あはき法第19条裁判東京地裁判決第3の2:憲法22条1項適合性とその他

 

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 2 争点1(あはき師法附則19条1項の憲法22条1項適合性)について

判決文に見出しが無いのもあるので、その場合は適当な見出しをカッコ付きでつける。

 

(1)(憲法22条適合の一般的な判断)

ア (薬局距離制限違憲事件の引用)

 憲法22条1項は,狭義における職業選択の自由のみならず,職業活動の自由の保障をも包含しているものと解すべきであるが,職業は,本質的に社会的でかつ主として経済的な活動であって,その性質上,社会的相互関連性が大きいものであるから,職業の自由は,それ以外の憲法の保障する自由,殊にいわゆる精神的自由に比較して,公権力による規制の要請が強く,同項の規定においても特に公共の福祉に反しない限りという留保が明記されている。

しかし,職業は,その種類,性質,内容,社会的意義及び影響が極めて多種多様であるため,その規制を要求する社会的理由ないし目的も千差万別で,その重要性も区々にわたるのであり,これに対応して,現実に職業の自由に対して加えられる制限もそれぞれの事情に応じて各種各様の形をとることとなる。

そのため,当該規制措置が憲法22条1項にいう公共の福祉のために要求されるものとして是認されるかどうかは,これを一律に論ずることができず,具体的な規制措置について,規制の目的,必要性,内容,これによって制限される職業の自由の性質,内容及び制限の程度を検討し,これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならない。

そして,一般に許可制は,単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて,狭義における職業選択の自由そのものに制約を課するもので,職業の自由に対する強力な制限であるから,その合憲性を肯定し得るためには,原則として,重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要するものというべきである最高裁昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁参照)。

 

イ (小売市場事件の引用)

 他方で,憲法は,全体として,福祉国家的理想の下に,社会経済の均衡のとれた調和的発展を企図しており,その見地から,全ての国民にいわゆる生存権を保障する等,経済的劣位に立つ者に対する適切な保護政策を要請し,国の責務として積極的な社会経済政策の実施を予定しているものということができ,職業の自由を含む個人の経済活動の自由に関する限り,社会経済政策の実施の一手段として,これに一定の合理的規制措置を講ずることは,もともと,憲法が予定し,かつ,許容するところと解するのが相当である。

そして,社会経済の分野において,法的規制措置の必要の有無や法的規制措置の対象・手段・態様などを判断するに当たっては,その対象となる社会経済の実態についての正確な基礎資料に基づき,具体的な法的規制措置が現実の社会経済にどのような影響を及ぼすか,その利害得失を洞察するとともに,広く社会経済政策全体との調和を考慮する等,相互に関連する諸条件についての適正な評価と判断を必要とするものである。

したがって,上記のような社会経済政策上の積極的な目的のためにする個人の経済活動に対する法的規制措置については,このような評価と判断の機能を備えた立法府の政策的・技術的な判断に委ねるほかはなく,裁判所は,基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないものというべきである最高裁昭和45年(あ)第23号同47年11月22日大法廷判決・刑集26巻9号586頁参照)。

ウ (あはき法19条について)

 あはき師法附則19条1項は,当分の間,厚生労働大臣等は,視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等の認定又は定員増加の承認の申請に対し,視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認めるときは,その認定又は承認をしないことができると定めている。

これは,視覚障害者は,その障害のため,事実上及び法律上,従事できる職種が限られ,転業することも容易ではないところ,視覚障害者については,従来からその多くがあん摩マッサージ指圧師の業務に従事してきたことから,視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し,その生計の維持が著しく困難とならないようにすることで,視覚障害者を社会政策上保護することを目的とするものであり,そのための手段として,視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等の設置及び定員の増加について一種の許可制を採用するものである。

 

エ (違憲はどんな場合か。)

 したがって,あはき師法附則19条1項による,視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等を設置しようとする者及びあん摩マッサージ指圧師の資格を取得しようとする視覚障害者以外の者の職業選択の自由に対する規制については,それが重要な公益のために必要かつ合理的な措置であることについての立法府の判断が,その政策的・技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理である場合に限り,憲法22条1項に違反するものと解するのが相当である。

 

(2)立法の目的

 原告は,あはき師法附則19条1項の制定から50年が経過し,その立法の目的は,正当性を失っている旨主張するので,以下,検討する。

ア (「当分の間」について)

 原告は,あはき師法附則19条1項は,昭和22年の同法制定の際に所定の届出をした医業類似行為業者に限っては,期限を定めて医業類似行為の禁止が猶予されていたものが,昭和39年改正において,この期限が外され,猶予が事実上一代限り継続することになったため,これに異議を唱えていた視覚障害者に対する融和策として設けられた規定であり,同項にいう当分の間とは,上記の届出医業類似行為業者の高齢,死去等により業が行われなくなるまでと解すべきであるから,同項の制定から50年を経過した以上,既に同期間は経過している旨主張する。

 しかしながら,前記1⑴のあはき師法附則19条1項の制定経緯をみると,従前より,国会等において視覚障害者であるあん摩師等の職域の保護を求める意見がみられ,昭和34年頃には,中央審議会の要望を受けて,視覚障害者以外のあん摩師の養成学校等の新設及び生徒の定員増加を抑制する行政措置がとられ,昭和36年のあはき師法改正時において,視覚障害者であるあん摩師の職域優先確保のための法的措置を速やかに検討・実施することが附帯決議されていたこと,その後,中央審議会において,あん摩師を保健あん摩師と医療マッサージ師とに分けた上,保健あん摩師について視覚障害者の職域を優先的に確保するという意見が採択されたが,この意見については一部の関係団体から強い反対があったことから法案提出には至らず,議員提出法案の形で,上記意見に代わる視覚障害者の職域優先措置として,あはき師法附則19条1項が制定されたことが認められる。

 

 これらの制定経緯からすれば,同項は,視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先することを専らの目的として制定されたものというべきであり,同項にいう当分の間も,視覚障害者に関し,あん摩マッサージ指圧師以外の適職が見出されるか,又は視覚障害者に対する所得保障等の福祉対策が十分に行われることにより,視覚障害者がその生計の維持をあん摩関係業務に依存する必要がなくなるまでの間を意味するものと解するのが相当である。

 

 上記制定経緯をみても,同項の規定に当分の間との文言を挿入することが,届出医業類似行為業者に係る禁止猶予期限を撤廃することと関連づけて議論されていた形跡はうかがわれず,原告の主張は採用できない。

 

イ (視覚障害者の状況について)

 原告は,視覚障害者をめぐる福祉・補償の法制度が整備され,社会のバリアフリー化により職業の選択の幅も広がり,視覚特別支援学校においても生徒数が減少し,あん摩マッサージ指圧を履修する生徒も激減するなど,視覚障害者のあん摩マッサージ指圧師業への依存度は減ってきており,障害年金制度の拡充等により視覚障害者の生計が改善し,国の法律や政策における障害者像も変化した現在では,あはき師法附則19条1項の目的は正当性を失っている旨主張する。

 確かに,あはき師法附則19条1項が制定された昭和39年当時と現在とを比較すると,障害者に対する年金制度(障害年金)が拡充されるなど障害者の福祉等に関する法制度が更に整備され,パソコン等のICT技術の普及により,視覚障害者には,事務的職業等の職業選択の道が開かれるようになる(甲2,70)など,視覚障害者をめぐる社会事情は変化してきていることが認められる。

 しかしながら,一方で,前記認定のとおり,視覚障害者の総数は減少しておらず,視覚障害者の就業率は現在も低水準となっており(平成18年で21.4%),就業者の中ではあん摩・マッサージ・はり・きゅう関係業務に就いている者の割合がなお高い状況にあり(平成18年で29.6%),重度の視覚障害のある有職者に至っては,7割を超える者があん摩・マッサージ・はり・きゅう関係業務に就いていることが認められる。

また,視覚特別支援学校における生徒数やあん摩マッサージ指圧関係の科目を履修する生徒が減少しているとしても,平成28年において,視覚障害のある新卒者のうちの相当数(355名)があん摩マッサージ指圧師国家試験の受験をしていることが認められる。

そうすると,視覚障害者におけるあん摩マッサージ指圧師業の重要度が特別な保護を必要としない程度にまで低下したとみることは相当ではない。

 さらに,視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の収入をみても,平成25年時点で年収300万円以下の者が約76%を占めており,また,障害年金は必ずしも視覚障害者全員が受給できるものではなく,実際,平成14年時点では視覚障害者であるあん摩マッサージ・はり・きゅう業者のうち約半数が公的年金を受給していなかったことからすれば,障害年金制度の拡充等によっても,視覚障害者の生計が更に特別な保護を必要としない程度にまで改善されたとみることは相当ではない。

 これらのことからすれば,視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し,その生計の維持が著しく困難とならないようにするというあはき師法附則19条1項の目的の正当性が,現在において失われたと認めることはできない。

(3)規制の必要性及び合理性

ア 規制の内容及び規制の程度

 あはき師法附則19条1項は,前記のとおり,視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等の設置等について一種の許可制を採用するものであり,当該養成施設等を設置しようとする者の職業選択の自由を制約する程度の強いものである。

一方,同項は,当該養成施設等の設置等を全面的に規制しているわけではなく,諸般の事情を勘案して,視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認められる場面に限っての規制であるから,規制の必要性に係る厚生労働大臣等の判断が適正に行われている限り,その制限は限定的であるといえる。

 また,あはき師法附則19条1項は,上記の養成施設等の設置等がされないことにより,当該養成施設等においてあん摩マッサージ指圧師の資格を取得するために必要な知識及び技能を修得する機会が制限されるという意味において,その資格を取得しようとする視覚障害者以外の者の職業選択の自由を制約しているものである

もっとも,あん摩マッサージ指圧師の資格を取得しようとする視覚障害者以外の者は,現に設置されている養成施設等に通うことによりその取得が可能となることからすれば,その職業選択の自由に対する制約は限定的である

イ 規制の必要性

(ア) (晴眼者向けの養成校抑制の必要性)

 視覚障害者は,その障害のため,事実上及び法律上,従事できる職種が限られ,転業することも容易ではないところ,前記のとおり,その就業率は現在も低水準となっており,重度の視覚障害のある有職者のうち7割を超える者があん摩・マッサージ・はり・きゅう関係業務に就いており,現在においても,あん摩マッサージ指圧師業に依存している状況にある。

 他方で,前記認定のとおり,視覚障害者以外のあん摩マッサージ指圧師は,昭和39年頃より増加し,その収入も,平成25年時点であん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の年間収入が平均636万2000円と,視覚障害者の290万円を大幅に上回っており,視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設の受験者数も,平成27年度において定員を大幅に上回っている状況にある。

また,あはき師法附則19条1項に相当する規定のない隣接業種(はり師,きゅう師及び柔道整復師)においては,柔道整復師養成施設の指定をしない処分を違法として取り消す旨の判決(福岡地裁平成10年8月27日判決。甲53)があった平成10年度以降,大幅に養成施設等の施設数及び定員が増加している状況が認められる。

 これらのことからすれば,あはき師法附則19条1項による制限がなくなれば,視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等の数及び定員が急激に増加し,視覚障害者以外のあん摩マッサージ指圧師の数も急激に増加することが想定されるのであって,このような急激な増加は,視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の業務を圧迫することになる。

 以上によれば,現在においても,視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し,その生計の維持が著しく困難とならないようにするという目的を達成するため,視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等の設置及び定員の増加を抑制する必要性の存在を認めることができる。

 

(イ) (無資格者の増加との関連)

 これに対し,原告は,視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が困難であるとすれば,その原因は,あはき師法附則19条1項の存在により,需要に対応できるだけの有資格者が養成できないことによる無資格のあん摩師の急増・跋扈にあるから,必要なことは,有資格者の数を抑制することではなく,無資格者を根絶することにある旨主張する。

 しかしながら,あはき師法附則19条1項の存在と無資格者の増加との関連性の有無及び程度が実証されているわけではなくまた,視覚障害者が置かれている上記の医業類似行為業者を含む無資格者の取締りが従前より継続的に行われている中での状況であるから,これらの無資格者の取締りと併せて,あはき師法附則19条1項のような養成施設等の規制を行うことが,今なお必要であると認められる。

したがって,原告の主張は採用できない。

ウ 規制手段の合理性

(ア)(大臣の裁量と合理性)

 上記のとおりの目的を達成するために必要な上記規制の手段として,視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認められる場合に限り,視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等の設置の認定及び定員増加の承認をしないことができるという手段を採用することは,それ自体合理的なものということができる

 そして,上記イで説示したところによれば,視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため規制が必要か否かの判断において勘案すべき事情として,あん摩マッサージ指圧師の総数及びあん摩マッサージ指圧師の養成施設等の生徒の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合を挙げることには合理的な関連性が認められるし,その判断は,その時々における上記割合のほか,視覚障害者の総数,雇用状況及び医療の状況,社会におけるあん摩マッサージ指圧師に対する需要等の様々な事情に左右されるものであり,その要件や勘案すべき事情を立法者においてあらかじめ詳細に規定することが困難な性質のものであるから,その判断を上記割合のほか諸般の事情に基づく厚生労働大臣等の専門的・技術的な裁量に委ねることとすることも不合理とはいえない。

 さらに,あはき師法附則19条2項は,厚生労働大臣等は,同条1項の規定により認定又は承認をしない処分をしようとするときは,あらかじめ医道審議会の意見を聴かなければならないとしている。

これは,学識経験等を有する委員により構成される医道審議会の意見を処分に反映させることを意図したものと解され,その委員の構成や議事の運営が適正なものである限り,処分の適正さを担保するための方策として合理的であるといえる。

 以上によれば,あはき師法附則19条1項による規制には,手段としての合理性が認められる。

 

(イ) (より緩やかな手法について)

 これに対し,原告は,上記のような目的を達成するためには,他の妥当な手段として,台湾での成功事例のように障害者が職業的に自立するような政策・立法を行うことや,昭和39年改正当時の中央審議会において検討されていたように一定の地域ごとに施術所の開設を規制することなども考えられるから,あはき師法附則19条1項による規制は不合理である旨主張する。

 しかしながら,原告の主張するような各種手段が,あはき師法附則19条1項による規制よりも明らかに合理性の点で優れており,その反面として同項による規制の合理性に疑いがもたれるというまでの事情は認められず,これらの手段の中からどれを選択するかは,正に立法府の政策的・技術的な判断によるものというべきであるから,原告の主張を採用することはできない。

 

(ウ) (障害者間及び既存設置者との差別について)

 また,原告は,あはき師法附則19条1項は,

視覚障害者と他の障害者との間,

②既に養成施設等を設置していた者とこれから設置しようとする者との間

に差別を生じさせるものであるから,手段として合理性がない旨主張する。

 しかしながら,①の点は,視覚障害者の生計維持の困難性に着目してその保護を図ること自体がいかなる意味において他の障害者を差別することになるというのか明らかではなく,②の点は,特定の分野への新規参入を規制する立法が一般にもたらす結果であり,当該規制自体に合理性が認められる限り,そのような結果が不合理な差別に当たるということはできないから,原告の主張を採用することはできない。

 

(4)(19条は憲法22条に違反しない)

 以上を総合的に考慮すると,視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し,その生計の維持が著しく困難とならないようにすることを重要な公益と認め,その目的のために必要かつ合理的な措置としてあはき師法附則19条1項を定め,これを今なお維持している立法府の判断が,その政策的・技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理であるとはいえない。

したがって,あはき師法附則19条1項は,視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等を設置しようとする者及びあん摩マッサージ指圧師の資格を取得しようとする視覚障害者以外の者の職業選択の自由を制約するものとして憲法22条1項に違反するということはできない。

 

3 争点2(あはき師法附則19条1項の憲法31条,13条適合性)について

 原告は,あはき師法附則19条1項の規定は,認定等をしない処分の要件・基準が曖昧不明確であるため,憲法31条,13条に違反する旨主張する。

しかしながら,あはき師法附則19条1項については,前したとおり,処分の要件や勘案すべき事情をあらかじめ詳細に規定することができない立法技術上の制約があり,そのような制約がある中でも,あん摩マッサージ指圧師の総数及びあん摩マッサージ指圧師の養成施設等の生徒の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合というような重要な勘案事情を例示するなどして,厚生労働大臣等の裁量判断が恣意に流れないようにする配慮がされていることからすれば,同項の規定が,処分要件等の曖昧不明確さゆえに憲法31条,13条に違反するということはできない。


4 争点3(あはき師法附則19条1項を本件申請に適用することが憲法22条1項,31条,13条,14条1項に違反するか)について


 原告は,憲法22条1項,31条,13条に関して適用違憲を主張するが,同主張は,その実質において争点1及び2の法令違憲の主張と同じである。

あはき師法附則19条1項が,憲法22条1項,31条,13条に違反しないことは前記2及び3のとおりであるから,原告の主張を採用することはできない。


 また,憲法14条1項違反の主張に関して原告が指摘する昭和57年の定員増加の承認については,本件申請(30名)より少ない10名の定員の増加であったこと,申請に係る専門学校のあん摩・はり・きゅう科の定員20名に対し,その6.5倍から7.6倍もの志願者が過去3年間で毎年存在したこと,当時の中央審議会においても定員増加を認めて差し支えないとの意見であったことなどの当該事案に固有の事情に基づいて承認がされたものと認められるから,これと事情の異なる本件申請に対し,厚生労働大臣が本件処分をしたことが,上記の事案との関係において,憲法14条1項に違反する不合理な差別に当たるということはできない。


5 結論


 以上のとおり,憲法違反をいう原告の主張はいずれも採用することができず,あはき師法附則19条1項を適用した本件処分が違法であるということはできない。


 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官 古田孝夫裁判官 髙田公輝裁判官 中野晴行