スマホに取り付けた一般医療機器による眼球撮影は医行為ではない、というグレーゾーン解消制度での回答

令和5年1月13日、経済産業省のグレーゾーン解消制度で、「スマートフォンに装着する前眼部撮影用医療機器の販売・貸与」というサービスに関する照会の回答が出された。

照会書は下記PDF

https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/press/230113_shokaisho3.pdf

厚労省による回答書は下記のとおり。

 3.新事業活動に係る事業の概要
 ① 事業者は、病院に対し、スマートフォンのカメラ部分に取り付けることで、スマートフォンが備えるカメラ光源を利用して前眼部の画像を撮影し、観察をすることができる医療機器(以下「本件医療機器」という。)を譲渡または貸与する。


 ② 病院は、本件医療機器を利用し、看護師、臨床検査技師視能訓練士といった医師以外の者をして、前眼部の画像を撮影する。


 ③ 指定病院の医師が、当該画像を用いて、白内障等の眼科疾患の有無を診察する。


4.確認の求めの内容
看護師、臨床検査技師または視能訓練士といった医師以外の者が、人間ドック等の健康診断において、本件医療機器を用いて前眼部の画像を撮影することが、医師法第17条の「医業」に該当するか。


5.確認の求めに対する回答の内容
医師法(昭和23年法律第201号)第17条に規定する「医業」とは、当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)を、反復継続する意思をもって行うことであると解している。
上記3.に記載の事業の概要のうち、②においては、本件医療機器を使用方法に沿って使用する限りは、医行為に該当せず医師法第17条に違反しない。

なお、撮影した画像に基づく診断は医師が行う必要があることから、当該事業を行うに当たっては、医療機関において行う等、医師の適切な関与のもとに行うこと。

https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/press/230113_yoshiki3.pdf

照会書では

 イ 本件使用方法の再現性

本件医療機器は、別紙資料のとおり、極めて簡単にスマートフォンに装着することができるものであり、装着さえ完了すれば、スマートフォン自体の光源を利用して、撮影が可能である。
また、本件医療機器における撮影は、動画を撮影することにより複数の画像を取得する仕様になっているため、画像が不鮮明で医師による撮影が困難という事象は発生しにくい。さらに、仮に全ての撮影画像が不鮮明で医師の診断に支障を来たす場合であっても、診断医師は撮影者に対して本サービスのチャット機能を通じて画像の再撮影を求めることができるため、医師による検診の見落としも発生しない。
以上のとおり、本件医療機器は、誰が使用したとしても、本件使用方法を再現できる

と誰が使用したとしても再現性が確保できるとしている。

その上で、医師法に触れるかどうかに関しては

また、眼底検査は、侵襲性が低い医行為として、法律上医師の指示があることを条件に視能訓練士臨床検査技師による検査が認められているが、眼底検査よりも侵襲性の低い細隙灯顕微鏡検査について、特に視能訓練士臨床検査技師による実施可能項目として法律で規定されていないことからすると、法自身も細隙灯顕微鏡検査はそもそも医行為ではないものと位置づけているものと整理することができる。

と本件の行為が医療機器の細隙灯顕微鏡検査であるという前提のもと、医行為でないと主張している。

看護師は診療の補助行為を広く行える。

視能訓練士の免許業務は視能訓練士法で以下のように規定されている。

(定義)
第二条 この法律で「視能訓練士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、視能訓練士の名称を用いて、医師の指示の下に、両眼視機能に障害のある者に対するその両眼視機能の回復のための矯正訓練及びこれに必要な検査を行なうことを業とする者をいう。

(業務)
第十七条 視能訓練士は、第二条に規定する業務のほか、視能訓練士の名称を用いて、医師の指示の下に、眼科に係る検査(人体に影響を及ぼす程度が高い検査として厚生労働省令で定めるものを除く。次項において「眼科検査」という。)を行うことを業とすることができる


2 視能訓練士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として両眼視機能の回復のための矯正訓練及びこれに必要な検査並びに眼科検査を行うことを業とすることができる

厚生労働省令で定めるのは禁止行為である。

視能訓練士は診療の補助として、広く眼科検査が行える。

 

一方、臨床検査技師は、臨床検査技師等に関する法律で以下のように免許業務が規定される。

(定義)
第二条 この法律で「臨床検査技師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、臨床検査技師の名称を用いて、医師又は歯科医師の指示の下に、人体から排出され、又は採取された検体の検査として厚生労働省令で定めるもの(以下「検体検査」という。)及び厚生労働省令で定める生理学的検査を行うことを業とする者をいう。

保健師助産師看護師法との関係)
第二十条の二 臨床検査技師は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として、次に掲げる行為(第一号、第二号及び第四号に掲げる行為にあつては、医師又は歯科医師の具体的な指示を受けて行うものに限る。)を行うことを業とすることができる
一 採血を行うこと。
二 検体採取を行うこと。
三 第二条の厚生労働省令で定める生理学的検査を行うこと。
四 前三号に掲げる行為に関連する行為として厚生労働省令で定めるものを行うこと。

診療の補助として採血、検体採取、厚生労働省令で定めた行為しかできない(限定列挙)のである。

そして省令で定めた行為には細隙灯顕微鏡検査は無いのである。

つまり、臨床検査技師に細隙灯顕微鏡検査をさせるには、同検査が医行為でない方が都合が良いのである。

 

そして医行為でないなら無資格者に行わせることも可能である。

病院のコメディカルの実務には詳しくないが、臨床検査技師が眼科検査に携わることがあるのだろうか?

この照会、臨床検査技師ではなく、無資格者に行わせるとして照会したら違う結果になったのでは?と思ったりする。