エステに休業要請が出され、マッサージが対象外なのは当然のことである。

(2021/04/24追記)

2021年4月25日から再び緊急事態宣言が出され、休業要請が出される。

東京都による休業要請対象の業種は下記ページである。

www.bousai.metro.tokyo.lg.jp

「リラクゼーション業」は休業要請対象業種である。

なお、国家資格者によるマッサージ施術所は休業要請の対象外である。

f:id:binbocchama:20210424184713p:plain

東京都 https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/013/656/1.pdf

(2021/04/24追記終わり)

さて、東京都から新型コロナウイルスの感染対策として、休業要請する対象施設のFAQが出された。

www.bousai.metro.tokyo.lg.jp

これを受けて報道されるわけだが、

www.nikkei.com

日経では「エステ休業、マッサージOK 東京都が対象業種公表」というタイトルで

東京都は13日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために休業を求める施設や店舗の詳細な業態をまとめた。床面積100平方メートル超のネイルサロンやエステサロンが休業対象となった一方、マッサージ店は対象外で、関連した業界でも判断が分かれた。「生活に不可欠かどうか」が判断基準の一つだが、個人の生活観に関わるだけに議論を呼びそうだ。

と報じている。

ツイッターで検索すると、なぜエステが休業対象で、マッサージが対象外なのか、疑問に思っている人が結構いる。

5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の反応もこんな感じだ。

toushi-world.com

マッサージ師からすればこの違いは当然のことである。

エステ業者の不満が書かれた新聞記事を批判的に取り上げたら、同業者からは結構いいねされた。

 

なので以下、解説していこう。

1次ソースを確認しよう

疑問に思われている方は東京都の資料は読んでないと思われる。

東京都の資料で対象外としている「鍼灸・マッサージ」は「※有資格者が治療を行うもの」と書かれている。

また同じ「医療施設」の欄には「整体院」も書かれている。ただし、これも「※有資格者が治療を行うもの」であって、後述する、法的な免許を持たない整体院は休業要請の対象外では無い(休業要請の対象とも断定できないが)。

報道では

医療施設は▼病院▼診療所▼歯科▼薬局▼鍼灸・マッサージ▼接骨院▼整体院▼柔道整復です。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200414/k10012385421000.html

と、有資格者が行う施設に限定される旨が省略され、誤解を招く元になっている。

 

なので法的な免許を持たない、エステ店などが「マッサージ」や「整体」を名乗っても休業要請の対象外にはなれない。

 

一方、エステは「商業施設」に分類されている。

 

業としてマッサージを行うには免許が必要。

業としてマッサージを行うには、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(以下、あはき法)第1条により、医師免許か、あん摩マッサージ指圧師の免許が必要である。

第一条 医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。

しかし町中にある「マッサージ店」は必ずしもあん摩マッサージ指圧師の免許を持っているとは限らない。なので「リラクゼーション」「もみほぐし」と言った名称で営業していることが多い。

 

また免許が必要なマッサージは厚生省の通知では

法第一条に規定するあん摩とは、人体についての病的状態の除去又は疲労の回復という生理的効果の実現を目的として行なわれ、かつ、その効果を生ずることが可能な、もむ、おす、たたく、摩擦するなどの行為の総称である。

昭和三八年一月九日 医発第八号の二各都道府県知事あて厚生省医務局長通知

とされる。

 

なので、いわゆる性感マッサージに免許は不要であるから、免許を持たない者のマッサージ営業を性的サービスと勘違いしてもやむを得なかったりする。

 

binbocchama.hatenablog.com

国家資格者のマッサージ施術所は、換気能力と消毒設備を備えなければいけない。

病院、診療所の開設に保健所の認可が必要なように、国家資格を持ったマッサージ店(施術所)の開設には保健所のチェックが必要である(正確には事後に行われるが。)。

あはき法より。

第九条の五 施術所の構造設備は、厚生労働省令で定める基準に適合したものでなければならない。
○2 施術所の開設者は、その施術所につき、厚生労働省令で定める衛生上必要な措置を講じなければならない。


第十条 都道府県知事は、施術者若しくは施術所の開設者から必要な報告を提出させ、又は当該職員にその施術所に臨検し、その構造設備若しくは前条第二項の規定による衛生上の措置の実施状況を検査させることができる。

あはき法施行規則より

(施術所の構造設備基準)
第二十五条 法第九条の五第一項(法第十二条の二第二項において準用する場合を含む。)厚生労働省令で定める基準は、次のとおりとする。
一 六・六平方メートル以上の専用の施術室を有すること。
二 三・三平方メートル以上の待合室を有すること。
三 施術室は、室面積の七分の一以上に相当する部分を外気に開放し得ること。ただし、これに代わるべき適当な換気装置があるときはこの限りでない。
四 施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること。


(衛生上必要な措置)
第二十六条 法第九条の五第二項(法第十二条の二第二項において準用する場合を含む。)厚生労働省令で定める措置は、次のとおりとする。
一 常に清潔に保つこと。
二 採光、照明及び換気を充分にすること。

と換気能力や消毒設備が義務付けられているのである。

エステは誰でも開業、施術できる。

エステは施術行為自体を直接規制する法律は無い。

なので誰でも行えるのである。

ただし、保健衛生上、危害を及ぼすおそれがあれば医師法違反になるし、浮腫などの病的な状態へのマッサージを行えば無免許マッサージとなる。

 

また法律が無いので、店の構造にも法的な規制はない。

ただ取引に関しては特定商取引法などで規制を受ける(クーリングオフやそれが可能なことを示す書面の交付義務など。)。

 

そんなわけで免許と保健所の確認が不要なエステと、それらの確認が必要なマッサージでは自ずと扱いが異なって当然なのである。

 

 

緊急事態宣言を受けた、無免許施術業界の対応

2020/12/28

本記事を含む、当ブログ記事に関してJACから発信者情報開示請求がはてな社に対して行われたが、非開示の決定がされた。

 

公明党の遠山清彦衆議院議員が財務副大臣在任時に便宜を図った、日本カイロプラクターズ協会によるSLAPP(言論弾圧)を退けました。 - びんぼっちゃまのブログ

(2020/04/13/22:32、東京都の対象施設FAQを追記)

新型コロナウィルスの対策としての緊急事態宣言が出されているわけですが、無免許の業界団体が対応した文書を出しているので取り上げる。

なお、無資格施術(整体)で新型コロナウィルスの感染者を出してるのはすでに記事にしているとおり。

 

binbocchama.hatenablog.com

 

 

日本カイロプラクターズ協会(JAC)

当会は、国内での法的資格制度の有無に係わらず、国際標準(WHO 基準)カイロプラクターは医療(ヘルスケア)従事者と認識しており、社会基盤を構築するうえで重要な職業である旨の見解を厚生労働省に連絡いたしました。また米国国土安全保障省は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の最中、社会基盤を構成する必要不可欠な職業としてカイロプラクターの営業を認めています。

[PDF]オフィス営業についての当会の見解

 医業どころか、医業類似行為ですら無い、と行政に扱われたのに、相変わらず自分たちは「医療従事者」という考えらしい。

 

binbocchama.hatenablog.com

厚労省の対応

 「社会基盤を構築するうえで重要な職業である旨の見解を厚生労働省連絡いたしました。」ということだが、厚労省は何も回答していないのであろう。

鍼灸マッサージに関しては厚労省などの公文書は出されていないものの、休業要請対象業種ではない旨、回答を受け、拡散しているわけである。

 

twitterで「カイロプラクター 厚労省 回答」と検索してもヒットしない。

鍼灸マッサージに関してはSNSで拡散されても構わないとして、厚労省は回答したのだろうが、カイロに関してはそれではまずい、という判断が有るのだろう。

米国の例を出すのは適切か?

JACは「また米国国土安全保障省は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の最中、社会基盤を構成する必要不可欠な職業としてカイロプラクターの営業を認めています。」と文書で書いており、その情報もツイートしている。

このツイートに対し、JACの会員であるカイロプラクターが

と返信している。

 

御存知の通り、米国の医療保険は原則民間保険であり、庶民でも気楽に病院・診療所の受診ができるわけではない。

またJACの会員(正式にはJCR登録者)には米国でカイロプラクター免許を取得した者もいるが、その多くは国内である。

フルタイム(全日制)のカイロプラクティック教育機関卒業生は 292 名(全登録者の56%)。その内訳は、海外教育機関の卒業生は 31 名、日本の教育機関卒業生は 261 名。

海外の教育機関の卒業生のうちアメリカの大学卒業生は 25 名

[PDF]JCR 登録者数の状況

また国内のWHO基準の学校である東京カレッジオブカイロプラクティックTCC)の前身はオーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)の日本校である。

なのでTCCやRMITの卒業生の身分はオーストラリア政府が認定しているものである。

JAC,JCRのカイロプラクターの実態を考えればオーストラリアでの扱いを示すべきだと思われる。それも日本国内の状況に当てはまるとは限らないが、米国の例よりは根拠にしやすいだろう。

日本リラクゼーション業協会の場合

 この「緊急事態宣言」は…。この要請や指示は、大半が強制力(法的拘束力)は持たないものの「緊急事態宣言」の主旨からこの要請や指示に対して可能な限り協力すべきものであると考えます。


 更に「緊急事態宣言」対象の都道府県(東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡)に於いてリラクゼーションスペース(店舗)を営業されている事業者の皆様におきましては、都道府県から発せられる要請や指示によりスペース(店舗)の営業自粛等を含め、最善の対応方法をご検討して頂く事にはなりますが、「緊急事態宣言」の主旨を充分ご理解をいただくと共に、ご協力をいただきたくお願い申し上げます。

[PDF]政府発表「緊急事態宣言」に対するご協力のお願い

営業自粛等を含め」と、必ずしも休業しろとは書いてない。実際、リラクゼーション業協会の理事長、清水秀文氏が社長をしている、ラフィネの中山とうきゅう店(神奈川県横浜市)は営業してて、集客に励んでいるようである。

なお、中山とうきゅうではベネッセの英会話教室が休業の模様である。

https://www.tokyu-store.co.jp/shop/detail.html?pdid=109

貸主に対し、休業を申し出れないわけでもあるまい。

 

まあ、医療であるとか、社会に必須なサービスと言わないのは賢いと言える。

保健医療サービスで有るが如き主張をすれば昭和35年判例を変更された時に、廃業となる。保健医療サービスではない、と主張すれば判例変更後にも生きながらえることもできよう。

 

それなら生活に不要なサービスとして、緊急事態宣言下の都府県にあるリラクゼーション店はすぐ休業すべきだと思うが。

 

東京都の対象施設FAQ

4月13日19時に東京都は対象施設のFAQを公開した。

www.bousai.metro.tokyo.lg.jp

鍼灸・マッサージ」は医療機関として対象外である。

なお、医療機関の欄に「整体院」が書かれているが、「※有資格者が治療を行うもの」と書かれている。

有資格者といっても、民間資格を含むものか、国家資格のみか、わかりづらい。

医療機関の欄は病院、診療所、歯科、薬局を含むから国家資格のみを指すことは明白だと思うが。

偽装請負が横行するリラクゼーション業界。指示を受けなければいけない、となれば労働者として守られる。

 国家資格者である鍼灸マッサージ業界も他業界のことは言えないのだが、リラクゼーションや整体などの業界では会社が施術者(業界では「セラピスト」と呼ぶのが一般的な模様。)を社員、労働者として雇用せず、個人事業主との業務委託契約にしている事が多い。

 

個人事業主フリーランスと言うとかっこよく聞こえるかもしれないが、労働者としての保護を受けられないのである。

 

労働者である(雇用関係がある)メリット

雇用関係の有る労働者の場合、私が思いつくだけでも下記のようなメリットがある。

健康保険は個人事業主(自営業)でも国民健康保険国保)はあるが、全額自分で払わなければいけない。一方、協会けんぽや組合保険など、会社の健康保険であれば保険料の半額は会社持ちである。そして国保には傷病手当金というのが無い。

傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3040/r139/

年金も自営業であれば国民年金である。

現在、国民年金の支給額は満額で月額6万5千円程度である。厚生年金は保険料の支払いによるし、保険料の自己負担は半分である。

 

また労災であるが、通勤中や業務上の怪我の治療費や休業補償が得られる。

事業者(法人、個人問わず)が人を雇う場合には必ず加入しなければならない。そして保険料は事業主が全額負担である。

建設業だと一人親方用の労災が有るらしいが、通常の業種では無い。

労災保険とは? 基礎知識や仕組み、特徴を解説 - SmartHR Mag.

 

で、雇用保険であるが、失業した時に失業給付が受けられる。

また新型コロナウィルスで話題に上る、雇用調整助成金というのもある。

この助成金は直接労働者に支給されるわけではないが、給料の一部を国が事業主に助成してくれる。

私も労働関係はそんなに詳しくないので詳しくはググってほしい。

 雇用契約ではなく、業務委託になっている実態。

いくつか例を見てみよう。

全国に600店舗以上を展開するリラクゼーションスペースの「りらくる」で働くセラピストは全国に12,000人以上居ます。その全てが業務委託契約であり、本来自由に働く事ができる個人事業主であります。しかし、現実は自由と程遠く、1ヶ月分のシフトを組まされ出退勤も管理されております。深夜2時半まで営業しており、深夜の時間帯を希望して働くセラピストは少なく、一旦深夜のシフトを組んでしまえば中々そこから抜ける許可も下りず、強制的に拘束されてしまう現状がございます。

キャンペーン · (株)りらく: リラクゼーション業界にはびこる偽装請負からセラピストを救いたい · Change.org

 

 

個人事業主に対する業務委託であれば自分が休みたい時に休めば良いのである。

なのに「本社から休業許可」が必要、というのであれば偽装請負と言わざるを得まい。

 

 このアカウントの店長は雇われ店長だそうだ。

 

経営者は、平時は施術者の雇用に伴う社会保険の負担を免れているわけである。

雇用していれば雇用調整助成金などを受けられることは上記の通り。

施術者の自由度(時間拘束や最低出勤日数の義務が無いなど。)によっては業務委託契約でも構わないが、そこまで自由なら雇われ店長が心配することでもない。

 

幸い、個人事業主にも、新型コロナウィルスによる減収に対する給付金は支払われるが、事務作業は自分でやるか、専門職に頼まねばならぬ。

個人事業主というのは、そのような社会制度に関するリテラシーを持った者でなければなるべきじゃない。施術の腕や、接客が良ければ良い、というわけではない。

ラクゼーション業界における、労働者性を争った裁判例

ラクゼーションや整体などの業界に入ることを考えている人や新人の場合、一国一城の主になることを夢見たり、手取りが多いことにメリットを感じ、雇用されることを重視しないかもしれない。

だが、今回のような有事で補償がなくて困っているセラピストがいるのは上掲のとおり。

雇用関係の確認を求めて裁判を起こしてたりもする。

 温浴施設でマッサージ等を行うセラピストが、業務委託契約の解除は解雇に当たり無効として提訴。東京地裁は、指名以外の施術は行わない等要望すれば担当を拒否できること、完全出来高労務対償性はないことなどから使用従属性はなく労働者性を否定した。契約書になかった受付業務に従事させたことについて、施術に付随する業務として未払報酬の請求も棄却した。 

リバース東京事件(東京地判平27・1・16) 温浴設備のセラピスト、委託解除され解雇と訴える 使用従属性がなく請求棄却│労働判例|労働新聞社

 

 2.イヤシス事件

 本件で被告とされたのは、リラクゼーションサロンの経営等を目的とする有限会社です。

 原告らになったのは、被告の運営する店舗施術等を担当した方です。自分達は労働者であるとして、未払い割増賃金等の支払いを求める訴えを起こしました。

 これに対し、被告は、原告らと締結した契約は労働契約ではなく、業務委託契約であると主張し、原告の請求の棄却を求めました。

 裁判所は、次のとおり述べて、原告らの労働者性を肯定しました。

フリーランスの中には労働者性の認められる方が混ざっている - 弁護士 師子角允彬のブログ

 現実は厳しいのであり、本当のフリーランス個人事業主としてやっていけるのは一握りの人たちである。

看護師は医師の指示が必要だから業務委託ができない。

ラクゼーションや整体の業界に偽装請負が横行するのは、現行法及び判例下では誰の指示を受けなくても施術できるからである。施術を個人の裁量で行っている、と言えるから業務委託契約が成立するのである。

 

その点、看護師は診療の補助を行うのに、医師の指示が必要である。

そのため、雇用関係が必要となる。指示に従う必要がある以上、業務委託はできない。

施術に指示が必要なら雇用契約を結ばなければいけない。そのための立法。

もし、国家資格を持たない者による施術には医師やあん摩マッサージ指圧師による指示が必要という法律ができたとしよう。

業務に誰かの指示が必要であれば雇用関係が必要となる。

だからリラクゼーションセラピストなどは労働者として保護されることになる。

 

法律で認めれば、国家資格者から無法者呼ばわりも受けずに済むのである。 

ラクゼーション業の労働組合も作られたようなので、新型コロナウィルスで補償を受けにくいことに不安を覚えた方々は組合に参加して、立法を求めても良いと思う。

リラクゼーション労働組合 はじめに

twitter.com

 

あん摩マッサージ指圧師の指示を受ける立場になることを嫌なセラピストもいるかもしれないが、リラクゼーション業界の親玉もあん摩マッサージ指圧師だったりする。

 

 清水 秀文(しみず ひでふみ)さん
株式会社ボディワーク 代表取締役
日本リラクゼーション業協会 理事長

東京都出身。大学を卒業して1年間、サラリーマンとして働いた後に、東京鍼灸マッサージ専門学校と東京柔道整復専門学校へ。エステサロンと接骨院の開業・経営、温浴施設の業務請負などを精力的に行う。

現在、全国に「ラフィネ」ブランド500店舗を持つボディワークの代表取締役であり、グループ会社のボディワークホールディングス代表取締役も務める。2008年に日本リラクゼーション業協会の理事長に就任。

https://relax-job.com/more/873

ラフィネを運営する株式会社ボディワークの社長さんでもあるが、ラフィネでは下記の通り、業務委託契約が原則である。

契約形態
業務委託契約
お客様にサービスを提供した分、努力した分がそのまま評価や収入につながる『完全出来高制』で、分単位の報酬をお支払いします。

※正社員登用制度あり

https://www.bodywork.co.jp/recruit/require/

セラピストの、労働者としての権利を考えているのは私と清水氏、どちらなのかを考えていただければと思う。

緊急事態宣言とあはき及び無免許施術所の扱い

新型コロナウィルスに関し、緊急事態宣言がされる見通しであり、経済活動への影響が見込まれる。

www3.nhk.or.jp

 

さて、この緊急事態宣言は新型インフルエンザ特別措置法に基づくものである。

で、知事は45条に基づき、協力を要請する。

(感染を防止するための協力要請等)
第四十五条 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、当該特定都道府県の住民に対し、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間並びに発生の状況を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間及び区域において、生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる。


2 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間において、学校、社会福祉施設(通所又は短期間の入所により利用されるものに限る。)、興行場(興行場法(昭和二十三年法律第百三十七号)第一条第一項に規定する興行場をいう。)その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者(次項において「施設管理者等」という。)に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。


3 施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる。


4 特定都道府県知事は、第二項の規定による要請又は前項の規定による指示をしたときは、遅滞なく、その旨を公表しなければならない。

第2項の政令であるが、新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令では

(使用の制限等の要請の対象となる施設)
第十一条 法第四十五条第二項の政令で定める多数の者が利用する施設は、次のとおりとする。ただし、第三号から第十三号までに掲げる施設にあっては、その建築物の床面積の合計が千平方メートルを超えるものに限る。


一 学校(第三号に掲げるものを除く。)
二 保育所、介護老人保健施設その他これらに類する通所又は短期間の入所により利用される福祉サービス又は保健医療サービスを提供する施設(通所又は短期間の入所の用に供する部分に限る。)


三 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する大学、同法第百二十四条に規定する専修学校(同法第百二十五条第一項に規定する高等課程を除く。)、同法第百三十四条第一項に規定する各種学校その他これらに類する教育施設
四 劇場、観覧場、映画館又は演芸場
五 集会場又は公会堂
六 展示場
七 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗(食品、医薬品、医療機器その他衛生用品、再生医療等製品又は燃料その他生活に欠くことができない物品として厚生労働大臣が定めるものの売場を除く。)
八 ホテル又は旅館(集会の用に供する部分に限る。)
九 体育館、水泳場、ボーリング場その他これらに類する運動施設又は遊技場
十 博物館、美術館又は図書館
十一 キャバレー、ナイトクラブ、ダンスホールその他これらに類する遊興施設
十二 理髪店、質屋、貸衣装屋その他これらに類するサービス業を営む店舗
十三 自動車教習所、学習塾その他これらに類する学習支援業を営む施設

十四 第三号から前号までに掲げる施設であって、その建築物の床面積の合計が千平方メートルを超えないもののうち、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等の発生の状況、動向若しくは原因又は社会状況を踏まえ、新型インフルエンザ等のまん延を防止するため法第四十五条第二項の規定による要請を行うことが特に必要なものとして厚生労働大臣が定めて公示するもの


2 厚生労働大臣は、前項第十四号に掲げる施設を定めようとするときは、あらかじめ、感染症に関する専門的な知識を有する者その他の学識経験者の意見を聴かなければならない。

とある。3〜13号は床面積が1000平方メートル以上の施設が対象である。

 

さて、国家資格者の施術所であれば2に含まれると考えられる。

「通所により利用される保健医療サービスを提供する施設」と言えるだろう。

広さは関係無いわけである。

 

またスポーツジムなどは9号、風営法の対象となると11号であろう。

標準産業分類でリラクゼーション業は「中分類78 洗濯・理容・美容・浴場業」の「789 その他の洗濯・理容・美容・浴場業」に含まれるので12号に該当すると思われる。

ただ1000平方メートル以上の広さが有るリラクゼーション店もあまり無い気がする。

 

さて、治療を目的にする整体やカイロプラクティックなどの無免許施術所はどういう扱いになるのか?

実際、整体師が感染させている以上、営業を中止させるべきだろう。

binbocchama.hatenablog.com

 しかし保健医療サービスで無ければ1000平方メートルの壁がある。

保健医療サービスとして規制してしまうと、彼らは自分たちが保健医療サービスと認められた、と開き直れるだろう。

厚生労働大臣の公示で、12号の規制対象にしてほしいものである。

 

(2020/04/06追記)

緊急事態宣言へ都対応案 パチンコ・理髪店にも休業要請(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

東京都は

【基本的に休止を要請する施設】

大学や専修学校など教育施設、自動車教習所、学習塾、体育館、水泳場、ボウリング場、ゴルフ練習場、バッティング練習場、スポーツクラブ、劇場、映画館、ライブハウス、集会場、展示場、博物館、美術館、図書館、百貨店、マーケット、ショッピングモール、ホームセンター、理髪店、質屋、キャバレー、ナイトクラブ、バー、個室ビデオ店、ネットカフェ、漫画喫茶、カラオケボックス、パチンコ店、場外車券売り場、ゲームセンター

【施設の種別によっては休業を要請する施設】

学校(大学などを除く)、保育所、介護老人保健施設

【社会生活を維持する上で必要な施設(生活インフラ)】

病院、診療所、薬局、卸売市場、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホテル、バス、タクシー、レンタカー、電車、物流サービス、工場、公衆浴場、飲食店(夜間・休日など営業時間の短縮、居酒屋は休業の要請)、金融機関や官公署(いずれもテレワークの一層の推進を要請)

 と検討しているそうだ。あはき及び無免許施術所はどこにも分類されていない。

(追記終わり)

 

マッサージ師に対する風評被害。新コロナウィルスを感染させたのは整体師である。コロナばらまき男の親も整体師だ。

(2020/03/09追記あり)

 

 

新型コロナウィルスに関して、あん摩マッサージ指圧師(マッサージ師)を震撼させるニュースがあった。

 

www.fnn.jp

愛知県在住の50代の男性と60代の女性が新型コロナウイルスに感染していたことがわかりました。男性は感染者との接触が今のところ確認されず、感染経路が不明です。愛知県内の感染者数はこれで69人になりました。

 感染が確認されたのは尾張地方に住む50代の男性と蒲郡市に住む60代の女性です。50代男性は容体は安定していますが、これまでのところ感染者との接触が確認されず、感染ルートが分かっていません。

 また、蒲郡市に住む60代の女性は、3月3日に陽性判定された80代の男性から感染したとみられています。

 男性はマッサージ師でこの女性は2月24日に施術を受けていました。

 愛知県は、2月17日から27日の間に蒲郡市周辺で出張マッサージを受け、心配がある人は豊川保健所に相談するよう呼び掛けています。

 愛知県内の感染者はこれで69人となりました。

 

マッサージ師が施術対象者を感染させた、となると我々、マッサージ師にとっては一大事である。

 

この感染に関する愛知県の発表である。

新型コロナウイルス感染症患者の発生について - 愛知県

愛知県は当初(今でもだが)

※2月24日(月曜日)に、3月3日本県発表の新型コロナウイルス陽性患者(県内34例目(80歳代男性、マッサージ(整体)師))(注1)による施術を受けています。

(略)

2月17日(月曜日)~2月27日(木曜日)の間に、出張マッサージ(整体)(個人形態)を受けた方は愛知県豊川保健所(帰国者・接触者相談センター 電話:0533-86-3177)に相談してください。

と書いていた。整体師なのか、マッサージ師なのか、わからない書き方である。

 

そしてあん摩マッサージ指圧師の問い合わせや抗議があったのか、発表の翌日(3月8日)に

※調査の結果、本人はあん摩マッサージ指圧師の資格を持っておらず、整体を行う者であることが確認されました。(3月8日追記)

と追記された。

(2020/03/09追記)

愛知県の発表(同URL)から3月8日の訂正が削除され

※2月24日(月曜日)に、3月3日本県発表の新型コロナウイルス陽性患者(県内34例目(80歳代男性、整体を営む者))(注1)による施術を受けています。 (3月9日訂正)

 

2月17日(月曜日)~2月27日(木曜日)の間に、出張整体(個人形態)を受けた方は愛知県豊川保健所(帰国者・接触者相談センター 電話:0533-86-3177)に相談してください。 (3月9日訂正)

と訂正された。

(2020/03/09追記、一旦終わり) 

(2020/03/10追記)

愛知県は別のプレスリリースで、経緯は残している模様。

https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/325054.pdf

「マッサージ師」と標記しておりましたが、3月8日(日)に改めて確認した結果、あん摩マッサージ指圧師の資格を持っておらず、整体を行う者であることが確認されましたので、訂正します。

(追記終わり)

 

私のブログを初めて読む方に説明する。

業としてマッサージを行うには、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(あはき法)第1条により、あん摩マッサージ指圧師という国家資格(免許)が必要である。

整体師と名乗るには何の免許や資格も不要である。あなたが整体師と名乗ればそれでOKである。

 

本来、整体は医業類似行為として、あはき法第12条で禁止されている。

しかし昭和35年最高裁が、禁止処罰の対象を「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」に限定した判決を出した(業界では「昭和35年判決」と呼んでいる。)ため、人の健康に害を及ぼすおそれがない、という建前で営業できているのである。

しかし、実際には健康被害が発生しており、国民生活センター消費者庁が被害に関する報告書を出しているのである。

手技による医業類似行為の危害−整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も−(発表情報)_国民生活センター

[PDF]消費者庁:法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に

 

あん摩マッサージ指圧師は国家試験の受験の前に3年以上の専門教育を受ける必要がある。その教育の内容には業務上の感染症予防・防護も含まれる。

 

一方、整体師は誰でも名乗れるから感染症の教育を受けているとは限らない。

そのため予防措置を取らずに感染させることは十分に想定できることである。

 

そのように、医学知識が不十分な整体師による感染を、マッサージ師が起こしたように報道されたのでは風評被害も甚だしいわけである。

 

ただ、この件は感染だけの問題ではない。

この整体師の息子は新コロナの検査で陽性であることを告知されてから、飲食店などに行き、自ら陽性であることを知らせてパニックに陥らせたのである。

自宅待機を要請されたのに…「陽性」判明の男性、飲食店へ外出 : 国内 : ニュース : 読売新聞オンライン

 愛知県蒲郡市は5日、県が4日に新型コロナウイルス感染を発表した三河地方の50歳代男性が市内在住で、検査の結果、陽性と判明し、自宅待機を要請されたにもかかわらず、飲食店に出かけていたと明らかにした。

 発表によると県が3~4日に三河地方の男女として発表した4人の感染者は市内在住の同居の家族で、50歳代男性と、その両親の80歳代男性と70歳代女性、息子の30歳代男性。80歳代男性に呼吸困難の症状があるが、他の3人は軽症。

この80代男性が、この記事で取り上げた整体師である。

飲食店を訪ねていた50代男性は整体師の息子である。

 

経営者は「言葉にできないような怒り」 コロナ陽性男性が“自宅待機”無視し飲食店へ 愛知・蒲郡市 : 中京テレビNEWS

コロナウイルスをうつしてやる――」

 “新型コロナウイルス陽性”そう告げられた男性が向かった先は、飲食店でした。

 愛知県蒲郡(がまごおり)市で、新型コロナウイルスへの感染が確認された50代の男性。

 警察への取材で、男性が家族に対し「コロナウイルスをうつしてやる」と言い、外出していたことがわかりました。その後男性は、蒲郡市内にある2つの飲食店を訪れていたのです。

 男性が立ち寄った飲食店の経営者が中京テレビの取材に語ったのは、“怒り”でした。

「警察にもすぐ電話して今、何もできないような状態。頭の中は整理がつかない。言葉では表現できないが怒りしかない」(飲食店経営者)

 

コロナ感染者「自分は陽性」、飲食店で吹聴か TBS NEWS

新型コロナウイルスの感染が確認された愛知県蒲郡市の男性が市内の複数の飲食店を訪れ、自分が陽性だと話していたことがわかりました。

 蒲郡市に住む50代の男性は、4日、陽性と判定されたあと、愛知県から自宅待機を要請されたにもかかわらず、市内の飲食店を訪れていました。

もはやバイオテロと言ってよいだろう。

 

訪ねた飲食店は普通の飲食店ではなく、フィリピンパブなどだそうだ。

bunshun.jp

通常の飲食店であれば食事のために仕方ない、と弁護する余地もあるが、自ら陽性であることを吹聴しているのだから、反社会的行為と言える。

 

私は常々、整体師やカイロプラクターなどを犯罪業務として非難しているし、名指しで犯罪業務と指摘する記事も書いている。

違法施術所紹介シリーズ カテゴリーの記事一覧 - びんぼっちゃまのブログ

 

このように、反社会的な職業に従事する者に育てられた子供が、反社会的行為をするようになっても何ら不思議はない。

 

バイオテロリストが、法律を守っているマッサージ師の子供と勘違いされたのでは甚だ迷惑である。

 

(2020/03/09追記)

愛知県の発表が再び訂正された。

中日新聞では愛知県が訂正した旨、紙面でも報じたようである。

蒲郡の感染者情報訂正 愛知県:社会:中日新聞(CHUNICHI Web)

 愛知県は8日、新型コロナウイルスの感染を確認した同県蒲郡市の80代男性について、マッサージ師と7日に発表していたが「調査の結果、あん摩マッサージ指圧師の資格を持っておらず、整体を行う者であることが確認された」と発表内容を訂正した。県によると、店舗を持たず、出張して整体の施術をしていた。

 

免許制度の存在を知られると困る整体師達が、この記事で愛知県の発表を知り、県などに圧力をかけたのであろうか?

カイロプラクターの業界は遠山清彦財務副大臣を使って、彼らを表す言葉を、自分たちに都合の良いようにするよう厚生労働省に圧力をかけた。

 

binbocchama.hatenablog.com

 

もっとも、今回の県の発表は感染経路を明らかにし、濃厚接触者に連絡を求めることを目的にしたものである。

無資格者であることまで発表する必要はない、と県は考えたのかもしれない。

マッサージ師の信用回復のためにはマッサージ師と発表したことが誤りだったことを残しておくべきだと思うのだが。

消費者契約法に基づき、カイロプラクティック施術の施術料の返金を求めた訴訟

国民生活センターは消費者契約に関する判例集を公開している。

[PDF]消費者契約法に関連する消費生活相談の概要と主な裁判例

その中にカイロプラクティックの施術料の返金を求め、棄却された裁判例が掲載されている。

22
東京地裁平成25年3月26日判決

 

原告の主張

消費者である原告は、肩こりや頭痛などの症状についてインターネットで通院先を探し、被告らとの間でカイロプラクティックの施術契約を締結し、施術を受けた。

原告は、被告らが、原告の猫背、頭痛、肩こりはカイロプラクティックによる施術によって治るとは限らないにもかかわらず、それを故意に告げず、かえって、原告らの症状が治ると将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供したため、原告は、本件各施術によって症状が治るのが確実であると誤認したと主張し、法(筆者注:消費者契約法)4条2項により本件各施術契約を取消す旨の意思表示をし、不当利得の返還請求をした。

 

判決の内容

カイロプラクティックの施術における「猫背、頭痛、肩こりの症状を改善させる効果の有無」については、消費者契約の目的となる役務についての「質」に該当すると認められる。

被告らが、本件各施術によって猫背、頭痛、肩こりの症状が改善していく旨の説明をしたことは認められるが、施術によって症状が改善しないと認めることはできないから、被告らが本件各施術によって症状が改善しないにもかかわらず改善する場合があると告げたと認めることはできない。

また、被告らが、原告に対し症状が軽減、消失しないことを告知しなかったことが法4条2項に反するとはいえない

そして、被告らが「猫背、頭痛、肩こりが治る」などという断定的明言をした事実を認めることはできず、原告において、猫背、頭痛、肩こりが確実に治ると誤信したと認めることは困難である。

被告らが、症状が改善しない場合があることを故意に告げなかったとも認められない

以上により、原告の本件各施術契約の申込みの意思表示につき、法4条2項に基づいて取消すことはできないとして、原告の請求を棄却した。

消費者契約法第4条第2項

 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意又は重大な過失によって告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。

いわゆる「不利益事実の不告知」というものである。

 

国民生活センターの文献の記載から、無免許施術の違法性や、国家資格を有しないことが不利益事実である旨の主張をしていなかったとは思われるが、これまでは判例データベースに判決文が存在しないため、検証ができなかった。

D1-Law.comに判決文が収録されていたのでこの判決について検証する。

 事件番号等

東京地方裁判所 平成25年3月26日判決

平成23(ワ)40456

事件名:不当利得返還請求事件

出典:D1-Law.com判例体系 29027488

当事者と請求内容など

原告、被告双方に代理人(弁護士)はついてる。

原告

  • 原告X1:昭和20年代生まれで、原告X2の母
  • 原告X2:平成生まれの女性

被告など

  • 被告Y1:国内の診療エックス線技師学校を卒業後、米国のB大学でドクターオブカイロプラクティック(DC)およびレントゲン分析の学位を取得。東京都内でY1治療室(施術所)を開業。日本国内の診療放射線技師免許を持っているかどうかは不明。被告Y2と訴外Cの父親。
  • 被告Y2:米国の高校を卒業後、B大学を卒業し、DC取得。Y2オフィス(施術所)を開業。
  • 訴外C:米国の高校を卒業後、B大学を卒業し、DC取得。Y1治療室の従業員として施術。

請求内容

  • Y2はX1に2万円と金利を払え。
  • Y2はX2に6万1,000円と金利を払え。
  • Y1はX1に13万2,000円と金利を払え。
  • Y1はX2に42万9,500円と金利を払え。

合計で、被告らは原告らに対し、合計64万2,500円と金利を支払え。

である。 

原告らは最初、Y2オフィスで施術を受けていたが、Y1治療室で働いている訴外Cの施術料が安いということで、Y1治療室に転院している。

 

原告代理人消費者問題霊感商法に取り組んでいる弁護士である。

正直、この請求金額では弁護士の儲けは殆ど無いだろう。

判決は平成25年(2013年)3月で、国民生活センターから整体やカイロプラクティック健康被害の報告書が出されたのは2012年8月である。

手技による医業類似行為の危害−整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も−(発表情報)_国民生活センター

 ここで控訴し、主張を治療効果の有無ではなく、無免許施術であることを説明しなかったこと、医業類似行為で違法な施術であり、公序良俗に反する旨を主張してくれればよかったのだが、この訴額で控訴は割に合わないだろう。

また裁判官がヒントを与えるような判示をしてくれれば良かったのだが、そういう様子も判決文には無い。

 

裁判官がヒントをくれた裁判例

binbocchama.hatenablog.com

 通院状況など

原告X2の通院状況

X2は平成19年11月にY2オフィスに通い始め、同年12月下旬までの間、10回の施術を受けた。平成20年1月にY1治療室に転院し、平成21年9月までに86回、Y1治療室でCの施術を受けた。

Y2,Y1の通しでは平成19年11月から平成21年9月までの1年10ヶ月の通院である。

原告X1の通院状況

X1は平成19年12月にY2オフィスで3回施術を受けた。平成20年1月から平成21年3月まで27回、Y1治療室でCの施術を受けた。通算で1年4ヶ月の通院である。

 

争点と主張

争点

 本件の争点は、本件各施術契約が消費者契約法4条2項によって有効に取り消されたかである。

原告の主張

( 1 ) 原告らは、被告Y2及びC(以下「被告Y2ら」という。)との間で、本件各施術契約を締結したものであるが、被告Y2らは、原告X2の頭痛、肩こり、猫背及び原告X1の猫背が、カイロプラクティックによる施術によって治るとは限らないにもかかわらず、それを故意に告げず、かえって、原告らの上記症状が治ると将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供したため、原告らは、本件各施術で上記症状が治るのが確実であると誤認し、それによって、本件各施術契約締結の意思表示をしたものである。

 また、少なくとも、被告Y2らは、原告らに対し、本件各施術が原告らの上記症状の改善に効果があるし、効果があった多くの実例があると説明したことから、原告らは、上記被告Y2らの説明が真実であると信じたため、本件各施術を受けることとした。

しかも、Cは、自らのカイロプラクティックの施術が「長期間あるいは頻回のカイロプラクティック療法による施術によっても症状が軽減、消失しない場合には、施術を中止して速やかに医療機関において精査を受ける」べきであるのに(甲6)、かかる重要な不利益事実を告知せず、長期間・多数回にわたって通院させ、高額の施術料を支払わせたものである。

 

( 2 ) 以上によれば、原告らは、消費者契約法4条2項に基づき本件各施術契約を取り消すことができる。

 甲6号証というのは他の部分も読むと、下記通知と思われる。

医業類似行為に対する取扱いについて|厚生労働省

(3) 適切な医療受療の遅延防止
長期間あるいは頻回のカイロプラクティック療法による施術によっても症状が増悪する場合はもとより、腰痛等の症状が軽減、消失しない場合には、滞在的に器質的疾患を有している可能性があるので、施術を中止して速やかに医療機関において精査を受けること。

というわけで、原告は

  • カイロプラクティックの施術契約が違法契約であり、公序良俗に反し無効であること
  • 国家資格制度の存在と、自身らが無免許であることを告知していないことが「不利益事実の不告知」であること

を主張しているわけではない

原告の主張は

  • 被告Y2らは、原告X2の頭痛、肩こり、猫背及び原告X1の猫背が、カイロプラクティックによる施術によって治るとは限らないにもかかわらず、それを故意に告げなかった。
  • 上記症状が治ると断定的判断を提供した。

ことが「不利益事実の不告知」である、ということだ。

 被告の主張

( 1 ) 被告Y2らが原告らに対し、カイロプラクティックの施術により「猫背、頭痛、肩こりが治る」などという断定的明言をした事実はなく、原告らが、猫背などが確実に治ると信じて本件各施術を受けた事実もない。
被告Y2らは、原告らに対し、「頸椎や脊椎のアジャストメントをすることにより、自然治癒力を高め、これを最大限発揮させるようにし、その結果として症状の改善を目指したい」旨を提案し、原告らは、被告Y2らの施術を受けることを希望し、本件各施術契約を締結した。

上記説明、提案の過程及び本件各施術期間中においても、被告Y2らが、原告らに対し、「カイロプラクティックによって猫背、頭痛、肩こりが治る」などという断定的明言をした事実はない。

 

( 2 ) 以上によれば、原告らの消費者契約法4条2項に基づく本件各施術契約の取消しは認められない。

裁判所の判断

効果の有無について

  • 本件各施術契約において、将来における変動が不確実な原告らの猫背、頭痛、肩こりの改善の程度については「重要事項」に当たらないと解するのが相当である。
  • カイロプラクティックの施術における「猫背、頭痛、肩こりの症状を改善させる効果の有無」については、消費者契約の目的となる役務についての「質」に該当すると認めるのが相当である。
  • 本件全証拠によっても、カイロプラクティック療法による施術によって猫背、頭痛、肩こりの症状が改善しないと認めることはできないから、被告Y2らが、本件各施術によって猫背、頭痛、肩こりの症状が改善しないにもかかわらず、改善する場合がある旨告げたと認めることはできない。
  • 原告らの症状が全く改善されていなかったと認めるに足りる証拠はなく、…原告X2は、原告X1が本件Y1治療室に通院することを中止した後も、半年近くの間通院を継続していることからすれば、原告らの症状が全く改善していなかったと認めることは困難であり、原告らが長期間通院していた間に、原告らの症状が改善しないものと確定したと認めることはできない

断定的判断について

  • 被告Y2らの尋問の結果によれば、上記のとおり、被告Y2らが、本件各施術によって、猫背、頭痛、肩こりが改善される旨の説明をしたことは認められるが、「猫背、頭痛、肩こりが確実に治る」との断定的明言をした事実までは認められず
  • また、原告らが本件各施術を受けるに当たって確認したとする被告らに関するホームージ等(甲1、19、20、枝番含む)によっても、「猫背、頭痛、肩こりが確実に治る」といった断定的明言をした記載は一切認められない

 どう主張すればよかったのか?

  1. 国家資格制度が存在することと、自身らが無免許であることを告知しなかったことが不利益事実の不告知である。
  2. 被告らの施術行為は医師法第17条に違反する違法施術であり、施術契約は公序良俗に反して無効である(民法90条)。
  3. 被告らの施術行為はあはき法第12条に違反する違法施術であり、施術契約は公序良俗に反して無効である。昭和35年判決は現在維持するのに相当ではない(要判例変更)。

 

およそ、このような主張が考えられる。

 

最初のY2オフィスの通院状況に関しては

 イ 原告X2の通院状況

 原告X2は、同月19日から同年12月26日までの間、10回にわたり、本件Y2施術2を受けた(前記前提事実( 6 )、甲2、乙5の1 )

 原告X2は、平成19年11月19日、治療を開始するに当たって本件Y2オフィスの問診票に、その症状として「全身だるい、猫背、頭痛(緊張性頭痛)、起きている間はずっと出ている、モヤモヤ、頭がスローなかんじ、たまに手足のしびれ、肩こりもひどい」と記載し、また、カイロプラクティックの受療経験は「あり」と記載した。(乙5の1、弁論の全趣旨)

 原告X2は、平成19年11月27日、本件Y2オフィスを併設しているDクリニックにおいてX線撮影を行い、被告Y2から、X線撮影結果に基づき、頸椎、胸椎、腸骨、仙骨の各変位、腰椎の回旋、腰の傾き等を指摘された。(乙5、16、枝番含む)

ウ 原告X1の通院状況

 原告X1は、同年12月5日から同月26日までの間、3回にわたり、本件Y2施術1を受けた。 (前記前提事実( 5 )、乙8の1 )

 原告X1は、平成19年11月27日、DクリニックにおいてX線撮影を行い、被告Y2から、X線撮影結果に基づき、胸椎、仙骨、腸骨の各変位の回旋、腰の傾き等を指摘された。(乙8、乙9、枝番含む)

 原告X1は、治療を開始するに当たって本件Y2オフィスにおいて問診票を記載したが、問診票に、症状を記載しなかった。(乙8の1)

 と判示されている。

問診が医行為であることは最高裁の判決が有るし、レントゲン写真の読影も医行為である旨の判決が有る。

被告人が断食道場の入寮者に対し、いわゆる断食療法を施行するため入寮の目的、入寮当時の症状、病歴等を尋ねた行為は、それらの者の疾病の治療、予防を目的としてした診察方法の一種である問診にあたる。 

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51069

 

柔道整復師放射線を人体に照射することを業とした場合には、技師法二四条一項に違反し、同条三項の罪が成立するにとどまり、医師法一七条に違反した者を処罰する同法三一条一項一号の罪は成立しないものというべきである。*1
 そうすると、原判決及びその支持する第一審判決は、被告人が放射線を人体に照射することを業とした行為に対し、技師法二四条一項、三項のほか、医師法一七条、三一条一項一号を適用した点において、法令の解釈適用を誤っているが、被告人は、エックス線写真の読影により骨折の有無等疾患の状態を診断することをも業としたものであって、この行為については同法三一条一項一号の罪が成立するのであるから、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するということはできない。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=50361

よって、2の主張が可能だったと思われる。

原告代理人はあまり医師法違反の判例に詳しくなかったように思える。

 

また国民生活センターの報告書により、カイロプラクティックは人の健康に害を及ぼすおそれが有る蓋然性が出てきた。

なので、おそれが無いことの立証責任を被告に負わせることも可能だったかと思われる。

無免許施術が合法と言えるためには安全性の証明は必要だろう。

 

binbocchama.hatenablog.com

 また現在では消費者庁からも無免許施術の健康被害の報告書が出されている。

[PDF]法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に

これらの立法事実や薬事法の大法廷判決などを引用すれば昭和35年判決の判例変更は可能だと思われる。

binbocchama.hatenablog.com

 

なお、このような主張をして施術料金の返金を求めた裁判例を私は知らない。

実際、このような形での訴訟が行われていないのか、それとも和解で終わっているのか。

和解で終わっていれば当然判例データベースに掲載はされない。

 

無免許業者からすれば、被害者に金を積んで黙らせる(口外不可条項)のが賢明な判断である。

*1:旧法の規定であり、現在は医師の指示なしで人体に放射線を照射すれば医師法違反が成立する。

平成医療学園は晴眼者のあん摩マッサージ指圧師(及びなろうとする者)の営業権を考えているのか?

あはき法19条裁判の違憲の主張について、気になったところがあったのでメモとして残す。

違憲判断の手法

 裁判所は19条が違憲と判断するための基準として

あはき師法附則19条1項による,視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等を設置しようとする者及びあん摩マッサージ指圧師の資格を取得しようとする視覚障害者以外の者の職業選択の自由に対する規制については,それが重要な公益のために必要かつ合理的な措置であることについての立法府の判断が,その政策的・技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理である場合に限り,憲法22条1項に違反するものと解するのが相当である。

としている。

原告は

 あはき師法附則19条1項は,当人の努力等により克服ができない客観的な許可条件による事前規制であり,重要な権利である職業選択の自由に対する最も強い規制に当たる。

しかも,同項の文言は,最高裁薬事法判決や小売市場判決で問題となった規制とは異なり,具体的にどのような条件を満たせば事業を行うことができるかの基準自体が不明確であるから,より厳密に目的と手段の関連性が審査されるべきである。

として、

①目的に正当性があること,

②手段が目的を達成するために必要であること,

③手段に目的達成のための合理性があること

が満たされなければ,違憲と判断されるべきである。

と主張している。

職業選択・活動に対する規制に関する段階理論

「客観的な許可条件」というのは学説では良く見られる表現である。

職業選択の自由に対する規制としては

  • 職業活動(職業開始の後)に対する規制(守秘義務や広告規制など)
  • 職業開始自体に対する規制

に分けられ、後者の内容はさらに

  • 主観的条件:資格制度など、本人の才能と努力で克服できるもの
  • 客観的条件:本人が変えられない条件。既存の同業者の位置や家柄など。

に分けられる。職業に対する規制の違憲審査は緩い順に

  • 職業活動に対する規制(事後規制)
  • 主観的条件
  • 客観的条件

となる。

段階理論とも呼ばれる。

 

視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の経済状況は、申請者ではどうこうできる条件ではないのでまさに客観的条件と言える。

ただ、裁判所の判断では「客観的な許可条件」というのには触れていない。

この説はもっぱら職業を自由にした場合の弊害を防ぐ、警察目的での規制に適用されるようであり、今回のような、社会的な目的を持った規制では判断基準として用いられていないようである。

 

薬事法違憲判決は、距離制限があくまでも不良医薬品の流通を防ぐという警察目的で作られた条項であるため、違憲審査基準が厳しくなったと言える。

晴眼者のあん摩マッサージ指圧師の営業権を犠牲にする違憲主張

さて、原告の平成医療学園は、19条が違憲である、という理由の一つとして、下記のように養成校の新設規制以外に他に妥当な手段がある旨、主張している。

(エ)目的達成のために他の妥当な手段があること

 視覚障害者にとって重要なのは,視覚障害者が職業的に自立することや,資質向上が果たされるような環境が整えられることにあり,台湾では,違憲判決を契機として,視覚障害者以外の者の参入を制限するのではなく,視覚障害者があん摩師やその他の職業として働く場を確保する政策に転換し成功している。このように,あはき師法附則19条1項を維持するのではなく,障害者が職業的に自立するような政策・立法を行うことにより,目的をより達成することが可能であり,同項は手段として合理性がない。
 また,昭和39年改正当時の中央審議会において検討されていたように,慰安,疲労回復等を目的とする施術を行う保健あん摩師と医師の指示の下に疾病の治療を目的として施術を行う医療マッサージ師とに分離し,一定の地域ごとに,保健あん摩師総数における視覚障害者以外の者の比率を定め,その比率を上回るときは,視覚障害者以外の者の就業する保険あん摩師施術所の新規開設を許可しないことによって,視覚障害者の職域の保護の目的は達成できるから,全国一律に制限する必要はない。

保健あん摩師と医療マッサージ師の分離までは今回の裁判では考えられていないと思う。

この、晴眼者の施術所開設の規制案は昭和39年当時の議論である。

その後、昭和50年に薬局の距離制限を違憲とした最高裁判決が下されるのである。

 

この施術所開設規制は薬事法違憲判決と同様に、客観的条件による規制である。

原告は客観的条件による規制は違憲審査を厳しくあるべき、と主張しながら、晴眼者のあん摩マッサージ指圧師に対する、客観的条件による規制を主張しているのである。

 

この主張通りの規制が実施された場合、晴眼者による新規の施術所開設が地域によってはできなくなる。

原告が申請した養成校が作られたとしても、そこに入学し、あん摩マッサージ指圧師となった者は希望する地域で開業できなくなる可能性も出てくるのである。

 

3年以上の月日を費やしたにも関わらず、地元などの希望地域で開業できない状況を作ってでも養成校の新設を認めるべきであろうか?

 

資金力もある学校法人と、一個人であれば後者の職業選択の自由を重視すべきではないか?

 

この違憲主張に対する東京地裁の判断は

 しかしながら,原告の主張するような各種手段が,あはき師法附則19条1項による規制よりも明らかに合理性の点で優れており,その反面として同項による規制の合理性に疑いがもたれるというまでの事情は認められず,これらの手段の中からどれを選択するかは,正に立法府の政策的・技術的な判断によるものというべきであるから,原告の主張を採用することはできない。

というものである。