茨城県理学療法士会は理事の唐澤幹男氏や所属会員が、日本理学療法士協会の見解に反する違法な施術業務に従事することを黙認している。

 

KINMAQ整体院というフランチャイズチェーン

施術者が全て理学療法士(PT)の免許を受けていることを売りにしている、KINMAQ整体院というフランチャイズ(FC)チェーンがある。

 

整体院のFCチェーン

KINMAQ整体院とは?

「どこに行っても治らない痛みやしびれに長年悩まされている疼痛難民の救いの手」として、所属セラピスト全員が理学療法士という国家資格を持った慢性期リハビリのプロで構成された整体院です。今の社会は、お客様は、整体院に何を求めているのか。お客様にとってベストな整体院とはどんなものか。こういったことを愚直に問いかけ、考え抜いて、具体的なサービスの形にすることからKINMAQ整体院は始まりました。「どこに行っても治らなかった痛みやしびれに悩むお客様が、行列をなす整体院。」この着想を得て、本当にお客様が喜び必要とする、今までにない整体院づくりへの挑戦を続けています。

www.medical-reha-group.jp

この説明から、KINMAQ整体院が提供する役務の目的が慢性疼痛の治療であり、医療関連性を有することは明らかだろう。

 

binbocchama.hatenablog.com

医師法17条にいう「医業」の内容となる医行為とは,医療及び保健指導に属する行為のうち,医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為をいう。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89717

PTによる、医師の指示なしでの整体施術の問題点

理学療法士の免許業務

理学療法士は国家資格であるが、その免許の内容等は理学療法士及び作業療法士法(以下、PT法)に書かれている。

(定義)
第二条 この法律で「理学療法」とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マツサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。


3 この法律で「理学療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示の下に理学療法を行なうことを業とする者をいう。

 

(業務)
第十五条 理学療法士又は作業療法士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として理学療法又は作業療法を行なうことを業とすることができる。


2 理学療法士が、病院若しくは診療所において、又は医師の具体的な指示を受けて理学療法として行なうマツサージについては、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)第一条の規定は、適用しない。

というわけで、理学療法士が免許された業務は「医師の指示のもと」「診療の補助」としてであって、医師の指示なしに、病院、診療所以外で治療行為をすることを認めてはいない。

PTが医師の指示なしに行える行為は、免許を持たない者(無資格者、一般人)と変わらない。

実際、公益社団法人日本理学療法士協会(以下、PT協会)は下記の見解を出している。

 

身分法上は、「理学療法士とは、厚労大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示の下、理学療法を行うことを業とする者をいう。」となっています。したがって、理学療法士が医師の指示を得ずに障害のある者に対し、理学療法を提供し、業とすることは違反行為となります

本会としましては、理学療法士の「開業権」及び「開業」については、現行法上、全く認められるものではないとの見解に立っています。


ただし、身体に障害のない方々への、予防目的の運動指導医師法理学療法士及び作業療法士法等に抵触しませんが、事故あるときには、他の法的責任が免除されることはありません。医師とのしっかりとした連携の上で、より安全で効果的な運動指導を行うことが求められます。

公益社団法人 日本理学療法士協会による見解

https://www.japanpt.or.jp/upload/japanpt/obj/files/members/kyuukoku20150130.pdf

法改正によらず、PTによる独立判断での施術を認めることの問題点

一般の方からすれば病院で治療できるだけの知識のあるPTが整体院で施術しても良いではないか、と思われるかもしれない。

しかし、医師の指示なしにPTが治療行為を行える法的根拠が無い以上、PTが医師の指示なしに行える行為は無資格者でも行える、ということになる。

後述する通り、KINMAQ整体院では診察、診断を行っており、これが違法では無いとすると、無資格者も診察、診断を行えることになる。

PTが医師の指示なしに行う整体施術に守秘義務はない。

PTも医療従事者である以上、PT法で守秘義務は規定されている。

(秘密を守る義務)
第十六条 理学療法士又は作業療法士は、正当な理由がある場合を除き、その業務上知り得た人の秘密を他に漏らしてはならない。理学療法士又は作業療法士でなくなつた後においても、同様とする。

PTの業務は前述した通り、「医師の指示のもと」「診療の補助」としての理学療法です。

つまり、医師の指示を受けずに行う治療行為、整体施術はPTの業務ではありません。

なのでPTが整体院の業務で知り得た人の秘密を他に漏らしてもPT法16条には違反しません

 

例えば医師の場合、守秘義務と、守秘義務違反に対する罰則は刑法134条に規定されています。

医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6カ月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

独立判断での施術が免許されている鍼灸マッサージ師や柔道整復師にも守秘義務は規定されており*1、違反には刑事罰もあります。

 

医師や鍼灸マッサージ師、柔道整復師は前科がついた場合、免許の剥奪もあります。

なので医師や鍼灸マッサージ師が業務で知った人の秘密を漏らせば免許剥奪もあり得ます。

もちろん、PTも医師の指示のもとでの業務で知り得た人の秘密を漏らせば免許剥奪の可能性があります。

しかし前述したように、PTが医師の指示を受けずに、自らの判断で行う整体施術はPTが免許された業務ではないので、PT法の守秘義務の対象になりません。

なのでPTが整体業務で知り得た人の秘密を漏らしても刑事罰は課せられず、PTの免許を失う危険もありません。

 

問診・検査などの診察では人の秘密(健康状態を含む)を知りうる。

守秘義務に関しては判例があり、裁判官千葉勝美の補足意見として次のような意見が述べられている。

 したがって,同条(筆者注:刑法134条)は,第一次的には,このような患者等の秘密を保護するため,第二次的(あるいは反射的)には,患者等が安心して医師に対し秘密を開示することができるようにし,医師の基本的な医行為が適正に行われるようにすることを企図し,いわば医師の業務自体を保護することも目的として制定されたものといえる。
 同条が,医師以外にも同じような業務の特徴を有する職業に就いている者を限定列挙しているのも,その趣旨である。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=81997

守秘義務規定がない、無資格者および免許外の整体業務で、患者の秘密を知り得る診察行為を法的に認める理由はない。

KINMAQ整体院草加院を経営する理学療法士、唐澤幹男氏は茨城県理学療法士会の理事であり、日本理学療法士協会の代議員をしている。

KINMAQ整体院はフランチャイズチェーンであり、直営院を除けばFC加盟社が経営する。

埼玉県草加市には草加院があり、そこのオーナーは唐澤幹男氏という理学療法士である。

www.medical-reha-group.jp

唐澤氏が講師をするセミナーの紹介を見ると公益社団法人茨城県理学療法士会の理事であり、PT協会の代議員もしている。

唐澤氏のツイートより

株式会社Total body makeの代表取締役、というか草加院を経営しているのは同社であろう。

私は前述のPT協会の見解を示しながら、唐澤氏の上記ツイートを引用RTした。

そしたら唐澤氏は私をブロックしてきた。

なにかやましいことでもあるのあろうか?

なお、セミナーの内容は「保険外サロン開業に向けた準備と開業後の運営のコツ」だそうで、「理学療法士が保険外サロンを経営する際の注意すべき点や、ずっと続けるために必要なことについてお話しいたします。」という内容紹介である。

kokokara.online

「注意すべき点」なら法令遵守も含まれると思うが。

PTが診察、診断を伴う治療行為を業として行うことができる法的根拠があるならわざわざブロックしなくても良いと思うが。

 

KINMAQ整体院の施術業務は違法施術である。

それではKINMAQ整体院草加院のウェブサイトを見ながら違法性を指摘していこう。

soka.kinmaku-m.com

診察・診断行為

まずトップページであるが

KINMAQ整体院草加院のトップページ https://soka.kinmaku-m.com/ より

「約30分の姿勢分析+カウンセリング+検査で原因を特定します」と書かれている。

症状の原因を特定するということは「診断」である。そしてそのための「カウンセリング」「検査」は診察である。

「診療の補助」の判断基準を示した判決として、富士見産婦人科病院事件*2というのがある。

同事件は医師である被告人が無資格者をして「診療の補助」をさせたとして保健師助産師看護師法違反に問われた事件であるが、同判決では

医師が無資格者を助手として使える診療の範囲は、おのずから狭く限定されざるをえず、いわば医師の手足としてその監督監視の下に、医師の目が現実に届く限度の場所で、患者に危害の及ぶことがなく、かつ、判断作用を加える余地に乏しい機械的な作業を行わせる程度にとどめられるべきものと解される。

と判示されている。

そして看護師が「診療の補助」つまり相対的医行為に該当する行為であっても、医師の指示なしにで業として行えば保健師助産師看護師法第37条違反となる。

第三十七条 保健師助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。

ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣かん腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。

PT法には医師の指示なしでの理学療法を直接禁止する条文は無い*3が、それは医師法17条違反となる。

量刑が保助看法37条違反より重かったら量刑不当となろう。

 

そんなわけで医師の指示なしに、PTが症状の原因を特定することは医師法17条違反である。

医師又はPTで無いと習得できない施術

下記のページではPTと柔道整復師との違いを説明している。

あん摩マッサージ指圧師については言及していない。

soka.kinmaku-m.com

それで

KINMAQ整体院では、セラピスト全員が理学療法士資格をもち、医師や理学療法士などの専門家でなければ習得できない特別な技術を習得、科学的なエビデンスを元にお客様のお悩みの根本改善に取り組んでいます。

https://soka.kinmaku-m.com/column1

と書いてある。

「医師や理学療法士などの専門家でなければ習得できない特別な技術」って、無資格者では行えない技術と読め、つまり医行為にしか解釈できないのですが。

小括:KINMAQ整体院での施術は医行為であり、違法施術である。

以上より、KINMAQ整体院での施術は診察、診断、特別な技術による行為であって、それらの行為が医行為であることは昭和30年5月24日最判の趣旨に照らして明らかである。

茨城県理学療法士会による違法施術の黙認

茨城県理学療法士会での唐澤氏の紹介

茨城県理学療法士会の理事・監事の名簿は以下の通り。

https://www.pt-ibaraki.jp/about/.assets/4.pdf

茨城県理学療法士会理事名簿

令和元・2年度というのは改選で変更が無かったので使い回しているのだろう。

唐澤氏以外の理事は病院、介護関係、教育機関に所属しており、唐澤氏の所属は「(株)Total Body Make」となっている。

この会社はKINMAQ以外にも施術所を運営しており、そこもPTが医師の指示なしで治療行為をする施設である。

totalbodymake.com

こちらも医師の指示なしでPTが「問診」する旨が書かれている。

https://totalbodymake.com/menu/ より

日本理学療法士協会での唐澤氏の紹介

また唐澤氏はPT協会の代議員であるが、PT協会の資料で唐澤氏は「自宅会員」となっている。

日本理学療法士協会の代議員選挙の結果(茨城県) https://www.japanpt.or.jp/about/election/08_2021_daigiin.pdf

代議員選挙は2022年(令和4年)3月なので、所属先を無登録ということもあるまい。実際、茨城県士会では所属先が書かれているわけで。

茨城県理学療法士協会は理事・会員の所属先に整体院を記載

茨城県理学療法士会のウェブサイトには会員の所属先が書かれているページがある。

www.pt-ibaraki.jp

そこに「筋膜メディカル整体院 イーアスつくば本店」と「Total Body Makeつくば」というのが書かれている。

茨城県理学療法士協会会員所属施設 https://www.pt-ibaraki.jp/about/facility.html

筋膜メディカル整体院はKINMAQ整体院の旧称である。

KINMAQ整体院(旧筋膜メディカル整体院)ブランドサイト|M&メディカルリハ株式会社

Total Body Makeつくばは前述した、唐澤氏が運営している、医師の指示なしで問診、治療する施術所である。

小括:日本理学療法士協会が所属として表示することを許していない施設を、茨城県理学療法士会は表示している。

以上より、PT協会が会員所属先として表示することを認めていない整体院及び整体院運営会社を、茨城県士会は積極的に会員所属先として表示していることが認められる。

これは茨城県理学療法士士会が違法業務を黙認していると言わざるを得ない。

*1:あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第7条の2、柔道整復師法17条の2

*2:東京高裁平成元年2月23日判決 昭和63(う)746
判例タイムズno.691 1989.5.15 p152 東京高裁(刑事)判決時報40巻1〜4号9頁 

*3:視能訓練士法にはあるが、それは保助看法37条違反よりも罰則が軽い。