湯長が、湯治客に病歴などを聴取する行為が問診であり、医師法に違反するので、草津町は湯長制度を廃止する方針だと伝えるものである。

www.asahi.com

違法状態を是正しようとした草津町長は、湯長制度維持派から濡れ衣を着せられた。

草津町を「セカンドレイプの町」と呼んだフェミニストらの横暴を許すな 黒岩信忠(群馬県草津町長) - 月刊正論オンライン

 

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医療及び保健指導に属する行為のうち、判断作用を伴う行為は医行為である。

昭和35年最高裁判決により、無免許治療が放任される

整体などの無免許治療は本来、あはき法12条で医業類似行為として禁止されている。

しかし昭和35年最高裁大法廷は医業類似行為の禁止処罰対象を「人の健康に害を及ぼす恐れのある行為」に限定する判決を出す。

以後、整体などの無免許治療は「人の健康に害を及ぼすおそれが無い」という建前で放任される。

しかし実際には健康被害が発生し、国民生活センター消費者庁が無免許手技療法による健康被害を報告するまでになっている。

大阪ではずんずん運動という無免許療法で乳児が死亡する事件も起きている。

www.sankei.com

「人の健康に害を及ぼすおそれ」の基準を示した富士見産婦人科病院事件控訴審判決

富士見産婦人科病院事件保健師助産師看護師法違反事件は、医師である被告人が無資格者に超音波検査、心電図検査、筋膜の縫合糸の結紮をさせたとして、保助看法違反に問われた事件である。控訴審*1で被告人は

(一)保健婦助産婦看護婦法(以下「保助看法」という。)四三条一項一号による処罰の対象は、人の健康に害を及ぼすおそれのある診療補助業務に限られるべきであるところあん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法所定の無資格者による医業類似行為の禁止に関する最高裁判所昭和三五年一月二七日大法廷判決・刑集一四巻一号三三頁参照)、本件各診療補助行為はいずれも患者に全く危害を与えるおそれのないものであり、
(二)医師は、その指揮監督の下に、患者に対し危険を生ずるおそれのない事項について、無資格者を使って診療の補助をさせることが許されているところ(大審院大正二年一二月一八日第二刑事部判決・刑録一九輯一四五七頁、大審院昭和一一年一一月六日第四刑事部判決・刑集一五巻一三七八頁参照)、本件各診療補助行為はこれに当たるから、いずれにしても、被告人を有罪とする原判決には法令の解釈適用を誤った違法がある

と主張した。

東京高裁は

 二 医師は、診療を行うに当たり、常に看護婦、准看護婦、看護士、准看護士、その他の法定の診療補助者しか使えないものと断ずることはできず、各種の医療用機器を使用できるのと同様、人を、その資格の有無にかかわらず、自己の助手として適法に使うことができる場合のあることは否定し難い。しかし、法が一定の有資格者に限って診療の補助を業とすることを許していることからすると(保助看法五条、六条、三一条、三二条、六〇条、臨床検査技師衛生検査技師等に関する法律二〇条の二、理学療法士及び作業療法士法一五条、視能訓練士法一七条等)、
医師が無資格者を助手として使える診療の範囲は、おのずから狭く限定されざるをえず、いわば医師の手足としてその監督監視の下に、医師の目が現実に届く限度の場所で、患者に危害の及ぶことがなく、かつ、判断作用を加える余地に乏しい機械的な作業を行わせる程度にとどめられるべきものと解される。

と判示した。

この事件は保助看法、つまり「診療の補助」についての判断である。

なのでこの裁判例からは、判断作用を伴う作業は診療の補助に該当する、と言える。

医療及び保健指導に属する行為のうち、判断作用を伴う行為は医行為である。

厚労省の資料によれば「診療の補助」は「医行為」に包含される。

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000564159.pdf 第2回 医師の働き方改革を進めるための タスク・シフト/シェアの推進に関する検討会 参考資料2より

なので医療及び保健指導に属する行為のうち「判断作用を伴う行為」は医行為である。

Aの整体施術業務は医師法17条に違反する違法業務である。

A整体院の施術は「痛みや不調には必ず原因があるので、原因を見極めることから当院の施術は始まります。」「原因を特定していきます。」と、症状の原因の判断を伴う治療行為である。そしてAは法定の医療免許を有していないのだからその施術業務は医師法17条に違反する違法な業務である。

懲戒請求前の、亀石弁護士に対する注意喚起ツイート

私だっていきなり懲戒請求をしたわけでは無い。

ただし、投稿の削除や、違法業者を紹介したことを告知しなければ懲戒請求する、と言うのは強要や脅迫になる可能性があるので、亀石弁護士が疑問に思ってこちらに問い合わせてくるのを期待することしかできなかった。

乙3(引用RT)

乙4(リプ)

応答が無かったのでやむを得ず、大阪弁護士会に対して懲戒請求を行なった。

大阪弁護士会綱紀委員会の議決内容

争点としては

  • A整体院を宣伝する意図が有ったのか(宣伝意図)
  • A整体院の施術が違法であることを認識できたか(認識)
  • A整体院の施術は医師法やあはき法に違反するか(違法性)

といったところである。

宣伝意図に関しては日常の雑談として投稿したから宣伝意図は無し。

施術そのものに関しては人の健康に害を及ぼすおそれや保健衛生上の危険性があることは認識できなかった、としている。

で、大阪弁護士会は違法性に関しては

(5) 懲戒請求者は、A整体院のホームページ(甲4から甲9、甲14、甲20、甲24)上の記述を根拠として、 Aが「医療行為である問診を行っている」、「症状の原因を判断することを業として行っており、これは人の健康に害を及ぼすおそれの有る行為である」と主張する。


 懲戒請求者が引用する最決昭和48年9月27日刑集27巻8号1403頁が「被告人が断食道場の入寮者に対し、いわゆる断食療法を施行するため入寮の目的、入寮当時の症状、病歴等を尋ねた行為は、それらの者の疾病の治療、予防を目的としてした診察方法の一種である問診にあたる。」と判示したのは、断食療法が「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある」医行為であることから、断食療法を行う目的をもって行われた対象者への質問を診察方法の一種である問診に当たる医行為といえるからである。


 しかし、本件でA整体院が「姿勢矯正」のための整体を行う際に利用者に対してカウンセリングや検査を行ったとしても、前述のとおり、A整体院の「姿勢橋正」が医行為と判断できない以上、そのためのカウンセリングや検査を医行為と判断することはできない。

 したがって、A整体院において「姿勢矯正」のための整体を行う際に利用者に対してカウンセリングや検査を行っていることを対象会員が認識していたとしても、A整体院での施術が違法であると認識していたとも違法であると認識し得たとも判断することはできない。

 

(6) 懲戒請求者は、対象会員が2019年5月31日の朝日新聞デジタルの報道 (甲12)に対し、「断食道場に入寮する際に症状など尋ねる行為は 『問診』にあたるとする最高裁判例からすれば湯治客に入浴法を指導するため健康状態を尋ねる行為も 『医行為』となりうる。」との投稿5をしていること(甲13)を根拠に、対象会員はA整体院で行われている利用者のカウンセリングや検査が医行為であることを認識していた又は認識できたと主張する。

 しかし、対象会員がツイッター上で投稿5をした草津温泉の 「湯長」は、甲12によれば、「高温で強酸性の泉質を利用してリハビリや体質改善に湯もみ、かけ湯、一斉入湯を指導する」もので、湯長は「湯治客の健康状態などを把握するために行う」ものとされており、疾病の治療や予防を目的としており、湯治客の健康状態の判断を誤った場合、湯治客に誤った入浴法を指導し、湯治客の健康に害を及ぼすおそれがある事案であり、医師法第1 7条の診察方法の一種である問診に当たる可能性があるといえる。

 これに対して、前述したとおり、A整体院のホームページに記載された内容や対象会員がツイッターに投稿したA整体院で受けた施術内容からは、A整体院での施術は姿勢を正するというもので、「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれを生じさせる行為」 とは認識できない。したがって、対象会員がA整体院において利用者のカウンセリングや検査が行われていることを認識していたとしても、そのことから、対象会員がA整体院において医師法第17条の医行為である診察・問診が行われていたと認識していた又は認識し得たと判断することはできない

と判断した。

なお、大阪弁護士会への懲戒請求の場合、第二東京弁護士会などとは異なり、対象弁護士による答弁書懲戒請求者に対して公開されない。

http://blog.livedoor.jp/plltakano/%E4%BA%8C%E5%BC%81%E6%B1%BA%E5%AE%9A20210614.pdf#page=12

そのことを知らなかったため、亀石弁護士からの反論があった時に再反論すれば良いと考えて、懲戒請求書は簡素なものだった。

なお、亀石弁護士の代理人GPS弁護団の3人だった。

大阪弁護士会医師法の解釈と、裁判例や学説との矛盾

さて、上述の通り、大阪弁護士会は医行為、つまり保健衛生上の危険性のある行為の前提としての問診(カウンセリング)や検査のみを医行為と判断した。

しかしニセ医学・疑似科学を批判する人たちには「無害」な療法としてお馴染みのホメオパシー療法を行うための診断を医行為と判断し、医師法違反で有罪にした判決がある。

www.gohongi-clinic.com

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虹彩診断事件

医師法違反,詐欺被告事件 札幌地裁 平成15(わ)52 平成16年10月29日

第3 被告人の行為が医行為にあたるか。
 1 弁護人は,被告人が眼球虹彩診断に用いた機器は,細隙機能(光源を狭く細くする機能)を有しないものであり,医療機器である細隙灯顕微鏡(スリットランプ)ではないし,被診断者の疾患についての最終判断はアメリカで下しているから,被告人の行為は医行為にあたらないと主張する。

 そこで検討するに,被診断者らの証言など関係証拠によれば,被告人は,平成12
年1月27日ころから同月31日ころにかけて,前記B1ホテル1140号室において,スリットランプ様機器(以下「本件機器」という。)を用いて,被診断者の目に至近距離から光を当てて虹彩の拡大写真を撮影し,その写真を同機器に接続されたテレビ画面に映し出したり,ビデオコピー機でプリントアウトしたりした上,虹彩の写真を指し示しながら,合計18名の被診断者に対し,現在妊娠しているなどとその身体症状を告知したり,子宮がんなど具体的な疾患に現在罹患している,あるいは将来罹患する可能性があるなどと告知し,うち16名に対しては,自己が処方する薬(筆者注:ホメオパシー薬)を服用するよう勧めたことが認められる。

 

 2 以上認定したとおり,被告人は,日本国内において,虹彩等の拡大写真を撮影する機能を有する本件機器を用いて被診断者の目を至近距離から撮影し,虹彩の拡
大写真を指し示しながら,被診断者に対し,その身体症状や,現在罹患しているか
将来罹患するおそれのある疾患について具体的な病名を告知しているのであって,被告人の上記行為は,医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為であるといえ,医師法17条にいう医業の内容となる医行為にあたると認められる。本件機器が細隙灯顕微鏡(スリットランプ)であるか否かによって,上記結論が左右されるものではない。

ホメオパシーが「無害」なことは日本学術会議のお墨付きである。

こんな極端な希釈を行えば、水の中に元の物質が含まれないことは誰もが理解できることです。「ただの水」ですから「副作用がない」ことはもちろんですが、治療効果
もあるはずがありません。

「ホメオパシー」についての会長談話

ホメオパシー薬(レメディ)の希釈が不十分などの理由で、保健衛生上の危険性が生じる可能性は否定できないが、虹彩診断事件ではホメオパシー薬投与自体の、保健衛生上の危険性は認定されていないのである。

 

ホメオパシー療法が無害だといっても診断と診察は違うのでは?という疑問はわかる。

しかし診察があっての診断であるし(診察無しで診断されて信じますか?)、診察をして治療方針を決めるということはその間に症状の原因を判断する、つまり診断行為があるわけである。

判例のみならず、学説でも

「危害を及ほすおそれのある行為」には、前述の問診ないし診断のような、それ自体、身体に対する侵襲を伴わないが、後にそれが危害を及ぼす侵襲行為につながる行為をも含むと解すべきことも予定されていると思われる。この例では、逆に、問診によって治療の必要がないと判断された場合のように、適切な治療を受ける機会が奪われる可能性もある。したがって、ここでいう「危害を及ぼす行為」は、その行為自体が直接に人体に危険を及ぼ す行為(直接的危険行為)を指し、「危害を及ぼすおそれのある行為」は、その行為が前提とな って、次の人体に通常直接的に危険な行為をもたらす行為 (間接的危険行為) およびその行為によって適切な治療を受ける機会が奪われ、存在する危険を防止することができず、あるいは後に人体に危害を及ぼす行為を必然的に誘発せざるをえなくなる行為 (消極的危険誘発行為)をいう。

医事刑法概論1(序論 • 医療過誤) 山中 敬一 株式会社成文堂 2014年8月1日 87頁

 

 

と言われている。

現役の医事法学者だって、消極的危険を医行為から排除する学説は無いはずだという。

整体師(無免許)が診察して、症状の原因を説明し(診断)、自分の施術で治療できると患者に説明した場合、患者はその整体師の治療を受けようと思うだろう。

その診察、診断が誤っており、本来は医師による診療が必要だった場合、適切な治療機会を逸失し、場合によっては症状が悪化し、後遺症を残したりする危険性がある。

なので診察行為(を伴う治療行為)は前述した消極的な危険があり、「医師が行うのでなければ保険衛生上危険を及ぼす恐れのある行為」なのである。診察・診断後に行う治療方法の危険性は関係無い。

患者が「施術者が症状の原因を判断して治療するので、医師の診療を受けなくても、この施術者による治療で治る見込みがある」と思っていると施術者が認識していれば医師法違反の故意として十分であろう。

他にも裁判例では

 3 次に、問診、触診、これらによる診断について検討するに、問診、触診も一定の知識、経験を有する者が行わなければ、効果的な問診、触診を行うことができず、その結果適切な治療がなされないことになるという意味で生理上の危険を伴うものといえる。ただ、あん摩師等が治療行為を行うにも問診、触診は不可欠なもので、あん摩師等の正当な治療行為のため問診、触診を行うことは許容されているものと解される。

東京地裁平成5年11月1日判決 平成3(特わ)1602
出典:D1-Law.com判例体系 28166751

と判示されている。もっともこの事件はレントゲン写真の撮影指示や血液検査などのための問診等なので、保険衛生上の危険性の無い治療行為を前提とした問診に関する判断ではない。

私のようなあん摩マッサージ指圧師は、その免許業務範囲内の治療行為のための診察は法的に可能である。*2

医師法違反の判例における診察の評価

被告人の行為は、前示主張のような程度に止まらず、聴診、触診、指圧等の方法によるもので、医学上の知識と技能を有しない者がみだりにこれを行うときは生理上危険がある程度に達していることがうかがわれ、このような場合にはこれを医行為と認めるのを相当としなければならない。

裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

この判決時、指圧はあはき法の免許業務ではなく、医業類似行為という扱いだった。

で、原審によれば指圧自体は苦痛を伴うものだったようで、それ自体、保健衛生上の危険性のある行為だっと言える。

しかしそれならわざわざ「聴診、触診」なんて判決文に書かなくても良いはずである。

この判決の最高裁調査官解説では

一般に医行為とは判例もいうように、主観的には人の疾病治療を目的にすること、客観的には医学の専門知識を基礎とする経験と技能を用いて診断、処方、投薬、外科的手術等の治療行為の一つもしくはそれ以上を行うことをいうであろう。

と診察ではなく、診断を医行為と定義づけてはいるが。

なお、この調査官解説はタトゥー事件の裁判でも議論されている(季刊刑事弁護107号55頁)。

 

 

日弁連綱紀委員会への異議申出と棄却議決

そんなわけで虹彩診断事件の判決文、山中氏の著書、前掲の最高裁調査官解説、小谷昌子神奈川大学准教授のツイートも証拠として、大阪弁護士会医師法の解釈は虹彩診断事件や学説に反するとし、その他いろいろな理由をつけて、日弁連綱紀委員会へ異議申出を行った。

www.nichibenren.or.jp

で、また棄却されたが、議決内容は下記のとおり。

 異議申出人の対象弁護士に対する本件懲戒請求の理由及び対象弁護士の答弁の要旨 は、いずれも大阪弁護士会綱紀委員会第1部会の議決書(以下「原議決書」という。) に記載のとおりであり、同弁護士会は原議決書記載の認定と判断に基づき、対象弁護士を懲戒しないこととした。

 本件異議の申出の理由は、要するに、前記認定と判断は誤りであり、同弁護士会の 決定には不服であるというにある。

 当部会が、異議申出人から新たに提出された資料も含め審査した結果、原議決書1 0ペ ージ上から1行目の「に過ぎず、」の後に「対象会員が受けた施術が「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある」施術や「医学的観点から人体
に危害を及ぼすおそれのある」施術であったことを認める証拠はないし、」を加えることを相当と認めるが、その余の原議決書の認定と判断に誤りはなく、結論において 同弁護士会の決定は相当である。


 ただし、原議決書に別紙記載の誤記を認める。 なお、異議申出書において、懲戒請求理由と事実関係を異にする新たな主張が追加されているが、弁護士法第64条第1項に規定する異議の申出は、原弁護士会における懲戒事由について対象弁護士を懲戒しない旨の決定に対する不服申立の制度であるから、上記主張については当部会としては審査の対象とすることができない。

 よって、本件異議の申出は理由がないので棄却することを相当とし、主文のとおり 談決する。

というわけで、大阪弁護士会医師法の解釈と、裁判例や学説との矛盾を整合させる説明はされていない

新たな主張というのは、整体師を紹介する投稿後、懲戒請求でA整体院の施術が違法であることを指摘されているにも関わらず、そのまま放置することによって、投稿を読んだ者が違法な施術を受ける可能性を放置していることが違法行為の助長にあたる、という主張である。

大阪弁護士会に対する懲戒請求を行なった時は投稿から時間が経っていなかったためそのような主張ができなかった。

今思えば注意喚起ツイートから2週間ぐらいは待つべきだったのかもしれない。

なお、日弁連綱紀の議決書には代理人の記載は無かった。

亀石弁護士本人だけで対応したのか、代理人がついていたのかは不明である。

亀石弁護士の反応。本件懲戒請求を損害賠償請求すべき不当な懲戒請求呼ばわり。

で、日弁連綱紀委員会による棄却決定が出た時に、亀石弁護士は本件懲戒請求を「不当な懲戒請求」とし、「損害賠償請求することも考えた」と投稿したのである。

紹介した整体師が自ら「慢性症状専門整体院」(医療関連性の肯定)「十分な問診」とウェブサイトで宣伝してるのにですか。

亀石弁護士は整体院のWebサイトは見たことがないと主張していた旨、大阪弁護士会の議決書には書かれていた(後掲)。しかし議決書には、亀石弁護士が、Aから問診や検査、症状の原因の説明を受けてないことを主張した旨の記述は無い

事業者が利用客に行うと書いてある行為は、利用客側が否定しない限り、受けたと考えるのが通常であろう。ましてやA整体院のように1対1での業務である。

 

なお懲戒請求不法行為と認定した判例では

同項に基づく懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において,請求者が,そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに,あえて懲戒を請求するなど,懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには,違法な懲戒請求として不法行為を構成すると解するのが相当である。

裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

と判示している。

タトゥー事件や虹彩診断事件の判決、前述の学説などを読んだ後でも、慢性症状専門としているA整体院の問診や検査を医行為でないと、通常人が思えますか?

亀石弁護士は本気で損害賠償請求が認容されると考えていたのだろうか?

提訴する気がない提訴の予告は脅迫になることもあるらしい。

しかし、真実の追究が目的ではなく、実際に権利を行使するつもりもないのに、相手を怖がらせる目的で「法的手段をとる」といった発言をした場合には、脅迫罪が成立する可能性があるのです。

法的手段をとる、という言葉は脅迫罪になる? 成立要件を詳しく解説

この投稿であれば提訴する気のない提訴の「予告」にはならず、脅迫にはなりませんね。

綱紀審査申出を阻止するための牽制だったと考えるのは被害妄想が過ぎるでしょうか?

当時はブロックされていても、ログアウトすればTwitterの発言は読めましたし、私の発言を読んだ反応もありましたから。

 

不当な懲戒請求虚偽告訴罪にもなりかねないわけで、私に言わせれば「冤罪」ですわ。

 もっとも、だからと言って、事実無根のことで懲戒請求をすることは許されず、それは場合によっては、虚偽告訴罪(刑法172条)として、刑事事件にもなります。

不当懲戒請求者に対する訴訟の東京高裁判決について(佐々木亮) - エキスパート - Yahoo!ニュース

冤罪を晴らすための再審法改正を勧める弁護士が、本件懲戒請求を損害賠償が認められるような「不当な懲戒請求」呼ばわりって、何のジョークですか。

 

まあ、不当な懲戒請求に対する損害賠償請求裁判では1,000万円以上のカンパを集めたケースもあります。

futo-choukai-seikyu.net

亀石弁護士の知名度なら、不当懲戒請求に対する損害賠償請求のための弁護士費用等を賄えるだけのカンパを集めることは容易いでしょう。

本件懲戒請求が損害賠償が認容されるだけの、「不当な懲戒請求」だと本気で思っているなら私を訴えればよいんです。

懲戒請求書に私の真名と住所は書かれているわけですから。

 

綱紀審査申出

亀石弁護士が誤って違法な整体院を紹介してしまったと、消費者保護のために告知するのであれば私はそれで終わらすつもりだった。

しかし反省して告知するどころか、損害賠償も可能な、不当な懲戒請求呼ばわりである。

ジャーナリストの江川紹子氏も損害賠償請求をすべきだとリプしてるほどである。

 

日弁連綱紀への異議申出では色々書きすぎた。

なので綱紀審査申出では

  • 亀石弁護士が事業者のウェブサイトへのアクセスの価値を知っていること(自分の事務所に関し、広告料を支払って検索連動型広告に出稿していること。)

    Googleにおけるエクラうめだ(亀石弁護士の法律事務所)の検索連動型広告


  • 複雑な手段で整体師を紹介する投稿をしていること(iOSTwitterアプリで、AのアカウントのURLをコピーし、自らの投稿を引用RTして文章を書き、AのアカウントのURLを貼り付けて投稿したこと。「 Twitter for iPhone」と当時は投稿に表示されていた。)

    投稿2における「Twitter for iPhone」の表示

    AのアカウントURLの末尾、s=21はiOSアプリによるコピーらしい。


     

  • 大阪弁護士会医師法の解釈と裁判例や学説との矛盾

に絞って主張した。

綱紀審査会の議決

 懲戒の請求の理由及び対象弁護士の陳述等の要旨は、いずれも大阪弁護士会綱紀委員会第1部会の議決書に記載されているとおりである。
 大阪弁護士会綱紀委員会第1部会は、同部会の議決書に記載されているとおり、対象弁護士につき懲戒の事由がないと認め、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする議決をした。同弁護士会は、当該議決に基づき、対象弁護士を懲戒しない旨の決定をした。
 そして、日本弁護士連合会綱紀委員会第2部会は、大阪弁護士会網紀委員会第1 部会の議決書の認定と判断に結論において誤りはなく、異議の申出を理由がないとして棄却することを相当と認める旨の議決をした。同連合会は、当該議決に基づき、異議の申出を棄却する決定をした。
 ところで、本件綱紀審査の申出の理由は 、要するに、前記の認定及び判断は誤りであり、大阪弁護士会及び日本弁護士連合会の決定に不服があるということである。

 綱紀審査の結果、日本弁護士連合会網紀委員会第2部会の認定及び判断に誤りはなく、同弁護士会及び同連合会の決定は相当である。本件綱紀審査の申出は、理由がない。
 よって、弁護士法第64条の4第5項及び網紀審査会及び網紀審査手続に関する規程第28条第1項の規定により、主文のとおり議決する。

とまたもや大阪弁護士会医師法の解釈と、裁判例や学説との矛盾を整合させる説明は無かった。

逆に整体師などの無免許業者による問診・検査・症状の原因の告知が合法であると日弁連は理屈で説明できなかった、と喜ぶべきじゃないかと思ったり。

 

保険衛生上の危険性が証明されていない、または無害な治療を前提とした診察(病名診断では無い)を医師法違反と判断した裁判例が無いのも原因かと思ったりした。

人の健康に害を及ぼすおそれがあると証明されていない治療を前提とした診察行為が医行為であることは既存の裁判例から理屈として導き出される。

しかし法解釈に関して裁判所ほどの権限が無い弁護士会が、第三者の違法性の認定に関して裁判所よりも踏み込んでやってはいけない、というのは一つの考えだろう。

それなら後述するベリーベストらに対する懲戒処分は違法である。

なので日弁連綱紀委員会および綱紀審査会は虹彩診断事件に言及せずに、棄却したと考えるのは陰謀論にはまってしまった考えだろうか?

東京弁護士会による、弁護士法人ベリーベスト法律事務所に対する業務停止処分

弁護士法人ベリーベスト法律事務所および代表弁護士らは、司法書士法人新宿事務所から、過払金の請求金額が140万円以上の事件を引き継ぐ際、計算や書類作成の業務委託料として1件につき約20万円を支払ったことが事件の紹介料の支払いと認定され、東京弁護士会から業務停止6ヶ月の懲戒処分を受けた。

 

ベリーベストらは日弁連に異議申し立てを行い、業務停止期間は3ヶ月に短縮されたものの、事件の紹介料という認定は覆らなかった。

そのためベリーベストらは日弁連を相手取り、処分取り消しを求めて東京高裁に提訴し、現在審理中である。

www.moneypost.jp

東京弁護士会および日弁連は新宿事務所の業務を違法と認定した。

東京弁護士会懲戒委員会は新宿事務所の業務は弁護士法72条に違反すると判断した。

https://www.gyotei6m.com/common/pdf/vote_20200520.pdf#page=46

日弁連懲戒委員会もこの判断を踏襲している。

3 法27条違反の点について
 法27条及び法30条の21は、弁護士及び弁護士法人が法72条から74条までの規定に違反する者から事件の周旋を受けることを禁じている。法72条後段は,弁護士又は弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、業として、法律事件に関する法律事務の取扱いを周旋することを禁じている。

 原議決書が指摘するように、新宿事務所は、認定司法書士であっても, 140万円を超える法律事務の取扱い及び法律事件の周旋 (周旋については金額の多寡を問わない。)については、法72条後段の適用上、弁護士又は弁護士法人でない者に当たり、自らが取り扱うことのできない弁護士業務となる事件を審査請求法人に紹介することにより,多額の紹介料を得てきたものである。したがって、 原議決書51頁の「審査法人が 、新宿事務所に対して1件につき19万8000円の対価を支払って,同事務所から140万円超過払事件の周旋を受けたことは、法第27条に違反する行為である」との認定と判断に誤りはない。

https://www.gyotei6m.com/common/pdf/press_20211029_01.pdf#page=7

この事案に関し、新宿事務所は弁護士法違反で刑事処分を受けたということも無いようだし、司法書士会に懲戒請求はされたものの、棄却されているようだ。

なので東京弁護士会及び日弁連は、刑事処分や裁判を経ていない新宿事務所の業務行為を犯罪と判断しているのである

しかもこのような事案(認定司法書士が調べた結果、請求対象金額が140万円を超える場合に弁護士へ作成書類などを引き渡すときに、書類作成代金等を受け取ること)を弁護士法違反かどうかを判断した裁判例なんて無いのである。

そんな裁判例があったら、ベリーベストと新宿事務所もその裁判例に従った契約をするだろう。

三者の違法性認定の基準が本件懲戒請求とベリーベストの件では異なる。

亀石弁護士への懲戒請求におけるAの診察行為の違法性の判断と、ベリーベストらの懲戒処分における新宿事務所の違法性の認定は異なる基準でされたものと言わざるを得ない。

懲戒請求において、裁判例よりも広く違法性を認定すべきでは無い、というのであればベリーベストらに対する懲戒処分は違法であると言わざるを得ない。

 

懲戒請求対象者の、日弁連執行部にとっての重要性によって第三者の違法性の判断基準を変えるとあったら法の下の平等とか適正手続規定に違反するのではないか。

 

なお、ベリーベスト法律事務所ではあん摩マッサージ指圧師が常駐して、社員のマッサージをしてるそうです。

日弁連が恣意的に懲戒処分の適否を判断するなら裁判所に懲戒権を与えた方がマシ。

弁護士アカウントが懲戒請求に手数料を取れ、とかよく発言してたりするが、懲戒請求を裁判所の管轄にしてしまえば印紙代と郵券代で2万円弱ほどかかる。

懲戒請求する側だって、身内の庇いあいよりは信用できるし、書面や証拠の印刷も3部で済む。

弁護士側も不当な懲戒請求だと判断したなら損害賠償請求の反訴をできるわけで。

弁護士会懲戒請求にかかる費用を自ら出さなくても済むわけで、弁護士会費の値下げにもつながるいい案だと思いませんか?

しかも弁論主義になってしまうから、弁護士側にとっても有利になってしまうという。

大阪弁護士会議決書に記載された亀石弁護士の主張

大阪弁護士会綱紀委員会の議決書に記載された、本件懲戒請求に対する亀石弁護士の弁明は以下の通りであり、A整体院で行うと書かれている問診や検査、症状の原因の説明を受けなかった、という主張はされていない。

第3 対象会員の弁明

1 本件懲戒請求は、懲戒請求権の濫用である

(1) 懲戒請求は、あくまでも、 弁護士の職務執行の誠実性(弁護士法第1条第 2 項)と品位の保持(同法第2条)の制度的保障として設けられたものであって、請求者の個人的な利益や満足のためになされた懲戒請求は認められるべきではない。

 

(2) この点で、懲戒請求者は、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師の国家資格を有する鍼灸マッサ ージ師であり、かねてから整体師やカイロプラクター、リラクゼーションセラピスト等が行う施術を「違法」「犯罪業務」「犯罪行為」等と糾弾する活動をしている (乙1、乙2)。

 

(3) 懲戒請求者は、対象会員に対し、本件投稿で違法な施術を行う店を紹介したことを告知するツイートをすること、そのツイートを一定期間、プロフィールに固定すること、そのツイート内またはスレッドとして、違法な施術契約は無効であり、免許制度を知らずに施術を受けた (善意)人には施術料金の返還を求める権利があることを示すことを求め、それらを対象会員が行った場合には、本件懲戒請求を取り下げる旨通知した(乙5 )。

 

(4) したがって、懲戒請求者が本件懲戒請求を行った主たる目的は、弁護士の職務執行の誠実性と品位の保持という公益的見地からのものではなく、単に、対象会員への懲戒請求を通じて、対象会員をして自らの信条に基づく活動に従わせ 、自らの主張を喧伝することにあり、 このような懲戒請求は弁護士法が予定するものではなく、制度の濫用である。

 

2 対象会員の投稿1から4は違法な行為を助長するものではなく、品位を失うべき非行は存在しない

 

(1) 弁護士職務基本規程第14条の「違法若しくは不正の行為」とは、「詐欺的取引、暴力」が例示されていることから、詐欺的取引に匹敵する欺瞞行為ならびに暴力に匹敵する威嚇力や強制力を伴う脅迫行為あるいは威力誇示行為等を含むと解される ので、Aが姿勢矯正専門整体院で行っていた施術がなんらかの客観的法規範に違反していると仮定しても、欺瞞行為や脅迫行為、威力誇示行為等には該当せず、本条にいう「違法若しくは不正な行為 」にあたらない。

 

(2) Aが整体院で行っていた施術になんらかの違法性が認められるとしても、対象会員にはAの施術の違法性の認識はない。
 対象会員は、単なる顧客としてA整体院を訪問し施術を受けたに過ぎず、Aのホームページを閲覧したこともなく、A整体院が実施する施術を全て把握しているわけでもない。
 また、整体師が行う施術一般が違法な存在であるとの社会的な共通認識は存しない。
 このような状況において、仮に、A整体院の施術に違法性が認められたとしても、単なる顧客にすぎない対象会員はそれが違法であるとの認識を有していなかった。

 

(3) 懲戒請求者は、対象会員が医師法に関する解釈が争点の一つとなったタトゥ ー事件の主任弁護人であったことから、本件施術の違法性を認識していたはずであると主張するが、A整体院が提供する施術が違法か否かは一見して明らかなものではなく、個別事案ごとに慎重に判断されるものであるところ、対象会員は、弁護士としてA整体院との間で委任契約等を締結しているわけではなく、単なる顧客としてA整体院を訪問し施術を受けただけであり、A整体院の施術が違法か否かを調査・判断する権限はなく、したがって、仮にA整体院の施術になんらかの違法性が認められるとしてもそのことを対象会員が認識していなかったことについて何らの落ち度もない。

 

(4) 弁護士職務基本規程第14条の「助長」とは、違法・不正であることを知りながら、これを第三者に推奨したりすることによ って、違法・不正の実現に手を貸したり、その存続または継続を支援したりすることをいう。本条違反というためには、違法又は不正な行為と知っていたことが必要であり、これを知らなかった弁護士に対し結果責任を負わせるものではない (日本弁護士連合会弁護士倫理委員会編著『解説弁護士職務基本規程[第3版]』32頁)。

 また、対象会員による投稿1から4は、その内容からして、対象会員が弁護士の立場 でなんらかの法的意見を示すものではなく、単なる顧客として本件施術を受けた感想を素朴に述べたものに過ぎず、違法・不正の実現に手を貸したり、その存続又は継続を支援したりするものでない。

 

(5) よって、対象会員による投稿1から4は、違法行為の助長 (弁護士職務基本規程第14条)に該当せず、品位を失うべき非行(弁護士法第56条第1項)は存しない。

 

なお、「違法な施術を行う店を紹介したことを告知するツイートをすること」などの要求と、懲戒請求の取り下げの提案は、懲戒請求後に別件で相談していた医療関係の弁護士から提案されて行ったものである。

私の目的は無免許施術による消費者被害の阻止なので、提案に応じていただければ懲戒請求を取り下げるのは構わなかった。

 

それで、「濫用」に対する大阪弁護士会綱紀委員会の判断であるが

4 本件懲戒請求が権利濫用であるとの対象会員の主張について

 対象会員は、本件懲戒請求が権利濫用である旨主張しているので、念のため、この点につき判断する。

 弁護士懲戒制度が懲戒請求者個人の利益保護のためのものではなく、弁護士の品位保持や弁護士に対する信頼確保のために設けられたものであることは対象会員指摘の とおりである。しかし、たとえ懲戒請求者の懲戒請求の目的が、仮に対象会員主張のとおり、対象会員への懲戒請求を通じて対象会員をして自らの信条に基づく活動に従わせ自らの主張を喧伝することにあったとしても、そのことから直ちに当該懲戒請求が権利濫用となり許されないものになったり、請求内容である懲戒を求める事由が存在しないことになるわけではない。

 したがって懲戒請求者主張の懲戒を求める事由が存在するか否かにつき判断する必 要があり、1 から3に述べたとおり懲戒事由の有無を判断した。

と亀石弁護士による濫用の主張自体は排斥していない。

私の目的は消費者被害の阻止なので、弁護士法の想定とは異なる目的での懲戒請求である可能性は否定しない。

もっともベリーベストの懲戒処分だって、非弁提携は消費者被害をもたらすことを理由にしているのではないか。

消費者被害阻止のための懲戒請求は濫用なのか?

 

日弁連綱紀委員会および綱紀審査会の議決書の判断は前掲のとおりであり、亀石弁護士の主張は特に記載されていなかった。弁明書の写しも送られては来なかった。

法的見解の表明は名誉毀損の判断対象ではないので、この記事の紹介自体はA整体院に対する名誉毀損にはならない。

本記事はA整体院の業務が医師法違反であると指摘する内容なので、この記事を紹介するのに躊躇されるかもしれません。

しかし法的見解の表明は意見論評であって、前提とする事実が真実または真実と信じる相当の理由があれば、人身攻撃などにおよぶ表現でない限りは不法行為にはなりません。

法的な見解の表明それ自体は,それが判決等により裁判所が判断を示すことができる事項に係るものであっても,そのことを理由に事実を摘示するものとはいえず,意見ないし論評の表明に当たるものというべきである。

 

(3) 本件各表現は,被上告人が本件採録をしたこと,すなわち,被上告人が上告
人A1に無断でゴーマニズム宣言シリーズのカットを被上告人著作に採録したという事実を前提として,被上告人がした本件採録著作権侵害であり,違法であるとの法的な見解を表明するものであり,上記説示したところによれば,上記法的な見解の表明が意見ないし論評の表明に当たることは明らかである。


 そして,前記の事実関係によれば,本件各表現が,公共の利害に関する事実に係るものであり,その目的が専ら公益を図ることにあって,しかも,本件各表現の前提となる上記の事実は真実であるというべきである。また,本件各表現が被上告人に対する人身攻撃に及ぶものとまではいえないこと,本件漫画においては,被上告人の主張を正確に引用した上で,本件採録の違法性の有無が裁判所において判断されるべき問題である旨を記載していること,他方,被上告人は,上告人A1を被上告人著作中で厳しく批判しており,その中には,上告人A1をひぼうし,やゆするような表現が多数見られることなどの諸点に照らすと,上告人A1がした本件各表現は,被上告人著作中の被上告人の意見に対する反論等として,意見ないし論評の域を逸脱したものということはできない。

裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

A整体院が症状の改善等を目的に施術し、そのために「十分な問診」や「検査」、「症状の原因の説明」をしていることはAが自らウェブサイトに書いていることですから、真実と信じる相当の理由があります。

*1:東京高裁平成元年2月23日判決 昭和63(う)746 判例タイムズno.691 1989.5.15 p152 東京高裁(刑事)判決時報40巻1~4号9頁

*2:大審院昭和12年5月5日判決 昭和11(れ)3538も参照。