タトゥー判決文を読んで。後編

 前編はこちら

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憲法21条(表現の自由)に関して

判決文より。

 弁護人は、入れ墨を他人の体に彫ることも表現の自由として保障される旨主張するが、前記のとおりの入れ墨の危険性に鑑みれば、これが当然に憲法21条1項で保障された権利であるとは認められない。

  もっとも、被施術者の側からみれば、入れ墨の中には、被施術者が自己の身体に入れ墨を施すことを通じて、その思想・感情等を表現していると評価できるものもあり、その範囲では表現の自由として保障され得る。その場合、医師法17条は、憲法21条1項で保障される被施術者の表現の自由を制約することになるので、念のため検討する。

  表現の自由といえども絶対無制約に保障されるものではなく、公共の福祉のための必要かつ合理的な制限に服する。そして、国民の保健衛生上の危害を防止するという目的は重要であり、その目的を達成するために、医行為である入れ墨の施術をしようとする者に対し医師免許を求めることが、必要かつ合理的な規制であることは前記のとおりである。

被施術者から見れば、外見を変えることも表現の自由と主張できるだろう。

表現の自由医師法違反を免責するなら、美容整形手術も無免許で可能になってしまう。

当業界に関しても、美容鍼灸というのがあり、無資格者の世界まで広げれば小顔矯正や美容整体というのもある状況である。

 

 小顔矯正に関しては優良誤認表示で行政処分が為されてる。

【PDF】消費者庁:小顔になる効果を標ぼうする役務の提供事業者9名に対する景品表示法に基づく措置命令について

また事故情報データバンクで「小顔矯正」、「美容整体」、「エステ」といった単語で検索すれば事故情報も出てくる。

 

このような無免許施術は取締の怠慢により放置されていると解釈すべきであり、本来であれば事故情報を受け付けた消費生活センター等が刑事訴訟法第239条第2項*1に基づいて告発し、刑事処分を行わなければなるまい。

健康被害が生じている時点で「人の健康に害を及ぼすおそれ」は証明済みである。

このような無免許施術を肯定しかねない論理は容認しかねる。 

著作物としての入れ墨 

ただ判決では入れ墨に関し、「その思想・感情等を表現していると評価できるものもあり」としている。この表現は著作権法での著作物の定義、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」を意識したものかと思われる。判決文からは弁護団が入れ墨は著作物である旨、主張したようには思われないが、どうなんだろう?

 

もっともヘアスタイルについては著作物に該当する可能性があるようである。

w-tokyosaito.jp

ただ、著作物と言えるのは独創性が認められるものであり、ヘアスタイルならクライアントから独創性も求められようが、美容施術の場合、クライアントが求める外見は類型化できるものであり、独創性がないので著作物とは言えないとして、入れ墨との違いを明確化できるかもしれない。

 

しかし著作物として表現する場合に、医師法を免責できるなら、独創的なヘアスタイルにカットするためには理容師・美容師免許だって不要じゃないか、という問題が出てくるが。 

罪刑法定主義に関して

判決文より

  弁護人は、医師法17条が「医師でなければ、医業をなしてはならない。」としか規定していないのに、医療関連性を有しないあらゆる保健衛生上の危険性がある行為を規制しようとすることは、一般人の理解を超えた範囲を禁止の対象とするものであり、刑罰法規として曖昧不明確であるとともに、他の法令との体系的解釈を前提とすると、成人に対する入れ墨の施術は犯罪を構成しないにもかかわらず、これを処罰することは「法律なければ刑罰なし」の原則に反するから、同条は憲法31条に違反する旨主張する。

  医師法17条の規制の対象となる医行為とは、前記のとおり、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為に限られる。このような解釈は、同条の趣旨から合理的に導かれ、通常の判断能力を有する一般人にとっても判断可能であると考えられるから、同条による処罰の範囲が曖昧不明確であるとはいえない。また、医師法17条をこのように解釈して、成人に対する入れ墨の施術を処罰することは、体系的にみて他の法令と矛盾しない。

「他の法令との体系的解釈を前提」とあるので、他の法令で医行為の参考になりそうな条文を示してみる。

保助看法37条

保健師助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。(但し書き省略)

 

目的論を言えば薬機法に於いて医療機器の定義は

この法律で「医療機器」とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。

とあり、タトゥー施術が「身体の構造に影響を及ぼすこと」は間違いないだろう。

よって目的を限定する考えを採用したとしても、罪刑法定主義に反しているとは思われない。

 

長々とタトゥー施術の医師法違反を肯定する考えを述べてきたが、彫師自体に恨みは無いので、無罪を目指すなら彫師以外の無資格者の医行為までは許されないような論理で裁判を闘っていただきたいと思う。

*1:官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。

タトゥー裁判の判決文を読んで。

タトゥーアーティスト(彫師)が医師法違反に問われた裁判の判決文が公開されている。

camp-fire.jp

一審判決時にも記事は書いたが、判決文の公開によりいろいろな意見が述べられている。

改めて記事を書いてみる。

一般人による医行為の理解 - びんぼっちゃまのブログ

私のことをすでに理解されている方は「「治療ではない」と言う無免許業者」 あたりから読んでいただければ良いと思う。

 

筆者やタトゥー裁判への関心の理由

初めてこのブログを読まれる方もおられると思うので筆者について説明する。

現役の鍼灸マッサージ師(どういう職種かは後述)である。

大学は法学部ではなく、理工系。ロースクールには行ってないし、旧司法試験や予備試験の受験の経験も無し。

日弁連などが主催する法学検定のスタンダードぐらいが私の法的知識の証明である。

法学検定2016、ベーシックとスタンダード - びんぼっちゃまのブログ

裁判所のサイトに無い裁判例は図書館で利用できるD1-Law.comで調べてたりする。

鍼灸マッサージ師という職業

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(以下、あはき法と略す)に定められたあん摩マッサージ指圧師(あん摩師、マッサージ師、指圧師、あマ指師と略すこともある。)、はり師、きゅう師の免許を持つ者である。あはき師と略すこともある。

またあはき法第1条には

医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。 

 とあり、医師法と無関係ではいられない職種である。

なお、はり師、きゅう師のみの免許を持つ者も多く、その場合は鍼灸師と呼ぶ。

整体などの無資格施術者の横行

無免許施術に対する法規制

さて、あはき法第12条には法律に定められた免許を有しない者(整体師やカイロプラクターなど。名乗ろうと思えば誰でも名乗れる。)が治療などの目的で施術を行うこと(医業類似行為)を禁じる条文がある。

何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。ただし、柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)の定めるところによる。 

医業類似行為に関しては法律に定義は書いてないのだが裁判例*1では以下のように定義されている。

疾病の治療又は保健の目的を以て光熱器械、器具その他の物を使用し若しくは応用し又は四肢若しくは精神作用を利用して施術する行為であって他の法令において認められた資格を有する者が、その範囲内でなす診療又は施術でないもの、」

換言すれば

疾病の治療又は保健の目的でする行為であって医師、歯科医師、あん摩師、はり師、きゅう師又は柔道整復師等他の法令で正式にその資格を認められた者が、その業務としてする行為でないもの」 

無免許鍼灸マッサージ等や無免許医業も含め、無資格者は業として治療や保険の目的での施術を禁止されている、と理解していただければ良いと思う。

医業類似行為に関する昭和35年判決

この記事を読んで初めて整体やカイロプラクティックなどが無免許施術であることを知った人もいると思う。法律で禁止されているのに営業できているのはなぜか?

それは医業類似行為の禁止処罰を「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」のみに限定した最高裁判決(以下、昭和35年判決という。)が出たからである。

ところで、医業類似行為を業とすることが公共の福祉に反するのは、かかる業務行為が人の健康に害を及ぼす虞があるからである。

それ故前記法律が医業類似行為を業とすることを禁止処罰するのも人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局する趣旨と解しなければならないのであつて、このような禁止処罰は公共の福祉上必要であるから前記法律一二条、一四条は憲法二二条に反するものではい。 

医師法第17条違反(無免許医業)は処罰に際し、「保健衛生上危害の生じるおそれ」を証明する必要があるのに対し、あはき法第12条違反は施術を無免許で行っただけで処罰できる規定であり、罰則の違いもある。

しかしこの判例医師法第17条とあはき法第12条に差異が無くなってしまった。

このため「おそれ」が立証されない限りは処罰対象にならなくなってしまい、整体師やカイロプラクターといった無資格者が堂々と営業するようになってしまったのである。

 無資格施術による健康被害や死亡事故

その結果、無資格施術による健康被害が発生していることが国民生活センター消費者庁から発表されている。

手技による医業類似行為の危害−整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も−(発表情報)_国民生活センター

【PDF】消費者庁:法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に

 

そして無資格施術による死亡事故も起きている。

全文表示 | 男児死亡の新潟「ズンズン運動」初公判!「極めて軽率」と禁固1年求刑 : J-CASTテレビウォッチ

ズンズン運動事件は

  • 2013年2月、無免許施術により新潟で赤ん坊が亡くなり、業者を書類送検
  • 同年11月、新潟地検は嫌疑不十分で不起訴処分とする。
  • 2014年6月、新潟の事件を知らない、神戸の親が子供にズンズン運動の施術を受けさせたところ、死亡
  • 2015年3月、大阪府警が業務上過失致死傷罪で逮捕
  • 同、大阪地検が起訴
  • 6月頃、新潟検察審査会は起訴相当と議決
  • 8月4日、大阪地裁で大阪事件に関して有罪判決
  • 同日、新潟地検が新潟の事件で逮捕
  • 9月、大阪事件の遺族が損害賠償を求めて神戸地裁へ提訴
  • 11月19日、新潟地裁で新潟事件の有罪判決
  • 2016年12月14日、神戸地裁で賠償請求を認める判決

といった時系列であり、新潟事件の際、因果関係を立証できなくても罪に問うこと(あはき法第12条の無条件適用)ができれば、大阪の事件は防げたと思われる。

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「治療ではない」と言う無免許業者

以下の画像は保健所に届け出を行っていない整体院(無免許施術所)のチラシの表現である。

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この下に「整体院○○○○○にご相談ください。」と書いてある。

 

で、カイロプラクティック・整体の説明など

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自然治癒力の向上って、保険目的ではなかろうか?

以下はチラシに乗っていたお客様の声である。

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「腰痛からの解放」、「肩の痛みの改善」、「片頭痛、不眠の苦しみからの解放」、「肘の痛みと手の痺れから解放」といった主旨が書いてある。

で、こんなことも書いてある。

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※当店はリラクゼーション店です。

医療行為、治療行為は行っておりません。

ご了承の上サービスをお受けください。

 「医療行為」はともかく「治療行為」ではない、という主張である。

 

こんな輩が「医行為は治療行為のみに限定される。」という判決がでたらどんなことをするやら。

 

故にタトゥー裁判の弁護団

弁護人は、医師法17条及び1条の趣旨や法体系からすれば、医行為とは、

〈1〉医療及び保健指導に属する行為の中で(以下、〈1〉の要件を「医療関連性」ということがある。)、〈2〉医師が行うのでなければ保健衛生上の危害を生ずるおそれのある行為をいうと解すべきであると主張する。  

 

また、弁護人は、最高裁判所判例最高裁昭和30年5月24日第3小法廷判決・刑集9巻7号1093頁、最高裁昭和48年9月27日第1小法廷決定・刑集27巻8号1403頁、最高裁平成9年9月30日第1小法廷決定・刑集51巻8号671頁)によれば、医行為の要件として「疾病の治療、予防を目的」とすることが求められているとも主張する。 

 といった主張は是認することはできない。

もちろん、広告表示や実際の施術様態から治療目的であると推認できる施術行為と、タトゥーのように、治療目的ではないと断定できる施術を一緒にするな、という反論はあると思う。

 

憲法22条や薬局距離制限違憲事件など

判決文より。強調は筆者による。

ア 憲法22条1項適合性について

 医師法は、2条において、医師になろうとする者は医師国家試験に合格して厚生労働大臣の免許を受けなければならないと定め、17条において、医師の医業独占を認めていることから、医業を営もうとする者は医師免許を取得しなければならない。そのため、医師法17条は、憲法22条1項で保障される入れ墨の施術業を営もうとする者の職業選択の自由を制約するものである。

 もっとも、職業選択の自由といえども絶対無制約に保障されるものではなく、公共の福祉のための必要かつ合理的な制限に服する。そして、一般に職業の免許制は、職業選択の自由そのものに制約を課する強力な制限であるから、その合憲性を肯定するためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要する。また、それが自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的・警察的措置である場合には、職業の自由に対するより緩やかな制限によってはその目的を十分に達成することができないと認められることを要する最高裁昭和50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁参照)。

 

 これを本件についてみると、前記のとおり、医師法17条は国民の保健衛生上の危害を防止するという重要な公共の利益の保護を目的とする規定である。そして、入れ墨の施術は、医師の有する医学的知識及び技能をもって行わなければ保健衛生上の危害を生ずるおそれのある行為なのであるから、これを医師免許を得た者にのみ行わせることは、上記の重要な公共の利益を保護するために必要かつ合理的な措置というべきである。また、このような消極的・警察的目的を達成するためには、営業の内容及び態様に関する規制では十分でなく、医師免許の取得を求めること以外のより緩やかな手段によっては、上記目的を十分に達成できないと認められる。

 以上から、本件行為に医師法17条を適用することは憲法22条1項に違反しない。 

いまどき規制目的二分論?というのが最初に読んだ感想である。

私は大島弁護士の「憲法の地図」を読んで、三段階理論を知ってからはそっちの方で考えるようになっている。 

憲法の地図: 条文と判例から学ぶ

憲法の地図: 条文と判例から学ぶ

 

 上書105ページより(丸数字は機種依存文字なので普通の数字に変更し、適時改行した。)

薬事法違憲判決に大きな影響を与えたドイツ薬局判決は、

1職業遂行の自由の規制、

2当該職業を希望する者の意思・努力・能力次第で充足しうる許可の主観的要件(資格等)による職業選択それ自体に対する制限、

3個人的性質・能力では如何ともし難い許可の客観的要件による職業選択それ自体に対する制限

を分け、1→3の順番で合憲性審査基準が厳格化していく立場をとった(三段階理論)。

1は営業上の規制であり、開業や就業した後の規制である。当業界で言えば広告規制(これはこれで表現の自由との問題があるが*2)、消毒義務、守秘義務などといったものが挙げられよう。

また今回の判決では「営業の内容及び態様に関する規制では十分でなく、」と書いてたりする。

 

2は書いてあるように資格・免許など、本人の能力と努力で超えられる規制である。

今回の判決では「医師免許の取得を求めること以外のより緩やかな手段によっては、上記目的を十分に達成できないと認められる。」と判示されている。

 

弁護団もこのように医学的知識の必要性を認めている以上、タトゥー施術に免許を必要とする規定を違憲とすることは無理であろう。

どのような免許を必要とするかはまさに立法裁量権に属する問題だと考える。

はり師免許の制度がない場合に、鍼治療を行うのに医師免許を要求することは違憲であろうか?

歯科技工士が義歯制作に際し、印象採得などをしたことが歯科技工士法第20条*3歯科医師法第17条に違反するとされた裁判(札幌高裁昭和55(う)195)では

歯科技工士は、歯科医師でないとしても、歯科衛生に関するある程度の教育と試験を受けてその免許を受ける者であるから、もちろん現行法令及びこれに基づく現在の歯科技工士養成制度のままでは許されないけれども、これらの法令及び制度の改正を通じて、印象採得等の一定範囲の歯科医行為につき、その全部とまではいかないとしても、その一部を、相当な条件の下に、歯科技工士に単独で行わせることとすることも立法論としては可能であると考えられる

しかし、そのことは、いずれにしても、国民の保健衛生の保持、向上を目的とする立法裁量に委ねられた事項と解すべきであり、かかる解釈に立ちつつ、ひるがえって現行法を検討しても、現在の法17条、29条一項一号及び技工法20条の定立にあらわれている立法裁量の内容が憲法のいずれかの条項に違反していると疑うべき事由は見当たらないのである。

 と判示し、被告人を有罪としている。上告棄却

 

3は本人ではどうしようもない規制条件であり、既存薬局の一定距離以内に開業できない規制はまさにこれであり、他に例を上げれば性別や出身地などである。

 

 規制目的二分論も、積極目的はともかく*4、消極目的に対する規制に関しては目的二分論を採用してないようである。

 

憲法判例百選1 第6版 (別冊ジュリスト 217)

憲法判例百選1 第6版 (別冊ジュリスト 217)

 

 上書207頁(薬事法違憲事件の解説)より

 そこで、本判決は、「社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のため」の許認可制度は別論であることを、急いで付け加えた。今日の時点で省みれば、判例において規制目的二分論が持ち出されるのは、この局面に限られる。 

 とあり、他の判例の解説でも消極目的規制に関しての厳格な合憲性審査基準が適用されていない感じである。

司法書士法違反事件に関しては「あまりに簡略な説示」*5であるが、大島氏の前掲著作(106頁)では

しかし、司法書士の資格制は、ドイツの三段階理論でいえば2の主観的要件に基づく規制であって、日本の薬事法違憲判決がドイツの三段階理論の影響を受けているとすれば、やや緩やかな審査基準が暗黙の前提とされた可能性がある。司法書士法事件の調査官解説も、消極目的規制ではあるが、資格制度による規制であることから、合憲性審査基準を緩和している。

とあり、免許制度に関しては合憲性審査基準が緩やかになっていると思われる。そういうことを述べずに簡略な説示にとどまるのは不親切な気もするが、薬事法違憲事件で三段階理論を採用してる(人に関する規制は合憲である旨、判示している。)なら簡略な説示も理解できる。

 

なお、薬事法違憲事件では

  (イ) まず、現行法上国民の保健上有害な医薬品の供給を防止するために、薬事法は、医薬品の製造、貯蔵、販売の全過程を通じてその品質の保障及び保全上の種々の厳重な規制を設けているし、薬剤師法もまた、調剤について厳しい遵守規定を定めている。そしてこれらの規制違反に対しては、罰則及び許可又は免許の取消等の制裁が設けられているほか、不良医薬品の廃棄命令、施設の構造設備の改繕命令、薬剤師の増員命令、管理者変更命令等の行政上の是正措置が定められ、更に行政機関の立入検査権による強制調査も認められ、このような行政上の検査機構と
して薬事監視員が設けられている。これらはいずれも、薬事関係各種業者の業務活動に対する規制として定められているものであり、刑罰及び行政上の制裁と行政的監督のもとでそれが励行、遵守されるかぎり、不良医薬品の供給の危険の防止という警察上の目的を十分に達成することができるはずである。

と、薬局の距離制限以外にも不良医薬品の流通などを防ぐための法規制があることを指摘している。

消極目的規制を緩やかな規制で対応可能だからといって、緩やかな規制をする法令が存在しない時点で厳しい規制条文を違憲と判断して無効化したらどうなるか?

それをやったのがあはき法の昭和35年判決であり、結果として健康被害や死亡事故が起きているのである。

大島氏に、不良医薬品の流通などを防ぐ法規制が他にもあったこと、タトゥーを規制する法律が医師放題17条以外に無い旨、聞いてみたところ、

 

というわけで、法律の素人である私の独自の見解、というわけでも無いと思う。

 

長くなったので憲法21条とか31条に関連することは続編で書こう。

binbocchama.hatenablog.com

 

*1:仙台高裁昭和28年(う)375

*2:

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51353

*3:歯科技工士は、その業務を行うに当つては、印象採得、咬合採得、試適、装着その他歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。

*4:あはき法第19条に関する裁判でも国は積極目的であるとして薬事法違憲事件を引用している。

*5:憲法判例百選1第6版202頁

無免許医療(医業類似行為)と準強制わいせつ罪(性的自由の侵害)

最近、業界関係者から、無免許施術に伴うわいせつ行為の相談を警察からされたという話を聞く。

 

警察も摘発したいようだが、治療や正当な施術と主張されることをおそれ、なかなか摘発できないようだ。

 

さて、去年、強制わいせつ罪の成立に性的意図を必要としていた最高裁判例が変更され、強制わいせつ罪の成立には必ずしも性的意図が必要とは限らない、とされた。*1

ウ 以上を踏まえると,今日では,強制わいせつ罪の成立要件の解釈をするに当たっては,被害者の受けた性的な被害の有無やその内容,程度にこそ目を向けるべきであって,行為者の性的意図を同罪の成立要件とする昭和45年判例の解釈は,その正当性を支える実質的な根拠を見いだすことが一層難しくなっているといわざるを得ず,もはや維持し難い。

 

www.bengo4.com

一律に性的意図を不要とした場合、医療行為が(準)強制わいせつ罪になりかねない、ということもあり、場合によっては性的意図の認定が必要となる。

 

さて、医師や鍼灸マッサージ師が正当な施術行為を行う際に身体、特に胸部や臀部などに接触するのに(準)強制わいせつ罪が成立しないことには異論は無いと思う。

 

これが整体師やカイロプラクター、なんちゃらセラピストなどの無資格業者の場合はどうか?

刑法35条は

法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

と規定する。無免許施術が法令業務でないことには異論はないだろう。

では正当な業務か?

形式上はあはき法第12条に反する行為であり、正当な行為とは言えない。よって、無免許施術者が被施術者(お客さん)の性的自由を侵害することを認識していれば準強制わいせつ罪が成立するのではないか?

という考えを某所で述べたところ、「正当行為ってそんな簡単な話じゃないのよ」と言われてしまう。

 

無免許医行為の判例に関しては詳しい自負もあるが、やっぱり法律の素人である。

 

というわけで図書館でこんな本を借りてきた。

 

たのしい刑法I 総論

たのしい刑法I 総論

 

 142頁から違法性阻却事由としての治療行為が記述してある。

ここで書かれていることは傷害罪の違法性阻却であるが、治療行為が傷害罪にならない要件として

  1. 治療目的
  2. 医学的適応性*2
  3. 医学的正当性*3
  4. 患者の同意

というのが書かれており、これらの要件が満たされていれば医師免許を有しない者が行った治療行為でも傷害罪については違法性阻却が考えられる旨、書いてある。*4

 

逆にこれらの要件が満たされない無免許医行為に関しては傷害(致死)罪が肯定された裁判例もある。

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面

 

 <要旨>そこで、原審記録を調査し、当審における事実調べの結果を併せて検討するに、被害者が身体侵害を承諾した場合に、傷害罪が成立するか否かは、単に承諾が存在するという事実だけでなく、右承諾を得た動機、目的、身体傷害の手段・方法、損傷の部位、程度など諸般の事情を総合して判断すべきところ(最決昭五五年一一月一三日刑集三四巻六号三九六頁参照)、関係証拠によれば、


(1)Dは、本件豊胸手術を受けるに当たり、被告人がO共和国における医師免許を有していないのに、これを有しているものと受取って承諾したものであること


(2)一般的に、豊胸手術を行うに当たっては、

「1」麻酔前に、血液・尿検査、生化学的検査、胸部レントゲン撮影、心電図等の全身的検査をし、問診によって、既往疾患・特異体質の有無の確認をすること、

「2」手術中の循環動態や呼吸状態の変化に対応するために、予め、静脈ラインを確保し、人工呼吸器等を備えること、
「3」手術は減菌管理下の医療設備のある場所で行うこと、
「4」手術は、医師または看護婦の監視下で循環動態、呼吸状態をモニターでチェックしながら行うこと、
「5」手術後は、鎮痛剤と雑菌による感染防止のための抗生物質を投与すること、

などの措置をとることが必要とされているところ、被告人は、右「1」、「2」、「4」及び「5」の各措置を全くとっておらず、また、「3」の措置についても、減菌管理の全くないアパートの一室で手術等を行ったものであること、


(3)被告人は、Dの鼻部と左右乳房周囲に麻酔薬を注射し、メス等で鼻部及び右乳房下部を皮切し、右各部位にシリコンを注入するという医行為を行ったものであること、

などの事実が認められ、右各事実に徴すると、被告人がDに対して行った医行為は、身体に対する重大な損傷、さらには生命に対する危難を招来しかねない極めて無謀かつ危険な行為であって、社会通念上許容される範囲・程度を超えて、社会的相当性を欠くものであり、たとえDの承諾があるとしても、もとより違法性を阻却しないことは明らかであるといわなければならないから、論旨は採用することができない。

 

免許が無いこと以外、正当な施術であれば準強制わいせつ罪は成立しないのか、それとも性的自由の侵害があり、無免許施術者がそのことを認識していれば準強制わいせつ罪が成立するのか。

 

しかし医業類似行為の禁止処罰を「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」のみに限定した最高裁の昭和35年判決のときには、無免許施術が被施術者の性的自由を侵害することに関して何も考えられていなかったのだろう。

 

それまでは医業類似行為を行っただけでも禁止処罰できたのだから、施術を装ったわいせつ犯もあまりいなかったと思われる。

 

そして昭和45年でも強制わいせつ罪の成立に性的意図を必要とした最高裁判決が出ているわけで、昭和35年当時に、性的自由の侵害まで考慮するのは難しかったと思われる。

 

患者が性的自由の侵害を受け入れるのは治療効果を期待してのことではないのか?

それならその侵害に見合う効果を出せる者だけが施術を行うべきであり、その能力の証明として免許がある。

 

そのような能力の無い者の施術(無免許施術)を放置した場合、いたずらに患者の性的自由の侵害を招くと言える。

 

それは十分に公共の福祉に反する状況と言えないだろうか?

*1:

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面

*2:患者の生命・健康の維持・増進のために必要であること

*3:医学上一般に承認された方法によって行われること

*4:医師法第17条違反は肯定している。

グリーン車と女性専用車両

JR東日本女性専用車両の導入路線

女性専用車のご利用について:JR東日本

JR東日本普通列車グリーン車が運行されている路線

www.jreast.co.jp

http://www.jreast.co.jp/railway/train/green/img/img_area01.jpg

 

というわけで、普通列車グリーン車が導入されている路線に女性専用車両が導入されていないのである。

 

痴漢を避けるためにグリーン車を利用する女性もいると思われ、すでにグリーン車を導入している路線で女性専用車両を導入すれば減収になりかねない。

 

株式を上場している会社としては自ら減収を招く施策はできまい。

 

さて、JR東日本は中央線にグリーン車を導入する予定であるが、その際、女性専用車両をどうするのであろうか?

 

性別で排除される女性専用車両よりは料金で選別されるグリーン車のほうがまだ平等である。

 

ところで最近は私鉄でも拝島ライナーや京王ライナーのように、追加料金の列車が出てきている。

これは列車の編成まるごとであるが、指定席車両を通常の列車に設けても良いのではないか。とくにロングシートクロスシートを変換させられる編成なら可能かと思うのだが。

リラクゼーション(無免許マッサージ)で食えないからと、エッチなサービスもした事例

マンションで違法風俗店経営、女2人を逮捕 | NNNニュース

 岐阜県関市のマンションで違法に風俗店を営業したとして17日、女2人が風営法違反の疑いで逮捕された。逮捕されたのはマッサージ店「LANI」経営の塚原美香容疑者(33)とマッサージ店「アンベリール」経営の加藤美奈子容疑者(47)。警察によると、2人は去年から今年にかけ、関市倉知のマンションでそれぞれ違法に風俗店を営業し、男性客に性的サービスを提供した疑い。調べに対し2人は「間違いない」と容疑を認めているという。去年8月に匿名の情報提供があり逮捕に至ったといい、警察は営業を始めた時期や経緯などを詳しく調べている。

「マッサージ店」と書かれているが、エキテンを見るとこんな感じで、おそらく無免許マッサージだと思われる。

 

www.ekiten.jp

www.ekiten.jp

この2店、同じマンションの4階と2階である。

 

さて、ぐぐったら爆サイなる掲示板のスレが見つかった。

内容が18禁なのでクリックは注意。

関市 LANI - 岐阜メンエス・回春・癒し・お店掲示板|爆サイ.com東海版

アンベリール�F - 岐阜メンエス・回春・癒し・お店掲示板|爆サイ.com東海版

#637 2018/02/19 20:20
主犯の桜井にそそのかされて美咲さんも🐜♂💦
エキテンの予約表やblogではそんなに客来て無いようだったけれど。
なんか可哀想過ぎる。画像👧まで流されて。

 

エッチなサービスでも客が来てなかったのか、通常の無免許マッサージ(アロマトリートメントなど)で客が来てなかったからエッチなサービスに手を出したのか。

 

掲示板を読む限り、施術そのものは下手くそだったらしい。

本番行為もあったように書かれているが、真偽は不明。

 

最初から性的なサービスを行うつもりでこの業界に入ってきたわけではないと思うが。

 

マッサージの免許を持っている場合、保険での訪問マッサージ業者に雇ってもらう、という手があるために、食えないからと、売春行為までしなくてすむ。

 

ちなみに今回の事件ではこんなまとめ記事も作成されている。

hanakoneta.net

 

このように犯罪者の実名はネットに残り続けるのである。

無免許マッサージに手を出したために売春行為をせざるを得なくなり、その記録が永遠に残る。

 

そんなリスクを無免許マッサージの業界に入ろうとする女性たちは認識しているのであろうか?

 

理学療法士や作業療法士は超音波画像検査をして良いのか。

全文を読むには登録が必要だが、超音波画像監視のもと、生理食塩水等を癒着部位に注入して剥がす治療法(ハイドロリリース)に関する記事を読んだ。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201802/554682.html

 

私が気になったのは治療法自体ではなく、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)に超音波画像検査(エコー)を行わせている、という点である。

 

同病院のPTとOTはエコーを使ってハイドロリリースを行う場所の同定ができるようトレーニングを積んでいる。外来が混雑している場合は先にPT・OTがハイドロリリースを実施する場所の当たりを付け、医師は外来で注射をすればいいという状態にしておくケースもある(症例2)。 

 

 理学療法士及び作業療法士法(PTOT法)の業務規程

PT・OTの業務根拠はPTOT法の第15条に規定される。

第十五条 理学療法士又は作業療法士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として理学療法又は作業療法を行なうことを業とすることができる。

2 理学療法士が、病院若しくは診療所において、又は医師の具体的な指示を受けて、理学療法として行なうマツサージについては、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)第一条の規定は、適用しない。

保助看法の規定は

第三十一条 看護師でない者は、第五条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。

第三十二条 准看護師でない者は、第六条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。

である。

コメディカル全般に言えることだが、医師の指示の下の診療の補助行為は看護師が行うのが原則であり、各コメディカル職は保助看法の例外としてそれぞれの業務を行うことができる。

超音波画像検査を行うことが法令で明文化されている職種

看護師以外に超音波画像検査を法令で認めらている職種としては臨床検査技師診療放射線技師がある。

それぞれ法令を見てみよう。

臨床検査技師の場合

臨床検査技師等に関する法律より

第二条 この法律で「臨床検査技師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、臨床検査技師の名称を用いて、医師又は歯科医師の指示の下に、微生物学的検査、血清学的検査、血液学的検査、病理学的検査、寄生虫学的検査、生化学的検査及び厚生労働省令で定める生理学的検査を行うことを業とする者をいう。

 

第二十条の二 臨床検査技師は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として採血及び検体採取(医師又は歯科医師の具体的な指示を受けて行うものに限る。)並びに第二条の厚生労働省令で定める生理学的検査を行うことを業とすることができる。

で、臨床検査技師等に関する法律施行規則より

第一条 臨床検査技師等に関する法律(以下「法」という。)第二条の厚生労働省令で定める生理学的検査は、次に掲げる検査とする。
一 心電図検査(体表誘導によるものに限る。)
二 心音図検査
三 脳波検査(頭皮誘導によるものに限る。)
四 筋電図検査(針電極による場合の穿せん刺を除く。)
五 基礎代謝検査
六 呼吸機能検査(マウスピース及びノーズクリップ以外の装着器具によるものを除く。)
七 脈波検査
八 熱画像検査
九 眼振電図検査(冷水若しくは温水、電気又は圧迫による刺激を加えて行うものを除く。)
十 重心動揺計検査
十一 超音波検査
十二 磁気共鳴画像検査
十三 眼底写真検査(散瞳どう薬を投与して行うものを除く。)
十四 毛細血管抵抗検査
十五 経皮的血液ガス分圧検査
十六 聴力検査(気導により行われる定性的な検査であつて次に掲げる周波数及び聴力レベルによるものを除いたものに限る。)
イ 周波数千ヘルツ及び聴力レベル三十デシベルのもの
ロ 周波数四千ヘルツ及び聴力レベル二十五デシベルのもの
ハ 周波数四千ヘルツ及び聴力レベル三十デシベルのもの
ニ 周波数四千ヘルツ及び聴力レベル四十デシベルのもの
十七 基準嗅覚検査及び静脈性嗅覚検査(静脈に注射する行為を除く。)
十八 電気味覚検査及びろ紙ディスク法による味覚定量検査

と超音波検査が省令で明文化されている。

 

診療放射線技師の場合

診療放射線技師法より

第二条 この法律で「放射線」とは、次に掲げる電磁波又は粒子線をいう。
一 アルフア線及びベータ線
二 ガンマ線
三 百万電子ボルト以上のエネルギーを有する電子線
四 エツクス線
五 その他政令で定める電磁波又は粒子線

2 この法律で「診療放射線技師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、医師又は歯科医師の指示の下に、放射線を人体に対して照射(撮影を含み、照射機器又は放射性同位元素(その化合物及び放射性同位元素又はその化合物の含有物を含む。)を人体内にそう入して行なうものを除く。以下同じ。)することを業とする者をいう。

 

第二十四条 医師、歯科医師又は診療放射線技師でなければ、第二条第二項に規定する業をしてはならない。

第二十四条の二 診療放射線技師は、第二条第二項に規定する業務のほか、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として、次に掲げる行為を行うことを業とすることができる。


一 磁気共鳴画像診断装置その他の画像による診断を行うための装置であつて政令で定めるものを用いた検査(医師又は歯科医師の指示の下に行うものに限る。)を行うこと。


二 第二条第二項に規定する業務又は前号に規定する検査に関連する行為として厚生労働省令で定めるもの(医師又は歯科医師の具体的な指示を受けて行うものに限る。)を行うこと。

とあり、診療放射線技師が画像診断装置を用いた検査を行えることを法律で明文化している。

そして診療放射線技師法施行令(政令)より

第十七条 法第二十四条の二第一号の政令で定める装置は、次に掲げる装置とする。
一 磁気共鳴画像診断装置
二 超音波診断装置
三 眼底写真撮影装置(散瞳薬を投与した者の眼底を撮影するためのものを除く。)
四 核医学診断装置

とある。

PTOT法の記述

e-gov理学療法士及び作業療法士法、同施行令、同施行規則を表示し、「超音波」「画像」「検査」を検索したがヒットしなかった。

法律の反対解釈

法律の解釈方法として反対解釈というのがある。

www.weblio.jp

弁護士などの解説をリンクすべきであろうが、わかりやすいのが見つけられなかったのでWeblio辞書より。

法の解釈において,法文中に規定されている事項以外の事項については,その法文の意味と反対の意味を引き出して解釈すること。車馬の通行を禁止するという法文に対して,人は通行してもよいと解釈するのがその例。

PTOT法の第15条第2項においてはPTのみがマッサージを行うことができるとされているので、OTは医師の指示があってもマッサージを行うことができない。

これが反対解釈である。

 

他には柔道整復師養成校の非認可取消訴訟がある。

あはき法においてはあん摩マッサージ師の養成校の認定に関してのみ、認可基準を満たしていても拒否できる規定あるのに対し、柔道整復師法にはそういう規定は無い。

よって反対解釈で、認可基準を満たした申請に関しては国に拒否する裁量権はない、という判決があり、この判決のため、PTやOTの養成校も増えたのである。

binbocchama.hatenablog.com

 

臨床検査技師診療放射線技師は超音波画像診断装置の使用に関し、法令で明文化されているのに対し、PTやOTは明文化された法的根拠が無いため、反対解釈により医師の指示の下であっても超音波検査を行うことは保助看法に違反するのではないか。

 

あはき柔との比較

なお、柔道整復師はその業務範囲内で利用する限り、超音波画像検査が医師法に違反しない、という通知がある。

施術所における柔道整復師による超音波画像診断装置の使用について - 広島県ホームページ

 

そのため、鍼灸師でも超音波検査を行う施術所もある。

なのでPTやOTが超音波検査を行っても良いではないか、という考えもあると思う。

ただし、鍼灸マッサージ師や柔道整復師は独立判断で治療行為を行う免許であり、医師法の例外法規である。

 

その点、PTOT法は保助看法の例外法規である。

そして保助看法の例外法規で超音波画像検査に関して明文化されているのは前述のとおりである。

 

また超音波検査に限定しなければ視能訓練士法にもこのような規定がある。

第二条 この法律で「視能訓練士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、視能訓練士の名称を用いて、医師の指示の下に、両眼視機能に障害のある者に対するその両眼視機能の回復のための矯正訓練及びこれに必要な検査を行なうことを業とする者をいう。

 

第十七条 視能訓練士は、第二条に規定する業務のほか、視能訓練士の名称を用いて、医師の指示の下に、眼科に係る検査(人体に影響を及ぼす程度が高い検査として厚生労働省令で定めるものを除く。次項において「眼科検査」という。)を行うことを業とすることができる。


2 視能訓練士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として両眼視機能の回復のための矯正訓練及びこれに必要な検査並びに眼科検査を行うことを業とすることができる。

視能訓練士は訓練が主な業務目的だが、それに必要な検査が行える旨も法律で明文化している。

 

超音波検査に限らず、理学療法作業療法に必要な徒手検査自体、実は法律では認められていない、という可能性を否定できない。

ましてや絶対的医行為である生理食塩水等の注射注入行為のための超音波画像検査をや。

 

富士見産婦人科病院事件―私たちの30年のたたかい

富士見産婦人科病院事件―私たちの30年のたたかい

 
乱診乱療 (1982年)

乱診乱療 (1982年)

 

 富士見産婦人科病院事件は無資格者に超音波検査などを行わせた院長が保助看法違反に問われ、超音波検査をしていた無資格者は医師法違反に問われた。

いずれも有罪確定である。

春から上京する方へ。物件の選び方の失敗例

春から大学進学や就職で上京する方も多いでしょうし、物件選びのアドバイスを。

もっとも私が東京で暮らしていたのは大分前なので、現在では役に立つかどうか不明ですし、そもそも私のフォロワーにそれぐらいの年頃の方がいるとも思えないのですが。

 

 

高くても通勤通学時間が短い物件を。

私は田舎暮らしで、家賃なんて無駄と思っていて、大学から遠くて安い物件を最初に選んで住んだが、これは失敗である。*1

片道15分節約できれば1日30分、1週間(5日)で2時間半、一ヶ月で10時間の節約である。

あとは自分の時間の価値をかけてみるべきだが、時給1,000円と考えれば1万円の価値はある。

 

また部屋が大学に近ければ大学のリソースに頼りやすい、というのもある。

プロパンガスはやめておこう

プロパンガスは高い。夏場にほぼ毎日シャワーを浴びていたらガス代が恐ろしいことになった。なので物件を選ぶときには都市ガスか、オール電化が望ましい。

同じ条件の物件で5千円以上安くないと光熱費で相殺されてしまう。

 

www.survive-m.com

ロフトは避けよう

最初に住んだ物件はロフトだったが

  • はしごを置くスペースが無駄
  • 暖房は上のほうが温まり、下の室内で過ごす場合、暖房が効かない。
  • 逆に冷房はロフトでは効きにくい。
  • 天井が高いため、照明の交換に脚立が必要となり、管理会社に依頼しなければならない。

とあまり良くなかった。

ロフト部屋の経験者で良かった、という人はいるのだろうか?

 

suumo.jp

apple-apaman.jp

ワンルームは避けよう

理由は冷蔵庫の稼働音が寝てるときでも鳴るため。

冷蔵庫と寝床の間に仕切りが欲しい。

最低でも1Kを選ぼう。

casa-alberta.com

 

 

私が大学生の頃はコンテンツ自体、CDやレーザーディスク、紙などの物理的なものであったのと、AV再生の機器がコンパクトではなかった(テレビがブラウン管の時代である)、ということで広さが必要であったが、ストリーミングや電子書籍などで楽しめる現代ではさほど広さは要らないかと思う。

 

こうして見ると確かにすごいiPhone 1980年 vs. 2010年:DDN JAPAN

*1:なお、西武線は通学定期が安かったので、遠くなっても家賃の安さを相殺せずに済んだ。