健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン

厚労省経産省が作成した「健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン」というものの存在を知る。

健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドラインについて(METI/経済産業省)

健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドラインについて|厚生労働省

 

なお、経産省のサイトには改正平成29年5月30日と書かれたガイドラインが有るので、そのPDFから引用する。

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/r_guideine.pdf

また厚労省のページには説明のパワーポイントが置いてある。

 

ガイドラインには「2.事業の類型及び関連法令の解釈」とあり、

 

(1)医師が出す運動又は栄養に関する指導・助言に基づき、民間事業者が運動指導又は栄養指導を行うケース

(2) 医療法人が、配食等を通じた病院食の提供を行うケース

(3) 簡易な検査(測定)を行うケース

 

といったケースが挙げられている。

このうち、当業界や無免許業者の違法性の判断の参考になるのは(1)と(3)である。

なおカイロプラクティック業界紙ではこのガイドラインを紹介し、医学的根拠に基づくカイロプラクティック施術は違法行為になってしまう、と書いている。

カイロタイムズ113号

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カイロタイムズ

 

以下、見ていこう。

(1)医師が出す運動又は栄養に関する指導・助言に基づき、民間事業者が運動指導又は栄養指導を行うケース

以下、ガイドラインから引用し、筆者が重要と思った部分を強調する。

<関連法令の解釈>
医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条との関係

医師法第 17 条において、「医師でなければ、医業をなしてはならない。」と規定しており、その際の「医業」とは、「医行為を反復継続する意思をもって行うこと」である。また、「医行為」とは、「当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為」である(「医師法第 17 条、歯科医師法第 17 条及び保健師助産師看護師法第 31 条の解釈について(平成 17 年7月 26 日付医政発 0726005号厚生労働省医政局長通知)」参照)。また、保健師助産師看護師法第 31 条において、「看護
師でない者は、第 5 条に規定する業(傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うこと)をしてはならない。」と規定している。


このため、民間事業者は、医業又は診療の補助のいずれにも該当しない範囲で、サービスを提供する必要がある。

したがって、利用者の身体機能やバイタルデータ等に基づき、個別の疾病であるとの診断を行うことや治療法の決定等を行うことは、医学的判断を要するものとして、医業に該当するため、必ず医師が行わなければならない

また、傷病や障害を有する者に対し、傷病の治療のような医学的判断及び技術を伴う運動/栄養指導サービスを行うことは、医業又は診療の補助に該当するため、医師本人が行うか、又は医師の指示の下、看護師、理学療法士(運動指導の場合)等が行わなければならない。

以上を踏まえ、民間事業者は、医師が民間事業者による運動/栄養指導サービスの提供を受けても問題ないと判断した者に対し、自ら診断等の医学的判断を行わず、医師が利用者の身体機能やバイタルデータ等に基づき診断し、発出した運動/栄養に関する指導・助言に従い、医学的判断及び技術が伴わない範囲内で運動/栄養指導サービスを提供(例えば、ストレッチやマシントレーニングの方法を教えることや、ストレッチやトレーニング中に手足を支えること。)することができる。

で、適法違法の例示として

【適法となる例、違法となる例】

(適法)
 無資格者である民間事業者が、医師からの運動又は栄養に関する指導・助言に従い、その範囲内で、医学的判断及び技術を伴わない方法(例えば、ストレッチやマシントレーニングの方法を教えることや、ストレッチやトレーニング中に手足を支えること。)により、疾病等の予防のための運動/栄養指導サービスを提供する場合。

 

(違法)
 無資格者である民間事業者が、傷病や障害を有する者に対して、自ら診断等の医学的判断を行い、運動/栄養指導サービスを提供する場合。

 無資格者である民間事業者が、傷病や障害を有する者に対して、医師からの運動又は栄養に関する指導・助言の範囲を超えて、医学的判断及び技術を伴う方法により運動/栄養指導サービスを提供する場合。

と書かれている。

 

「治療法の決定等を行うことは、医学的判断を要するものとして、医業に該当する」わけで、無資格者が治療方法を決めてはいけません。

 

医業類似行為にこのガイドラインを書き直せば、

医師が無資格者による施術を受けても問題ないと判断した者に対し、自ら医学的判断を行わず、医師の指導・助言に従い、医学的判断及び技術が伴わない範囲内で施術することができる。

となりましょうか。

なお、私は禁忌症が有る行為自体、「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」であると考えている。既往症や症状を聞く行為は問診であり、医行為であるという最高裁判決が有るのだから、既往症を聞かなくても安全が確保できる行為のみ、無資格で行えると考えてる。

 

binbocchama.hatenablog.com

 

このガイドラインでは医師がサービスを受けても問題ないと判断した場合、とあるので、禁忌症の存在のみで「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」とは断定できないのかもしれない。

ただし、サービスや施術を受けるかどうかの判断は医師が行なうのであって、サービス提供者や無資格施術者が行って良いものではない。

禁忌症が有る無免許施術なら全て、医師による施術可否を判断してもらった後に施術すべきである。

 

そう考えるとラフィネの妊婦の承諾書は、その存在だけで医師法、あはき法違反の違法性を判断できないのかもしれない。*1

https://www.bodywork.co.jp/static/data/syoudakusyo_ninpu.pdf

既往歴を書く部分があるのはやはり医師法違反になりそうでは有る。

 

(3) 簡易な検査(測定)を行うケース

最近は簡易なDNA検査を行っている無免許業者の広告も見かける。なので検討してみる。

<基本的な考え方>

病院又は診療所でない民間事業者(以下この項目において「民間事業者」という。)の施設において、医師等でない者が、自己採取した検体の測定の支援として、簡易な検査(測定)を行い、当該利用者に対し、検査(測定)結果の事実を通知し、より詳しい健診を受けることの勧奨等を行うためには検体採取の方法や検査(測定)後のサービス提供の内容が、医師法第17条に規定する「医業」に該当しない範囲で実施されなければならない。また、簡易な検査(測定)を実施する場所が、臨床検査技師等に関する法律第 20 条の 3 に規定する「衛生検査所としての登録が不要な施設」に該当する場所でなければならない。
なお、検査(測定)の際、自己採血用の穿刺器具の販売・授与が行われる場合には、都道府県知事に対し管理医療機器の販売業の届出(薬事法第 39 条の 3)を行うなど、薬事法における規定を遵守しなければならない。

で、

<関連法令の解釈>
医師法第17条との関係


医師法第 17 条により、医師等でない民間事業者は、医業に該当しない範囲で検体採取や検査(測定)後のサービス提供を実施する必要があり、採血等の医行為に該当する行為や、検査(測定)結果に基づく診断等の医学的判断を行うことはできない。このため、民間事業者ではなく、利用者自らによって採血等の検体採取が行われる必要がある。また、民間事業者は、検査(測定)結果に基づく診断を行うことはできないため、検査(測定)後のサービス提供については、検査(測定)結果の事実や検査(測定)項目の一般的な基準値を通知することに留めなければならない。また、検査(測定)項目が基準値内にあることをもって、利用者が健康な状態であることを断定することは行ってはならない。


【適法となる例、違法となる例】


(適法)
 検体を採取する際に、利用者が自ら検体を採取した上で、民間事業者が、検査(測定)後のサービス提供として、検査(測定)結果の事実や検査(測定)項目の一般的な基準値を通知する場合。


(違法)
 検体を採取する際に、無資格者である民間事業者が利用者から検体を採取する場合。
 無資格者である民間事業者が、利用者に対して、個別の検査(測定)結果を用いて、利用者の健康状態を評価する等の医学的判断を行った上で、食事や運動等の生活上の注意、健康増進に資する地域の関連施設やサービスの紹介、利用者からの医薬品に関する照会に応じたOTC医薬品の紹介、健康食品やサプリメントの紹介、より詳しい健診を受けるように勧めることを行う場合。

 

というわけで、顧客の健康状態の評価をしてはならない。

判断は顧客がすることである。

 

 

*1:もっとも医師に直接書いてもらうのではなく、妊婦である利用者が勝手に書ける書式というのは問題である。また将来の損害賠償責任の制限というのは消費者契約法に違反すると思われる。